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2026年2月11日水曜日

英ドラマ BBC/HBO『インダストリー/Industry』(2026) シーズン4, 第4話まとめ:1000 Yoots, 1 Marilyn



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『Industry』 (2026) TV Series-Season 4/英・米/カラー
/約50分・全8話/
制作:Mickey Down, Konrad Kay』
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内容を詳しく追うのが結構重荷になってきた。自分のためにやっているのだけれど。このドラマはスピードが早いし、編集のせいで場面がどんどん入れ替わるし、脚本の言葉も情報も多くてついていくだけで大変。金融の専門用語も満載。それに今回は、ジムと編集長の会話に英語のイディオムが山盛り入っていて、何を話しているのかさっぱりわからない笑。ひとつひとつ書きぬいた。学生に戻って勉強しているようだ。

ともかく次のストーリーに進むのに迷わないように記録しておこう。

日本語での金融の専門用語をよく知らないので訳で使用する言葉がおかしいかもしれません。




★セグメント毎のあらすじ/全てネタバレ注意






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FinDigest誌 ジム・ダイカ―

FinDigest(経済紙)の記者ジム(Charlie Heaton)は(第3話の)ハーパーからの情報「サンダーランドの件」を含む「Tender社の裏情報」を探っている。(前回第3話でリリースされた)ジムのオンライン記事は Tender 社の株価にはほとんど影響を与えなかった。次に予定されている記事ではハーパー達の突き止めた「サンダーランドの件」と共に「Tender社のアフリカでの怪しい収支」について…ジムがガーナのアクラに向かい取材する予定(編集長からも GO サインが出た)。

しかし編集長はジムに、ハーパーの会社(ショート投資専門の)SternTao 社との関係は「市場操作」を疑われる危険があるので関係を断つように告げる。ジムはそれをハーパーに伝える。

一方 Tender 社は、最初の記事が出てから FinDigest 誌への圧力を強めたり緩めたり…随分神経質になっていることが伺える。編集長は早朝から電話で圧力をかけられたり…(株価にほとんど影響のなかった)ジムの記事にさえ Tender 社が神経質になっている(差し止め命令、脅迫、名誉毀損)ことから、ジムの取材している内容には実体があるのではないかと編集長は予測している。

Tender 社の WebHorizo​​n での新しいアプリの発表の後、ジムはホイットニーに直接「サンダーランドのオフィスの件」を詰め寄るが、ホイットニーはそれを否定。

その後、保守派の新聞 The Spectator 紙が「The men who hates Britain/英国を嫌う男たち」のタイトルで記事をリリース。その記事には FinDigest 誌のジムと編集長、SternTao 社のエリックなどが写真入りで中傷されていた。

ジムは薬物の使用、そして(第1話の冒頭で)酔った勢いで一夜を過ごした Tender 社のヘイリーから性的暴行の疑いをかけられ(ヘイリーは告訴を検討中)FinDigest 誌から解雇される。

その夜、ジムはドラッグのオーバードーズで意識を失う。


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始まって直ぐのジムと編集長の電話の会話が、英語のイディオム満載で意味が全く分からなかった。英国人の喋りだと思うが、このような話し方をする米国人を私は知らない。イディオムを書きぬいた。

● Shot in the dark
= an act whose outcome cannot be foreseen; a mere guess.
当てずっぽう、ヤマ勘、確証のない推測

● Their response to the "Tender, investigated" piece, it's as subtle as a Slade song in truth. Injunction, threat, defamation.
これはイディオムではないが、70年代の騒がしいグラムロックバンドの「Sladeぐらい微かな」…つまり意味は全く微かではない…穏やかではない

● A dog's dinner
=British idiom describing a situation, project, or, occasionally, an appearance that is a complete mess, chaotic, or poorly organized
(英国英語)ひどい混乱、めちゃくちゃな状態、台無し

● clean the slate
=to make a fresh start by ignoring past mistakes, failures, or debts, effectively resetting a situation
stern and curt rebuke
白紙に戻す、過去を精算する、心機一転やり直す

● Far more meat on the bone
=something has significantly more substance, depth, detail, or value than previously presented
もっと実体、価値、意味がある

● glass jaw
=A fighting vulnerability where one is easily knocked out via a single hard blow to the chin or jaw
弱い顎、弱点、弱さ

● I'll get legal to word a stern and curt rebuke.
=severe, sharp, and direct expression of disapproval delivered with very few words
厳しく鋭い直接的な非難

● Air gapped computer
=a computer or network is physically isolated from unsecured networks
オフライン、Wi-Fiでもネットと繋がっていない状態。ハッキングされることはない

● displays of brute force in a velvet glove?
=An iron fist in a velvet glove
outwardly gentle, polite, or courteous, but inwardly firm, resolute, or ruthless when necessary
表面上は穏やかだが、内面では必要に応じて毅然とした態度、断固とした態度、冷酷な態度をとる



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SternTao社

(第3話)で SternTao 社は Tender 社の株を 5億ドル(500 million)ショート投資をしている。ジムの書く次の記事で Tender 社の株価が下がることを期待している。

しかし Tender 社の評判は新しいオンラインバンキング・アプリの発表で上がっている。

ジムの最初の記事が株価に影響しなかったことから、彼の次の記事が株価に影響することの確証はない。他の出版社に「サンダーランドの件」を話すか、それともオンラインで Tender 社自らが情報を流すか…Hindenburg や GlassHouse のように…などなどの考えを巡らしている。しかし Tender 社の中傷記事を流すことは、ひとつ間違えれば Tender 社に訴えられる危険性もある。

SternTao社は焦っている。

投資は
  10 million エリック(Ken Leung)
  100 million 仏投資家Pierre
  140 million 他の投資家から集めた
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計 250 million をマージン(証拠金)として
  500 millionのショート投資


またスイートピー(Miriam Petche)は(Tender社の元CEO)ジョナ(Kal Penn)に連絡を取った。ジョナは彼女にTender社内のメールを送ることを約束する。ジョナは現在ホィットニーを不当な解雇で訴えている。

そして Tender 社のアフリカCFOであるトニー・デイを特定する。

トニーは2011年にガーナの首都アクラへ移住。2度事業に失敗したが、突然 Tender 社のアフリカ支社のCFOに抜擢された。Tender 社の名でローカルの決済処理会社 SwiftGF を 50 million ドルで買収…疑わしい地域買収を監督していたことを知る。 ハーパー(Myha'la Herrold)はスウィートピーに、デイの拠点の(ホイットニーも頻繁に訪れる)アクラに行きさらなる調査を促した。


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Hindenburg Research LLC
U.S. investment research firm with a focus on activist short-selling founded by Nathan Anderson in 2017. Shut Down 2025.

GlassHouse Research
​GlassHouse Research is comprised of forensic accountants and analysts who have worked for prominent Wall Street hedge funds and boutique forensic accounting firms.


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Tender社

Tender 社はオンラインバンキング・アプリのリリース準備を進めている。ヘンリー(Kit Harington)は積極的にアプリの開発に関わっている。今のところ Tender 社には国からの銀行ライセンスが下りていない(らしい)。それで古い銀行の Al-Miraj Pierpoint 社と組んでアプリをリリースしようとしている。

新旧の両者が組む利点は…PierPoint 社には Tender 社のもたらす新しいテクノロジー(Tender 社の始まりはオンライン決済処理会社でそのノウハウがある)を、また Tender 社には PierPoint 社との共同アプリ発表で信頼と新規銀行事業への本格的参加を試みている… Tender 社はこれから銀行ライセンスを取得する予定なのだろう。

今の Al-Miraj PierPoint 社の顧客は中東の富裕層が多いと思われる。Tender 社の将来の顧客は英国一般市民。おそらく顧客を奪い合うこともないのだろう。新規の共同事業は両方に利益をもたらす見込みで、また PierPoint のアプリ事業は政府から、特に首相からもサポートを得ている。

その自信から Tender 社は PierPoint 社に10億(1 million)ドルの投資を打診。結果 CoCo 債(Contingent convertible bond 後述)で10億ドルの投資を確保する。


ホイットニー(Max Minghella)はハーパーがジムと会っている写真を入手し、SternTao 社が Tender 社の株を空売りしていると推測。そのことをヤスミン(Marisa Abela)に知らせる。

ヤスミンはヘンリーの伯父 ノートン卿(Andrew Havill)に 保守派のThe Spectator 紙で、ハーパーの SternTao 社と FinDigest 誌が共謀しているとして「英国の進歩と発展を妨げる敵」として両社の中傷記事を書くように依頼。ホイットニーの持つハーパーとジムの写真も記事に使われることになる。


またヤスミンは、ホイットニーの部下ヘイリー(Kiernan Shipka)が(第1話で)ジムと関係を持ったことでナーバスになっているのを見て「あなたは彼に暴行を受けた」と囁く→その入れ知恵でヘイリーはジムを訴えることを思いつく。→ジムは FinDigest 誌から解雇される。


ヤスミンはヘンリーが WebHorizo​​n の技術コンファレンスの舞台上でアプリを発表するように手配する。

ヘンリーは Tender 社での自分の存在に自信を持てずにいる。Tender 社内のことも全てが明らかにされていないと感じているし、またホイットニーがよくアフリカに出かける理由も知らされていない。不安を募らせるヘンリーをヤスミンが励ます(彼女自身の野心のために)。

疑念を抱きながらもヘンリーは WebHorizo​​n で力強いスピーチを行う。 Tender 社の「誠実さ」を押し出しスピーチは成功する。

WebHorizo​​n のスピーチの後で、FinDigest 誌のジムはホイットニーに「サンダーランドのオフィスの件」で詰め寄るが、ホイットニーはそれを否定。

ホイットニーはヤスミンを広報部長に任命する。ヤスミンはヘイリーを昇進させる。


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Contingent convertible bond(CoCo債・ココ債)(Putable CoCo bonds?)
銀行などの金融機関が自己資本を強化・増強する目的で、経営悪化時に元本削減や強制的な株式転換を伴う高いリスク(かつ高利回り)の社債を販売する。

どうやらこのストーリーでは PierPoint 社がTender社に 1 billion の投資だけをするのではなく、Tender 社の発行する CoCo 債を PierPoint 社が買い取って結果的に 1 billion を Tender 社に渡すということらしい。Tender 社が危機に陥った時(株価が下がった時)に、PierPoint 社は CoCo 債での投資を回収する。それで Tender 社はますます大きな危機に陥ることになる。おそらくそうなるのだろう。


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Rishi

リシ(Sagar Radia)は、義母に息子ヒューゴの姓をスミスに変更させ、面会を継続する条件を飲んだ。(社を解雇されたジムは)後半にリシと出会い共にコカインを摂取。過剰摂取で意識不明に。警察が到着し、リシはバルコニーから飛び降りて逃走を図るが、両足首を骨折して逮捕される。


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以上ストーリーの流れを記録。

今のところ Tender 社の評判はいい。株価も上がっている。しかし後ろに様々な裏取引があるらしく、それが明るみに出れば株価は下がる。それで HerperStern 社がショートの儲けを出すという話だろう。また PierPoint 社の CoCo 債での 1 billion ドルの投資も回収されTender 社は破産かな。予想。

ヘンリーはお坊ちゃんらしくイノセント…すぐ落ち込む弱さ。そんな彼をヤスミンがステージママのように操っている。ヤスミンは他の様々な事柄も操っている。ホイットニーは隠れゲイ(バイ)でヘンリーを気に入っているらしい。ヤスミンがそれに気付いている。また最後に第3話でのことでヘイリーがヤスミンを脅し始めた。

最後の15分のドラッグ漬けのシーンは見ていられなくて退屈したのだが、もしかしたら脚本の意図は…同じ街に5億ドルの投資をしている者達がいて、また酔っぱらって薬物に溺れる者達もいる…そのような社会の歪みを描いたのかもしれぬとも思った。



2026年2月2日月曜日

英ドラマ BBC/HBO『インダストリー/Industry』(2026) シーズン4, 第3話まとめ:Habseligkeiten



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『Industry』 (2026) TV Series-Season 4/英・米/カラー
/約50分・全8話/
制作:Mickey Down, Konrad Kay』
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1月25日・日曜日に放送の『Industry』Season 4 の第3話。1週間遅れで筋を記録しておきます。このドラマは私には難しい。まず冒頭の3分間、ハーパーが記者ジムと電話で話している言葉で撃沈。彼らが何を言っているのかほとんどわからない笑。視聴者をわざと怖がらせているのか? とりあえず通しで見てなんとなく筋を掴んだ上で、1週間遅れでA氏に解説をしてもらった。その内容をここに記す。今回も濃い。

日本語での金融の専門用語をよく知らないので訳で使用する言葉がおかしいかもしれません。




★セグメント毎のあらすじ/全てネタバレ注意




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SternTao 社…エリック/ハーパー

第1話からの流れでハーパー(Myha'la)とエリック(Ken Leung)は新しい彼らの会社『SternTao』社を起こした。現在はまだオフィスも決まっておらず、ホテルの1室を借りてオフィスとし顧客の新規開拓に忙しい。

SternTao社はショート・ポジション(空売り)専門のファンド。ハーパーは FinDigest(経済紙)の記者ジム(Charlie Heaton )との会話で「Tender」社の動きが怪しい(アフリカから違法なポルノやギャンブルの支払いを資金洗浄している)との情報を掴みTenderに目を付けた。

朝食会で投資家達との関係を築こうとするが、皆懐疑的で話に乗ってこない。ほどんどの投資家は、ショートのみの投資は危険すぎると見ている。フランス人の投資家 Pierreからの質問を受けて、ハーパーはまだ成功の確証もないTender社株のショート・プランを公表してしまう。

朝食会の後でエリックはハーパーに Tender 社株のショートのアイデアの理由を問う。ハーパーが記者ジムからの裏情報を告げれば、エリックは「大きな会社は FinDigest の記事くらいでは影響を受けないだろう。現在 Tender 社にはオーストリアの銀行との合併の話が出ている。空売りをするのなら Tender 社の問題の「確証」が必要」だと言う。

…その一例としてエリックが「Herbalife」の有名なストーリーを話し始める(後述)。エリックはショートのみの投資なら「確証」がない限り失敗するとハーパーを諭す。

