能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2023年7月26日水曜日

NHK NHK BSプレミアム『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』全10話・感想



TV Japanにて。日本での放送は2023年5月14日から同年7月16日まで。


すごくいいドラマでした。回を追うごとにしみじみとこの家族が好きになった。登場人物全員に愛着が沸いた。愛が溢れるドラマ。もっともっと彼らを見ていたい。名シーンの数々に泣いた。ありがとうございました。


最初は正直見続けられるかなと思った。ママひとみさんの哀しい表情を見ていて哀しくなった。七実ちゃんのハードモードの人生を見るのが辛い。見ているのが辛すぎて全部見れなくなるかもしれないと思っていた。

それから演出とカメラワークが実験的?なのだろうか、最初はなかなか馴染めなかった。時間が前後してポンポン飛ぶ。人物達の感情も、楽しく笑ったと思ったら急に深刻になる…と思うとまた笑っている。幻のパパがいるかと思えば、リアルでシリアスな重い場面。人物に迫る生々しいカメラワーク。雰囲気がコロコロ変わって混乱する。日々はケオスのように混乱していて掴みどころがない。七実が不思議なほど淡々としているのもすぐには理解できなかった。コメディかシリアスなのか人情ものなのか、そのとっ散らかった雰囲気に最初は戸惑った。


そのケオスな雰囲気こそがこのドラマの素晴らしさでした。


その実験的な演出にも回を重ねるごとに馴染んでいった。まさに人の日常とは、そして人の心の動きとは、整理整頓されていないケオスのようなもの。岸本家の、ものすごくリアルな整理整頓されていない日常。生々しいカメラワークがそんな日常を隅々まで捉える。このケオスな演出に最後は感動さえした。このドラマはきっと傑作。素晴らしい台詞。名場面も数えきれない。

気持ちを抑え気丈に振舞うことが習慣になった七実ちゃんが笑えば私も嬉しい。ママと共に泣く。草太君のいつも変わらない優しさに微笑み、パパの愛情に涙する。そしてお婆ちゃんのユーモアに笑い彼女の娘ひとみへの愛に泣く。


このドラマも家族を描いたドラマ。今から2週間前に英国発の家族のドラマ『ブリーダーズ 最愛で憎い宝物/Breeders』の感想で「家族は色んな事があって時には不協和音も聞こえてくるけれど、それでも家族は前に進む。それでいいのだろう」とここに書いた。このドラマも家族が前に進んでいく話。

ここのところ、(後悔ではないけれど)どうも家族(子供)を持たなかった私の今後の人生がこれからどうなっていくのだろうと考えることが多く、だから英国の『ブリーダーズ』もこの『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』も、家族のドラマというだけでしみじみと心に沁みる。

うらやましい。家族っていいなと思う。


★ネタバレ注意


実は前半は(前述のように)ドラマにすぐ馴染めなくて、録画を保存せずに見ていた。しかし第6話目で「ん?いいかも」と思って録画を残すようになった。先週最終話を見終わり、ちょっと見直そうかと先ほど第6話目を見たのだけれど、2回目に見るともっと沁みる。すごくいい。うわ~これは第1話から録画を残しておけばよかったと思った。

(というわけで第5話までは録画がないので細かい内容は覚えていないのだけれど)第6話は七実ちゃんが作家になる話。そこで出てきた「ALL WRITE」の編集長の小野寺・甘栗・柊司(林遣都)の面白さ。そして彼の女性スタッフが甘栗をガラス瓶に投げ入れる場面で心が動いた笑。変な上司あるある。面白さにリズムが出てきた。そして瞬く間に七実ちゃんは作家先生になる。遊園地での「お婆さんは国の宝です」そうだ。そのとおり。

このドラマは時々ドキッとする台詞が出てくる。


岸本七実
最初七実ちゃんが感情を抑えていることがわからずに戸惑ったのだけれど、彼女は強い。淡々と何事にも動じていないように振舞う。常にユーモアを忘れず、家族を思いやって前を向いて歩いている。彼女を心配し、はらはらしながら、それでも彼女が強く立つ姿を見て、勇気をもらい、頭を下げたくなった。あの淡々とした様子がリアル。本当はいっぱいいっぱいでも感情を抑えているのだろう。彼女は大人なのだ。一度彼女はお風呂で泣いていた。第6話で自室で横に座るパパと話す場面で、七実ちゃんが少しずつ悲しみの表情になって泣く。河合優実さんは素晴らしい女優さん。

大川芳子
お婆ちゃん芳子さんの愛、愛、愛。ママひとみが子供の頃、「ひとみちゃん」に大きな卵焼きを焼いてくれたお婆ちゃん。明るいお婆ちゃん。娘を心から愛しているお婆ちゃん。「ご飯食べる?」と娘を常に気遣う母親。美保純さんがユーモラスで温かい。

岸本耕助
目に沢山の愛を湛えたパパ。パパは常に家族と共にいる。幻のパパが出てくるたびに嬉しくなる。草太君といつもハグしたりジャンプしたりする様子に心が温かくなる。そしてパパは七実ちゃんが作家になるきっかけになった。パパはいつも皆を見守っている。錦戸亮さんの表情に泣いた。

岸本草太
そして吉田葵さん演じる草太くん。優しい草太くん。言葉が丁寧なのもいい。彼がパパと顔を見合わせて笑顔になるのもまた嬉しい。彼にはパパが見えるのね。草太くんは第9話で自立する。寮(?)に入った初日の夜、一人寮を出て家に向かって歩き始める。畑の間の道を歩けばパパが隣を歩く。草太くんが「間違ってない?」と聞けば「間違ってないで…草太はずっとおうてる…」。そのシーンは草太くんが生まれた時、パパが病院から出て「大丈夫」と言いながら同じ道を歩いた姿に重なる。草太くんが「ありがとう」と言ったところでパパが消える。自立した瞬間。草太くんはたった一人、空が明るくなり始めた早朝の道を朝日に向かって歩き続ける。とても美しいシーン。感動しました。

岸本ひとみ
そしてママひとみさん。坂井真紀さんが超一流の女優さんだと知った。すごい役者さん。このドラマで、彼女の芝居に何度も心揺さぶられた。若いママの表情、小さい草太くんを慰める優しいママ、そして娘七実を明るく応援するママ、突然自由を失って病院で泣く様子。車を運転して自立する強さ。お婆ちゃんのことを知らされて顔を手で覆って泣く様子。第8話で、母芳子(お婆ちゃん)に「ありがとうね」と伝える娘の顔。すると芳子さんは「なにが?」と問う。その後のひとみさんの表情。名場面。 第9話で生まれたばかりの草太くんを抱っこする優しいママの顔。その後表情が変わり不安と心配の表情が悲しみに変わって大粒の涙。草太くんの髪をカットする母の顔。寮に向かう草太くんを追って思わず車から落ちそうになる。その後の草太くんを見上げる表情と涙。このママひとみさんの様子に何度も息を呑んだ。坂井さんは超一流。こんなにすごい役者さんの芝居は久しぶりに見た。第9話の母親の表情が本当にすごい。ドラマ全話、彼女の芝居で何度も泣きそうになった。


家族以外の登場人物達も皆素晴らしい。出てくる人が皆いい人。特に草太くんをめぐる人々がいい人ばかり。コンビニでもカフェでも人物達が皆いい人。社会に愛がある。

このドラマには愛があふれる。

家族に愛があふれる。祖母も母親も娘も息子も、父親も、皆全員が愛を表現する。それがすごいのですよ。愛がどんどん溢れる。だから名場面が多い。

第8話の芳子さんと娘ひとみさんのシーンでは私の母のことを思い出した。40歳も過ぎた娘をいつまでも子ども扱いする母親。うちも同じだった。母が懐かしい。


少しアート風でケオスな演出は…今まであまり見たことのないドラマだと思った。たぶん実験的な見せ方だから最初は戸惑ったけれど、回を増すに連れてどんどん引き込まれた。あのケオスが現実のリアルさを捉えているのだろう。巧みな演出。感情を写しとるカメラワーク。すばらしい脚本。そして一流の役者さん達。素晴らしいドラマ。そしてこの家族が大好きになった。

家族の話はいい。


さきほど第6話を見て面白かったので、これから第10話まで見直そうと思います。また彼らに会いたい。ありがとうございました。



2023年7月9日日曜日

NHK大河ドラマ「どうする家康」第26回「ぶらり富士遊覧」7月9日放送・武田勝頼がかっこよかった





武田勝頼がかっこよかったわ。

ま~本当にかっこいい眞栄田郷敦さん。暫く前から武田勝頼が登場するたびに「いいな~この役者さんはかっこいいわ~」と感嘆していた。Gordon Maedaか。名前が西洋風だ。このお方はただただお顔が好きだ。私は普段はお若い方を見てお顔がいいから好き💕などとは決して思わないのですけれど、眞栄田郷敦さんは例外!すごくかっこいい。

この武田勝頼はすごいカリスマ。眞栄田さんは戦国武将がお似合いになる。さすが武田信玄の息子。最初に登場した時から「おおおおおおおっ」っと見入りましたよ。かっこよすぎ。ミステリアス。お若いのに威厳がある。眞栄田さんがまだ23歳と聞いて驚いた。確かにお顔は可愛らしいと思うのに威厳があってなぜかちょっと怖い。黙っていても凄みを感じる。とにかくかっこいい。

声もいい。眞栄田さんのお声は千葉真一さんのお声に似ている。この勝頼で「あれ?似てるかも」と何度も思った。声の高さは違うのに似ているように聞こえるのは発声が似ているのだろうか。

今回で勝頼も終わってしまったけれど、あまりにもかっこよかったので記録します。


さて家康の話も面白くなってきた。家康の徳川家は大企業・織田の下請け子会社でしょうか。親会社・織田の傲慢な社長・信長に無理難題を押し付けられて毎回困っている。

先週、瀬名と信康が亡くなってそれで家康は心を閉ざしました。秀吉も変化に気付いているし、信長も家康は「心を見せないようになった」と言う。以前はよくうろたえて泣いていた家康もやっとそれらしくなってきたか。

この大河では明智光秀がいや~な感じなのがまた面白い。『麒麟がくる』の光秀は不器用だが実直な男に描かれていたけれど、このドラマの光秀は嫌味。しかし実際に宣教師のルイスフロイスは光秀のことをかなり悪く書いているらしく、今回はそのようなイメージのキャラクター設定かもしれませんね。

今年は毎回の感想は書いてませんが毎週気楽に楽しんで見てます。最初は演出に戸惑うこともあったけれど、だんだん馴染んで面白くなってきた。



2023年5月27日土曜日

NHK NHK BSプレミアム「BS時代劇」『大富豪同心2』全9話・感想



TV Japanで今年1月から放送された『大富豪同心』。そのシーズン1から継続してシーズン2『大富豪同心2』が放送された。全9話。

日本での放送は、NHK BSプレミアム「BS時代劇」枠にて2021年5月28日から7月23日まで。


今回も面白かったです。シーズン1でも書きましたが、このドラマは癒し。すごくいいドラマ。毎回馴染みの人物達を見るのが嬉しくて、その上に毎回彼らに降りかかる事件のストーリーを楽しむ。今回は1話完結型ではなく全9話全部が繋がった大きなドラマになっていた。新しいキャラも増えた。


毎回お馴染みの八巻卯之吉(中村隼人)の「気絶」シーンが出れば「待ってました」と喜ぶ。あの「気絶」のシーンは水戸黄門の印籠のシーンと同じくこのドラマのお楽しみ笑。にやにやする。

大昔に祖母が水戸黄門を見ていて、ティーン以降の私はその面白さがわからなかったのだけれど、今ならわかる。お馴染みのキャラの馴染みのシーンを見て嬉しくなると…そういうことだったのね。


★ネタバレ注意


主人公は江戸一番の札差・三国屋の主人の孫・八巻卯之吉(中村隼人)。その卯之吉…頭はいいが、おばけが怖い、暴力も怖い、遊ぶことが大好きなお人よし。彼は放蕩が過ぎるからと祖父から南町同心に就職させられる。

シーズン2の話は将軍・徳川家政(尾上松也)が病に倒れたところから始まる。将軍は甲府から異母弟の幸千代(中村隼人)を後継者候補として江戸に呼び寄せる。

その幸千代君と卯之吉は瓜二つ。しかしこの二人、性格は正反対。

老中・甘利(松本幸四郎)は、江戸の屋敷から失踪した幸千代君の代わりに(彼にそっくりの)卯之吉を替え玉に据えることを思いつく。そして入れ替えはそのまま…幸千代君は卯之吉の身代わりに南町の同心として働き始める。

…これってどうして二人はゆるく入れ替わってるんだっけ?幸千代君が外に出たいと言ったのだっけ?二人とも屋敷を出入りして入れ替わったり自由にできるのだけれどどうしてだっけ?…などと、実は話の途中で細かいことがわからなくなったのだけれど(ごめんネ)、それでもともかく「二人は自由に行き来できるのね」と納得して見続けた。

同心になった幸千代君には護衛として美鈴(新川優愛)がつく。また甲府からは幸千代の許嫁(いいなずけ)真琴姫(深川麻衣)が上京。この女性二人は卯之吉と幸千代君に片思い。

江戸の町には日々問題が起こる。その問題のひとつひとつは全て繋がっていて最後に第9話で完結する。大奥御年寄・富士島(萬田久子)はどうしてそうなったのか…?