その「確証」を得るためハーパーは Tender 社の情報を集め始める。元 Pierpoint & Co、そして元 Mostyn Asset Management の同僚 スイートピー(Miriam Petche)が Tender 社の年次報告書を調べてきた。
以前の Tender 社は怪しい業界との業務で利益を得ていたが、社の新規株式公開(IPO/An Initial Public Offering)以降はEMEA(欧州・中東・アフリカ)地域での会社の買収が彼らの成長の主要な原動力となっている…しかし戦略が不安定で変化しているはずであるにもかかわらずそれが数字に全く反映されていない…大きなリスクが株価に織り込まれていない。つまり Tender 社は今でも違法な事業(ポルノやギャンブル)の支払い処理サービスをし続けていてそれを隠蔽している可能性がある。
しかし現在 Tender 社は、Fintec(後述)分野での金融アナリストからの評判も高く、特にSir. ヘンリー・マック(Kit Harington )のCEO 就任も高評価となっている。市場では Tender の株は買いが推奨されている。

ハーパーの元 Pierpoint & Co の同僚リシ(Sagar Radia)もハーパーに Tender 社の資料を持ってきた(おそらくは彼が裏社会から手に入れた Tender 社の内部決算書が外部に漏れたもの)。
その資料を調べ続けるハーパーとエリック。資料の中から Tender 社の EMEA 地域での買収先の住所は全て同じ場所=アイルランドのダブリン。そしてまた資料の中に度々現れる Tender 社の登記上の「支店」の住所は英国の東北地方サンダーランドの住宅であることを発見。その家は Google Map の Street View で見ても時価総額 90億(9 billion)ドルの企業の支社には見えない。

ハーパーがスイートピーと共にその住所を訪ねる。そこで個人の請負業者が Tender 社のアフリカでの取引内容を手作業でコード化してスプレッドシートに入力し、そのサービス内容(違法のポルノやギャンブルサイトでの決済サービス)を隠蔽している現場を発見した。おそらく彼のような請負業者が他にもいて、大量のTender社の裏取引をコード化している…Tender 社が今も違法の取引や裏社会との関りから収入を得ていてそれを隠蔽していることを突き止めた。

ハーパーがスイートピーに SternTao 社への入社を求め、スイートピーはそのオファーを受ける。

ハーパー、エリック、スイートピー、(ハーパーの元部下で恋人)クワベナ(Toheeb Jimoh)が、ドイツ銀行で働く(元 Pierpoint & Co の同僚)ケニー(Conor MacNeill)を訊ねる。SternTao 社はドイツ銀行のブローカー、ケニーに Tender 社のショートを実行したいと告げる。

またエリックは仏投資家の Pierre から条件付きの投資を打診されそれを受けていた。SternTao社が自社で10 millionドルの投資をした場合に限り、Pierre も90 millionドルの投資をする。ただし空売り投資が最初の10 millionドルを失った時点でPierre は投資を解消する。10 millionドルの損失は SternTao 社がカバーすること。エリックは家族の投資会社を清算して10 millionドルを投資に回すことを決める。


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Herbalife-Ackman Story
実話:2012年、ファンドマネジャーの Bill Ackmanが、健康補助食品の専門メーカー「Herbalife」に対し1 billionドルのショート・キャンペーンを仕掛けた事件…Ackman はHerbalife が違法のねずみ講式にビジネスを展開していると提示。それに反対した投資家 Carl Icahn が反対の立場で巨大投資を展開。話題となった事件。FTC/Federal Trade Commission(連邦取引委員会)の調査により Herbalife のねずみ講の件は否定され…Ackmanは2018年に空売りポジションを解消、巨額を失うことになった。

Fintec(Financial technology)フィンテック
決済、銀行業務、投資といった金融サービスにテクノロジーを統合し、プロセスを改善、自動化、効率化すること。

FTX
実話:FTXは2022年11月に破綻した大手グローバル暗号資産取引所(global cryptocurrency exchange)。サム・バンクマン=フリードによって2019年に設立。2022年、liquidity crisis による資金不足、大規模な経営のミスマネジメント、そして数十億ドルに及ぶ顧客資金のアラメダ・リサーチへの不正流用により破綻した。
このドラマでは記者のジムが過去に FTX で資産を失った話が冒頭のハーパーとの電話での会話で出ていた。

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Tender社…ホイットニー/ヘンリー/ヤスミン

Sir. ヘンリー・マックはホイットニー(Max Minghella)の率いる Tender 社の CEO に就任する。彼は貴族ならではのコネクションで英国の上流社会に顔が利く…Tender社と政治家との関わりにも役に立つ。早速ヘンリーはMPのジェニー(Amy James-Kelly)に Tender 社が欧州の銀行の買収のためのライセンスを取れるよう打診…Tender 社が成功すれば(今まで規則が多いために滞っていた)フィンテックの分野で、 Tender 社が英国の金融界を率いて活性化することができると告げる。

Tender 社はオーストリアの家族経営の銀行「IBN Bauer 社」との合併を進めようとしている。そのためにはまず英国の Prudential Regulation Authority/健全性規制機構(PRA)の承認が必要。

現在 IBN Bauer 社側の取締役会は2社の合併にほぼ賛同しているが、同社の後継者である Moritz-Hunter Bauer 氏と彼の母親は、顧客のデータ・プライバシー管理の変化に不安を感じていて合併に前向きではないと言う。ヘンリーの妻ヤスミン(Marisa Abela)の提案で Tender 側からオーストリアに出向いて話し合いをすることになる。

その頃、FinDigest 誌のジミーが Tender 社に質問状をデータで送ってくる。裏取引のことを質問する内容に対し「どこかの空売りの投資家が煽っているのだろうが、何の心配もいらない」とホイットニー(ヘンリーは裏取引のことを知らされていない)。また記事が出る前に Tender 社から FinDigest 誌に圧力をかけることもできると言う。

Tender 社のメンバーが Bauer 家の城をオーストリアに尋ねる。
夕食会で2社の合併に関する合意をBauer 氏から 得ようとするが話はうまく進まない。Bauer 氏は資本主義や民主主義に否定的でファシズムの信奉者。それを隠すこともしない…そしておそらく彼は反ユダヤ主義者(ちなみにホイットニーの姓 Halberstam はユダヤ姓)。
一晩を過ごしてヘンリーたちは帰国。残ったヤスミンが Bauer 氏の母親との会話で、Bauer 氏が英国の新聞『The Spectator』紙に寄稿することを提案。 The Spectator 紙はヘンリーの伯父 Alex Norton 卿(Andrew Havill)がオーナー。

ヤスミンが勝手に Bauer 氏を伯父の新聞社に紹介したことを後から知ったヘンリーは喜ばない。

帰国したヘンリーとホイットニーは、MPのジェニー、ビジネス担当大臣のリサ・ディーン、そして英国PRA/The Prudential Regulation Authority(健全性規制機構)の面々と会談。後から加わった首相首席補佐官は、規制当局に取引承認を迫る。

Tender 社とIBN Bauer 社の合併が決定。
Tender の株はFTSE 100に入る。


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GDPR(European Union's General Data Protection Regulation)
2018年5月25日に施行された一般データ保護規則(GDPR)は、欧州連合(EU)の包括的なデータプライバシー法であり、個人データの収集および処理に関して厳格な要件を課している。この規則は、EU/EEA 域内の個人を対象とする、または監視する組織に世界的に適用され、違反した場合には数千万ユーロに及ぶ罰金が科される可能性がある

GDPR issues
欧州連合の一般データ保護規則(2018年施行)への遵守における法的、技術的、または運用上の不備を指す。この規則はEU居住者の個人データの厳格な保護を義務付けている。一般的な問題として、違法なデータ処理、同意の欠如、データ漏洩、削除権などのユーザーの権利の侵害などが挙げられる。

FTSE(Financial Times Stock Exchange)
ロンドン証券取引所(LSE)に上場している大手企業の株価動向を追跡する株価指数群を指す。FTSE 100とはそのトップ100企業…時価総額上位100銘柄で構成されるイギリスの代表的な株価指数。

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FinDigest 誌の記者ジミー

Tender 社の裏取引に以前から探りを入れていた FinDigest 誌の記者ジミーの記事は…記事が出る前に(Tender 社から圧力がかかったのだろう)多くの重要なデータが黒塗りされて潰され、結果穏やかな内容に書き換えてオンラインで出版されることになった。ジミーは Tender 社の支社のあるアフリカ・ガーナの首都アクラへ取材に行くと言う。

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興味があったので台詞に出てくる情報を洗い出した。大変だった。

ハーパーがジムから聞いた情報を元に Tender 社株のショートを決め、Tender 社の内情を探る流れは面白い…Tender 社が裏で違法の業務内容で利益を得ている証拠を掴んだ。一方 Tender 社は(表向きは)IBN Bauer 社との合併も決まりそのニュースを受けて社の株は FTSE 100 に躍り出る。面白い。さてこれからどうなるか。

タイトルの「Habseligkeiten」はドイツ語…劇中では「possessions closest to your soul/魂に一番近い持ち物」とBauer氏の母親が説明していた。この言葉は2004年に一番美しいドイツ語として選ばれたそうだ。

ハーパーが待ち合わせする日本食レストランで坂本九さんの「上を向いて歩こう/Sukiyaki」が流れていた 😎



Season 4
Season 3
Season 2
Season 1

2026年1月19日月曜日

英ドラマ BBC/HBO『インダストリー/Industry』(2026) シーズン4, 第2話まとめ:The Commander and the Grey Lady



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『Industry』 (2026) TV Series-Season 4/英・米/カラー
/約50分・全8話/
制作:Mickey Down, Konrad Kay』
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1月18日・日曜日に放送の『Industry』Season 4 の第2話。昨日早速録画を見た。第2話はスピンオフ的サイドストーリーのみ。金融の話は無し。解説はいらなかったので簡単に要点だけ記録しておこう。




★簡単な要点/あらすじ/全てネタバレ注意




ハーパーの同僚 ヤスミン/Yasmin Kara-Hanani(Marisa Abela)は貴族のヘンリー/Sir Henry Muck(Kit Harington)に嫁ぎ地方の広大な領地のカントリーハウスで生活している。

ヘンリーはMP/Member of Parliament/国会議員になろうとしたが選挙で敗北し鬱になった。ヤスミンにより城ではヘンリーの40歳を祝う盛大なバースデー・パーティーが開かれる。父親の40歳の誕生日に関するトラウマを乗り越えてヘンリーは鬱を脱する。

ヤスミンによるアレンジでパーティーに招かれた『Tender』のCEOホイットニー/Whitney Halberstram(Max Minghella)はヘンリーに『Tender』のCEOの席をオファーする。


カントリーハウス/マナーハウスとは英国の農村において貴族およびジェントリの住居として建設された邸宅。貴族の末裔がすむ城のようなもの。城の周りには広大な領地が広がり農民や市民たちが生活を営んでいる。日本の藩と大名のようなもの。ヘンリーは殿様の子孫ということですね。

殿様の末裔ヘンリーが町に出ていってパブで飲むと、町の人々が彼のことを知っていて話しかけてくるのが面白いと思った。殿様と話してるようなものなのだろうか。英国にはまだ階級社会が残ってる。

昔は殿様の土地で起こったことは領地内で処理されていたのだろうけれど、今の時代はそうはいかないだろう。ヘンリーの暴力シーンはいずれストーリーに絡んでくるはず。


Season 4
Season 3
Season 2
Season 1


2026年1月18日日曜日

英ドラマ BBC/HBO『インダストリー/Industry』(2026) シーズン4, 第1話まとめ:Paypal of Bukkake





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『Industry』 (2026) TV Series-Season 4/英・米/カラー
/約50分・全8話/
制作:Mickey Down, Konrad Kay』
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英国の金融業界を描いた米HBOのドラマ『Industry』のシーズン 4が今年1月11日から始まりました。相変わらず下品な言葉が多いのですでに食傷気味ですが、このドラマは密度が濃くて面白いのでこのシーズンではストーリーのあらすじをエピソード毎に書いていこうと思う。

スラング満載、金融のジャーゴン満載、隠語満載で1度見ただけではさっぱりわからない笑。しかし内容がわかればかなり面白いドラマ。私には言葉も内容も難しいので、今回も毎週日曜に放送されるドラマを、火曜か水曜あたりにまず私が一人で見てストーリーの流れを掴んだ上で、週末に旦那Aと一緒に見て意味を説明してもらうことにした。そこでわかった内容をここにメモしておこうと思う。ストーリーのまとめというよりも、大まかな内容の構成を分けて記しておこう。



★ほぼあらすじです/全てネタバレ注意




★ ハーパー・スターン/Harper Stern(Myha'la Herrold)

主人公の女性。前シーズンからの繋がりで、現在のハーパーは投資家/貴族院のメンバーのオットー/Otto Mostyn(Roger Barclay)から見込まれ、彼の投資会社『Mostyn Asset Management』の一部署「Short Opportunities Fund」のファンドマネージャーを務めている…この部署は「空売り/Short ㊟後述を専門とする。
2024年の労働党の勝利にともなう世相の動きを、昔の同僚リーシ/Rishi Ramdaniに探らせ、ハーパーはこれから価格が下落すると予想されている『Siren』の株を空売りしようとしている。
『Siren』はロンドンに拠点を置くインターネット・コンテンツの有料購読サービス…ポルノ制作者の間で人気が高いことで知られている。新政権が包括的な「オンライン安全法案」を提案していることにより、『Siren』のようなサービスは危機に陥る可能性がある。
折から『Mostyn Asset Management』内のハーパーの部署の成績は好ましくなく、今回の『Siren』の空売りも不評。
すでに引退している昔のボス、エリック/Eric Tao(Ken Leung)のファミリー投資会社がハーパーの会社から投資を引き上げたことから、焦ったハーパーは全てのクライアントのファンドを閉鎖(gating)してしまう(投資家が資金を引き出せないように閉じてしまう)。彼女の衝動的な行動にオットーが激怒「私の爵位を傷つけるな、君を雇ったのはただDEIに寄せた振りをしただけだ」とハーパーに告げる。オットーに失望したハーパーはエリックに連絡、新しい会社を二人共同で設立することになった。

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 「空売り/Short」とは
空売り(からうり)とは、手元にない株式を証券会社から借りてきて、高い値段で「売り」、その後株価が値下がりしたところで「買い戻して」差額を利益にする信用取引の一種。売った株が後に値下がりすればするほど買い戻した時に儲けが出る。
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『テンダー/Tender』