見どころは、主演の中村隼人さん。おひとりで二役…賢いがひ弱で優しく剣の使えない卯之吉と、剛毅で男らしく剣も上手い幸千代君…を演じていらっしゃる。お見事。この二人のキャラは本当に別人。

言葉使いや声、表情、身体の動きも全然違う。お顔も印象が全く違う(眉毛の角度さえ違う)ので「どうしてこんなに違うのだろう」と、最終話にお顔のアップを止めてよく見たら、幸千代君には「目張り=アイライン」がばっちり入っていた。ほぉ~なるほどねぇぇ。(卯之吉の口調を真似していたらうつった)

幸千代君はきりりとしている。眉毛がきりっと上がっていて、男らしいし剣も上手い。一方卯之吉くんは、アイラインも入っていないし眉毛も下がり眉。いつもにこにこしてほんわ~りゆるキャラ。役者さんはこんなに違うキャラが演じ分けられるのねと感心。全く別人です。すごいと思う。

中村隼人さんはかっこいいお方。古典的に整ってるお顔。しかしきりりとした幸千代君はかっこいいが、私は卯之吉くんの癒しのキャラがすごく好きだわ。ゆるキャラみたいなのに、実は蘭方医学の知識があって、シリーズの最後には将軍の病を直していた。事件も卯之吉が全部解決に導いている。頭いいのね。美鈴さんが彼に惹かれるのもわかるわ。


周りの役者さん達も皆いい。皆お馴染みで楽しい。エンディングのテーマソングはコッテコテの演歌。おそらく(ターゲットの)年寄り向けなのだろうけれど、それがまた「お約束」で楽しい。その歌で皆が『逃げ恥』風ダンスを踊るのもユーモラス。皆楽しそうだ笑。中村隼人さんはダンスをやっても日本舞踊風なのが面白い。

そうそう、このドラマは音楽もいい。毎回チャンバラのシーンでのビッグバンド風の騒がしい音楽が妙にマッチしていていい。元気が出る。

今回は、江戸城の将軍・徳川家政に尾上松也さん。老中・甘利備前守に松本幸四郎さんもご出演。歌舞伎役者さんの時代劇ご出演は嬉しい。


剣の上手かった人。5話6話で出てきた清少将/おじゃる丸の辻本祐樹さん。機敏。プロフィールを見たら特技に殺陣とあった。やっぱり。

…そうなのよ。余談だけれど日本の若い俳優さんの方々、もし海外を目指すのなら殺陣はやっておいた方がいいと思いますよ。中学や高校での剣道もいい。刀が使えることは日本人が海外のエンタメに行った時に特技として役に立つと思う。日本人独特の技ですもんね。 剣に慣れていない人は殺陣をやっても脇が開いていて、剣がコントロールできずに浮いていて剣に振り回されているように見える。 しっかりと剣をコントロールできる技は、ハリウッドに行っても役に立つと思います。
そして馬。乗馬。乗馬と殺陣はやっておいた方がいい。

というわけで今回もまたまた楽しかった『大富豪同心2』。
次のシーズン3も楽しみです。





2023年5月17日水曜日

NHK BSプレミアム『グレースの履歴』全8話・感想



TV Japanにて。オリジナルの放送は2023年3月18日から5月7日まで。

このドラマの感想は2つ。ひとつはポジティブ。もう一つはネガティブ。


その一(ポジティブ)・綺麗な風景

お洒落です。美しい日本の風景の中を走る小さなHonda S800。なんとかわいい。なんとお洒落な。絵になる車。赤を囲むシルバーのフレームや木のハンドルがいい。絵になる風景の中の絵になる車。(勝手な想像だけれど)このHonda S800 の走る風景があまりにもいいので、このドラマはそのシーンが撮りたくて始まった企画ではないかと思ったほど。車の映える日本の風景を見せることがテーマなのか。とにかく綺麗な画面。

それにしてもいい車だHonda S800。小さい。だから高速で走るのはちょっと怖いだろう。それでもいい。本物が見てみたい。この車は1966年1月から1970年5月の間に生産されていたそうです。ホンダはいい車を作る。

第4話は車の過去の話をしていたけれど、監督さんと制作の方々の「車への愛」を感じた。ちょっと「寄り道」的な回。浪漫やね。宇崎竜童さんがいい感じ。渋いね。


そして車以外にもこのドラマには綺麗な場面が多い。私が特に好きだったのは主人公・希久夫(滝藤賢一)の住む阿佐ヶ谷の家。昭和の家。木の壁や柱が暗い色。インテリアも凝っているのに馴染んでいるお洒落な空間。家の前の通りもまるで地方の住宅地かと思うほど緑豊か。それにしても阿佐ヶ谷で庭付きの一戸建て、それにレンガの壁のガレージ付き?…豪邸ですよね。希久夫と美奈子(尾野真千子)はどれほどの大富豪なのだろう?

それから希久夫は丁寧に暮らしている。たった一人の食事なのに卵焼きの夕飯も蕎麦も綺麗にセッティングされている。一人なのにお洒落な食卓。美奈子は希久夫のこういう丁寧さに惹かれたのだろう。


★ネタバレ注意


美奈子は旅先での事故で命を落とす。生前の美奈子の嘘(彼女はフランスに行く前に日本各地を車で旅していた)に気付き、希久夫はその謎解きを始める。美奈子は沢山の謎を残して亡くなった。そして希久夫は妻の愛車グレースに残された履歴(旅の記録)を辿ろうと旅に出る。

そして第2話で美奈子のサーファーの元カレに会う。この二人の会話がおかしい。希久夫は美奈子に(サーファーの元カレよりも)愛されていたと知ってにやにやする。元カレは面白くなさそうだ。女性をめぐる男同士のやりとりが面白い。
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※追記:
第2話の録画を見直した。この回が一番面白い。美奈子をめぐって 希久夫と元カレ(伊藤英明)の会話がすごくおかしい。お互いに嫉妬し合って気まずくなったりする笑。滝藤さんと伊藤さんの二人の「間」がおかしい。それから元カレと彼の奥さんのやり取りも面白い。このノリでず~っとユーモラスなドラマだったら(私には)傑作になっていたと思う。
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…そんな風に、このドラマは希久夫がたった一人で美奈子の残した謎を解きながら、日本各地の綺麗な風景の中をS800 を走らせて静かに旅をするドラマだろうと思っていた。あくまでも希久夫の旅の話で、主人公が様々な謎解きをしながら心を癒していく話だろうと思った(確かにそのような話ではあるけれど)。

大昔に見たフランス映画『白い町で/Dans la ville blanche/In the White City (1983)』を少し思い出した。男が内省しながら一人旅を続ける。そのような話だと思っていた。

第1話:謎の始まり/2話:昔の男/3話:家族の過去/4話;車の過去



その二(ネガティブ)・異様な人物・美奈子

そして違和感を感じ始めたのは5話以降。美奈子の行動と意図に少しずつ違和感。実は2話目の冒頭から美奈子の独白が始まったので妙な感じはしていたのだけれど…このドラマは美奈子も主役なのですね。彼女の強い意志がドラマ全体を覆っている。最初は希久夫のドラマだと思っていたのだけれど、実は希久夫が美奈子に操られている話だったわけで。希久夫が旅で癒されるだけの話ではなかった。

第5話で、30年前に(両親の離婚で)別れた弟・由紀夫(柄本佑)に会う。そして6話で高齢の母・千江(丘みつ子)にも会う。どちらも美奈子が強引に希久夫の家族の問題に踏み込んでいる…と私は感じた。

そして極めつけは第7話の元カノ・草織(広末涼子)との話。それでも7話まではいい。美奈子はただ希久夫の過去に興味があっただけなのかと思った(奥さんが夫の元カノを訪ねるなんてずいぶんぶしつけだとは思うが)。しかし8話、美奈子の行動の種明かしを聞いて驚いた。美奈子が全く理解できなくなった。


美奈子はある日突然草織の前に現れ、自分が重い病気を患っているからもし何かあったら夫の希久夫をよろしく頼むと言う。美奈子は「夫を任せられるのはあなたしかいない。あなたには責任がある」と一方的に草織に詰め寄る。私にはこの場面の美奈子が異様に見えてしまった。なんて一方的で自分勝手な人だろうと驚いた。

私は早織の側から受け手として美奈子の言葉を聞いた。…ある日突然元婚約者の(今の)妻が現れて「夫の面倒を見てくれ」と目の前で号泣する…ものすごく迷惑だと思う。この場面での早織の戸惑いと彼女のリアクションの全てに同意した。早織はすごく嫌そうだ。当然だ。早織の反応を見る限り、脚本家も美奈子の異常さをわかって書いているのだろうと思ったがどうだろう。


美奈子はおかしなことを言っている。
男女が17年間も会っていなければ彼らはもう赤の他人。また会っても昔と同じようにわかり合えるのは稀。価値観も違っているはず。 また草織には草織の人生があるだろう。異国での結婚、子供、離婚…などなど草織にも色んな事があってやっと立ち直ろうとしているのに、ある日赤の他人がやってきて「夫とよりを戻せ、あなたには責任がある」なんて…とんでもない話だ。

美奈子の言葉の端々にはいじわるが見え隠れする。元カノを前に「悔しいけど」と言い「私は夫を愛しているから」「でも私病気だから、夫を任せられるのはあなたしかいないの」と号泣する。離婚して子供を手放した草織の事も知らず、一方的に「私子供が欲しいの」と号泣する。なんて勝手な女だろう。相手の気持ちや都合なんて何も考えていない。


夫婦の関係性はそれぞれだとは思うけれど、この美奈子の「夫を任せられるのはあなたしかいない」の言葉にもぞっとする。彼女は自分がこの世を去った後でさえも夫・希久夫の人生をコントロールしようとしている。私はこの言葉に美奈子の夫に対するねっとりと絡みつくような執着を感じて気持ち悪い。希久夫はそこまで妻にコントロールされて幸せなのか?


最後の第8話では様々な種明かしがあった。亡くなった時美奈子は妊娠していた。彼女が血液の白血病だったことは第1話から明かされていたけれど…そのことも希久夫は美奈子から知らされていなかった。

美奈子、やっぱり変じゃないか? 彼女は白血病のことも不妊治療のことも夫に全て秘密にしていた。病気を黙っていたことに関して「夫は私のために全てを犠牲にするから秘密にしていた」と言うけれど、いやそんな大切なことを夫に黙ってる方がずっと迷惑だと思う。そのような大切なことを全てが終わった後で知る希久夫の気持ちを想像できないのか。彼女の言う「夫への思いやり」も、私にはただ彼女の独りよがりに思えてしまう。

美奈子はそんな風に自分のことはとことん秘密にしていながら、夫の過去の家族問題に土足で踏み込み、挙句の果てに元カノに「夫を頼む」とごねる。それは希久夫にとって余計なお世話ではないのか?。

第5話:弟/6話:母/7話:元カノ/8話:種明かし


男性の書いた脚本なのですよね。この美奈子の絡みつくような愛が、男性は嬉しいのだろうかと不思議になった。美奈子ってすご~く変な人、いやとても独りよがりで自分勝手で迷惑な人だと私は思うのだけれど。

希久夫の次の相手は、希久夫が自由に探せばいい。それも愛だと思う。


役者さん達は皆上手い人ばかり。メインの滝藤賢一さん、尾野真千子さん、広末涼子さんをはじめ、サイドの方々も皆上手い。全員素晴らしい。皆うまいから話にのめり込む。そしてその台詞の意味をじっくりと考えたくなる。希久夫の父親を演じた中原丈雄さんが渋い。いい声。かっこいいわ。

第8話で美奈子に感じた違和感があまりにも大きくて(ショックを受けるレベル)ネガティブ気味な感想になってしまったけれど、ドラマとしては心動かされた。


脚本・監督は源孝志氏。今までにも『漱石悶々』『正月時代劇 ライジング若冲 天才 かく覚醒せり』『忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段』を拝見。このお方のドラマは面白いです。

だからこそこのドラマの美奈子のキャラクター設定が興味深い。源監督は美奈子をはたして「いい女、理想の女」として描いているのか、それとも(私が感じたように)「独りよがりの妙な女」として見ているのか…どちらでしょうね。やっぱり男性にとってはいい女なのかな。


綺麗で丁寧な画面に心動かされ、また一方美奈子の行動が理解できなくて混乱して頭がぐるぐる回ったドラマ。これからも色々と考えてしまいそう。後を引く。



2023年5月9日火曜日

WOWOW 連続ドラマW『ギバーテイカー』全5話



全5話。日本での放送はWOWOWの「連続ドラマW」枠で2023年1月22日から2月19日まで。主演は中谷美紀さん。原作はすえのぶけいこさんの漫画『ライフ2 ギバーテイカー』。


モンスター級の殺人鬼が主人公の女性を追い詰める。女性は強く立ち上がり最後はモンスターと女性の一騎打ち。

近年の私は、ドラマも映画も「怖いもの」「痛いもの」「グロなもの」「辛いもの」はできるだけ避けるようになってきていて、このドラマも最初は大丈夫かと思いながら見ていた。しかしどんどん話に引き込まれ、とにかくこの殺人鬼ルオトがなぜああいう風になったのかが知りたくて最後まで見続けることになった。

演出がいい。俳優さん達の演技もいい。ストーリーは結構見るのが辛いテーマ。しかし「辛い」ということよりも話の続きが知りたくて後半は次の回が待ちきれなかった。すっかりはまった。


★ネタバレ注意


いやぁ人間は怖いなと。貴志ルオト(菊池風磨)はどうしてあんなことになったのだろう。母親がまっとうな愛情で彼を育てなかったから…というのが表向きの理由だろうが、だからといって(一般的に)そのように育てられた子供が皆人を殺めるとは思えず。むしろ(あまり認めたくはないとはいえ)元々彼はどこかおかしかったのではないか…と思わずにはいられなかった。生まれながらのモンスター、サイコパス。理由なきモンスター、それが一番怖い。

貴志ルオト は12歳で殺人を犯し(その前には妹も殺害)、12年間も医療少年院に入って更生し社会に帰ってきた。しかし彼の中の悪意が消えることはなかった。過去の殺人からもう12年も経っているのに、彼はその殺害した被害者の母親・倉澤樹(中谷美紀)を執拗に追い始める。そしてその理由が、彼の当時の先生=倉澤の「よくできました」だとか「先生が飴を取って僕の手にはナイフが残ったから」などの理由だとあった。そこのところがどうも説得力に欠ける。

彼が殺人を犯したのは12歳。子供時代の時間は長い。12歳の少年が12年間も医療少年院に入って指導を受けていたのなら心理的になんらかの変化はあったはずで、なぜ彼はわざわざまた倉澤を追い詰めるのかの理由がわからない。倉澤に対して一方的な恨みがあるわけでもなさそうなのになぜ彼は倉澤にこだわるのか。

もし自分の過去の過ちが母親によるネグレクトからくるものなら、むしろ彼の怒りは母親に向かうものではないか?彼が赤の他人の先生に怒りをぶつけているのなら、結局彼は理由なきモンスターだということになってしまう。


殺人犯とその生い立ちがテーマだろうか。ドラマを見ながら考えさせられた。それにしてもルオトは母親から十分な愛情を受けれていたのなら殺人鬼にはならなかったのか。それとも母親の愛情不足は「単なるきっかけ」なだけで、更生することのないモンスターは存在するという話なのか…とも考えた。


そのようにすっかり内容にはまったということは、ドラマとしてよく出来ているということなのだろう。音楽も演出も怖い。ドキドキさせられた。しかし視覚的に不快な場面は少な目で、そのため私のような小心者もかろうじて見続けることが出来たのはよかった。


最後に、違和感を感じた最終話の倉澤とルオトの対決場面のことを書いておこう。
ルオトと二人きりで対峙する倉澤。両者とも拳銃を相手に向けている。ルオトがうだうだと倉澤を言葉で追い詰め、言葉で長々と説明をしていたが、あれはドラマならではの綺麗ごとだろう。

まず延々と話し続けるルオトを「黙らせなさいよ」と思い、あまりにも説明が長いので「さっさと撃てばいいのに」と思った。私は米国の警察のやり方に同意するわけではないが、ルオトが倉澤に拳銃を向けている限り、倉澤には正当防衛が可能(日本は駄目だそうだ。米国はOK)。アメリカだったら倉澤は迷いもなくルオトを射殺していただろう。それから倉澤はルオトに「裁きを受けなさい」と告げていたけれど、彼は既に3人も殺しているわけで死刑は免れないだろう。もちろん日本のドラマとしては「正しい裁き」がフェアな正しいやり方でそれを見せるべきなのだろうけれど。そういえば狙撃班が二人の様子を見てましたね。彼らはあそこで何もしないのか?

そもそも倉澤が殺人犯に屋上でたった一人で対峙するのが無謀。相手は拳銃を持ってるのに危ない危ない。それからルオトに彼の意図を語らせるのであれば、なんとかして彼の音声をスマホで録音は出来ないものかとも思った。ドラマチックなはずの最後の場面が冗長で嘘っぽく感じたのは残念。


それでもドラマ全体は十分楽しんだ。

気味の悪い殺人モンスター・ルオトを演じた菊池風磨さんは不気味。うまい。倉澤樹の中谷美紀さんは流石。彼女は日本を代表する女優さん。ルオトの母親の斉藤由貴さんも怖い。ルオトに利用される馬場ふみかさんも追い詰められた表情がうまい。見ていて辛い。ベーカリーの主人の吉田ウーロン太さんはイヤな野郎が最低。うまい。皆いい。

というわけで面白かった。見てよかったです。
全5話で終わったのもちょうどいい長さだと思う。
WOWOWのドラマはいいですね。これからも期待してます。



2023年5月1日月曜日

NHK NHK BSプレミアム「BS時代劇」『大富豪同心』全10話・感想



2019年に放送されたNHKのドラマ『大富豪同心』が、TV JAPANでは今年の1月から放送されている。現在『大富豪同心2』が放送中なのだが、まずはシーズン1の感想を書いておこう。

日本での放送は、NHK BSプレミアム「BS時代劇」枠にて2019年5月10日から7月12日まで。

私が放送に気付いて録画を始めたのは2話「鬼姫の初恋!」から。初回は見逃した。


ドラマを見始めたきっかけは、2話の溝口左門/山口馬木也さん(剣の師匠で美鈴の父親)の殺陣。

山口馬木也さんの殺陣の上手さに気付いたのは、2020年の『麒麟がくる』の桶狭間の戦いの回。とにかく山口さんの殺陣はかっこいい。力強く綺麗な殺陣。本物だなと思った。それで彼の名前を覚えていて、機会があればまた山口さんの殺陣が見たいものだと思っていた。

『大富豪同心』を見始めたら、たまたま最初に見た2話で山口さんの殺陣が見れたので「これはいい」と録画予約。…その後は残念ながら彼の殺陣のシーンはなかったのだけれど、それ以上にこのドラマの全体の雰囲気や魅力的な人物達を見るのが楽しくなってすっかりドラマのファンになってしまった。ほのぼの。いいドラマ。


主人公は江戸一番の札差・三国屋の孫・八巻卯之吉(中村隼人)。彼はお金持ちのぼんぼんの遊び人でお人よし(過去には医学を学んだらしい)、しかしあまりに放蕩がすぎるからと祖父から南町奉行所の同心に就職させられる。その卯之吉が事件を解決していくドラマ。

このドラマは癒しです。登場人物が皆いい人。もちろん毎回(殺人を含む)事件があるので、問題を起こす人々は悪人なのだけれど、その悪人への裁きも毎回綺麗に収まる。時代劇なのにほとんど人が斬られることもない…多くは峰打ち。全体にほのぼのとしていつもいい気持ちで見終わる。


そのほのぼのとした雰囲気の理由は主人公の八巻卯之吉/中村隼人さんのキャラ。かわいい。おだやか。ユーモラス。彼の口調がいかにも優しい穏やかなお坊ちゃん風で癒し。見ている私も「いいものだねぇ~」とあの口調で感想を言いたくなる。

彼の古風な恋の相手が溝口美鈴(新川優愛)。かわいい。新川さんは綺麗な女優さん。2話で着ていたオレンジ色の着物も綺麗だったけれど、(卯之吉の好む)若武者の格好がまた凛々しくていい。彼女はほとんどノーメイクに見える薄化粧なのに本当に綺麗。
2話では「鬼姫の初恋!」のタイトル通り、彼女が卯之吉に惹かれる回でしたが、彼女の恋の行方がドラマのサブテーマでしょうか。この卯之吉と美鈴さんの関係がウブで古風でいい。美鈴さんは卯之吉のことが一途に好き。それがかわいい。それなのに卯之吉は彼女の気持ちを素直に受け入れない。二人がなかなか上手くいかないところがまたドラマとしてじわじわと楽しい。


主な登場人物達もいい人ばかり。

卯之吉の恋の相手には美鈴さん。卯之吉の遊び相手のお姉さんには深川一の芸者・菊野(稲森いずみ)。美鈴さんに思いを寄せる大名家の御曹司・梅本源之丞(石黒英雄)。卯之吉の身の回りの世話をする銀八(石井正則)…「~でげすねぇ」という彼の言葉が昭和の時代劇風でいい。なぜか卯之吉を敬愛する江戸の侠客・荒海ノ三右衛門(渡辺いっけい)。卯之吉を警護する凄腕剣豪の浪人・水谷弥五郎(村田雄浩)とそのボーイフレンドの女方役者・由利之丞(柳下大)。卯之吉の先輩・南町奉行所の筆頭同心・村田銕三郎(池内博之)。卯之吉の上司・内与力の沢田彦太郎(小沢仁志)。そして卯之吉の祖父・三国屋徳右衛門(竜雷太)。

彼らを中心に、毎回ほぼ1話ごとに事件が解決されていく。
卯之吉の人のよさ。心地よい人物たちの関係。全体にほのぼのと癒しです。ドラマ最後のダンスも楽しい。


私は普段はフィクションの時代劇はほとんど見ないのだけれど、このドラマは馴染みの人物達を見守る楽しさにはまった。中村隼人さんは歌舞伎役者さんで着物での身のこなしが美しい。上品で穏やかでおっとりと魅力的。それにかわいい。彼を見るのが毎回癒し。

というわけで今『大富豪同心2』を見続けてます。また見終わったら感想を書こう。



2023年3月29日水曜日

NHK 夜ドラ『超人間要塞ヒロシ戦記』全20話・感想



TV Japan にて。1話15分。日本での初回放送は2023年2月13日から3月16日まで 全20回


このドラマはまぁなんつぅか荒唐無稽なファンタジーでしょうかね。面白かったです。荒唐無稽と言えば先日もNHKのドラマ『我らがパラダイス』のことも荒唐無稽だ、ありえない話だと感想を書いたばかりなのだけれど、この一見SF風ファンタジー系ドラマはむしろ「荒唐無稽さ」がその魅力。

SFと言えば…そういえば少し前(ここでも感想を書いた)NHK『趣味どきっ!』の番組内で、生物学者の福岡伸一さんが「SFの特徴は奇想天外なありえないことを物語として作る時、魔法を使ってはいけない。「科学技術というものをもとに物語を作る」という論理構造がある」と仰っていた。それを思えば、この『超人間要塞ヒロシ戦記』はおそらく正しいサイエンス・フィクションとは言えない…科学技術をもとに物語をつくられたものではなさそうだ。


珍妙な話なので、見ながらツッコミどころを数えてニヤニヤしながら見るドラマなのに、ドラマの内容そのものはコメディではない。意図的に笑わせるコント的な脚本でもない。大変真面目なドラマ。有名な俳優さん達がニコリともせずに「真面目なSF風ファンタジー」を神妙に演じていらっしゃる。それがおかしい。それを楽しむドラマ。たぶん一度もコメディ調の場面はなかったと思うけれど…どうだったかな。

しかしSFとしてのツッコミどころは満載。疑問を数え始めたらキリがない。

ヒロシは金属製なのか?電気エネルギーで動いてるんだっけ?お風呂に入るとエネルギーがチャージされるのはなぜ?恋心エネルギーでまたチャージされるのもなぜ?なぜ人間のご飯が食べられるの?その食べ物はどこに消えるのだろう?塩分で錆びないのか?要塞ヒロシの中の小さい人々(スカベリア姫国の国民)の人口は何人だっけ?百単位?千単位?(←最初は真面目に見ていなかったので聞いていなかった)そしてヒロシ内に時々出てくる空のある広場はどこ?街はどこ?頭の上?操縦席で見えている映像は左右の目のカメラがとらえた映像を合成しているものだろうか?操縦席の下ではクルーの二人が自転車を漕いでヒロシを動かしていたようだけれど笑それでヒロシの全身が動かせるのか?あの窓のある独房はヒロシの身体の中のどこにあるのだろう?時々ヒロシの目が紫色に変わっていたけれどあれは波動砲でも出てくるのか?最後の赤ちゃんはどうした?笑笑笑笑


そういえば私はたまたまこのドラマと同じ設定の米映画を去年の年末に見ていた。アメリカの映画『デイブは宇宙船/Meet Dave (2008)』。テレビでやっていたので録画して見た。すごく面白かった。笑いのツボに効く。デイブミンチャンで大笑い。設定はこの『ヒロシ』と同じ。やっぱり荒唐無稽。好きですねこういう話。


このドラマに興味を持ったきっかけは、テレビの録画機に出た英語タイトルが『War Records of Super Human Fortress HIROSHI』だったから。Super Human Fortress HIROSHI って何?SFゴコロをすごくそそる笑…というわけで録画機を予約。ドラマを見始めたら(前述のように)SFというよりゆるいSF風ファンタジーだとわかったのだけれど、結局1回15分でお気楽にちょこちょこっと毎日気負わずに見れて、見続けるうちにうまくノセられて最後まで見た。面白かったですよ。そうか…Super Human Fortress HIROSHI って「超人間要塞ヒロシ」なのか。直訳だ。英語名はもっと不思議。強そう。


いいっすね。ツッコミを入れながら見るのが楽しかった。お若い俳優さん達が多い中、近藤芳正さんや吹越満さん斎藤工さん大東駿介さんが出ていらして、おかしな設定の役を真剣に演じていらっしゃるのがまた楽しい。

そしてヒロシを演じた豆原一成さんが絶妙にサンダーバードの人形風でうまい。うまいうまい。人間とロボットの中間というのか…あのほんの少しだけカクカクする動きも絶妙。うまいもんだねぇ…と感心した。お肌もつるつるで人形っぽい。要塞ヒロシの観察も楽しかったです。


ヒロシの動きのうまさに感心し、ヒロシとしずかちゃん(山之内すず)のやりとりにほのぼのし、「この話は一体どうなっていくのだろう?」といちいち心配し、またヒロシの中の人々は実際どれぐらいの大きさなのだろう(1センチぐらい?)と考えながら、まぁ色々とハラハラドキドキして面白かったです。

病院に連れていかれてバレないはずがないぞ笑。心配したわ。そんなハラハラドキドキをどんな風につじつまを合わせ続けるのかを最後まで見届けたいと思いながら最後まで見て完走しました。楽しかったです。最後の子供はどうしたんだろうね笑?不思議ね。

…え…今知った。ヒロシの豆原一成さんは、美麗ボーイバンド/アイドル「JO1」のメンバーだったのですねほぉおおおおおおぉびっくりしたわ。だから身体の動きが上手なのか。才能あふれるお方なのね。今「JO1」のMVをYouTubeで見てきたわ。美麗。すごいねぇ

追記
今最終話をもう1回見てきた。スカベリア姫国の国民は6,000万人と言ってますね。へぇえ…1センチよりもっと小さいかな。



2023年3月14日火曜日

NHK BSプレミアム『我らがパラダイス』全10話・感想



TV Japanにて。日本での放送は2023年1月8日から3月12日まで。NHK BSプレミアム。全10話。

原作 林真理子さん。日本の高齢化社会をテーマにした小説とそのドラマ。老人介護のテーマをコメディ調で描く…と書いていいものだろうか。



★ネタバレ注意


俳優さん達は皆うまい方々。だからドラマを見続けた。それぞれの回の個別のストーリーにもそれぞれ考えさせられる内容はある。しかしこのドラマのメインテーマ「とりかえ」…があまりにも荒唐無稽。でたらめですね。ああいうことは、実際にはまず無理。このドラマを心から楽しめるかどうかは、あの「とりかえ」のアイデアがストーリーの要として受け入れられるかどうか。

私は「これは現実的ではないから、たぶんファンタジー系の話と見ればいいか」と頭を切り替えた。高級高齢者施設のセッティングにしても、「とりかえ」の話にしても、真面目に現実の高齢者社会を扱ったドラマではないのだろうと思った。全体にあまり現実味がないから、実は深刻な状況もあまり重苦しくならずにコメディ調で描ける…そのような軽いドラマだと見た。

この「とりかえ」が犯罪であることや、(せめてフィクションとして受け入れたとしても)不快だと感じるならもうこのドラマを楽しむことはできない。あくまでもこれはファンタジー。むしろ介護に関わらない若い世代なら現実味のないフィクションとしてOKなのかも。


メインのテーマ「とりかえ」以外の話は考えさせられる内容もあった。それらがよかったのも最後まで見続けた理由。

特に細川邦子(堀内敬子)の話は深刻。認知症の始まった父親を心配する邦子。その兄と兄嫁は父の財産を受け取りながらも父の世話を拒否、結果邦子は追い詰められる。そこから「とりかえ」に関わることになる。

「とりかえ」のアイデアを思いついたのは田代朝子(木村佳乃)。

そしてシングルの丹羽さつき(高岡早紀)。彼女は自分が勤める高級高齢者施設の入居者にプロポーズされる。…さてこのさつきの結婚話に現実味があるのかどうかはまた別の話。誰かに愛されてプロポーズされるのはいいけれど年齢差の問題はどうしても避けがたい。あの立場でさつきがYESを言うことが信じられないのは私だけではないと思う。