ロンドンの比較的新しい決済処理スタートアップ企業…『Tender』は特に賭博やアダルト業界などの怪しげな企業に(Paypalのような)決済処理のサービスを提供することで大手に成長した。この会社の共同経営者は…CEO/最高経営責任者/chief executive officer の ジョナ/Jonah Atterbury(Kal Penn)、そしてCFO/最高財務責任者/chief financial officer のホイットニー/Whitney Halberstram(Max Minghella)の二人。
ホイットニーは『Tender』の怪しげなイメージを刷新するため、今までのメインのクライアント…アダルトやギャンブル関連の顧客との契約を打ち切り、まっとうな銀行への事業転換を図ろうとする。
CEOのジョナは『Tender』の業界での最大の強みは、(誰も関わりたがらない)怪しい顧客にサービスを提供することだと言い、銀行への事業転換は危険だと反対する。
ホイットニーは『Tender』の取締役会と共に ジョナを突然解雇し、『Tender』のCEOに就任する。

その他のサイド・ストーリーと分析

● 2024年の選挙での勝利により労働党は…『Siren』などの怪しいサイトの取り締まりを厳しくする「オンライン安全法案」を成立させようとしている。

● 労働党の「オンライン安全法案」に保守党は反対している。その保守党の貴族院のメンバーのオットーは、ハーパーに委ねた(「Mostyn Asset Management」の中の)「空売り専門部署」が、労働党の「オンライン安全法案」(=『Siren』株の下落)により成績を上げることを良しとしない。彼が保守党内で顔を失うことによる。

● 金融を専門とするジャーナリスト、ジム/Jim Dycker(Charlie Heaton)は『Tender』の(まだ明らかにならない)不正行為を暴こうと嗅ぎまわっている。その不正行為で『Tender』の株価が落ちる可能性があることが示される。ジムはハーパーに連絡をし「空売りをするのなら『Tender』の方がいい」と告げる。

● 『Tender』のホイットニーが自ら関わっているアフリカでのプロジェクト…それが何かはまだはっきりとわからない。

● ホイットニーの台詞に出てくる「HGH」の言葉…HGH は Human Growth Hormone の略だろうか。ホイットニーが秘密裡に関わっているアフリカでのプロジェクトに「HGH」が関係しているらしい。

● そこで思い出すのがシーズン3までのメインキャスト、ロバート/Robert Spearing(Harry Lawtey)。彼はシーズン3で、カリフォルニアのベンチャーキャピタルにリトル・ラボ社の事業計画を売り込み、成功を収めていたはず。今はカリフォルニア在住だろうか。ホイットニーのプロジェクトに今後ロバートが関わってくる可能性があると海亀は見た。

● もう一人のメインキャスト、ヤスミン/Yasmin Kara-Hanani(Marisa Abela)…彼女はシーズン3で貴族のヘンリー/Sir Henry Muck(Kit Harington)に嫁いだ。現在はマナーハウスに住み、上流の社交界で生きる。盛大なパーティーを催し、ビジネスのトップや政治家、貴族等の社会の上層部の人々に出会いの場を提供している。今回のパーティーでは『Tender』のホイットニーと労働党のMP ジェニファー/Jennifer Bevan(Amy James-Kelly)を結びつけた。また同パーティでハーパーとホイットニーが親しくなった。


第1話での情報はこれくらいだろうか。今後のドラマを理解しやすいように記録する。



それにしてもこのドラマは耳をふさぐほど、目を覆うほど下品なのに参る笑。これは制作と脚本の方々が、このような下の話題とロンドンのシティを結びつければ「Cool」だとか「Edgy」だとか思っているからだろう。(視聴者の求める)London City の金融業界のイメージによるものだろうか。主人公が女性なのにあいかわらず愛の無いセックスが多い。制作が男目線で創作しているからだろう。かなりシャープでキレのいい面白い話なのに下の話が多いのは、視聴者が堅い話に飽きないようにスパイスで味付けをしているのだろう。いいのか悪いのか私にはよくわからないけれど困るわけではないからまぁいいか。

エリックが帰ってきたのが私はとても嬉しい。シーズン3でのエリックの扱いがとにかく酷かったので、彼はもうこのシリーズから消えるのかと思っていた。彼はまたメインのキャラになりますね。

エリックは今度はハーパーと会社を共同経営するらしい。それにしてもエリックの女性の好みがこの第1話でほんの少し示されたように思うが、頼むからエリックとハーパーは寝ないで欲しい。たのみます。お願いします。もしそうなったら私はとてもがっかりする。幻滅する。エリックは厳しいお父さんキャラだからいいのよ。

Ken Leungさんは好きな俳優さん。小柄なのにカリスマがあって、このシリーズでは何を考えているのかわからないのが少し怖くていい。彼は目が全く笑っていなくて常に怒っているのかと心配する。今回も注目です。シーズン3のようなかっこわるい姿はあまりなければいいな。

ハーパーはとにかくすぐに爆発する爆弾のような娘で、彼女を見ているとハラハラするから面白い。今回も何をやらかしてくれるのか楽しみ。


これから暫くはストーリーのみをまとめて記録することにしよう。


Season 4
Season 3
Season 2
Season 1


2025年8月25日月曜日

米ドラマHBO 『The Gilded Age』(2025) Season 3・全8話:欧州貴族との関り・バーサの執念





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『The Gilded Age』 (2025) Season 3
TV Series/米/カラー
/約1hr・全8話/
原案:Julian Fellowes』
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HBOのドラマ 『The Gilded Age』のシーズン3。オリジナルの放送は2025年6月22日~8月10日。全8話。

今年6月からのTV放送を録画していたのにすぐに見なかった。8月に放送が終ってから録画を見始めて先日やっと見終わった。


製作・脚本は、英国 ITV のヒット作 『ダウントン・アビー/Downton Abbey』 のジュリアン・フェロウズ/Julian Fellowes氏。彼がアメリカ・ニューヨーク市の1880年代からの物語を手がける。

時代の背景などの情報はシーズン1の感想で書いたので省略。1890年頃の米国ニューヨークの上流階級を描いたドラマ。登場人物はほぼ同じ。主役は新興成金のラッセル家の夫婦。通りの向かいにはオランダ系旧家のヴァン・ライン家の人々。彼らを中心に当時のニューヨークのハイ・ソサエティーの様子を描く。



★シーズン2のまとめ

さて今回、まず以前書いたシーズン2の感想を読み直してみたのだけれど、私はほとんどシーズン2の内容を書いていなかった。

…上流階級は相変わらず閉じた社会で、その内部では旧家と新興成金のマダム達が格付けをし合っている。旧家のお嬢さんマリアンが女性の自立を手探りすれば、アフリカ系のペギーちゃんはジャーナリストとして米国南部まで出かけることで話にスパイスを加える…などと書いていた。

しかし実際にはもう少し史実に沿った設定もあったのですね。それを全く書いていなかったのでまとめておこう

シーズン2の主軸
① ジョージと労働者との対立
大富豪=新興成金(ニュー・マネー)・鉄道王ラッセル家のジョージは、鉄鋼業の労働者のストライキと向かいあっている状況.
② バーサが新オペラハウスで旧家に対抗する
ジョージの奥さんバーサ・ラッセル夫人は、相変わらず旧家(オールド・マネー)のアスター家などから「新興成金」だと言われ同格に見られていない。当時のニューヨークの旧家が集うオペラハウス「Academy of Music」でも、いいボックス席は全て旧家に押さえられていてラッセル家にはまわってこない。そこでバーサは新しく建てられた「Metropolitan Opera」をお金の力でサポート。またバーサは英国の貴族バッキンガム公爵をゲストとして招いて箔付けをする。旧家のアスター夫人との「どちらが上か」の戦い。

さて、この①の鉄道王と労働者のストライキの話はよく調べていないのだけれど、②のオペラハウスの話は今回歴史を少し調べてみた。

(上記の二つのオペラハウスの名前を見れば明らかなのだけれど)現在ニューヨークに残っているオペラハウスの名前「Metropolitan Opera」。このドラマのシーズン2に描かれたオペラハウスを巡る旧家と新興成金の戦いは史実だったそうだ。


現在リンカーンセンター内の「Metropolitan Opera」は1966年にオープンした新しい建物。元々の「Old Metropolitan Opera House」は39ストリートに1883年に建てられた。前述の排他的な旧家が集るオペラハウス「Academy of Music」では新興成金はいい席を確保できない。そこで旧家から排除された新興成金達が集い新しくオペラハウスを建てることになった。そのスポンサーは鉄道王のVanderbilts 家、銀行家のJP Morgan、James Alfred Roosevelt(第26代大統領の伯父)を始めとする70人の大富豪達。彼らが投資して「Old Metropolitan Opera House」を建設した。

シーズン2の話の軸は、史実の「オペラハウスを巡る旧家と新興成金の戦い」だったのですね。シーズン2の内容だけれどここに記録しておきます。


それからシーズン2の内容で直接シーズン3に関わってくる話もここにメモしておこう。

★シーズン2のネタバレ注意

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マリアンの婚約は上手くいかなかったが、その後マリアンはラッセル家の息子ラリーと惹かれ合うようになる。ヴァン・ライン家のアグネス伯母の息子オスカーが詐欺に遭い一家の財産を騙し取られる。そして伯母のエイダが牧師と結婚するもののすぐに夫を亡くしたが、夫の遺産が多くそれが一家を救うことになる。…等々
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★シーズン3

さてそんなわけで始まったシーズン3。シーズン2でのオペラハウスの戦いでの勝利で勢いに乗ったバーサ・ラッセル。今度は(お金の力で)ラッセル家の名前に箔をつけようと試みる。バーサによる…娘のグラディスを英国の貴族バッキンガム公爵に嫁がせる計画。それから夫の鉄道王ジョージ・ラッセルは…鉄道を今の東海岸から西海岸に繋げようと各企業の買収のための交渉を試みている。その二つがシーズン3の軸。

今シーズンは(新旧の戦いに勝利した)ラッセル家がますますその力を確実なものにする様子を描いている。英国貴族との繋がりや、鉄道王がますます事業を大きく拡大する様子…時代が変わっていく様子が描かれていて面白かった。



★ネタバレ注意



シーズン3ではラッセル家の一人娘グラディスの婚姻とその後の様子が描かれている。シーズン1では印象の薄かったグラディスが、このシーズンではとてもいい女優さんで素晴らしかった。そしてこのストーリーは、娘を英国の貴族に嫁がせる母親バーサのストーリーでもある。彼女は欧州に嫁いだ娘を励ましに海を渡り、娘の夫にしっかりしろと檄を飛ばし、別れの馬車の中では一人涙ぐむ。いいですねぇ。この女優さんCarrie Coonさんは本当にいい女優さん。彼女の魅力無くしてこのドラマはありえない。

米国の大富豪が婚姻によって(落ちぶれた欧州貴族)に富をもたらす話は、まさに原案/脚本のジュリアンフェローズ氏の『ダウントン・アビー/Downton Abbey』の話そのまま。私は『ダウントン・アビー』は2、3話ぐらいしか見ていないのだけれど、あのマナーハウスのグランサム伯爵の妻コーラは大富豪の米国人の設定。英国と米国の話が繋がりました。面白い。

この『The Gilded Age』でもバッキンガム公爵と彼の姉が、ラッセル家の娘との婚姻に関して「ヤンキー heiress で家を救う」などと言っている…いかにもそのような状況。(ヤンキーとは米国北東部の白人に対する俗称または蔑称、海外からは米国人全体を指すことも)


さてこのドラマのラッセル家とは、史実の米国の鉄道王で実業家…大富豪のヴァンダービルト/Vanderbilt家の人々をモデルにしていると言われているが、史実でも同じような話が出てきた…『The Gilded Age』の時代に生きたコーネリアス・ヴァンダービルト2世の娘のグラディスがハンガリーのLászló Széchenyi伯爵に嫁いでいるし、また彼の姪(弟ウィリアムの娘)コンスエロは英国貴族マールバラ公チャールズ・スペンサー=チャーチルに嫁いでいる。このような米国の大富豪と欧州貴族の婚姻は当時多くあったらしく、欧州の貴族に嫁いだアメリカ合衆国籍の富裕層の女性をダラー・プリンセス/Dollar princesses などと呼んだそうだ。


それから今シーズンでは、夫のジョージが鉄道を東と西海岸で繋げるためにアリゾナ州まで行って様々な買収を行っている様子が描かれているのだが、これはヴァンダービルト家の史実ではないらしい。ヴァンダービルト家が各鉄道会社の買収により東海岸から西に鉄道を伸ばしたのは中西部のシカゴまで。実際に西海岸と東海岸が鉄道で繋がったのは1869年でヴァンダービルト家は直接関わっていない。



ラッセル家の娘グラディスの婚姻と、ラッセル家の鉄道事業の拡大がシーズン3の主軸。そしてそこに登場人物達の個人的なストーリーが乗ってくる構成。シーズン3まで見てくれば、それぞれの人物達にも親しみがわいて単純にドラマとして彼らがどうなっていくのかを見るのも楽しい。

ヴァンライン家の召使いジャックの発明のその後の成り行きにドキドキし、ペギーとカークランド医師の出会い、マリアンとラッセル家のラリーの関係にニヤニヤする。シーズン1とシーズン2で私は結構文句を書いていたと思うけれど、このシーズン3はドラマとしても十分楽しんだ。


YouTubeの動画を探したら『The Gilded Age』が史実とどう違うのかの検証動画がでてきた。

ペギーの話は(シーズン2のエピソードも含めて)かなり史実に近いらしいことに驚いた。ニューヨークのアフリカ系の裕福なミドルクラスも当時実在していて、彼らもまた白人の上流社会のように格付けをし合っている(カークランド医師の母親の言葉)ことも興味深い。
しかしながら19世紀末の時代に(いかに優秀な人物であっても)アフリカ系の女性がNYの旧家/名家の家に秘書として迎えられることは無かっただろうとのこと。その部分はあくまでもフィクション。

白人の上流社会は相変わらず狭い世界で、今回は夫から一方的に離婚を告げられるオーロラ・フェインが社交界で立場を失う様子も描かれた。

さてバーサ・ラッセルはとうとうこのシーズンで社交界のトップに上がったのだろう。一方で今まで権威を誇っていたアスター家の夫人は娘のスキャンダルとともに力を失っていく。窮屈な上流階級の古いしきたりを破りながらバーサ・ラッセルは最後に盛大な舞踏会を開き大勢のゲストを呼んで社交界での力を誇る。

バーサ・ラッセルが娘のグラディスの肖像画のために雇った画家はジョン・シンガー・サージェント/John Singer Sargent。彼は上流社交界の人々を描いた優雅な肖像画で知られる実在のアメリカ人の画家。主にロンドンとパリで活動した。ちなみに彼によるコーネリアス・ヴァンダービルト2世の娘グラディスの肖像画 (1906)も現存している。