最終回で「とりかえ」られていた裕福な老女が亡くなる。その後の雑さも気になる。そもそも高齢者をお世話するナースでありながら朝子はその可能性を事前に考えられなかったのか?そして施設のマネージャーが世間体を優先したことにより、その後その「犯罪」が明るみに出ることもない。そこもますますファンタジー調。現実味はない。

最後に6回の医療施設に老人たちが集まって騒ぐのも、なぜそうなったのか説明不足。そしてその後彼らはどうなったのか?あの老人達は皆施設を出たのだろうか?まさか。 そして最後は、土地持ちの癌患者の医者岡田恭太郎(渡辺正行)が「みんなで集まれるといいね」と夢だけを朝子に語ってドラマが終わってしまった。

雑な終わり方。何も解決していないし、邦子の父親のその後や、朝子の母のその後、そして高級高齢者施設を出たさつきと高齢の夫・遠藤仁志(油井昌由樹)はどうなるのか。さつきは母親も高齢者で、いずれ母親のお世話も必要になってくると考えれば、シングルのさつきはいったいどうなる。そのあたり…メインの人物たちのその後がほとんど描かれていないのも中途半端。

結局、深刻な問題をコメディ調に描くだけで何の結末にも至らないまま突然終わってしまった印象。驚きでもあり残念でもあり。


テーマが大きすぎるのですよね。邦子の家の問題はひとつのドラマとしても成り立つようなものだし、さつきの高齢者との結婚ももっと納得のできる描き方もあっただろう。朝子の過去の不倫も不要。なんだか…気持ちのいい落としどころがほとんどないドラマだと感じた。

俳優さん達は素晴らしいのに話が雑でもったいない。

高齢化社会のテーマそのものは今日本が一番考えていくべき話で、もっと丁寧に描けばいいのにと思った。笑いごとにするようなものでもないと思う。…とは言え個々のエピソードでは確かに色々と考えさせられたけれど。

俳優さんは皆うまい方々。特に丹羽さつきの母ヨシ子を演じた白川和子さんの演技が素晴らしい。夫を亡くし、悲しみと寂しさと疲労で弱々しくなっている高齢の女性がものすごくリアル。あまりにも疲れているから娘に問われても「そうだっけ?」と弱々しく答える様子がその状況にいる高齢の女性そのものでした。


林真理子さんがこの話で焦点を当てたかったのは介護する側の視点なのでしょう。介護する側…今50代、60代の(主に)女性たちが社会の中でどのように追い詰められているのかを描こうとしたのだろうと思う。

その解決策があまりにも荒唐無稽なので、何の参考にもならないファンタジーになってしまったけれど、この問題はもっと取り上げられてもいい大切な問題だと思う。


2023年3月7日火曜日

NHK Eテレ『東京の雪男』全5話・感想



TV Japanにて。日本での放送は2023年2月4日から3月4日まで。全5話。 


山から下りてきて街で暮らしている雪男・山川ユキオ(磯村勇斗)と、千代田区役所の獣害対策課に務める女性・馬場翠(北香那)。その二人が恋に落ちる。異人種間の恋?

ほのぼのとしたファンタジー系ドラマだと思ったら、様々な問題提起のドラマだったようだ。最初からそのつもりで見ていなかったので、その「お題」が全部でいくつあったのかわからないのだけれど、私が気づいたのは…外国人の人権、環境問題(温暖化)、同性カップルの結婚。

最後の方で出てきた同性カップル(または様々なケースでの)結婚について(=ドラマ内では雪男・ユキオと人間・翠の結婚となっていた)の話は、なぜ「法律上の結婚」が当事者たちにとって必要なのか…その具体的な内容(理由)が台詞の中に出てきた。いいことです。こういうことはもっと説明が必要。

ああそうなのか…と回が進むごとに、このドラマが問題提起ドラマだと少しずつ気付いていったのだが、ドラマそのものが全体にスローペースでほのぼのとしていい雰囲気で、キャラクター達もそれぞれかわいかったり微笑ましくそれが楽しかった。演じる役者さん達も皆自然な演技のうまい方々でそれが心地いい。

さてその問題提起の内容は心に残ったのか…どうだろう。私は個人的には、雪男と翠ちゃんを見ていて「この二人はうまくいけばいいねぇ」などとのほほんと見ていたので、最後の回で「結婚」の真面目な話が出てきて少し驚いたほど。

外国人の人権や同性愛者の結婚に関して、それを具体的に外国人や同性愛者の登場するドラマにするのではなく、「雪男」というフィクションの存在を登場させてオブラートに包む表現をしていたのだと思うが、実はそのせいで(私個人的には)焦点が少しぼやけたかなという気もした。

始めはゆるいSF的な(人ではない)雪男と女の子のファンタジーの恋を見ていたつもりだったので、問題提起型のドラマだったと後から気付き、それなら最初からそのつもりで見ていればよかったと少し思った。 まぁそうでもないのかな。全体にいい雰囲気のドラマなのですよね。摩訶不思議で面白かった。

雪男の磯村勇斗さんはお顔は童顔なのに身体ががっちり大きくてかっこいい俳優さん。気負わない自然な演技。いい雰囲気。そして馬場翠の北香那さんは「鎌倉殿の13人」で公暁の母親つつじを演じていらした…彼女の公暁を止めようと説得する様子が印象に残っていた。うまい女優さん。そして周りを固める俳優さん達も皆達者な方々。普通の町の普通の日常の雰囲気がとても自然。ほのぼの。


それにしても雪男とはどういう存在なのだろう。動物と話しができるのはちょっと羨ましいが「息を吹きかけるとうどんが凍る」ということはやっぱり人間ではないのか。彼とちゅーをしたら唇が凍るの?危ない笑。肌も冷たいのかな。寒いね。


2023年3月6日月曜日

NHK 趣味どきっ!『読書の森へ』本の道しるべ・第2回 福岡伸一



NHKの 趣味どきっ!…の『読書の森へ』本の道しるべ シリーズ。去年の12月から今年1月にかけての放送。録画を放送の後すぐに見たのだけれど、とても面白かったのでメモしようと録画を残していた。心に残ったものを記録しておく。


第2回 
生物学者 福岡伸一さん
日本での初回放送日: 2022年12月13日
TV Japanにて


福岡伸一(1959年9月29日 - )
日本の生物学者。青山学院大学教授。ロックフェラー大学客員教授。専攻は分子生物学。農学博士(京都大学、1987年)。京大農学部食品工学科卒。分子生物学を研究し、遺伝子関連で積極的に発言する。著書は、生命の根源を問う『生物と無生物のあいだ』(2006年)のほか、『動的平衡』(2009年)などがある。わかりやすく書いた科学エッセイも多い。


------NHKの番組で時々お見かけした福岡さん。このインタビューで、福岡さんのお好きな分野が私の興味のある分野と重なると思いながら拝見。好きな分野だからお話しも楽しかった。それから先日感想を書いたヤマザキマリさん、鹿島茂さんのインタビューの内容とも少し重なる部分があると思った。面白い。


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原点

・昆虫図鑑
子供の頃から虫が好き。今も自然科学の専門古書店に通う。蝶が専門。
-----虫の好きな少年。ヤマザキマリさんも虫愛ずる少女でしたね

古書店のお宝

・アルシド・ドルビニ
/Alcide Charles Victor Marie Dessalines d'Orbigny 
『万有博物辞典』(1849年)

芸術品のような博物図鑑 全16巻。現在は古書店で120万円するそうだ。

大学の研究室で手に取る本は 思想の基本

・クリフォード・ドーベル/Clifford Dobell 
『レーベンフックの手紙/Antony Van Leeuwenhoek and His Little Animals』天児和暢訳
レーベンフックの(自作の顕微鏡による)細菌を含めた微生物の観察に関する手紙

・石川良輔 『うちのカメ』
カメの日常生活を綴った観察日記。人間と他の生物との理想の関係
-----これは読みたい!

昆虫を調べることで、世界の成り立ちを知ろうとした

・原色図鑑 世界の蝶 中原和郎/黒沢良彦
蝶の原寸の図鑑

本は未知の世界の扉、入口

図書館に行けば、本の背表紙が呼んでくる


少年時代の愛読書

・ヒュー・ロフティング/Hugh John Lofting
『ドリトル先生/Doctor Dolittle』シリーズ 
全12巻 井伏鱒二訳 ←訳者!山椒魚!びっくり!
物語の面白さ、ストーリー・テリングの楽しさを教えてくれた

ドリトル先生の助手になる少年トミー・スタビンズ君に憧れる

ドリトル先生はスタビンズ君を子ども扱いせずに「Mr.スタビンズ」と彼を呼ぶ。先生は他の大人のように命令したり抑圧することはない。スタビンズ君が求めれば答えてくれるし、教えてくれる。スタビンズ君を公平に自分と対等の人間として扱ってくれる。

後に福岡さんは『ドリトル先生航海記』の翻訳をなさった。
楽しかった。翻訳は究極の精読。


とある一節から…
旅から帰ってきた先生の荷物の少なさに驚いたスタビンズ君に先生は答える
「旅に沢山の荷物など本当は必要ない。そんなものはかえって邪魔になるだけだよ。人の一生は短い。荷物なんかに煩わされている暇などない。…いや、実際、人生に荷物など必要ないんだよ、スタビンズ君」
福岡さんが笑う…これだけ(本を)抱えてしまったので身につまされてます。
-----私も同じです笑。プチ・コレクター気質で物を持ちすぎている。反省。


科学の世界と出会った本

・『SF名作シリーズ』(1967年)全26巻 岩波書店
SFの特徴は奇想天外なありえないことを物語として作る時、魔法を使ってはいけない。「科学技術というものをもとに物語を作る」という論理構造がある。そこが私は科学少年であったので、そういうものを使った物語がつくられるということにすごく共感した。
挿絵も豪華 --- 横尾忠則 和田誠 田名網敬一 真鍋博

-----私も。若い頃にSFをよく読んでいた理由は多分そこなのだろうと思った。いかに(その時代の)人間の知恵を使って「嘘」を本物らしく描くのか。その創造性/クリエイティビティにドキドキする。私に科学の知識がなくても「嘘」が本物らしく描かれていれば楽しい。
この岩波のSF名作シリーズは面白そうだ。検索したら全26巻のタイトルも出てきた。あとで調べよう。
…余談だけれど、そういえば私は人と人の関係=事件を扱ったミステリーものにはハマらなかった。学生の頃にアガサ・クリスティをいくつか呼んですぐに飽きた。人と人のゴタゴタにあまり興味がないからだろうと思う。



その後福岡さんは大学で分子生物学を専攻
大学院を経て1988年に28歳でアメリカへ留学
研究三昧の日々 結果が出ない焦り 人間関係の難しさに苦しんだ

競争に負けることの方が多い。研究も95%ぐらいは思ったようにいかない。失望の中からどうやって希望を見つけてくるかが大事になってくる。その答えを小説に求める。
-----ここ。ここがヤマザキマリさんの「読書を糧に」の話と重なると思ったところ。問題の解決を本に求める


失望の中で導いてくれた本

・松本清張「石の骨」短編集『張り込み』所収
アカデミズムに受け入れられず姿を消す学者を描いた作品。歴史上の大発見をしながらも、認められなかった実在の考古学者をモデルに。

勝者の物語ではなく 敗者の物語。成功の物語はつまらない。負けてしまった者の思いの方にこそ、本当のことがある。そこに開かれた問い。そこから考えることがたくさんある。

敗者の物語から見えてきたことは?

敗者の悲哀を共有するというのは、世界に対して「謙虚」になることであって「謙虚さ」というのは「自己懐疑」でもある。「自分自身がこれでいいのだろうか?自分が言っていることは正しいのだろうか?」でも謙虚さとか自己懐疑ということが、実は「知的」であるということの一番大事なことだと思う。自分を疑えないのは最も知的でない。自分が無謬(むびゅう:理論や判断にまちがいがないこと)であると考えるのは最も知的ではない。そういうことを物語にしてくれている小説家は松本清張。

研究者としてのあり方を小説が気付かせてくれた。

-----Constructive self-criticism/建設的な自己批判でしょうか。このことを私は英国で学んだ。30代の半ばに美大にいきなおそうと大学の予備科/基礎課程(foundation course)に通って学んだ。その時そこの先生達に(物を作るにあたって)Constructive self-criticismを決して忘れるなと何度もうんざりするほど言われた。自分の作品の凡庸さは自分で見つけろということだ。
 そのような「英国式教育」の影響は、その後英国人の気質にも感じた。新聞の歯に衣着せぬ政治家への批判、世情や自国のあり方への批判…「己を信じすぎてはいけない。自信を持ちすぎるな」…それが英国の知性と思慮深さなのだろうと受け取った(個人的意見)。 
ここで福岡さんが仰っている「自分を疑えないのは最も知的でない」…自己の間違いを見つけ、それを正しながら次に進む…ことは人が生きていく上でも大切なことだと思う。


読書の新たな楽しみ方(コロナ禍の日々の中で)

かつて自分が読んで素晴らしいなと思った本を再読すると、より豊かな読書になることに気付いた。

・丸谷才一『笹まくら』
緻密な構造をもって作られた構築的小説。戦中、戦後と時代を行きつ戻りつしながら主人公の人生を描いた。入り組んだ小説。笹まくら年表を作ってみた。作家の創作を追体験しながら読むことができた。面白さ、緻密さを再発見できた。じっくりと読む楽しみ。


これからどんな読書をしていきたいですか?

現代社会では、すごくファストを求められていて、とにかくあらすじを早く知りたい。それがビジネスにも繋がるみたいな風潮がある。私はそれに反対したい。小説、本の面白さっていうのは、あらすじとか結末とか、プロットじゃないわけです。そのひとつひとつのプロセスが大事だし、それをどう書いているかっていう、パズルの一つ一つの結びつきが大事なんですね。だからやはり読書は、ゆっくり読まなきゃいけないし、じっくり味わうべきものだと思う。

-----このお言葉は、このシリーズ第7回の鹿島茂さんの「大長編を読む」のお言葉にも通じますね。とにかく全部読む。読書はそのストーリー/プロット以外にも楽しみがある。読み進むプロセスが大切だと。
また「じっくりと読む」ということは、ヤマザキマリさんの…本の難しい箇所も「飛ばさないで立ち止まって反芻してみたり」という読み方にもつながると思う。
…読書の楽しみ方を言葉にしてくださることで、私も刺激を受けました。たしかに。たしかにそのとおり。読書の楽しみ…なんとかしなければ。元々本は好きな人間だったのに、ここのところ何年もまともに本を読んでいない。大変な問題。
そういえば動物ものが好きだったのに『ドリトル先生』は読んでいなかった。この番組を見てさっそく『ドリトル先生』をkindleで購入。読み始めた。




2023年3月2日木曜日

NHK 趣味どきっ!『読書の森へ』本の道しるべ・第3回 ヤマザキマリ



NHKの 趣味どきっ!…の『読書の森へ』本の道しるべ シリーズ。去年の12月から今年1月にかけての放送。録画を放送の後すぐに見たのだけれど、とても面白かったのでメモしようと録画を残していた。心に残ったものを記録しておく。


第3回 
漫画家、随筆家、画家 ヤマザキマリさん
日本での初回放送日: 2022年12月20日
TV Japanにて


ヤマザキマリ(1967年4月20日 - )
日本の漫画家、随筆家、画家。東京造形大学客員教授。十代からイタリアに渡り、フィレンツェの国立フィレンツェ・アカデミア美術学院(イタリア語版)で美術史と油絵を学ぶ。その後、2002年以降、シリアのダマスカスや北イタリアにでの暮らしを経てポルトガルのリスボンに移住。米国シカゴを経て2013年よりイタリア在住。2010年に『テルマエ・ロマエ』でマンガ大賞受賞。その他受賞多数。


------ヤマザキさんは十代の頃からイタリアに留学なさって、そのまま欧州+中東+米国で暮らしていらしたそうだ。エネルギーに溢れたお方なのだろうと思います。彼女が「どうやって10代から海外でやってこれたのか。辛く困った時にどうやってその状況を生き抜いてきたのか?」その答えが少し見えた気がした。


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・藤子不二雄 『21エモン』
様々な宇宙人が旅館にやってくる話。

・オラフ・ステープルトン/olaf stapleton
(1886年5月10日 - 1950年9月6日)は、イギリスの小説家、哲学者。
 『スターメイカー/Star Maker』1937年
 『オッド・ジョン/Star Maker』1935年


子供の頃は昆虫図鑑を見て昆虫採集
「虫は意志の疎通ができない。通じ合えない。価値観の共有ができないと一緒にいられないという概念から逸脱する。「海外で緊張しないの?」などと聞かれるが、虫と一緒にいると、自分に苦手な人がいてもそんなものかなと思う。手に負えない状況になってもあまり動じなくなる。昆虫が教えてくれることはいっぱいある」

------面白い。虫との交流を考えたことはなかったけれど。確かに。世の中には全く通じ合えない人というのがいる。それは私も日本を出てから学んだ。人は人、自分は自分、人と自分は違っていてあたりまえ、それでもOK…という考え方になっていく。


子供の頃、絵描きになりたいと思った
母から、画家は食べていくのが大変だからと…

・フランダースの犬
主人公の要領が悪い。行動力がないが故にああいう顛末になった。納得がいかない。

・アラビアンナイト
ずるがしこい。生きるための駆け引き。中東では「ずるい」は美徳。日本は「清く正しく信じること」が美徳。しかし中東では「人を信じて、裏切られても、泣いても、信じて騙されたお前が悪い」。生き延びる上で、疑う気持ちを端折ってはいけない。それは生きる知恵。「アラビアンナイト」にはそんな考え方がある。

------これはそう。よくわかる。「騙されない知恵を自分が持たねばならない、騙した相手を恨むよりも騙されないように自分を訓練しろ」…それを私もロンドンにいた頃に学んだと思う。相手の好意や親切心だけを頼りにしない。安心しすぎない。生きるために必要なこと。どこに行ってもそうだと思う。

・ニルスの不思議な旅
------これも冒険の話ですね。子供の頃に読んだ。


イタリアに留学して

日本の文学で何が好きか?と問われた。絵を描くためには様々なコンテンツが自分の中になければならないと説教された。まず本を読めと。

・安部公房『砂の女』
砂丘に閉じ込められる。「逃げられなかったから、逃げなかった。…おそらくそれだけのことなのだ」「夢も 絶望も 恥も 外聞も その砂に埋もれて 消えてしまった」。

------うわ~これは…そう。そうそう。この本は私は40歳を過ぎてから読んだ。この話は16、17歳ぐらいの高校生ぐらいの頃の私の心の状態だと、当時を振り返りながら読んだ。状況から抜け出せない苦しみ。どうやったら逃げ出せるのか。逃げられるのか。その描写がものすごい。恐ろしい話。だからすごい。


絵を描くしかない。苦しい。本を読むこと。

・安部公房
・ガルシア・マルケス 『百年の孤独』
・三島由紀夫 『豊穣の海』


苦しかったイタリアでの日々。本を読むことで満たされ支えられ、次の持続力になっていった。本は栄養。ガソリン。生き延びるための。ご飯より大事。


コロナ禍で
世界の在り方を感じた本

・エドガール・モラン/Edgar Morin
(1921年7月8日 - )フランス・パリ生まれの哲学者 社会学者
・『祖国地球 - 人類はどこへ向かうのか』
これから私達が学ぶべきなのは、地球と言う惑星の人間として、存在し、生き、分かち、伝え、交感すること。
・『百歳の哲学者が語る人生のこと』
・『自伝: わが雑食的知の冒険』
・『意識ある科学』
・『失われた範列: 人間の自然性』


モランは、世界が西洋文明至上主義な広がりをしていることに反発心を持っている。それに共感した。モランは疑念 疑問 問いかけ それが常に絶え間ない人 それが知性。

今の世の中は知性や教養に対して省エネ。失敗がイヤだ 間違えたらイヤだと 精神性に対して非常に省エネで生きている人が多い。モランは逆。燃費が悪いほどの出力で、様々なことを吸収している。100歳超えてまだ元気。


本を読むとは

活字でないとトレーニングされない筋肉がある。漫画でも映画でもだめ。活字で精神力の筋力を鍛える。「これはどういう意味だろう」というのを飛ばさないで立ち止まって反芻してみたりするとほぐれてくる。そして楽になる。その後に何が起きたとしても。(後から)ああこれ、これってああいうことじゃん…と解るようになってくる。些末なことで悩まなくてすむ。本をいっぱい読んでいれば。
 


------ヤマザキさんは知的なお方。元々頭のいい方が、若い頃から外国の異文化の中で揉まれて生きてこられた…だからこそ、その長い経験から構築された彼女の生きる哲学は「深い」「現実的」。様々なことを経験なさっているからこその彼女の「考え方」が興味深いと思いながら拝見した。


2023年2月28日火曜日

NHK 趣味どきっ!『読書の森へ』本の道しるべ・第7回 鹿島茂


NHKの 趣味どきっ!…の『読書の森へ』本の道しるべ シリーズ。去年の12月から今年1月にかけての放送。録画を放送の後すぐに見たのだけれど、とても面白かったのでメモしようと録画を残していた。心に残ったものを記録しておく。


まずは第7回 
フランス文学者 鹿島茂さん
日本での初回放送日: 2023年1月24日
TV Japanにて


鹿島 茂(かしま しげる、1949年11月30日 - )
日本のフランス文学者・評論家。専門は19世紀フランス文学。元明治大学国際日本学部教授。オノレ・ド・バルザック、エミール・ゾラ、ヴィクトル・ユーゴーらを題材にしたエッセイで知られる。当初はフランス文学の研究翻訳を行っていたが、1990年代に入ると活発な執筆活動を開始し、1991年に『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞受賞、1996年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、2000年『パリ風俗』で読売文学賞をそれぞれ受賞。古書マニア(19世紀フランスの希覯書が主な対象)としても有名。猫好き。映画マニア。2017年7月5日、書評アーカイブWEBサイト”ALL REVIEWS”を開設。(Wikipedia)

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★雑誌マニアである
雑誌は出版された時代を反映している

・La Revue Blanche Editions de la revue Blanche
1889年創刊~1903年 フランスの総合芸術雑誌。当時の有名な作家や芸術家が取り上げられていた。

・Art et decoration (1911)(アール・エ・デコラシオン)
若手アーティスト達の作品を紹介した芸術誌。魚や虫のデザインの壁紙は日本の影響を受けていた。


★苦行としての読書

読書への挑戦①
日本文学全集
中学生時代から、日本文学大全69巻 を5年かけて読破
印象に残っている作家 徳田秋声
全集を配本順に読む。好き嫌いに任せたらまず読まない作家に出会うことが出来た。徳田秋声は自然主義の大家。『仮装人物』は大傑作。いい出会い。様々な作家の本を読んでいくと鑑識眼が養われる。

読者への挑戦②
世界文学全集
自分に強制して読む。それが快感になる。
高校生時代に世界文学全集を読破。

読書への挑戦③
大長編を読む
・マルセル・プルースト『失われた時を求めて』
・平家物語
・ミハイル・ショーロホフ『静かなドン』
ロシア革命に翻弄される人々。数世代に渡る家族の物語。
長編小説(特にその時代を描いた小説)は、その国の様々なことがわかる。小説から得る知識はストーリーの喜びの他にある。退屈な部分も一つの楽しみ。とにかく最後のページまで読む。

修行のような、苦行のような読書。すすめます。本は予測不可能。読んでみないとわからない。


★コレクター人生

●翻訳の仕事からコレクターへ

・ルイ・シュバリエ/Louis Chevalier
『快楽と犯罪のモンマルトル/Montmartre du plaisir et du crime』 河盛好蔵訳

作者が固有名詞に注釈をつけない。翻訳に困る。当時の原資料に当たるしかない。鹿島さんは1984年にパリへ。日本で高額だった古書がフランスなら手に入れやすいことがわかる。

・ルイ・レイボー/Louis Reybaud
『ジェローム・パチュロ社会的地位を求めて/Jérôme Paturot à la recherche d'une position sociale』
(1846)
パリが舞台、青年の人生。

その挿絵はグランヴィル/J. J. Grandville (Jean Ignace Isidore Gerard)(1803 – 1847)
風刺画/動物戯画で知られる。鹿島さんはグランヴィルのコレクターに

Scènes de la vie privée et publique des animaux
『動物の私的・公的生活情景』
2巻
(Scenes of the Private and Public Life of Animals)
a collection of articles, short stories and satirical tales (1841 to 1842)
バルザック/Honoré de Balzacを始めとする作家が寄稿

・タクシル・ドゥロール/Taxile Delord
『もう一つの世界/Un Autre Monde』Paris, Fournier (1844)
ルイス・キャロルや後のシュールレアリズムに影響を与えたと言われる

昔のフランスでは、本は仮綴じの状態で出版社から売られ、それを購入者が装丁屋に持って行って装丁を個人注文する。結果、内容は同じ本でも装丁によって10倍から100倍の値段が違うことも。


★本の未来・未来の本

「(現在は)本が出てもそれが書店に並んでいるのはせいぜい数か月。本は完全に消費財になっている。季節もののモードと同じ。それを過ぎるとほとんど価値がなくなる。(その後)本は出版社の在庫として眠り続ける」


●鹿島さんが作った書評サイト
好きな書評家、読ませる書評

2017年開設。明治以来活字メディアに発表されたすべての書評を閲覧可能にする「書評アーカイブ」の構築を目指すという。好きな書評家、読ませる書評、雑誌や新聞の書評を無料で公開している。検索可。


●本の未来は?

「紙の本はなくなる。それを想定してトリアージ(選択)が行われるだろう。自己表現系以外の本は全部なくなる。特に情報系は。時代の必然だろう。活字本はかつての写本のようになっていく。それは避けがたい…」
 
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ネット上で追加した情報と共にメモ

「紙の本がなくなる」…確かにそうなのかも。もうすでにKindleなどで大量の本がデータになって出てますね。情報系はなくなるとのこと。まだ想像できないけれど、確かに。…歴史上のどこかの時代(例えばローマ時代)の地図などは現在、印刷された本が出ていますけど、あれもいずれgoogle mapとか…ああいうものに入力されていくのか。

これは音楽のメディアにも言えますね。録音された音楽を聴くのは、LPレコード。そしてカセット、CDと変わっていった。そのCDが今、日本以外はほぼ商品としては廃れてしまっている。今音楽を聴くならサブスク、それから配信/ダウンロード、それに無料の動画サイト…などなど。音楽を聴くためにCDを購入する習慣はなくなりつつある。

実は先日ここに文を書いたフランツ・リストの曲…ピアニストのジョルジュ・シフラが録音した曲はどのくらいあるのだろうかと思い、手持ちのCDと動画サイトを調べたのだけれど、何と…「シフラのリスト曲の録音はほぼ全曲YouTubeに上げられている」ことに気付いてしまった。シフラが録音したリストの曲は、全て無料で聴けるということです。すごい時代。

ということは今、(日本以外で)レコードやCDを買うという行為は、ノベルティー的なものを求めること(アイドルグッズを買うのと同じようなもの)以外は、ほとんどないということかもしれません。いずれ本もそうなっていくということか。


それにしても19世紀のフランスの本の話がとても面白かった。グランヴィルのことも初めて知ったし、シュバリエの『快楽と犯罪のモンマルトル』も面白そうだ。 ショーロホフ『静かなドン』はロシア革命好きの旦那Aに教えてあげよう。


2023年1月25日水曜日

NHK BSプレミアム 「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段」






贅沢なドラマ。ものすごく丁寧に作られた作品。今の歌舞伎役者の方が江戸時代の歌舞伎役者を演じるという贅沢さ。そして脇を固めるベテランの上手い役者さんの方々。出演なさっている俳優さん達が皆うまい!!!!セットも豪華。素晴らしい素晴らしい。

あまりに面白かったから1回目を見終わってすぐに2回目を見直し始めた。1回目の最初にぼんやりと見ていた場面も、ストーリーが解ってから見るともっと面白い。本当によくできた質の高いドラマだと思います。


このドラマは第77回文化庁芸術祭大賞(2022年) を受賞したそうです。


日本では元々…2021年12月4日と11日にNHK BSプレミアム・NHK BS4Kで放送されたテレビドラマ。それを2022年12月10日と12月17日に、1話38分×5話に再構成したものが地上波の総合テレビで放送された。私が見たのはその2022年12月ver.。TV Japanで年末に放送された。


主人公は実在の江戸時代の歌舞伎役者中村仲蔵(初代)
元文元年〈1736年〉 - 寛政2年4月23日〈1790年6月5日〉。江戸時代中期の伝説の歌舞伎役者。「名人仲蔵」とよばれた名優。
…このドラマは、裸一貫から這い上がりスターの座を掴み取った歌舞伎役者の初代 中村仲蔵の出世物語を歌舞伎演目『仮名手本忠臣蔵』を軸にドラマ化したもの。脚本・演出は源孝志さん、主演は六代目 中村勘九郎さん。

実在の人物だったのですね。ドラマを見終わってから調べて知った。


六代目 中村勘九郎さんが江戸時代の歌舞伎役者をなさる。その様子がとにかくかっこよくて見惚れた。あ~やっぱり歌舞伎のお方は歌舞伎をなさるプロ(あたりまえだけれども)…しかしまぁなんとかっこいいのだろうと。ほれぼれ。は~やっぱりすごいんだねぇ。今の歌舞伎役者のお方が江戸時代の歌舞伎役者をなさる説得力。そのことにまず感動した。だって勘九郎さんが腕を構えて見得を切る様子が本当に決まっている…ぁあこれが東洲斎写楽の役者絵のリアルな再現…江戸時代の歌舞伎の再現なのだわ…ととても感心して見入りました。

そんな写楽の時代の歌舞伎の世界の再現が楽しい楽しい。そして役者さん達は皆さんプロ。プロ中のプロの方ばかり。これはすごいドラマだと思いますよ。ほんとほんと。贅沢。


私は日本のテレビを見る機会が(日本に住む場合に比べて)少ないので、中村勘九郎さんと言えば唯一大河ドラマの『いだてん』しか知らなかった。で、その『いだてん』での勘九郎さんはとにかく素っ頓狂で…こんな人、現実にはいないだろう…だって水を被って「ひゃ~っ」と奇声を上げる人なんていませんよねぇ笑。これはお笑いメインのコメディなのかそれとも真面目な大河なのかわからんっ!…という印象だったのですが、


中村仲蔵の中村勘九郎さんは

プロ!役者!