興味深かったのは、実在の人物マカリスター氏(Ward McAllister)のエピソード。以前はアスター夫人と共に上流社交界の名家400家のリストなどを作り権力を誇っていたにもかかわらず、彼は1890年に社交界の暴露本『Society as I Have Found It』を出版。上流階級のゴシップを書いて本にしたことから彼はニューヨーク社交界での居場所を無くしてしまう。

このマカリスター氏の話は、後のトルーマン・カポーティによるニューヨーク社交界の暴露小説『La Côte Basque 1965 (1975)』のエピソードを思い起こさせる。カポーティもその暴露小説のせいで社交界の多くの友人を敵に回した。これら二つのエピソードがあまりに似ているので最初はこのドラマがフィクションなのかと思ったが、マカリスター氏の話は史実らしい。カポーティはこのマカリスター氏の暴露本の話を知っていたのだろうかと思った。


このドラマでニューヨークの歴史に興味が持てたのもよかった。YouTubeで検索すると、現代に残る The Gilded Ageの豪邸を紹介する動画が出てくる。ドラマでは豪邸のスケールがわかりにくかったのだが、今も米国に実在する豪邸の写真をいくつか見るとこのThe Gilded Age当時の米国の大富豪の富がいかにものすごかったのかがよくわかって面白い。

例えばこれ、

とにかく Gilded Age=金箔の時代と言われるほど、どの豪邸もギラギラと派手で贅沢。いやあれは間違いなく「米国の宮殿」なのだろう。そのような米国の金箔の時代の建物の凄さを見て「…欧州の王族との差はなんだろう」とさえ一瞬考えてしまった。とにかくものすごいのだ。その疑問には…なんとか自分なりに答えを見つけたつもりだが…「米国はやっぱり商売人の国」。 …それにしても数々の米国の宮殿の写真を見ながら色々と考えさせられた。唸った。いつか見に行きたいものだ。


すっかりドラマに馴染んで楽しめたので、これからのシーズンも楽しめると思います。ペギーちゃんとマリアンちゃんはよかった。嬉しかった。

そうそう、なんとマリアンちゃんの女優さんはメリル・ストリープの娘さんだそうだ。

さてこれからのラッセル家の夫婦の関係はどうなる?そしてよろよろしているオスカーはだいじょうぶなのか?(最後のその女はやめたほうがいい)。

 …これからのシーズンも楽しみに待ちましょう。




2025年8月19日火曜日

米ドラマ Netflix『イカれてる⁈/TOO MUCH』(2025) GEN Z 向けのドラマ?3話で脱落





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『TOO MUCH』(2025) TV Mini Series/米・英/カラー
/1話 約30分・全8話/制作:Lena Dunham, Luis Felber』
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先日ネットフリックスで見たドラマ『The Four Seasons 2025』が気楽に見られてよかったので、また30分で楽に見れるドラマがないかと探していた。そしてオススメに出てきたのがこの『TOO MUCH』。(懐かしの)ロンドンの話しならそれは面白いだろう。30分ならもっといいと視聴開始。

なんと3話見て匙を投げた。残念。


失恋した米国ニューヨークの女の子が仕事でロンドンに住むことになり、そこで出会った英国人の男の子とのロマンス…のロマンティック・コメディ。


最初は懐かしいロンドンの風景…あれは Wellington Arch だっけ?…主人公がハイドパークのアーチを車の中から見る場面を見て「これは楽しいだろう」とワクワクした。

ところが…これはもう、なんというか…世代の違いだろう。コメディにノレない。なんか…これ、おもしろい?と第1話から思った。

ドタバタのコメディだと思うので、細かいことをチクチク言ってもしょうがないのだけれど、まぁ…この面白くなさはたぶん世代的なものでしょう。いや~キビシイキビシイ。なんだろうね、これは。うまく説明できない。ああいう主人公の女の子みたいな人、実際にいる?いないよね。


主人公の相手の英国人フェリックスを演じる俳優さんは、以前『Giri/Haji/義理/恥』(2019)で金髪のジャパニーズ・ハーフの男の子 Rodney Yamaguchi を演じた Will Sharpe さん。『義理/恥』からもう6年か。なんだか彼はずいぶんゴツくなったな。筋肉モリモリで大きくなった。お若い方かと思っていたら、彼はもう38歳なのですね。


ともかく第3話で視聴を断念したのは第3話をご覧になればおわかりになると思う。だって全くストーリーが進まない「話がすすまね~」。二人で一晩中いちゃいちゃしていて30分が終わってしまった。それでもういいやと思った笑。

あのダラダラ…、翌日のことも考えずにうだうだダラダラするのが許されるのは大学生ぐらいまででしょう。大学生ならだらだら夜更かししてうっかり試験の日に寝すごして英語の単位を落とした…などなどありそうだけれど(ありましたよ笑)、30を過ぎた大人は違うやろ。あまりにもお子様過ぎますね。

よくわからないのだけれど、要するに若い世代 GEN G 向けのゆるいドラマなのですかね。おばちゃんは退屈してしまった。ぼ~~~~りんぐ…と何度も口に出た笑。まぁしょうがないわ。だってワタクシの世代は彼らの親の世代にあたるのだもの。ノリについていけるはずもなし。


ところでGEN Z/Z世代/Generation Zとは…Z世代とは、一般的に1990年代後半から2010年代前半に生まれた世代。今のティーンから30歳ぐらいまでの世代のこと。

おっと、主人公の Megan Stalter さんは34歳。Will Sharpe さんが38歳ということは…、彼らはGEN Zでもないのですね。なんと 30 代の彼らはミレニアル世代(1981年から1996年の間に生まれた世代)だった。なんとなんと…。


え~、彼らと同世代の今の30代ってこういうのが面白いと思うのか。
ダレてるな。


2025年7月28日月曜日

米ドラマ Netflix『フォー・シーズンズ/The Four Seasons』(2025) シーズン 1:リアルで身につまされる





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『The Four Seasons』(2025) TV Series-Season 1/米/カラー
/1話 約30分・全8話/制作:Tina Fey, Lang Fisher, Tracey Wigfield』
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週末にNetflixのオススメに出てきて見始めたドラマ。週末の2日間で「春夏秋」を見て翌週に「冬」を見終わった。面白かった。面白かったけど色々と考えさせられたドラマ。

最近は世の中の政治関連が忙しいので、なかなか2時間の映画を見る気持ちになれないのだけれど、このドラマは1つのエピソードが30分。気楽に見られるのでよかった。  


元々大学時代の友人だった5人(+1人)=6人のグループの30年後…現在50代半ばの彼らがシーズン毎に集まってホリデーを過ごすフォーマット。シーズンが進む毎に進んでいく物語。ストーリーの要は主人公ニックの中年の危機/Midlife crisis。ニックの想定外の行動により、友人関係のバランスが崩れていく様子をかなりリアルに描いている。


メインのキャストはスティーヴ・カレルとティナ・フェイ。お二人ともよく知られたコメディアンなので、当然作品はコメディ目当ての視聴者を想定したものだろうと思われる。しかし内容は結構シリアス。軽い気分で見始めるとびっくりさせられる。「いったい…これは笑っていい話なのか?」

例えば視聴者が20代~30代であれば「中年がまたおかしなことをやっているははははは」と単純にコメディとして笑えるのだろう。しかし(主人公達の年齢も超えた)実の中年~高年齢の視聴者が見れば印象は違ってくる。このドラマはあまりにリアルで居心地が悪い。リアルな台詞にいちいち「これ、私だわ。これ私達だわ」と笑えなかったりする。ドキドキハラハラしたりゾッとしたり…。なんだか自分の(そして今まで見たことのある誰かの)行動や言動を思い出して恥ずかしくなる。赤くなったり青くなったりする。それは脚本が(シーンの描写が)上手いということなのだろう。

いや~これはどうかな。可笑しくはない。あまり素直に笑えない。ただ身に覚えのある台詞や行動のリアルさに思わず身をよじって苦笑いする。そのようなドラマだ。見てよかったと思う。色々と考えさせられた。旦那Aとも感想をよく喋り合った。

制作はティナ・フェイを含む女性3人。なんと…女性が書いた話なんだ。だから身につまされるのか。それに男性に対して情け容赦ない。なるほど…納得したわ。


全体に楽しめたドラマだが、少し無理があるかと思った部分をまず先に書いておこう。

Con 1
まずスティーヴ・カレルはニックを演じるのには年寄りすぎるだろう。制作はこの作品をコメディとして売りたかったのだろうから、カレルとティナ・フェイの2大コメディ・スターを配役したのだろうが、スティーブ・カレルだけ他の俳優達より年齢が上。彼は現在62歳。彼以外の俳優たちは全員55歳。

カレル演じるニックが、6人の中で一番「若さを諦められない」キャラであるのに、カレル御本人が一番高齢というのは無理がある。私が見るスティーヴ・カレルの印象は「面白おかしいユーモラスなお父さん(←だからいい)という感じなので、「まだまだ遊び足りないギラギラした中年の危機の男」のニックのキャラには納得できない。

ニックのキャラには『Mad Men』のジョン・ハムのほうが合っているだろう。彼は54歳で他の俳優達と同じ世代だし、ハンサムでいかにも「まだまだ諦められずにトライアスロンに挑戦してポルシェに乗り若い女の子と遊びそうな男」に見える。彼も実は面白い人なのですけどね。しかしコメディ枠では売りにくいのだろうな。ハンサム過ぎる。

● Con 2
ドラマのコンセプトが、1981年の同名の映画を元にしていて…四季の移り変わりを通してストーリーの流れを追う話…になっているからしょうがないのだけれど、あまりにも事件を詰め込み過ぎではないか。「春」が終わって「夏」以降は全員がニックの行動に振り回される話になってしまっている。そして「冬」。…なかなか急ぎ足だなと思ったが、これはしょうがないのかな。あまりいい結末ではないと思う。




★ネタバレ注意


さてここからは私が個人的に血圧の上がったシーンを書いていこう。誰が誰がと説明はせずに、ただキャラの名前だけを書いていく。だからドラマを見ていなければ全くわからない感想だと思います。

私も中年の女…なので、なによりもこのドラマの二人の中年女性の描写に度々青くなった。あまりにも「ワタシだわこれ」の場面が多い。それを書いておこう。


アン+ニック
ニックが男友達に言う「アンは全て諦めてしまったんだ。彼女は本も読まない。新しいことにも挑戦しない。(窯を作ったのに)陶芸もやらない。iPadで農業ゲームばかりやってる」

ぅわああああああああこれワタシ、ワタシやでこれ。挑戦しなくなった。諦めてしまった。人生イージーモードでいいよね。もう頑張りたくないの。もういいじゃない。楽にいこうよ。それです。それそれ。…そしてニックにあきれられている。

思わず旦那Aを振りむいて「ねえ、あなたもこんな風に思うの?」と聞いてしまった「これワタシだよね笑」 なんか…ぞっとした。居心地が悪い。リアル過ぎてこわい。脚本うまいね。でもドラマになってるということは…よその中年女性も皆こんな感じなのかしら。中年女性アルアルなのかな。だといいな。だって更年期も終わったんだからもういいじゃない。あまり頑張りたくないよね。…いや私の場合は40歳を過ぎてからずっとこういう感じだったけれど。それに更年期とコロナで怠けゴコロが加速しましたね。笑えない。でもこれから頑張るつもりもない。

iPadで農業ゲームにも…ぅぁ…苦しいな。しかしまだ農業ゲームには手を出してない。あれははまりそうだから意図的に避けている。面白そうだと思ったのよ。『Hay Day』だっけ?かわいい広告を見て何度かココロ惹かれた。 さすがにベッドルームにiPadを持ち込むことは無いけれど、旦那Aが寝てしまった後もリビングで『Tile Match 3D』や積み木崩しゲームをやってる。そうそう、ちょっと前に3000面クリアしたとここで報告したやつです。

いろいろと…こわいねこのドラマ。「夏」でアンとサーフィンのインストラクターとの逸話は…もう身もだえするほど恥ずかしい。私はやらない。けど、彼女の気持ちもわからないではない。ぁああ辛い、つらいね。

そして「秋」はニックにとにかく腹を立てる。あのやろう、なんて無神経な。男の傲慢ですね。あれはゆるせない。あいつは自分の理想を皆に押し付けて、皆が無理して彼に合わせてあげているのに「皆打ち解けてるからいいことだねえ」などとニヤニヤしている。もう却下。あいつはいなくなればよろしい。他のメンバー全員が困ってるし、アンには残酷。マジで。そして娘の父親への憎しみにも激しく同意。そしてなによりもジニーに対して酷いと思う。ニックは最悪。 実はあれに近い場面を見たことがある。世の中には馬鹿な男がいる。

そして、そのように感じる私は「もう100%、人の嫁の中年女なのだな」とも自覚した。もう完全に「人の嫁」としての考え方になってしまっている…もう独身の自由な若い女の考え方は出来なくなっているのだろう。ジニーは可哀そうだと思うけれど、なによりもアンの気持ちに寄り添って無茶苦茶腹が立った。ニックはバカです。本当にどうしようもない。

ニックはあのように自分の傲慢を押し通すのならまずグループから抜けるべきでしょう。静かにグループから離れて、彼は「彼の新しい楽しい時間」を勝手に大切にすればいいと思う。変わってしまった今の自分を周りに押し付けるのは傲慢。誰もいい思いはしない。迷惑。

そして「冬」でニックの苦労を知る。ざまぁみろだ。これも私が「もう100%、人の嫁の中年女」である証拠。本当にニックはバカだと思う。バカバカ。可哀そうだなんて一ミリも思わない。しかし展開が急すぎる。あまりうまく消化できなかった。だからプロットに無理があると思った(上記Con 2参照)。

● ケイト+ジャック
ワタシと旦那Aの関係がケイトとジャックにとても似ている。「私がいなきゃあなたやっていけないでしょ」と夫にガミガミ言う。あ、ワタシだ。これもワタシ。ゾッとして青くなる。いや「ワタシ達だ。ね、これワタシ達だよね」と旦那Aを振り返る。ニヤニヤ笑いをする旦那A。かわいそうに。  外から見ると、私も/うちもこんな感じなのだろうね。なかなか外に見せることもないですけどね。似てるわ。本当に身につまされて居心地が悪くなった。

でも「冬」にジャックのヒーロー場面が出てきてよかった。

● ダニーとクロード
彼らはゲイのカップルのせいか、あまりうんうんと頷く場面もなく、ただ微笑ましいと思った。そういえばニックとアン、ジャックとケイトの場面は、苦しくなるほど恥ずかしい場面も沢山あるのに、このゲイの二人の場面はあまり恥ずかしい場面もない。ダニーは最初から最後まで一番かっこいいクールな人だし、クロードはかわいい。