すっごくかっこいい…💕

このドラマの中村仲蔵のキャラクターが信じられる。こういう人がいたんだろうなと思う。子供のように純粋で真面目。芝居が大好きで実力もあるのに、運で一旦は役者を廃業。しかしそこからまた努力して歌舞伎のスーパースターになるお話。それをコミカルなタッチでドラマ化。 

中村勘九郎さん最高でした。ほんと。仲蔵はかわいいし仲蔵が笑えば嬉しくなる。仲蔵が呉服屋の旦那に言い寄られれば大笑い、そして「稲荷町」から再スタートで虐められれば共に泣く。 中村中蔵の名前を持つことの意思表示には勘九郎さん御本人の本気を感じた。『忠臣蔵』の初演の後でお風呂で水を被りながら泣く様子がリアル…ぁあ悲しい。そして認められて堂々と舞台に登場して見得を切る…かっこいい~!!!拍手。

勘九郎さんのお顔と表情は普段はどこかかわいい感じなのに、歌舞伎の化粧をなさると別人のように男臭くごつい大男に見える不思議。すごく華やか。御本人から出るエネルギーも変わる。歌舞伎の魔法なのだろう。すごいです。 勘九郎さんの表情豊かな芝居に説得力…仲蔵は一所懸命。応援したくなる。勘九郎さんが仲蔵のキャラクターにぴったりはまっていて、私もドラマにはまった。

仲蔵の頑張りと成長と成功を見ていい気持ちになった。面白かった。いい話です。それにしても歌舞伎役者さんの見得をアート寄りのカメラワークで撮ると本当にかっこいい。絵のようだ。素敵。見惚れる。


そして他の役者さん達も素晴らしい。仲蔵の奥さん・お岸の上白石萌音さん。なんと芸達者な。彼女は三味線を弾いて長唄を歌う。ものすごくうまい。かわいらしくて魅力的でユーモラス。彼女にも説得力。唸りましたよ。あまりの巧みさに。彼女はやっぱり歌が上手い。いい声。

そして蕎麦屋「十六屋」に間借りするかわら版屋・鵜蔵に吉田鋼太郎さん。この鵜蔵が我ら観客を江戸の歌舞伎へ導いてくれる。江戸の歌舞伎の世界には厳しい階級があることや、芝居小屋の舞台裏の様子を教えてくれる。それが楽しい。どんどん江戸の歌舞伎の世界に引き込まれる。吉田鋼太郎さんの口調も滑らかでノリノリで、鋼太郎さんがこの役を楽しんでいらっしゃるのが伝わってくる。鵜蔵を見るのも毎回楽しかった。

上品な初代市川染五郎の二代目 中村七之助さん。仲蔵との友情がいい。七之助さんと勘九郎さんは御兄弟なのですよね。それがまた贅沢。本物の歌舞伎役者さんの身のこなしが…またすご~いとため息。もっと見たい。 大きなお父さんのような四代目 市川團十郎の市村正親さん。威厳があってかっこいい。 狂言作者の金井三笑の段田安則さんは怖いのになぜかコミカル。 仲蔵の師匠・二代目 中村傳九郎の高嶋政宏さんの4話の本当の涙。 呉服屋の旦那・吉川仁左衛門の谷原章介さんはエロな役がよく似合う笑。 ユーモラスな芝居の神様コン太夫の石橋蓮司さん。 またまたコミカルな中村直團次の笹野高史さん。「稲荷町」のいじわるな中村任三郎の山西惇さんが怖い。 仲蔵の義母の志賀山お俊 若村麻由美さんがかっこいい。 おっと蕎麦屋の女将は名取裕子さんじゃないかお綺麗だ。 そしてかっこいいのにコミカルな謎の侍 藤原竜也さん。 そして初代 尾上菊五郎には二代目 尾上松也さんがいるではないか~後鳥羽上皇! 本当にビッグネームばかり。


そして私が何よりも魅せられたのはあの江戸の芝居小屋、劇場・中村座の建物。あの建物がそれはもう素敵。あんなに小さな場所で歌舞伎が見られたらどんなにいいだろうと想像する。あの時代の芝居小屋はああいう感じだったのでしょうね。いいなぁ。役者さんが近い近い。手を伸ばせば触れそう。そして上の階の楽屋。それから地階の奈落のからくり。面白いですね。見に行きたい。なんて魅力的な場所。ああいうところで江戸時代に逆戻りして歌舞伎を見る…な~んて浪漫。楽しいだろうなぁ。見たいですね。

NHKのネット上のページを見ると美術さんが「映る映らないにかかわらず、濃密に飾りこむ事にこだわりました。演技者のみなさんに本当の江戸時代の中村座にいるような感じでお芝居していただきたかった」とおっしゃっていて…ああすごいな。また録画を見直そうと思う。本当に素晴らしい。


ところでこのドラマは、日本の芝居文化…江戸時代の歌舞伎の世界の再現ですが、もしこのドラマが、シェークスピアを愛するイギリスで(字幕入りで)公開されたら英国の芝居ファンにはどう受け止められるだろうかと思った。あの浮世絵の役者絵の再現…だと面白がってはくれないだろうか。
彼らも16世紀の劇場を再現した「シェイクスピアズ・グローブ」で今も芝居をやっているのですよね。あそこはキャパが1,570人らしいけれど採算は取れているのかな?


このドラマの演出と脚本をなさっているのは源孝志さん。このお方はのドラマは以前2作品見てます。2016年の『スーパープレミアム 漱石悶々 夏目漱石最後の恋 京都祇園の二十九日間』と、2021年の『正月時代劇 ライジング若冲 天才 かく覚醒せり』。両作品ともここで少し感想を書いてますが特に『漱石悶々』は面白かった。宮沢りえさんを前にしてドキドキする豊川悦司さんがおかしかった。そういえばあの劇中の効果音の使い方はこの『忠臣蔵狂詩曲』のものと似ている。コンコン トロロン…と間を埋める和楽器の効果音がすごくおかしい。


なんだか色んな意味ですごく濃くリッチで贅沢なドラマでした。また録画を何度も見直して江戸の歌舞伎役者の様子を堪能したい。

歌舞伎いいなぁ。もし今歌舞伎を見たらきっと面白いだろう。中村勘九郎さんや七之助さん 尾上松也さんに、『鎌倉殿』で見た坂東彌十郎さん、八代目 市川染五郎さんも舞台で見てみたい。テレビで見る方々を舞台で見たらきっと楽しいだろう。東京に住んでいたらはまったかも。前述の『ライジング若冲』の感想(ぼやき)でも書いてましたが、島暮らしはリタイア暮らしなので日本の文化が遠くて悲しいわ。シクシク



2022年11月17日木曜日

NHKスペシャル 超・進化論 第2集 愛しき昆虫たち~最強の適応力



アリノタカラ ですよ。アリノタカラ。なんてかわいい。

アリの名前はミツバアリ。ミツバアリは地下の家で家畜を飼う。その家畜の名前はアリノタカラ。真っ白で大きさは1mmぐらい。まるで二頭身のゆるキャラみたいな生き物。頭が大きい。カイガラムシの仲間だそうです。

ミツバアリはこのアリノタカラのお世話をする。アリはアリノタカラを草の根まで連れていく。そうするとアリノタカラは草の汁を吸ってお尻から甘い蜜を出す。ミツバアリはその甘い蜜だけを食べて暮らすのだそう。

なんと乳牛を飼って、その牛の牛乳だけを飲んで生きるようなものだ。このアリとアリノタカラの共存関係を絶対相利共生というらしい。


そして新しい女王アリが育って巣を離れる時、新しい女王アリは1匹のアリノタカラを連れて結婚飛行に飛び立つ。彼女は空で出会ったお婿さんと結ばれたら地面に降りて家族を作り始める。連れてきた1匹のアリノタカラは新しい巣で増えて新しい女王の家族と暮らすのだそう。
 
ミツバアリとアリノタカラ

テレビでは、若い女王アリが飛び立つ場面をやっていた。なんと美しい。繊細な…。希望に溢れる旅立ちか。可愛いね。なんだか無茶苦茶感動しました。

たった1匹と1匹だけで、何千、何万もの大家族を作るのだそう。浪漫ですね。自然すごいな~。いい話。


そういえば小学校の頃にそんなアリの話を本で読んだ記憶がある。「アリの中には農業をする種類がいる。乳牛を飼うアリもいる」などと書いてあった。農場はハキリアリ。乳牛のことは知らなかったけれど、このミツバアリとアリノタカラのことだったのだろう。

乳牛を飼うアリ。なんか…いいね。


アリの巣の中で暮らす小さな虫達も可愛かった。いろんな種類がいるのね。居候をしてるシロオビアリヅカコオロギがコロコロしていて可愛かった。アリの匂いを盗んで身体に塗ってアリの家族になりすますのだそうです。動きがすごくかわいい。このコオロギはアリから養ってもらうことでしか生きられないのだそう。アリのペットか。その関係を片利共生というそうな。

シロオビアリヅカコオロギ

この録画はキープして時々見直したい。癒される。


2022年8月2日火曜日

NHK 土曜ドラマ『空白を満たしなさい』全5話・感想



難しかったです。難しいテーマ。解釈が難しいドラマだった。内容を理解できたのかどうかを確認するため、録画を残していた3話から見直した。

このテーマは迂闊にに文を書くこともためらわれる。怖いテーマ。今もこの文をタイプしながら心臓がドキドキする。自分でもおかしいと思う。

このテーマの作品は、個人が感想を書いて何らかの意見を言えば、もしかしたらそれが誰かを傷つけることになるかもしれない。嫌な思いをさせるかもしれない。だから言葉を選ぶ。もちろんドラマを見て何も感じなかったわけではない。様々な思いが心を巡る。

今までにこのテーマのことを考えなかったわけではない。しかし個人の行動の理由は人それぞれ。決して一般論が語れるような話ではない。皆それぞれの理由があるだろう。だから難しい。


例えば12歳の中学生が「テストの成績が悪かった。また叱られる。もうこの苦しみは終わりにしたい」と思えば、それはその12歳の中学生にとっては深刻な危機。真剣な悩みだ。しかしその悩みは、70歳を過ぎた大人には問題のうちにも入らないようなことに思えるかもしれない。同じ物事に対する感じ方は皆それぞれ違う。だからこのテーマを論じるのは私には難しい。

このドラマは、人の「行動」の理由をわかる範囲で探る話だと受け取った。


小説が原作だそうだが、ドラマの意図は(おそらくは)行動の抑止のためのメッセージだろうと思う。しかしこのドラマが、現在悩んでいる人の次の行動の抑止として機能するのかは私にはわからなかった。

私は見ていて辛かった。苦しくなる。気が滅入る。尖った演出に、ただでさえ重いテーマが私にはますます苦しく感じられた。見ている他の人々は大丈夫なのかと心配にもなった。



★ネタバレ注意

最初は番宣で見てシリーズを録画予約。早速1話を見たら気が滅入った。翌週も自動的に録画されていたので2話も見た。その2話目でほんの少し哲学を感じた。それで続けて見ようと思った。

3話、主人公・徹生(柄本佑)の行動の原因の探求 
  そして佐伯(阿部サダヲ)の「生きることへの疑問」
4話、徹生の行動の原因が少し明らかになる 
  佐伯の「自分が自分を追い詰める理由」
5話、徹生の再度の別れの前の…残る人々のための歪みの修復、
  彼が去った後の空白を、残された人々のために満たそうとする


主人公・徹生のその行動の理由(外因)
追いつめられていた。仕事が多すぎた。自分を責めた。前向きだった。しかし疲労は疲労。疲労が溜まっていた。極限の疲労が生きる実感にもなっていた。幸せさえ感じていた。苦しかった。しかし止められなかった。追われていると思った。

佐伯の生きる辛さ(内因)
私は皆を不快にさせる。愛されない。幸せでなくてはならないとか、前向きでなくてはならないだとか、そういった欺瞞に満ちた正しさが人間を苦しめる。ちゃんと幸せに生きねばと頑張る自分が、出来ていない(現実の)自分を苦しめる。ちゃんと生きたい。まっとうにみんなと同じように生きたい。生きる意味を教えて。


NPO法人の池端(滝籐賢一)の分析
空白の30分。原因は単純ではない。ビル火災の熱さから逃れるために窓から飛び降りる行動に例える。他に暑さから逃れる術がない。逃げ場を失った。

つきあう人の数だけ自分がある。人が生きていくには自分を肯定しなければ。自分を丸ごと愛するのはなかなかできない。まず好きな自分を見つける。

個人の問題だけじゃない。自分を押し殺して生きなきゃいけない社会にも問題がある。


そして5話で雰囲気が変わる。1話~4話までは徹生の行動の分析と原因究明だったが、5話で徹生のフォーカスが外に移る。5話で復生者達がまた消えてしまうということによる。徹生は、残る人々のために関係の歪みの修復、また身近な人々に感謝の言葉を伝える。佐伯には「自分の心の中の暗いものを消そうとせずに見守っていこうと思う」と手紙で告げる。


佐伯は内面の苦しみを抱え、徹生は疲労とプレッシャーに追い詰められた。人により経済的、物質的、肉体的な苦労、精神的な苦悩の場合もあるだろう。原因は皆それぞれでデータにして解析することも難しいのだろうと思う。

ただその行動の抑制になるのは、自分を肯定すること。以前からよく耳にする「自分を愛しなさい」の言葉がまた聞こえてくる。自分自身を条件付きで評価しない。どんな自分でも受け入れて愛する。自分を大切にする。どうやったらその強さを自分の中に常に保てるのか。 メディアや教育(親への教育)など、人が生きるための哲学をやる時期にきているのではないだろうかとも思った。


このドラマを見ていて、ちょっと前に見たNHKのドラマ 『今度生まれたら』 を思い出した。団塊の世代夫婦の30代の次男・ギター職人の健が言った言葉 「たいして取り柄のない人がいて、ただ生きてるだけじゃダメなのかな?」 このドラマを見ていてそれを何度も思い出した。



追記:
一旦上の文を書いて、後から違和感を感じた。
この話、女の私にとってはすごく気になることがある

徹生の奥さんの千佳さんの扱いのバランスがおかしい。

この話は徹生が主人公。彼につきまとう佐伯の存在が大きいのは、彼も徹生の行動の原因を説明するための存在だから。要はこの話は徹生の内面を深く掘り下げる話

ということは千佳さんの毒親の話も、徹生が「彼女の暗さを抱えながらも明るく振舞うところに惹かれた」という設定のために必要だっただけなのだろうか。結局彼女も「徹生の話」の「飾り」の扱いしかされていない。

しかしそれなら作者は(フィクションとして)なぜ千佳さんにあれだけの苦役を背負わせたのか。女性が愛する夫を亡くすのはこれ以上辛いことはないほどのこと。その後、佐伯が関わってきて苦しめられたこともある。その上に彼女には子供時代から続く母親からの精神的虐待がある。そしてまた千佳さんは二度目に夫を亡くすことになる。これからはシングルマザーとして子供を育てていくことになる。千佳さんの辛い人生。それなのにこの話での彼女の扱いはあまりにも雑。

彼女の人生にはありえないほどの大問題が連続して起こっているのに、彼女がそのことをどう思っているのかは描かれていない。「徹生の人生が辛い」という話なのに、実際には千佳さんの人生の苦労の方がずっと大きい。この設定なら、むしろ私が心配するのは千佳さんの方。千佳さんは大丈夫だろうか。それが気になった。


2022年7月24日日曜日

Perfume:NHK SONGS 第609回 Perfume



TV Japanにて放送。
拝見しました。すごーい。なんか久しぶり。Perfumeの45分。拍手っ!

ワタクシPerfumeファンとは言いながら、実は日本に住んでいないこともあってPerfumeさんの映像を見ることは普段は難しいのです。歌番組の出演はほぼ見ることができないし、映像をネット上で探して見ることはあっても全てをカバーするのは難しい。ましてやこのようなインタビュー番組はなかなかそのような機会もない。だからPerfumeさんが喋って笑っている様子を見るのは久しぶり。生身の女性のPerfumeを見るのは久しぶり。

すごく綺麗だった。大人のお姉さんだった。

久しぶりなのですよ。ほんとに。今Perfumeさんって33歳でしたっけ。そうか、そうだよなぁ。やっぱり大人ですよね。そしてプロ。プロ中のプロ。もう本当に大御所。エンタメ界の大御所の雰囲気。すごーい。


ワタクシウミガメがPerfumeさんを知ったのは2010年。もう12年も前。そうか…もう12年も経ったのか。そうですよね。だから今の彼女達はあんなに大人なのですよね。あたりまえなのだけれど、すごいことだわ。感慨深い。

最初にファンになった頃は、彼女達は21歳かな?20代初期ですよね。「不自然なガール」の頃だと思うのだけど、あの頃の彼女達はまだ可愛らしい女の子でした。のっちが細くて子鹿のようだった。みんな可愛かった。パキパキと踊る様子が可愛かった。あれから12年。

大御所の余裕です。すごいな~。とにかくすごい。

日本の女性グループで、20代初期から10年以上も私が追ったグループは彼女達だけ。出合った時の彼女達は21歳で今33歳。同じメンバーの同じグループを12年間も見続けてしまった。そして今の彼女達は本当に大きい。大御所。本当に大御所。大きな拍手。

久しぶりにお元気そうな様子が見れて嬉しかったです。綺麗。みんなキラキラしてる。華やかなスーパースター。12年前とはまた違う魅力。素晴らしく美しい。


インタビューのトークも大人。言葉が大人。やっぱり大御所。彼女達が今まで積み重ねてきた経験がものすごいので、もう他とは比べられないです。本当にすごい。言葉のひとつひとつの重みにいちいち感嘆する。彼女達の豊富な経験とたゆまぬ努力、長年の積み重ねの結果が彼女達の言葉ひとつひとつの重みになる。すごいな~。もうリスペクトしかない。この方々は普通の人が想像も出来ないような大きなことを成し遂げたプロの女性達なのですよね。かっこいいな。

久しぶりに彼女達の生の言葉が聞けてよかった。嬉しかった。


踊ればやっぱり楽しい。「Flow」「Spinning World」。彼女達をしっかり落ち着いたカメラで写す映像も久しぶりに見た。素晴らしい。NHKさんに感謝。

「Flow」の落ち着いたカメラでのPerfumeさんは本当に綺麗。白い衣装。それに脚も見えた。セットは天井からシャンデリア+リボン状のカーテンの下がる比較的シンプルなもので丸いステージもシンプル。エフェクトも映像もゴミゴミした演出もないステージで踊る白いPerfumeは本当に綺麗。ああいう演出/映像もたまにはいい。感動する。NHKさん感謝。

「Spinning World」も同じ。あれはフルコーラスかな。ダンスがかっこいい。余裕です。いややっぱり「Spinning World」は脚を見せて欲しいっ笑。

なんかね…生で動くPerfumeを久しぶりに見られてすごく嬉しかったです。ダンスが素晴らしい。やっぱりすごいわ。いいものを見た。感謝感謝。


2022年7月21日木曜日

NHK伝説のコンサート・オフコース 「1982.6.30日本武道館」40年後に泣く







TV Japanで少し前に放送になったものを録画していた。やっと見た。
日本では7月2日に放送されたもの

1982年6月30日の武道館でのオフコースのライブ映像。

構成は
番組の紹介:オフコース・ファンのNHKの阿部渉さんの解説←これが楽しい
ライブ映像「オフコース 1982.6.30日本武道館」はほぼ1時間30分。
当時のドキュメンタリー「若い広場~オフコースの世界」:アルバム「over」のレコーディングの様子など


いや~~~~懐かしくて泣いたわ。なぜだ?ファンではなかったはずなのに…。しかし有名な曲は知ってる。歌える…
「もう終わりだね」「もうすぐそこは白い冬」「愛を止めないで、そこから逃げないで」「今なんて言ったの?」「君を抱いていいの?」キャー そんな歌詞を聞いて心動きましたよ高校生の頃。

ファンではなかったので知る曲は少ない。しかし友人がファンだった。だから存在はよく知っていた。友人は高い声で「小田さ~ん♪」と呼ぶ小田さんファン。私にとってオフコースは少し大人のバンドの印象。すごく年上な方々だと思っていた。私は洋楽ばかり聴いていて深く聴き入ることはなかったのだけれど彼らの曲はよかった。よく覚えている。

ライブ映像も見たことがなかったのではないか(よくわからない)。もし当時テレビで放送があったのなら見たはずだと思うが、ともかく40年も前のことだ。覚えていない。しかしそのファンの友人は「小田さんが泣いてる~」などと言っていたような気がする。


というわけで拝見…

すごいバンド


かっこい~。コーラスがすごい。惚れる。

あらためてオフコースはこんなにすごいバンドだったんだねと驚いた。曲もいい。とにかくコーラスがすごい。歌が上手い。

最初の1曲目「愛の中へ」で、あのサビの高音のコーラスに驚いた。ま~なんと美しい。このバンド、全員が歌う。すごい。

そうなのですよ。40年前の当時は「さよなら」と「君を抱いていいの」と「愛をとめないで」ぐらいしか知らなかったのかも。それにスタジオver.をラジオで聴いていただけなのかも。当時オフコースはすごく流行ってたので、それらの曲をよく聴いた覚えはあるのだけれど…。

このバンドってライブがこんなにすごいバンドだったのですね。もう…しっかりと見入りましたよ昨晩。そしてついついライブ映像から「若い広場」まで見てしまい全部で3時間も見続けてしまった。

とにかくいいバンド。素晴らしいバンド。いい音。コーラスがとにかくすごい。


いいライブです。ロックの時代のいいバンド。全員が楽器が上手くて歌も上手い。ギミックなし。曲がいい。歌がいい。基本の基本だけですごいバンド。これがまず一番。素晴らしい。

メンバーの方々の世代による洋楽からの影響と、あの時代の音楽のスタイルからの影響が沢山聞き取れるのが面白い。彼らの時代の色んな音、色んな影響が聞き取れる。思いつくだけでも… 

Wings/Paul McCartney/Beatles、 Beach Boys、Supertramp、Eagles、Doobie Brothers、Billy Joel、たぶんChicagoやAir SupplyやStyxなんかも感じるし、それにギターの松尾さんの「僕の言いたいこと」には、Peter GabrielやPhil Collins、Pink Floydなんかのプログレも感じる。そんなのは私の勝手な想像だけれど面白い。今だからわかる。


オフコースのことを当時から40年も過ぎてやっと知ることになった。このバンドもまた「初期ベビーブーマー世代(1945-1955)」のバンド。

小田和正(K)さんと鈴木康博(G)さんが1947年生まれ
清水仁(B)さんが1950年生まれ
大間ジロー(D)さんと松尾 一彦(G)さんが1954年生まれ

彼らと同じ「初期ベビーブーマー世代」はとにかく有名な方々が多い
山下達郎さん(1953年)YMOの坂本龍一さん(1952年)高橋幸宏さん(1952年)細野 晴臣さん(1947年)大瀧詠一さん(1948年)渡辺香津美さん(1953年)忌野清志郎さん(1951年)松任谷由実さん(1954年)さだまさしさん(1952年)財津和夫さん(1948年) その他、フォークソング世代の大物の方々が数え切れないほど…。

彼らが20代~30代に活躍していた1970年代後半から80年代初期。彼らの世代をリスペクトして常に見上げていたのは当時中学生や高校生だった私の世代。オフコースにも高校生から大学生ぐらいの女性ファンが多かったのだろう。この武道館のライブにも高校の制服を着た女の子達が沢山映っている。小田さんに黄色い声。女性に人気のバンドだったのですよね。しかし高校生の女の子がアイドル視するバンドがこんなに上手いバンド(ほぼフュージョン・バンド)だったとは…。当時は巷に本当にいい音楽が溢れていたのだなと思う。洋楽もメロディーの美しいいい曲が沢山あったし、英国産の実験的な音楽も含めて当時は音楽的に豊かな時代だったのだろうと思う。オフコースほどの上手いバンドが女の子のアイドルなんて…すごい時代だと思う。ほんとに。

いい時代だったんだな。映像の中の観客の女の子達はみんな聖子ちゃんカットで前髪が重く、みんな服装ももっさりしていて、皆コンサートの最初から最後まで手拍子をし続ける。昔の日本のライブは皆そうでしたよね。全員が手を叩きながら時々黄色い声を飛ばす。微笑ましい光景。懐かしい。


当時の若者は皆イノセントだった。世の中もまだまだ保守的で、男女のお見合いなんかも普通にあった時代。「高校生でおつきあいをする」なんてのもそんなに多くはなくて、せいぜい同級生に片思いとか…そんな時代。そんなウブな時代に、オフコースは「君を抱いていいの?」と歌った。よく覚えてますよ。へーって思ったもの。当時の高校生の女の子達は皆そんな歌詞を聞いてドキドキしたのだろう。

映像を見ていると、メンバーの方々の衣装、観客の女の子達の髪型も服装も、皆で揃って手拍子をし続ける様子も、あの時代が一気に蘇る気がして「Yes No」のあのイントロのメロディーを聴いて涙が出た。あの頃は40年前。


オフコースの皆さんは素敵なお兄さんで全員かっこいいのですけど、ギターの松尾さんが可愛くてうれしくなった。当時松尾さんと大間さんは28歳、清水さんが32歳。そして小田さんと鈴木さんが35歳。

小田さんのバラードもいいが鈴木さんのロックも好き。すごくかっこいい。

ところであの「Yes No」の印象的なイントロのメロディーから歌に入るときに、なぜ転調するのだろう?  