おかしかったのは、「春」にダニーに激怒したクロードが一人で宙に向かってイタリア語で文句を言い始めた時。イタリア語はわからないが、おそらく「もうやってられないわ。いつもこうなんだから」とかなんとか叫んでいたのだろう。これもワタシ、やるやる。旦那Aに猛烈に怒った時は日本語で宙に向かって悪態をつきまくる「冗談じゃないわ、やってられないわこのおとこ!」などとと私も言う。日本語のわからない旦那Aは困って立ち尽くす。クロードの怒り方を見て一人ゲラゲラ笑った。


というわけで、こんな感じです。また自分語りをしましたね。だってあまりにもリアルだもの。だから面白かった。痛いね。やれやれ。


アンのことで「…挑戦しなくなった。頑張らなくなった」とあったけれど、人は「挑戦をしなくなる、自ら戦いの場に上がらなくなる」ことで、やっと人生を俯瞰して見ることができるようになるのも事実なのです。(いい意味で)リラックスして物事に距離を置く姿勢は、年を取ったからこそできるようになることでもある。それは悪いことばかりだとも思えない。


今度、このドラマの元ネタの1981年の映画を見てみようと思います。時代が違うので設定がかなり違う。今の私は主人公達の年齢を超えているけれど、1981年はまだ高校生だった。当時は男女や夫婦の関係も今とは全く違うので、今と比べると面白いだろうと思う。また感想を書こうと思います。


どうやら次のシーズンがあるらしいけれど、あまり期待していない。あれで終わっていいと思う。続きの話を作るには複雑すぎ。どうするつもりだろう。


2025年5月27日火曜日

仏/英ドラマCanal+/BBC『Marie Antoinette』シーズン2 (2025):フランスの歴史と実在の人物達に対する侮辱でしょう





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『Marie Antoinette (2025) Season 2 -8 Epsode/仏/カラー
/1話52 m/クリエイター:Deborah Davis』
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18世紀フランスの宮廷。王妃マリー・アントワネットのなんちゃって伝記大河ドラマ。なんと…こんなにありえないほど酷いドラマをシーズン2までやってしまうとは。あきれかえる。

米国での放送は公共放送ネットワークPBS(Public Broadcasting Service)。米国での放送スケジュールは2025年3月23日から5月11日まで。

シーズン2は首飾り事件を中心に革命の始まりの頃(1789年)までを全8話で描いた。




これから辛口以上の毒を吐くので、このシリーズを楽しんだ方はお読みにならないように。



これはゴミ。もう何の疑いも無くゴミ箱行き。こんなに酷い…歴史上の人物の名前で描くエログロの下品な茶番ドラマ。さすがにもう見なくてもいいと思った。一応最後まで見たけれど、毎回毎回腹が立ってしょうがない。それに見どころの創作ゴシップの茶番は本当につまらなくて、見ながらウトウト寝そうになった。最悪です。

クリエイターはDeborah Davis氏。このお方は(シーズン1でも私は文句を言ったのだけれど)…英国のアン女王の名前を借りただけの下世話なオンナの戦いの映画『女王陛下のお気に入り/The Favourite』の脚本を書いただけでなぜか沢山の賞をとってしまい…。ロクでもないですね。あんな下品な映画。オンナのドロドロを描きたいなら現代劇で描けばいいのに。なぜ王族の名前を引っ張り出してくるのよ。

映画『女王陛下のお気に入り/The Favourite』(2018):醜い女の戦いに笑う ◀レビューは結構褒めてますけど下品だとは言っている

その悪いやり方を…このお方はこんどはフランス国のマリー・アントワネットでやらかした。もうやめてくれよ。Deborah Davis氏がその『女王陛下のお気に入り/The Favourite』の後で何を書いたのかを調べたら、あれ以降何も書いてないのですね。『The Favourite』の脚本の一発屋。そんな人にマリー・アントワネットを書かせるのは無謀でしょう。この人の視線は下品。女同士の争いごとにしか興味がないのだろう。歴史上の人物に対するみじんのリスペクトも感じられない。吐き気がするぐらい酷い。


主人公のマリー・アントワネットが、髪の毛ボサボサのフェルゼンとソファーでいちゃいちゃしている場面にルイ16世がやって来て一緒に会話をする?バカですね。感覚がおかしい。無茶苦茶腹が立った。

なんかゾッとするように酷い場面の連続で怒り爆発。これは俳優さん達が可哀そうだと思う。あれじゃいい芝居なんてできない。これだけイライラさせられる主人公のその後の悲劇を(もしシーズン3があるのなら)これからどのように描くのか?今の時点でマリーさんの好感度はゼロです。なぜこのドラマは大切な主人公をあんなアバズレに描くのだろう。歴史上の人物に対してあまりにも酷い扱い。


まずこのドラマで何を見せたいかのコンセプトが不明。綺麗な衣装のキラキラ貴族生活を描きたかったのなら、仏革命の時代はあまりにも重すぎる結末。脚本も笑止千万。なぜか俳優を欧州各国から集めているのに(英語の劇に慣れていないのか)皆大根。だったらフランス語でやればいいのにと思うが、クリエイターが英国人なので出来なかったのだろう。衣装のことは私にはわからないがあの髪型はだめでしょう。みな白いウィグを被ってくれなきゃ困る。マリーさんはポマードでゴチゴチに固めた巨大な髪に金粉を振っていた大爆笑。歴史を描く意志なし。政治を描く意志もなし。思想もなし。哲学もなし。描いているのは何の中身も無いクリエイターの創作ゴシップのみ。とても退屈。見る価値は一ミリも無し。本当にゴミ作品。

せっかくベルサイユ宮殿のロケまで許可してもらいながら、これだけ酷い作品にしてしまうのならやらないほうが良かったですねと思う。

(よくある事だけれど)英国/アングロサクソン人に他国の歴史を描かせてはいけない笑。よその国を馬鹿にするにもほどがある。もしフランスの人々がこのドラマを、彼らの歴史と歴史上の実在の人物達に対する侮辱だと受け取っても私は驚かない。いや調べたらフランスの批評家はこのドラマを酷評しているそうだ。やっぱりね。彼らに同意する。だから今度はフランスの制作の「マリー・アントワネット」を描いて欲しい。


というわけで最悪最低のドラマ。見る価値は無し。


最後は突然民衆がベルサイユに押し寄せる場面で終わったけれどあれは1789年10月5日のヴェルサイユ行進?あそこに至るまで何が描かれてた?もう最後の方は見る気が無くなっていてきちんと追っていなかったせいか、突然10月になっていてビックリした笑。ジャンヌの最後も早過ぎ。デタラメですね。


仏/英ドラマCanal+/BBC『Marie Antoinette』シーズン1 (2022):子供だまし!『ベルばら』を読んだ方がいい


2025年4月15日火曜日

英ドラマ Netflix『アドレセンス/Adolescence』(2025) リアリズムを極めた実験作






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『Adolescence』 (2025) TV Mini Series/英/カラー
/1話51–65分・全4話/
クリエイター:Jack Thorne, Stephen Graham』
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Netflixのドラマ。話題になっていたので見た。2週間前に見終わった。忘れる前に感想を書かなければ。


これは様々な意味で実験作。

まず第一にカメラワーク…
全4話の各エピソードが 1話ワンカットで撮影されている。1話目からずいぶん長いカットだとは思ったのだが、1話を通して全部だとは知らなかった。本当か?すごいと思う。

Netflixに短い「Making Of …」があったので見たけれど、カメラマンがカメラを手で持って役者と共に移動し、そのままカメラをクレーンで吊ったりドローンに運ばせたりして撮影を続けている。恐ろしいほどのハードワークだと思う。画面の中に映る全てが計算されて撮影されていることに驚く。

例えば…カメラが人物Aと共に廊下を歩いて進み、角を曲がる時にはカメラの目線が別の人物Bを追い始めて、その後Bと共に人物Cの待つ次の部屋に移動しそのままBとCの会話を聞く…全て事前に役者全員のアクションを計算して画面が作られている。まさか全てがワンテイクだとは思っていなかったので後で知って驚いた。これ、役者さんが途中で台詞を言い間違ったりしなかったのだろうか?

そのワンテイクの撮影のおかげで、映像がとても生々しい。カメラマン(見ている視聴者の目線)が役者さんと共に部屋の中にいてその場で何が起こっているのかをライブで目撃しているような気分になる。静かな会話の時には人物達の隣にいてその話を聞いているようだし、人物が野外で大声を出せばそれを近くで目撃しているようだ。私達視聴者は、ストーリーの中の人物達と常に一緒に行動している。彼らが見ているものを私達も一緒に歩きながら見る。人物が泣けば彼が目の前で泣いているように悲しくなる。

このワンテイクのカメラワークがまずこのドラマでの一番大きな achievement であり特徴なのだろうと思った。そしてその生々しいカメラワークのおかげで、役者さん達の素晴らしい演技や台詞がますます生々しく感じられる。まずそのリアリズムがすごいと思った。

脚本も俳優さん達の演技も演出も素晴らしい。これがドラマであることを忘れてしまうほどだ。


そしてもう一つは話の構成…
「13歳の少年が殺人を犯した」話であるにもかかわらず、予期されるようなドラマの流れではなかったことも、私にはリアルで実験的だと思えた。そのリアリズムが視聴者を唸らせる。「もしこれが私に起こったらどうすればいいだろう?」と考えさせられる。

答えのない苦しみ…。私はこのドラマの父親の目線に近い位置で見たのだと思うが、最後はただただ悲しかった。本当に悲しい話だった。本当にどうすればよかったのだろう。答えはない。




★ネタバレ注意




ドラマはたった4。最初に「少年の殺人事件」だと聞いてドラマを見始めたときには、私はこの手のドラマによくある話の結末を予想していた。

まず
誰がやったのか?本当に少年がやったのか?冤罪?なにか裏の話があるのではないか?(推理小説のような)びっくりするオチがあるのではないか?「ああなるほど」と思えるような答え合わせを期待した。

● そしてその原因はなんだろう?少年と被害者の関係は?友達は?なぜそうなったのか?環境か?

● そして(まず私が一番最初に思ったのは)少年と親との関係。もしかしたら幼少期に親との関係がこじれていなかっただろうか。第1話目を見て「親が虐待していた」等の可能性はないのだろうと思ったが、それでもなおこの少年が事件を起こすまでになにか心理学的な理由があったのではないかと考えた。

そのような予想をしながら、1話、2話と見続けた。リアルな脚本と上手い役者さん達の演技と、それを捉える親密なカメラワークでどんどん話に引きこまれるようだった。3話目の法廷心理学者と少年の面会の場面では「さぁきたきた」と思ったが決定的な答えは出ないまま。それなら4話目に種明かしがあるのだろうと期待した。本当に最後まで、私は自分が予想した推理小説のような種明かしを期待していた。

その答えは…たぶん最後まではっきりとはわからなかった。おそらく決定的な理由が描かれたわけではないのだろうと思う。

「13歳の少年の殺人」…主人公の少年ジェレミーが殺人に至るまでの様々な理由らしいものはドラマ内で示された。しかしどれも決定打ではない。


ジェレミーはどちらかと言えば弱々しく(かわいいけれど)、思春期の女の子達が好むようなルックスではないのだろうか。どちらかと言えば幼い外見(まだ13歳だからこれから成長するのに)。しかしネット上の情報は13歳の少年の自意識に残酷な現実を突きつける。彼はまだ13歳なのに既に性的な内容のネット情報を閲覧し、できれば25歳の男性のようにかっこよく力強く女の子にモテたい…そうあるべきだとのプレッシャーを感じている。13歳ですでに「これから一生ガールフレンドができないんじゃないか」とさえ悩んでいるのだろう。

思春期の子供たちは(個人差もあるだろうが)男女ともに不安定。少年達がプレッシャーを感じているのなら、少女達が迷うのも同じ。ジェレミーを馬鹿にして笑いものにした女の子ケイティ(被害者)も深い意味なかったのだろうと思う。しかし(まだ子供だからこそ)思慮のない彼女の言動は、繊細な少年には辛いものだったのだろう。

折からネット上では、そんなあいまいな立ち位置の少年たちが陥りやすい場所が存在していた。事件を調べる警部補ルーク・パスコムは息子からその情報を得る。

被害者の少女ケイティはインスタグラムの投稿でジェイミーを「インセル」と呼び、彼に対するネットいじめを主導していた


 Incel:involuntary celibate(インセル)とは
インターネットカルチャーの一つ。自らを「異性との交際が長期間なく、結婚を諦めた結果としての独身」と定義し、女性蔑視を行うインターネットコミュニティのメンバー(主に白人、男性、異性愛者)。  "involuntary"(意図したわけではない)と"celibate"(禁欲、不淫)の2語を組合せた混成語。主にアメリカ合衆国やカナダなどで使用されている。

 Manosphere(マノスフィア)とは
男らしさ、女性蔑視、反フェミニズムを推進するウェブサイト、ブログ、オンラインフォーラムなど、男性中心のコミュニティー。女性を単純な性的ステレオタイプに還元したり、男性の孤独や社会的挫折の原因がフェミニズムにあるとするなど、女性蔑視的な見解がしばしばみられる。


そのように…思うようにならない状況から、ネット上の「女性蔑視」に繋がりかねない情報に触れる少年も多いのだろう。



第1話では少年ジェレミーが警察署へ連行され拘留室に収監される様子が描かれた。

視聴者は第2話で荒れた中学校の中で追い詰められたジェレミーの状況を知らされる。またジェレミーの友人ライアンがジェレミーにナイフを渡したことも出てくる。ケイティの親友ジェイドがライアンを責めるが、その理由ははっきりとは示されていない。

第3話は事件から7か月後、法廷心理学者のブリオニーとジェレミーとの面会。ここでジェレミーの激しやすい性格、そしてジェレミーの孤独を知る。数秒ごとに変化するジェレミーの言葉遣いや表情に驚かされる。

私は第4話で「なぜジェレミーが殺人を犯したのか」の種明かしがあると思っていたのだが、第4話の場面は13か月後。ドラマはジェレミーの家族の日常を描いている。そこに「事件」の種明かしを示すものはない。ただ少年の家族がその後どのように過ごしているのかを描くのみ。彼らの様子を見ていて、ミラー家の家族に事件の原因となるような裏話はなかったことを知る。彼らはただ「普通の幸せな家族」だった。

最後まで「なぜジェレミーが殺人を犯したのか」のはっきりとした種明かしはない。


ストーリーはただ「起こったこと」の「その後」を描写するのみ。様々な理由は少しづつ示されたけれど、よくある推理小説のような「実はこれこれで…」などという説明はない。

このドラマは普通の家族に起こった「事件」を、ただただ次に何が起こっていくのかのリアルな描写のみで完結させている。

この「少年の殺人」に納得のできる理由付けはない。決定打もない。この種明かしをしない話の構成が殺人事件を扱ったドラマとしては実験的なのだろうとも思った。


そして実はこれが現実に近いものなのかもしれないともあらためて思わされた。

…何がいけなかったのか、なにが原因だったのかわからない。

「もしクラスメイトがそうなったら」「もし自分の子供がそうなったら?」「もし同じ町の近所のお子さんがそうなったら…」などと考えさせられる。


私は最後まで…いや、今も、もしかしたら犯人はジェレミーではないのではないか…とさえ思っているほどだ。ドラマなのに生々しくて、ミラー家の人々がまるで知り合いでもあるかのようにさえ感じた。最後のお父さんの涙はとにかく悲しい。

悲しい。ただただ悲しい。どうにもできない。理由も無い。納得もできない。

ただ現実に事件は起こってしまった。

納得のいく説明がないから、気持ちだけが宙に浮いたまま。
涙を流すお父さんの気持ちがわかって最後はただただ悲しかった。


2025年2月27日木曜日

歴史メモ:1859年ソルフェリーノの戦い(Battle of Solferino)に至るまで・イタリア独立までの歴史



昨日、独ドラマ Netflixの歴史ドラマ『皇妃エリザベート/Die Kaiserin/The Empress』のシーズン 2 の感想を書いたのだけれど、旦那Aとこのドラマについて話していて出てきた疑問…

シーズン2の最後にハプスブルグの皇帝フランツ・ヨーゼフ1世が出陣した戦闘は「イタリア独立戦争」のどの戦だろう? 