そういえばあの頃「時に愛は」という曲がありましたね。好きでした。


映像は不思議ですね。こんな映像を見ると、あの20代30代のオフコースのメンバーの方々が今でもどこかでライブをしているような気がする。40年も遅れて好きになるってこういう感じなのかな。


Set List

1982 6 30
---------------------------------
愛の中へ   v小田
メインストリートをつっ走れ   v鈴木
君を待つ渚   v松尾
思いのままに   v小田
哀しいくらい   v小田
夜はふたりで   v鈴木
さよなら   v小田
僕の言いたいこと   v松尾/小田 
心はなれて   v小田
言葉にできない   v小田 
一億の夜を越えて   v鈴木
のがすなチャンスを   v鈴木 ドラムソロ
Yes No   v小田
愛を止めないで   v小田
l love you   v小田
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Yes No   v小田
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YES-YES-YES   観客



2022年7月7日木曜日

NHK BSプレミアム『今度生まれたら』全7話・感想



TV Japanにて。録画を見終わった。日本での放送は2022年5月8日から6月19日まで。NHK BSプレミアム。全7話。 また1話目を見逃してしまい2話から鑑賞。


原作は内館牧子さんの小説『今度生まれたら』。この小説は、内館牧子さんの「老後小説」シリーズの3作目だそう。そういえば同じ「老後小説」シリーズの『すぐ死ぬんだから』のドラマ(2020年NHK)もとても面白かった…以前ここにも長い感想を書いた。「老後小説」シリーズとは、団塊の世代…または日本の初期ベビーブーマー(1945年~1955年頃生)の世代…のお話かな。

面白かったです。ユーモラス。とにかくほのぼのと楽しいドラマ。


テーマは:
70歳になった夏江はつぶやいた。「今度生まれたら、この人とは結婚しない」
そして、これまでにあったターニングポイントがよみがえる。やり直しのきかない年齢になって、それでも今をどう生きるかを考え始める夏江や、とりまく人々を軽やかに優しく描く、内館牧子原作の「老後小説」をドラマ化。


ネタバレ注意

第2話から見始めて数話を見て思ったのは「みなさんお元気だな」笑
だって皆さん70歳ぐらいですよね。その方々がこれから新しいことを始めようかとか、恋に落ちたり、新しい生活を始めたり…なんだかパワフルな人々。すごいな~。私まだ50代だけれど彼らのように元気じゃないわ。


内容は時に深刻でもあり(誘惑、不倫、離婚)…う~んそうでもないか。様々なお題が出てきてランダムにそれぞれの話が絡み合い…淡々と過ぎて淡々と終わった。『すぐ死ぬんだから』のように何か大きな事件が起こるわけでもなく、ドラマチックな結末があるわけでもない。ベビーブーマーの世代の日常を(色々あるけれど)淡々と描いた風景画のようなドラマと言おうか。雨降って地固まる。いい雰囲気のドラマだった。楽しかった。妙に不思議なドラマでもあった。


メインの登場人物は,
専業主婦の佐川夏江(松坂慶子)70歳。夏江の夫・和幸(風間杜夫)。
夏江の姉・島田信子(藤田弓子)。信子の夫・芳彦(平田満)。
夏江の後輩・山賀敏男(小倉一郎)。敏男の妻・佐保子(余貴美子)
女性弁護士・高梨公子(風吹ジュン)
島田芳彦の同級生・吉野久美(ジュディ・オング)=バンビ

(余貴美子さん以外は)皆様ベビーブーマーの方々。ベテランの俳優の方々。まずそこ。俳優さん達が皆さんやっぱり上手い。芝居が自然。演技が演技じゃないみたいに自然。演技があまりに自然すぎて脚本に描かれた芝居であることを忘れてストーリーに引き込まれる。

風間さんと松坂さんの夫婦のほのぼの感が最高。夫婦の芝居は巧の技。阿吽の呼吸。ほのぼの。微笑ましい。和む。お見事。そして松坂さんと藤田弓子さん姉妹の会話の自然さとリアルさもすごい。まるで親戚にいる普通のオバチャン達…。

脚本も巧み。芝居も自然。ストーリーはユーモアを交えてほのぼのと。贅沢な時間ですよ。本当にいい。ほのぼの。


(私が年を取ったせいなのか)近年の若い世代のドラマや映画は、脚本も芝居も何かが不自然でストーリーに集中できないことも多いのだけれど、このドラマはすぐに馴染んだ。脚本が面白くて俳優さん達が上手いから、ストーリーに多少無理があってもどんどん引き込まれる。普通の人々の普通の日常の描写。そしてなんだか妙にお洒落。

そう。このドラマはあの団塊+初期ベビーブーマーの世代のドラマなのですよね。まずそこが面白い理由なのだろう。…昔の『金妻』の世代が今お婆ちゃんの世代になってるということだ。そうか、そうなのか…。


団塊+初期ベビーブーマーの世代は、私にとっては常に前の時代を走っているお兄さんお姉さん世代。彼らは様々な時代を力強く彩ってきたパワフルな世代。それぞれの時代で彼らが作ってきたものはいつも面白かった。彼らの作ってきた文化…映画も音楽もドラマも、それを喜んで消費していたのは、ちょっと後に生まれた私の世代…たぶん。

そんなお兄さんお姉さんの世代が今70代になっていることにあらためて驚いた。私が中学、高校、大学の頃に輝いていた年上のお姉さんやお兄さん。彼らが今70代…そんなに時間が経ったのか。私も年をとるはずだ。


松坂慶子さん、風間杜夫さん、平田満さんと言えば…深作欣二監督の角川映画『蒲田行進曲』(1982年)だもの。うわ~小夏さん、銀ちゃん、ヤスの階段落ち…。そう。まずそれ。すぐにあの3人だと思った。だから…小夏と銀ちゃんが夫婦を演じているだけで感動してしまう。風間さんちょっとかっこよかったな。松坂さんも綺麗だった。


そんなわけで、ストーリーは…色々あったけれどなんとなく全体にほのぼのしていて、ぐるぐるぐるぐる延々と回し続ける中華の回転テーブルとか、健の褌踊りとか、いろんな面白い不思議場面もあって楽しかったです。

最終話の最後、松坂さんと風間さんのキッチンのシーンは最高。おまえのらっきょ…あの間…。いいなぁ。なんだかニヤニヤする。結局このお二人は仲がいい。

松坂慶子さんが好き。彼女は声も優しい。癒し。お若い頃は本当にゴージャスな美女。見惚れた。今も綺麗なお姉さん。すごい

面白かったので録画を消す前にもう1回見直そうか。雰囲気を楽しむ。


NHK BSプレミアム『すぐ死ぬんだから』全5話・最終話感想 ---2020/10/20




2022年4月11日月曜日

テレビ朝日 木曜ドラマ『となりのチカラ』全9話・感想



隣は何をする人ぞ。

昔からある言葉だ…と検索したら、なんとこれ

「秋深き 隣は何をする人ぞ」

江戸時代の俳人・松尾芭蕉の俳句だそうだ。おっとっと知らなかったぞ笑。元禄7年1694年、芭蕉が51歳の時に病床で詠んだ句だそうだ。全く知らなかった。


このドラマの日本での放送は2022年1月20日から3月31日。全9話。

フリーのライター中越チカラ(松本潤)が東京郊外のマンションに引っ越してきて、ご近所さんの事情に毎回首を突っ込むお話。毎回マンションのどこかの部屋で問題が起きて、チカラ君がそれに首を突っ込む。余計なお世話な男だ笑。よせばいいのに毎回ご近所さんの結構シリアスな問題に巻き込まれる。

テーマはシリアス。しかし難しい問題。考えさせられますね。


都会の集合住宅…アパート、マンションのご近所さんとの関係なんて、まさに「隣は何をする人ぞ」。隣の物音に聞き耳を立て「何をやってるんだろう?」と訝る。お隣さんには関わりたくもなし、知りたくもなし。私も東京で一人暮らしをしていた頃はそうでした。(芭蕉の句は反対に「人恋しい」の意味らしい)

わかっているのよ。お隣さんと親しくお付き合いして、いざという時には助け合える仲。それは理想。そんなお隣さんとの美しい関係が可能であれば、例えば大都会での生活ならいろいろと解決する問題も沢山あるのではないかとも思う。しかし実際には難しいですよね。誰かと必要以上に親しくなれば問題も一緒にやってくる。昔の商店街のような小さなコミュニティーならともかく、大都会の集合住宅では隣人ガチャの当たり外れもあるだろう。特に一人暮らしなら他人の問題に関われる余裕もない。私も苦手。未だに正解がわからないご近所づきあい。今現在は平和的で問題があるわけではないけれど。


だからこのドラマのチカラ君が、マンションのご近所さんの問題に一件一件首を突っ込むのを見て驚く。うわ~よくやるなぁこんな人いませんよね。東京の話としては全くリアリティを感じない。それは私の間違った思い込みなのかもしれないが、じゃあ実際に今の東京でこのような話…よその家の問題に他人が関わって問題解決をすること…にリアリティはあるのだろうか? 私にはわからない。東京にはもう10年以上も行っていない。今の東京はどうなのだろう?今の日本の人と人の関係はどんな感じなのだろう?


チカラくん、そんなに他人の問題に関わって大丈夫なの?

チカラ君がとても心配になる。なぜ心配になるのか。
もしかしたら私は今の日本というものに混乱しているのかもしれぬ。

例えば…、私が日本に帰れば、出会う人々は皆穏やかで笑顔で丁寧で親切。日本ではいつも心地よく過ごすことができる。 しかしながらネット上で見かける匿名の日本の人々の「本音」はどうだろう。近年ネット上の書き込みを見ていれば誰でも必ず出くわす「人の怒りの感情」…ネガティブなコメント、意地悪なコメント、炎上、非難、誹謗中傷、クレーム…それは人々が実は日々不満を溜めて怒っている本音なのではないか。(今のアメリカの社会にも多くの「怒り」は存在するのだけれど、それはここでは考えない)

もしかして今の日本人は穏やかな笑顔の後ろに「大きな怒り」を隠し持っているのではないか?

もしそうだとしたら、このドラマのチカラ君がやっていることはかなり危険ですよね。だから彼を見ていると毎回ハラハラする。劇中も登場人物達が不機嫌で怒っている場面が多い。チカラ君は他人の問題にこれほど首をつっこんで本当に大丈夫なのか?


もちろんドラマなので、ほぼ全員の問題が綺麗に解決するわけですが、それは現実的だとは思えないのですよ。だからファンタジーのようにも見えてしまった…ファンタジー系の「不可能を可能にする話」。まるでゲームのように毎回お題をクリアして次のステージへ。ご近所さん一件一件の問題を片付けて、最後に家庭内の問題もクリアして最終レベルをクリア。そしてドラマも終了。 

それにしてもチカラ君が出会う問題は「今の日本が抱える問題」であることは明らか。皆それぞれがかなり深刻な問題の数々。ほぼ毎回、チカラ君が一人で問題を解決するのは「無理ゲー」だろうとは思いながらも「どのように解決するのだろう」と内容にはひき込まれた。その解決のプロセスにあまりリアリティがあるとは思えなかったけれど。


色々と考えさせられたドラマ。問題提議のドラマとしての内容はシリアス。しかし劇中での解決方法はコミカルであまりリアリティがない。そこに多少もやもやしたが、それでも考えさせられた。もしマンションに住んでいて、このドラマのような問題が身近に起こったらどうすればいいのだろう。わからない。とても難しいと思った。

時代が変われば社会も変わる。人も変わる。長く日本を離れて、そろそろ私は日本のことがわからなくなってきているのかも知れぬとも思う。それはしょうがないことなのだろう。

チカラ君の子供の二人が可愛かった。特にあの丸顔の高太郎くんのキャラが無邪気で面白くてとても可愛かった。茶トラの猫もかわいい。


2022年4月10日日曜日

終わってしまった…2003~2025年『カムカムエブリバディ』23週/最終週 112話



4月8日金曜日 とうとう終わってしまった。もう続きが見られないと思うと寂しいね。名残惜しい。


前回感想を書いたのは、日本で4月4日に放送された108話

そして翌日の109話でアニー・ヒラカワが安子ちゃんだったことが判明。ラジオの番組でインタビュアーに「初代モモケンの映画を見たか?」と聞かれてアニーさんが口ごもる。そして日本で見た…と身の上話を始める。それをジャズフェスの控え室にいるるいとひなたが聞いている。深津絵里さんの涙と表情が素晴らしい。

110話 ひなたがアニーさんを追って岡山の会場から大阪に向かうが、すでに関空からアメリカに飛び立った飛行機に間に合わず。ひなたが岡山の会場に帰ってくるとアニーさん/安子ちゃんがジャズフェスの会場の外にいる!アニーさんが逃げる。逃げる。逃げる。お婆ちゃんと孫娘の岡山5キロマラソン笑笑笑。

111話 思い出の神社で倒れこんだアニーさん/安子を背負う孫娘ひなた。ひなた5キロマラソンの後にまた祖母を背負って5キロを歩く。ひなた38歳。ものすごいパワーだ笑。ジャズフェス会場にたどり着けば、安子の娘るいが「On The Sunny Side Of The Street」を最高のタイミングで歌っている。そして母と娘の感動の再会ハグ。「I Love You.」だ。そうだそうだ。それでオッケーオッケー。よかったよかった笑。様々な物事の辻褄を無理やり合わせて終了! 拍手パチパチパチ…

終わりよければそれでよし。それでいい。みんなよかったね。


前回の感想でも書きましたけど、筋は多少ブレましたね。るい編は若い頃のジョーとるいのラブストーリーでそれはよかったのだけれど、ひなた編は映画村のサイドキャラの話に広げすぎ。私はひなたちゃん個人のストーリーをもう少し深く掘り下げて欲しかったけれど、最後にまとまればまぁそれでいいか。結局知りたかったのは「アメリカに行った安子ちゃんはどうなった?」。その答えも最後に出た。

安子ちゃん、アメリカで幸せになったのね。よかったです。ほっとした。あれから大学に進んでハリウッドの仕事をしているとは…すごいな。安子ちゃんは頑張りやさんなのね。

森山良子さんが延々と走り続ける110話はさすがにやりすぎたと笑ったけれど、なんだろう…文句が出るよりも、彼女と娘と孫の3人が揃ったのはよかったよかった。もうそれでOK OK。

ジャズフェスの会場の席の後ろで静かに泣く木暮さんがかわいかった。客席で懐かしのメンバーが揃ってる様子に和んだ。いい場面。


ドラマの最初の頃から長い時間が経って3世代が一緒にいる。そして色んな人達がみんなそれぞれおさまるところに綺麗におさまった。よかった。この最終話の後半、AIさんの主題歌が流れて戦前の様子の映像が流れた時、ちょっと涙が出そうになった。あの頃から80年以上も経ったのか。すごいね。


それにしてもこのドラマは私がひなたちゃんと同世代で、その上に様々なお題が私の好みに重なるのが嬉しくもあり不思議でもあり。まず日本人と英語の関係がストーリーの基本にあって、アメリカに渡ったキャラがいたり、ジャズのミュージシャンがが出てきたり、おまけに『ラストサムライ』ならぬ『サムライ・ベースボール』があり、(私は随分年取ってから好きになった)時代劇があり、(去年から見始めた)野球があり…、なんだかびっくりするほど私が好きなモノが多くて面白かった。不思議。もう少し80年代のバブルの頃らしい場面があればなぁ…笑。


毎日ちょこっと15分。毎日ほんの少しずつストーリーが進むのも楽しかった。負担を感じずにさらっと気楽に見れるドラマシリーズもいい。そういえば以前『マッサン』を見た時もそんな事を書いた。

これで終わってしまって名残惜しいです。ひなたちゃんは2025年で60歳ですが、さすがにあんなに若い60歳もいないだろう笑。これから恋愛スタートか。老いらくの恋だな。元気がいいね。安子ちゃんが100歳というのも驚き。るいちゃんは80歳か。すごいな。

5ヶ月間楽しかったです。
みなさまおつかれさまでした。