答えは1859年。オーストリア対フランス・イタリア連合軍の大戦(6月24日ソルフェリーノの戦い)に向かって皇帝自らが出陣する様子が描かれていた。その戦に至るまでの政治情勢を調べたので記録する。



まずは戦に至るまでのオーストリアとイタリアの歴史から

ウィーン会議(1814年~1815年)
(Wiener Kongress/Congrès de Vienne/Congress of Vienna)
1814年から1815年にかけて、オーストリア帝国の首都ウィーンにおいて開催された国際会議。オーストリアの外相メッテルニヒが議長を務め、ヨーロッパ諸国の代表が集った。会場はシェーンブルン宮殿。

フランス革命とナポレオン戦争終結後、ヨーロッパの秩序再建と領土分割を目的として、オスマン帝国を除く全ヨーロッパ各国代表が集まり、1814年9月1日から開催された。

会議を主導したのは議長国オーストリアのほか、イギリス、プロイセン、ロシア。戦後の混乱の後、勢力均衡を維持し回復する力を有した欧州の大国同士が、相互に均衡を維持し合う国際秩序(ウィーン体制)を構築する目的で行われた。

オーストリア帝国からは…
君主:皇帝フランツ1世(フランツ・ヨーゼフ1世の祖父)
全権:外相メッテルニヒ公爵クレメンス・ヴェンツェル・ロタール


オーストリア帝国の北イタリア支配
ウィーン会議で決められたオーストリア帝国のイタリア支配とは…

イタリア北部のロンバルディアと旧ヴェネツィア共和国領を獲得、オーストリア皇帝が王を兼ねるロンバルド=ヴェネト王国とする。

オーストリア帝国が北イタリアを支配することが決定された。


ロンバルド=ヴェネト王国
(The Kingdom of Lombardy–Venetia/Regno Lombardo-Veneto/Königreich Lombardo-Venetien)
ウィーン会議にて1815年6月9日に公式に成立。

ミラノ公兼マントヴァ公であったオーストリア皇帝フランツ1世(フランツ・ヨーゼフ1世の祖父)がロンバルド=ヴェネト王フランチェスコ1世となる(在位:  1815 – 1835)。それ以後もオーストリア皇帝が国王を兼ねた。

次代皇帝はフランツ1世/フランチェスコ1世の長男・フェルディナンド1世(在位:1835–1848)(フランツ・ヨーゼフの伯父)。



1848年革命/Revolutions of 1848
1848年からヨーロッパ各地で起こり、ウィーン体制の崩壊を招いた革命。1848年から1849年にかけて起こった革命を総称して「諸国民の春/springtime of the peoples/Printemps des peuples/Völkerfrühling/Primavera dei popoli」とも呼ばれる。


1848年までのイタリアの状況
ウィーン体制下のイタリアは

南部に両シチリア王国(スペイン・ブルボン朝系)、
中部に教皇国家
北部にトスカーナ大公国(オーストリア・ハプスブルク朝系)、
   ルッカ公国(スペイン・ブルボン朝系)、
   パルマ公国(スペイン・ブルボン朝系)、
   モデナ公国(オーストリア・ハプスブルク朝系)、
   サルデーニャ=ピエモンテ王国
   ロンバルド=ヴェネト王国
   (オーストリア・ハプスブルク朝系)

が割拠しており、復古体制に対する不満は1821年のカルボナリの蜂起、1831年のジュゼッペ・マッツィーニの青年イタリア結成などに現れていた。


1848年革命時の北イタリアの状況
1848年---------------------------------------
1月、シチリアのパレルモで暴動が起こり、両シチリア王国からの分離独立と憲法制定が要求され(シチリア革命)、これを第一波として革命がイタリア各地に波及した。

3月にはオーストリアの支配下にあったロンバルディアとヴェネツィアの民衆が反乱を起こして現地のヨーゼフ・ラデツキーの率いるオーストリア軍に勝利し(ミラノの五日間、ダニエーレ・マニンのヴェネト共和国建国)、サルデーニャ=ピエモンテ国王カルロ・アルベルトに介入を要請した。要請を受けたカルロ・アルベルトは早くも3月23日にはオーストリアに宣戦を布告。第一次イタリア独立戦争が始まった。

しかし初めはサルデーニャ=ピエモンテに援軍を送っていた教皇国家と両シチリア王国が途中で戦線から離脱。それに対し本国からの援軍を受けて体勢を立て直したオーストリア軍はラデッキーの指揮の元、7月2425日のクストーツァの戦いでサルデーニャ=ピエモンテ軍を破る(オーストリア勝利)

8月6日にミラノはオーストリアに再占領され、ロンバルディア臨時政府は解散させられた。両国は8月9日に休戦。停戦協定が結ばれた。

1849年---------------------------------------
休戦後、革命は急進化し、1849年2月には教皇国家におけるマッツィーニのローマ共和国建国、トスカーナにおける革命の激化を見るに至って、サルデーニャ=ピエモンテはオーストリアに対する戦争を再開。しかし3月23日のノヴァーラの戦いに敗れて、サルデーニャ=ピエモンテ国王カルロ・アルベルトが退位7月には息子のヴィットーリオ・エマヌエーレ2世が即位した。

残るローマ共和国はフランスの軍事介入により6月29日に崩壊。ヴェネト共和国8月24日にオーストリアに降伏。ヴェネツィア臨時政府も解散させられ、イタリアにおける革命は打倒された。

こうしてイタリア全体に復古体制が復活する中、サルデーニャ=ピエモンテの新国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世が立憲君主制を維持し、その後のイタリア統一運動の中心地となった。


1848年革命時のオーストリアの状況
宰相メッテルニヒが1815年以来ウィーン体制の維持に努め、ヨーロッパ諸国の民族主義、自由主義運動を弾圧していた。

1840年以来の不況と貿易赤字、1847年からの飢饉による農村の危機、多額の軍事支出によって国家財政は逼迫していたが、フランス二月革命の背景の一つである金融恐慌がウィーンにも及び、メッテルニヒ体制は動揺。

1848年フランスの二月革命/Révolution française de 1848の成功(王政が倒れ第2共和政となる)が伝えられた影響により、オーストリアの宮廷には自由主義的改革要求が提出された。3月13日に学生の一部が議事堂に押しかけてメッテルニヒの退陣と憲法の制定を要求、ウィーン市内に暴動が拡大。メッテルニヒは辞任してロンドンに亡命した(ウィーン三月革命)。5月15日には新憲法に反対の暴動が起こる。皇帝一家は避難。

その頃北イタリアでは、オーストリアのラデツキー軍が7月24日、25日のクストーツァの戦いでサルデーニャ=ピエモンテ軍を破る。オーストリア国内でも反革命が巻き返し民衆を鎮圧。

※参照
ヨハン・シュトラウス1世作曲
『ラデツキー行進曲/Radetzky-Marsch/Radetzky March』
この曲は1848年7月クストーツァの戦いでのラデッキー軍の大勝利の祝典のために書かれた曲だそうだ。帝政が廃止された現在のオーストリア共和国でも国家を象徴する曲であり、国家的な行事や式典でたびたび演奏されている



10月6日にはハンガリー支配の反対派がウィーンにて蜂起、市街戦となる(ウィーン十月蜂起)。皇帝一家は避難。

11月21日にシュヴァルツェンベルクが首相に就任。12月2日に皇帝フェルディナント1世が退位。弟フランツ・カールの長男・甥のフランツ・ヨーゼフ1世に譲位。

フランツ・ヨーゼフ1世は18歳で皇帝に即位。同時にイタリアのロンバルド=ヴェネト王国の国王フランチェスコ・ジュゼッペ1世(在位;1848 – 1859)として即位。



フランスの介入…イタリアとの同盟
その前に…
1851年、ナポレオン1世の甥・ルイ・ナポレオンが国民議会に対するクーデターを起こし独裁権力を掌握。1852年に皇帝に即位して「ナポレオン3世」と名乗るようになる。

フランス皇帝ナポレオン3世はイタリアの解放運動に対して好意的であり、フランスの国益などの複合した思惑からイタリア介入を決意する。

1858年7月サルデーニャ=ピエモンテ王国の首相に就任したカミッロ・カヴール伯爵がフランス皇帝ナポレオン3世と会談、「プロンビエールの密約」を調印…反オースリア同盟を締結。

それによりサルデーニャ王国がオーストリアから攻撃を受けた場合、フランスはサルデーニャ王国を援助すること、そしてサルデーニャ王国はオーストリア領のロンバルド=ヴェネト王国、パルマとモデナの両公国それに教皇国家のレガツィオーネを併合することになるが、その見返りにサルデーニャ領のサヴォワとニースをフランスに割譲することを決めた。

フランスにとっては敵国であるオーストリアを弱体化させる意図があった。またトスカーナ大公国は、教皇領の一部を加えた上で中部イタリア王国とし、君主をハプスブルク家からフランス皇帝の従弟のプランス・ナポレオンに替えること、そして南部の両シチリア王国は現状のままとされた。


オーストリアと南伊・両シチリア王国の同盟
その頃1859年 2月、オーストリア・ハプスブルグ家皇后エリザベート(バイエルン王ヴィッテルスバッハ家)の17歳の妹マリア・ソフィアが、両シチリア王国のフランチェスコ2世に嫁ぐ。この結婚には政治的な意図があった。
その様子はドラマ内で描かれていた

北イタリアを統治するオーストリアは、各地で起こっていたイタリア独立運動、それからフランスの北伊サルデーニャ王国への介入などに対抗し、イタリア南部の両シチリア王国と姻戚関係=同盟関係を結ぼうとした。



第二次イタリア独立戦争(1959年)
(Seconda guerra d'indipendenza italiana/Zweiter Italienischer Unabhängigkeitskrieg/deuxième guerre d'indépendance italienne)
1859年にフランス第二帝政とサルデーニャ王国の連合軍がオーストリア帝国と戦った戦争

1859年、フランスと同盟を結んだサルデーニャ王国カブール首相はオーストリア国境近くでサルデーニャ軍を行軍させてウィーン当局を刺激。オーストリアは4月23日にサルデーニャ軍の動員を解除するよう要求するが聞き入れられず。オーストリアは4月29日にサルデーニャに宣戦布告、ピエモンテに侵攻。フランスも参戦することになる。

● オーストリア軍:兵士19万8000、大砲824門
 総指揮官・フランツ・ヨーゼフ1世
● サルデーニャ軍:兵士5万6000、大砲90門
 総指揮官・国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世
● フランス軍:兵士12万8000、大砲312門
 総指揮官・ナポレオン3世

6月4日 マジェンタの戦い
イタリア勝利。オーストリア軍はロンバルディアの大部分から撤退
ナポレオン3世とヴィットーリオ・エマヌエーレ2世はミラノに入城
6月24日 ソルフェリーノの戦い
イタリア勝利=フランス=サルデーニャ連合軍の勝利。ナポレオン3世とオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世が陣頭に立った戦闘では両軍とも3万人近い死傷者を出した。オーストリア軍はヴェネツィアの背後にある四角要塞地に後退。

ドラマのシーズン2の最後にフランツ・ヨーゼフ1世が軍を率いてイタリアに出陣する様子が描かれていた


ソルフェリーノの戦いの意味
第二次イタリア独立戦争中の1859年6月24日イタリア北部ロンバルディア地方のソルフェリーノを中心に行われた戦闘。

ナポレオン3世率いるフランス帝国軍と、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世率いるサルデーニャ王国軍の連合軍が、フランツ・ヨーゼフ1世率いるオーストリア帝国軍と戦った。

フランス・サルデーニャ連合軍が勝利した。

この戦いは世界戦史上、交戦当事国の君主が親征に出て軍を指揮した最後の大きな戦闘としても知られている。

この戦いの後、フランスとオーストリアの間で和平条約が結ばれ、オーストリアはイタリアに対する影響力を喪失した。

ちなみに、この戦いの後戦場を目撃したアンリ・デュナンは、戦場の惨状に強い衝撃を受け「ソルフェリーノの思い出」と題した書籍を出版。ジュネーブ条約と国際赤十字の設立につながるプロセスに着手した


終戦と戦後
ソルフェリーノの戦場を視察したナポレオン3世は犠牲者の多さに仰天、ヴェネツィアを征服するために要する時間と犠牲を恐れ、また国内からの反対や、プロイセンの介入の可能性、そして強力になりすぎるサルデーニャ王国への懸念も相まってフランスはこの時点で講和を模索。

1859年7月11日、ナポレオン3世は同盟国のサルデーニャ王国に伝えることなく、ヴィッラフランカでフランツ・ヨーゼフ1世と会見。停戦に合意した(ヴィッラフランカの講和)オーストリアはヴェネツィアを保持するが、ロンバルディアはフランスに割譲、フランスが即座にこの地をサルデーニャ王国に譲渡することになった。その他のイタリアの国境は現状維持する。

カヴール首相は戦争遂行を主張したが、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世が却下したため辞職。12月、トスカーナ、モデナ、パルマ、レガツィオーネは中央統合諸州に統一され、サルデーニャ王国との合併が表明された。1860年3月までにサルデーニャ王国は北部と中央イタリアのほとんどを支配した。



南イタリアとイタリア王国の成立
カヴール首相は南イタリアを支配する両シチリア王国を併合することは考えていなかった。1860年5月軍事家ジュゼッペ・ガリバルディが千人隊(赤シャツ隊)を率いて、両シチリア王国のメッシーナ、パレルモで起きた民衆の反乱を援助し、9月に両シチリア王国を滅ぼした。そして10月、征服地をサルデーニャ王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世に献上してイタリア統一に貢献した。

1861年3月14日、サルデーニャ議会はヴィットーリオ・エマヌエーレ2世をイタリア王と宣言し、イタリア王国が成立した。



※参照
映画『山猫/Il Gattopardo/The Leopard (1963)』
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
1860年、イタリア統一戦争のさなかのシチリア島。シチリアの名家の当主でサリーナ公爵であるファブリツィオはパレルモの近郊に住む貴族。ガリバルディの赤シャツ隊がシチリア島に上陸すると、甥のタンクレディはガリバルディの軍に合流する。シチリア王国の貴族の若者がガリバルディのイタリア統一運動に参加する様子が描かれている。その後タンクレディはサルデーニャ王ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世の政府軍に加わっている。

◆ 映画『夏の嵐/Senso (1954)』 
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
1866年、第三次イタリア独立戦争の頃のオーストリア占領下のヴェネツィアでの、イタリアの伯爵夫人とオーストリア軍の将校との恋を描いた。





2025年2月26日水曜日

独ドラマ Netflix/Sommerhaus Serien『皇妃エリザベート/Die Kaiserin/The Empress』(2024) シーズン 2:目線を変えれば最高の素材なのに





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『Die Kaiserin』(2024) TV Series-Season 2/独/カラー
/約50分・全6話/制作:Katharina Eyssen』
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シーズン2を見終わった。お姫様物語としては勢いがなくなった。しかし反対にもっと面白くなったとも言える。


私はシーズン1の感想で、このドラマは「重厚な歴史ドラマで面白くなりそうだ」などと書いたのだけれど、ネット上で他の人の感想を読んでみると…、皇妃エリザベート(の周り)の史実を知っている人ほど「史実と違う茶番である」と怒っているようで…。 私が少し前に『マリー・アントワネット』のドラマを見て憤慨していたのと同じように、歴史ファンのなかにはこのドラマにがっかりした人々もいたようだ。史実に詳しいと、ドラマを見る目はどうしても厳しくなりますね。

その史実と違うシーズン1の問題とは…、
フランツ・ヨーゼフ皇帝の弟のマキシミリアンがエリザベートに惹かれ、またマキシミリアンが兄のフランツ・ヨーゼフをライバル視していて、そのためロシアのプリンスをけしかけてフランツを困らせて…などというのはとんでもない話だそうだ笑。それに革命家のApafi 伯爵夫人が宮殿に忍び込むのもありえない、それから人物達の髪型や衣装も時代に合っていない…などなど気に障ることが結構多いらしい。

まぁともかくそれはおいといて…



さてシーズン2は、そのようなトンデモな内容はあまりなかったのではないかと私は思ったけれどどうだろう。このシーズン2では…誰と誰が好きで嫌いでライバルで嫉妬して…などのゴシップ的なものはあまり無く、むしろハプスブルグ家のオーストリアと周辺国との関係はどうなっているのか…などの歴史的な話がよく描かれていたように思った。

皇帝の弟のマキシミリアンはベルギー国の王女シャルロッテと結婚。イタリアのロンバルディア州ミラノに総督として、またロンバルディア・ヴェネトの副王としてイタリアに居住。

ハプスブルグ家の支配に抵抗していたイタリアの民衆の様子が描かれ、またそのイタリアの後ろにはフランスのナポレオン3世がついていて、(反オーストリアの)イタリアにフランスが武器提供をしている…などなど政治情勢が描かれているのがとても面白い。

ハプスブルグ家と軍隊がドイツ語を話し、イタリアの民衆はイタリア語で文句を言っている。フランツ・ヨーゼフとエリザベートが北イタリアを訪ねれば民衆の目線が厳しくていたたまれない。そして場面が変わればオーストリアとイタリアの様子を見守るフランスのナポレオン3世がフランス語で話している。

3つの国がそれぞれの言語で会話をしているのに興奮する。そうそうヨーロッパの歴史を描くのであればそうでなくちゃ…言語が変わるだけで私は無茶苦茶興奮した。この辺りの歴史には疎いのでネットで調べて勉強。なかなかいい。ヨーロッパの政治情勢をハプスブルグ家を通して描いているのが本当に面白い。…「ピエモンテ州が立ち上がった」と聞けばGoogle mapを開いてチェックする。面白い~。


しかしながらこのシーズン2、主役のエリザベートにはあまり輝く場面がない。それがこのドラマの根本の問題だと思った。

結局(わかっていたことではあるのだけれど)このエリザベート皇后というお方は、ティーンの頃にハプスブルグ家の皇帝に見染められて嫁入りするのはいいけれど、その後は不幸が続くことが多く、女性視聴者の喜ぶような色恋などのふわふわした話はほぼ描けないお方。…不幸が引き金になって彼女はオーストリアの宮廷生活にも馴染まず、子供も義母に取られ、結果宮廷での生活を避けていつも旅ばかりしているような女性で…、考えてみれば(おそらく)Netflixが期待したような「お姫様物語」が描けるような人ではない。彼女はそのような素材ではない。


しかし彼女が生きた時代の欧州は歴史的に見てかなり面白い時代…もしNetflixが意を決して欧州の激動の時代の大河ドラマを描こうとするならば最高の素材。例えばこのままの配役で(エリザベートはもっと似ている女優さんを連れてきて端役にして)、タイトルを『Habsburg/ハプスブルク』などにして当時のオーストリアの状況を描いた大河ドラマをつくればとても面白かっただろうに。いや~本当にもったいない。

それにもかかわらずこのドラマシリーズは、そこそこ知られている「悲劇のオーストリア皇后」のドラマを彼女のネームバリューだけで作ろうとしたのではないか。


というのもこのシーズン2を見た後でWikipediaを見たら、このドラマ…シーズン3で完結なのだそうですよ。あと6話で終わってしまうのだそうだ。なんとなんとなんと…え~本当か。ということは…せめてマキシミリアンのその後(メキシコ)は描かれるだろうとしても、おそらく息子ルドルフのマイヤーリンクは描かれませんね。あと6話だけなら無理だろう。それにエリザベート皇后も(ハンガリーとの関係以外は)ますます旅に出るばかりでウィーンの宮殿に寄り付かなくなってしまう…となれば宮殿での暮らしを描くこともできない。やっぱりこれは元々長続きする素材ではなかったのだろう。


しかしもったいないな~。できればハプスブルグ家の最後の様子をフランツ・ヨーゼフを中心に描いてもらいたかった。うん それなら見たい。本当に見たい。

イタリア語とフランス語とドイツ語が出てきて、そこにハンガリー語とロシア語、英語などの台詞が加わるドラマだったら面白かっただろうな~。いつかそういうドラマを作って欲しい。ドイツかオーストリアが本気を出してそういうドラマを作ってくれないものかな。





2025年1月23日木曜日

独ドラマ Netflix/Sommerhaus Serien『皇妃エリザベート/Die Kaiserin/The Empress』(2022) シーズン1:歴史もの…これはとても期待できると思う





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『Die Kaiserin』 (2022) TV Series-Season 1/独/カラー
/約50分・全6話/制作:Katharina Eyssen』
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去年の年末から見始めたドラマ。すでにシーズン2の途中まで進んでいるのだけれど、まずシーズン1の感想を書き留めておこう。


南ドイツの Königreich Bayern/ Kingdom of Bavaria/バイエルン王国 ヴィッテルスバッハ家から、オーストリア帝国ハプスブルグ家の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に見染められて嫁入りした美女エリザベート。悲劇のオーストリア皇后として有名なお方ですが、彼女の伝記は私も20代に一度読んだ。それでおおよその彼女のストーリーはわかっている。


嫁ぎ先の姑と上手くいかなかったことから始まって彼女の人生は悲しい話が多い。しかし本を読んだとはいえ随分昔の話なので細かいことは覚えていない。Netflixに彼女のドラマを見つけたので、単純に歴史もののドラマとして楽しめるかと思い見始めた。


シーズン1は6話。主人公のエリザベートが姉のお見合いについていったら、姉のお見合い相手だった皇帝に見染められて結婚することになってしまう。シーズン1はこれから始まる彼女の人生の大河ドラマのイントロ的なシーズン。前半はフランツとの出会い、そして後半は当時のオーストリアの政治情勢や、サブ・プロットとして皇帝の弟マキシミリアンの問題などが少し描かれている。

まだストーリーは始まったばかりなので踏み込んだ感想は書けないけれど、全体の印象はドイツが本気を出した大河ドラマ…本格的、豪華で重厚、真面目な歴史大河ドラマ。印象はかなりいい。


2022年だったか…フランスが関わったマリー・アントワネットのドラマはあまりにも若者向けのふざけた茶番劇で、歴史ドラマとしてはあまりにも酷く閉口したのだが(フランスは未だにマリーアントワネットのまともなドラマが作れないらしい。ギロチン送りにしてバツが悪いのだろう)、このドイツ制作のドイツのお姫様の話はかなりまっとうな歴史ドラマの印象。本格時代劇…「時代に翻弄された女性」のドラマに見えたのでとても期待している。これはかなりいい歴史ドラマになるのではないか。

悲劇のお姫様の話が主題であるとはいえ、当時の欧州の政治情勢が描かれているのも見逃せない。オスマン帝国にロマノフ王朝のロシア、フランスや英国、ドイツとの関係も会話の中に出てくるので、当時の状況を確認しながら見ている。歴史ドラマは歴史を調べるきっかけになるのが楽しい。


皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の弟・マキシミリアンがかなりの曲者に描かれていて(彼の人柄が史実なのかどうかはわからない)、彼がドラマの中のサブ・プロットとして大きな話になるのだろう。この人物の人生もこれからいろいろとある…のは知識として知っている。

それからApafi 伯爵夫人として宮殿に潜り込んだ革命家の女性(フィクションのキャラクター)も重要なサブ・プロット。彼女はエリザベートの親しい友人になる。このキャラクターは『ベルサイユの薔薇』の(フィクションのキャラ)ジャンヌを思い出す(ちなみに史実の「首飾り事件」のジャンヌ・ド・ラ・モットは実在の人物)。


俳優さん達もとてもいい。エリザベートはあまり似ていないが演技は上手い。長身で優男のハンサムな俳優さんが演じるフランツ・ヨーゼフは本人の若い頃の写真を見ると似ていると言ってもいい。エリザベートの義弟マキシミリアンも結構似ている。ロシアの皇太子アレクサンドル2世の俳優さんの危険なカリスマが素敵。ドラマは歴史の再現なので、人物達が似ているともっと盛り上がる。かなりよく考えられた配役なのではないか。

もう一つの見どころは豪華なセットと衣装。もう素晴らしい素晴らしい素晴らしい…。これも歴史の再現。豪華で綺麗で楽しくて楽しくて…それだけでも見る価値がある。…あ、そうだ、リストがアイドルとして出ていた!笑

全編ドイツ語。その響きもとてもいい。時々耳に聞こえてくるドイツ語の単語を確認しながら見るのも楽しい。


さてシーズン2も見始めていますが、これからもエリザベートの姑との不仲、フランツのエリザベートへの変わらぬ愛、問題児の義弟マキシミリアン、革命家のApafi 伯爵夫人はどうなるか、土台が揺らぐハプスブルグ家…などなどこれからどれほどのドラマチックな歴史ドラマを見せてくれるのか。期待しましょう。





2024年9月30日月曜日

英ドラマ BBC/HBO『インダストリー/Industry』(2024) シーズン3:沈みゆく船を描く…ものすごい密度の金融業界のドラマ





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『Industry』 (2024) TV Series-Season3/英・米/カラー
/約50分・全8話/
制作:Mickey Down, Konrad Kay』
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英国BBCと米国HBOの制作。米国での放送は HBO チャンネルで2024年の 8月11日から9月29 日まで。全8話。



面白かったです。近年見たドラマの中で一番面白いし一番わくわくした。いいドラマ。世間での評判もシーズンを重ねるごとに良くなっているらしく、最終話の放送のあった昨日、すでにシーズン4も決まったと発表されたらしい。あっぱれ。よくやった!



難しい専門用語

しかしとにかく難しいドラマだ。金融の専門用語が山のように出てくるので素人には本当にわからない。

ただわからないならわからないままでも「これはポジティブね、これはダメなのね、で、この契約が無くなったのね、儲けが出なかったのね…」ぐらい理解できればなんとか見続けることは可能。しかしこのドラマの本当の面白さは、その内容をいかに理解するかにかかっているとも言える。内容が全て理解できればもちろんもっと面白い。


シーズン毎に変わっていったドラマ

それにしてもシーズンを追うごとにこのドラマは随分変わった。シーズン1 の意図は、新入社員の目を通した金融業界の(ステレオタイプ的)魑魅魍魎の実態を見せる…その間に新入社員たちは湯気を出して組んず解れつ…不毛なセックスシーンが多いので鼻白んだ。しかしシーズン3 でのセックスはストーリー上で意味があるもののみ。今シーズンのドラマのメインは、金融業界の緊張するストーリー展開。…大人になったね。ほんと。


その変化を見ていて想像した。
脚本家はシーズン3 を…金融業界の本質に迫ったドラマに大きく飛躍させようとしたのだろうと思った。もう若者達のサイド・ストーリーでお茶を濁さない。生き馬の目を抜くと言われる厳しい業界の現実をドラマとして描こうとしたのだろう。

脚本はもう業界の専門用語を説明することさえ一切せず「分からなかったらネットで調べてね」と言わんばかりに専門用語が雪崩のように降りかかる。すごいですよ。全然わからないもん。アルファベットで略された言葉ばかりで難しいのなんのって…。とうとう脚本家が視聴者を信じ始めた…業界用語は難しいけれど視聴者はなんとか受け止めてくれると思ったのだろう。

それがシーズン3の面白さの要。わからないことが多いからもっと知りたくなる。まるで脚本家から挑戦されたように感じる。受けて立とうじゃないか…金融専門用語チャレンジドラマ。だから字幕をオンにして掘り下げて何度も巻き戻し言葉を確認しながらじっくりと見る。そしてわかればもっと面白い。そして次の週が待ちきれなくなる。

毎週、ドラマは日曜日に放送されるので私はすぐに見る。なんとか話の流れを掴んだ上で、次の週末に旦那Aを連れてきて一緒に見る。そして内容を質問攻めする。わからない言葉を全部説明をしてもらう…1時間のドラマを見るのに毎回2時間以上かかる。それを毎週今まで7話続けた(最終話はまだ一緒に見ていないが大丈夫)。感無量。本当に面白かった。ドラマなのにものすごい労力を必要とするチャレンジ。学ぶ喜び。面白かった。


金融メインの話が面白くなるにつれて個々の人物達のドラマも面白くなった。シーズン1では新入社員たちがわけもわからず振り回されていたけれど、シーズン3では皆が人生と仕事に踏み込んだ話をしているのでドラマとしてもかなり緊張する。ストーリーのスピードが早く一言も台詞を聞き逃せない。だから字幕を出して何を言っているのかをチェックしながら見る。

それにしてもよく詰め込んだものだと思う。会社の問題と個人のプライベート、社会の問題とが絡まり合い、レイヤーにレイヤーを重ねて内容が濃くみっちり詰まっている印象。たった1時間のドラマで8話しかないのに、なんだか大河ドラマを見た気分。昨日は見終わったら背伸びをして「やった~終わったー」と安堵。大きな山を登りきった気分。金融界隈のことがよく学べた。ものすごく知識が増えた。達成感で心地よい。おもしろかった。


脚本、俳優の演技、全てがハイレベル

もう一つ。脚本がよければ俳優の演技が輝く。特にシーズン1で新入社員を演じた3人の飛躍に目を見張る。シーズン3ではそれぞれのキャラクターが彼ら以外には考えられないほど馴染んでいた。彼ら/彼女達も役と共に大きく成長した。エリックやアドラー、リーシなどのキャラクターにもそれぞれに見せ場がある。話が進むにつれてサイド・キャラクターのストーリーも掘り下げ、ドラマ内の世界がもっとリアルにもっと大きく広がっていった。



★ネタバレ注意


シーズン3は、沈没寸前の船・Pierpoint 社の運命を追うストーリー
その大変おおまかなあらすじ

貴族の末裔サー・ヘンリー・マックは環境にやさしいエネルギー会社 Lumi 社を運営。株式公開を目指す。

● ロンドン・シティーの投資銀行 Pierpoint 社のセールス部署…エリックの率いるチーム(ロバートとヤスミン)は、Lumi 社の株式公開をサポート。株式公開の初日は成功するが、Lumi 社は始めから経営困難に陥っていた。結局 Lumi 社との関係は失敗に終わる。

● Lumi 社の失敗はそれを推進した Pierpoint 社の業界内での評判に関わる。またそれとは別に Pierpoint 社は数年前から良識的投資(ESG)を推していたものの、その分野は成績が振るわなかった。おまけに5年前に発行した Pierpoint の社債が満期を迎えようとしていた(元本を返済しなければならない)。

● Pierpoint 社の経営困難を嗅ぎつけたハーパー・スターン(Pierpoint 社の元社員)は自らの経営するヘッジ・ファンド会社 LeviathanAlpha 社で、Pierpoint 社の株を大量に空売りし利益を得ようとする。…それが Pierpoint 社の株価を暴落させる。

● Pierpoint 社の陥った状況とは…
① Lumi 社株式公開での失策で、社の評判を落とし、
② たまたま社債が満期になり元本の返済が迫る
③ 折り重なる ESG 投資への失策、他の株式公開でも失策を重ね
④ そこにハーパーの会社による社の株の大量の空売り
…により Pierpoint 社そのものが存続の危機に陥る。

● 藁をもつかむ思いで Pierpoint 社は、社外からの救済を募り社の存続を画策する。


話の主題は Pierpoint 社の運命。以前は主役だった人物達は、Pierpoint 社没落のストーリーを飾るサイド・キャラクターでしかない(もちろんそれぞれにも興味深いストーリーはあるが)



主要な人物達

Pierpoint社のセールス部署を率いるエリック・タオはこのシーズンで社のパートナー(経営側)に昇進。彼はミッドライフ・クライシスの真っ只中。妻とは離婚協議中。このシーズンでの彼の行動は不安定。しかし彼は全力で沈みゆく Pierpoint 社を救おうとする。見どころは第7話、8話。

● 元  Pierpoint 社の社員・ハーパー・スターンは独自にヘッジ・ファンドの LeviathanAlpha 社を立ち上げ(彼女らしく)攻撃的に利益を求める。そのターゲットは沈みゆく Pierpoint 社だった。社の利益と元同僚ヤスミンとの友情の板挟みになる。見どころは第6話の最後のヤスミンとの会話。恐ろしいほど棘のある台詞の脚本。

● Pierpoint 社に残るヤスミン・カリ・ハナニは、出版会社を倒産させた父親の影に悩みながら日々を過ごしている。貴族ヘンリーとの関係と同僚ロバートとの友情の間で揺れ動く。見どころは第8話。

● 労働者階級出身+オックスフォード大卒の(自信に欠ける)ロバート・スペアリングは懇意にしていた大型投資家の後ろ盾を失い、Lumi 社での尽力も無駄に終わり、Pierpoint 社では捨て駒として使われ途方に暮れている。



シーズン3の話のレイヤー

お馴染みの人物達
たった8話にもかかわらず大量の情報が詰め込まれている。前シーズンからお馴染みの…エリックの迷いと苦悩、ハーパーの攻撃性、ヤスミンの迷い、ロバートの苦悩、そしてもう一人… Pierpoint 社のトレーダー、リーシ・ラムダニのギャンブル癖も第4話で描かれる。

Pierpoint 社救済の緊急ミーティング
…にはトップが集う。30年間 Pierpoint 社と共に生きたFICCヘッドのビル・アドラー、そして同じく30年間勤めたエリック、外部から経営改善のために雇われたCEOのトム・ウォルジー、女性CEOウィルヘルミナ。等々…Pierpoint 社トップのメンバーが、社の救済場面であるにもかかわらず尚もそれぞれの個人のエゴを通そうとする場面も描かれる。速い展開にハラハラする。

外部からは
● 若い貴族サー・ヘンリー・マックは Lumi 社の経営者。
● ハーパーと共に LeviathanAlpha 社を立ち上げたやり手の女性ペトラ・コーニヒ
● 投資家・オットー・モスティンはハーパーとペトラの LeviathanAlpha 社に大型投資。

社会の上層部
ヘンリーの属するプライベート・メンバーズ・クラブには、大型投資家、ヘンリーの貴族の叔父/伯父で出版社の経営者ノートン卿、首相を目指す女性政治家、(過去には)元出版社経営のヤスミンの父などが出入りしていて、英国社会の上層部の内輪で取引が行われている様子も描かれる。

英国社会の様々なレイヤーが描かれている
投資会社の内部…上(CEO)から下(新卒社員)までのそれぞれの様子、政府の内部と金融界とのかかわり、英国社会上層部の集いがそのままビジネスや政治上のコネとして繋がっていく様子…等々がみっちりと描かれている。
…そしてその上で、お馴染みの登場人物達の個々の日常の問題も描かれていて、ま~驚くほど密なドラマ。



脚本…意図的なサプライズ

そして脚本の展開は、意図的なサプライズが満載。金融に関する動きも、会社の行方も、個々のキャラクター達の選択も…、驚くほどのサプライズが続いて驚かされる。ストーリーを追っていてまるで裏切られたように感じるほど話が急展開していく。

例えば、Pierpoint 社救済に出てくる銀行は3社…たった1話(第7話)でどんどん状況が入れ替わる。その場面に関わるエリックとアドラーの関係はどう変わるのか。また Pierpoint 社が沈みそうになれば、若手の社員たちはどのような動きをしているのか。LeviathanAlpha 社のハーパーとペトラの関係はどうなるのか。大型投資家はその様子をどのように見ているのか。人物のたった一言の台詞で状況がひっくり返ることに何度も驚かされる。本当に一言たりとも台詞を聞き逃すことが出来ない。密な密なドラマの脚本が見事。一瞬も気が抜けない。




主なキャラクター達への感想

私はハーパー・スターンのキャラクターが好きだ。頭がいい。頭がいいからどこでどのように動けば最高の利益が出るのかを直ぐに思いつく。そしてそのチャンスに飛び込むことを全く躊躇しない。友人を利用したことで多少戸惑ったとしても、結局彼女は利益の方を優先する。生き馬の目を抜くような業界内でも彼女の決断力は飛びぬけている。このキャラクターが小柄な女性であるのが楽しい。もしこのキャラクターが男性だったとしたら、私はこれほどまでにワクワクしないだろうと思う。小さな愛嬌のある笑顔で、百戦錬磨のエリックを苛立たせる様子は見ているこちらもニヤニヤしてしまう。

エリック・タオ
。元々は一番好きだったキャラクター。しかしこのシーズンのエリックは変わってしまった。私が好きだった昔のエリックは、彼本人が叩き上げの実力者で、(まだ粗削りの宝石のような)新卒のハーパーに大きな未来を見る…父親的な人物。そして会社では猛烈社員なのに家庭に変えればいい夫と父に変わる…そんな人物だと思っていた。それなのに、このシーズンのエリックは迷って迷って血迷うばかり。妻とは離婚協議中。ヤスミンの弁護士と薬でふらふら。部下にもよろめき…いったいどうしたのだろうと思った。全然違う人物じゃないか。ただ俳優さんKen Leungさんがすごくいい役者さんなのでこれからも目が離せない。…いやどうだろうね。彼は来シーズンにもドラマに残っているのだろうか???

ヤスミン・カリ・ハナニ
父との愛憎。それが彼女に付きまとう。このキャラクターは父親との歪んだ関係から、出会う男性達とまともな関係が築けない…人との関係性に問題を抱えた人物として描かれている。美人で、何処に行っても男性に人気だが、本人は「男性に “私が彼らを好き” だと思わせるのが得意だけれど、私は誰かを本当に愛したことがあるのだろうか」と話す。最後の彼女の決断には驚いた。もしかしたら現実とロマンスを完全に分けた…ようにも見えた。全シーズンで唯一 愛のあるセックス…思い出だけは…と考えたのだろうか。これから妊娠か…どうなりますかね。

ロバート・スペアリング

父親との関係が問題だったのか(前シーズンのことでよく覚えていない)、それとも(頭はいいが世間知らずで)階級の違う人々との関りでどうしていいのかわからないのだろうか。彼は常に自信が無さそうで心配になる。このシーズンでは母親との関係にも触れられていた「母親がTyrant/暴君的だった」などと言っていたが、過干渉の母親だったのだろうか。常に弱々しい人で彼に起こる様々な禍を見ていると彼がかわいそうになる。ただ純粋な人物であることは間違いない。どのような悲しみが襲ってきても彼は静かに受け入れる…いつも静かに戸惑うばかりのロバート。彼にはこれからなんとか人として大きくなって欲しいと願う。


第8話が終わってほっとしているが、なんともうシーズン4が決定したそうだ。驚いた。今シーズンの最終話で、それぞれのキャラクターの方向が変わることが予想される展開だったので、私はこれでこのドラマシリーズも終わるのだろうとばかり思っていた。


ハーパーは米国に帰国するのか?シーズン4ではジェシーがまた出てくるのだろう。ロバートは今どこにいるのか?ヤスミンは仕事をやめるのではないのか?エリックはあそこで引退だろうか。さてこれからどうなるか。

ますます目が離せなくなる。これからも期待したい。



2024年7月29日月曜日

米ドラマHBO 『The Gilded Age』(2023) Season 2・全8話:ハイソのソープ・オペラ







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『The Gilded Age』 (2023) Season 2
TV Series/米/カラー
/約50分・全8話/
原案/脚本:Julian Fellowes』
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HBOのドラマ 『The Gilded Age』のシーズン2。去年2023年10月の放送は見逃したのだけれど、今年の春に再放送をやっていたので録画。先日やっと見終わった。

オリジナルの放送は2023年10月29日~12月17日。全8話。

製作・脚本は、英国 ITV のヒット作 『ダウントン・アビー/Downton Abbey』 のジュリアン・フェロウズ/Julian Fellowes氏。彼が今回はアメリカ・ニューヨーク市の1880年代の物語を手がける。


時代の背景などの情報はシーズン1で書いたので省略。1880年代の米国ニューヨークの上流階級を描いたドラマ。登場人物はほぼ同じ。主役は新興成金のラッセル家の夫婦。通りの向かいにはオランダ系旧家のヴァン・ライン家の人々。彼らを中心に1880年代のニューヨークのハイ・ソサエティーの様子を描く。

既にシーズン1でドラマの基本の枠組みはわかっているので、シーズン2からは馴染みのキャラクター達がどのような日常を送っていくのかを追うことになる。


2話まで見たところで少し気付いたことがある。この閉塞感は何だろう?

このドラマの世界は狭い。どの国でもそうだと思うが(昔の)上流階級の人々は狭い世界に生きていた。並外れた資産を守るために彼らは危険を回避する…誰とでも付き合ってどこにでも出かけるわけにはいかない。友人関係も選択が必要。彼らに必要なのは信頼できる馴染みの顔ばかりの社交界の中での平和な生活。そして彼らは新参者を好まないから(そのこともシーズン1の感想に書いた)その世界は(安全だが)いつまでも小さく閉じている。広がらない。

まるで幽閉されているように…降りることのできない豪華クルーズ船での生活のように、彼ら上流社会の人々は自らの作り上げた小さな世界に生きるしかない。彼らは皆、都市の裕福な一画に豪邸を構え、夏にはロードアイランドのニューポートの豪邸に移動。メンバーは皆同じ顔ぶれ。ニューヨークの友人たちがほぼ全員ニューポートに移動してまた同じメンバーで夏を過ごす。どこに行っても同じ顔。すごい閉塞感。自由がない。

それからこのドラマは女性達のドラマでもある。シーズン1では鉄道王ジョージ・ラッセルの成り上がりストーリーも描かれていたと思うが、シーズン2のメインはバーサ・ラッセル夫人の社交界での成り上がり話。

そのせいなのか…旦那Aは第2話で見るのをやめてしまった。歴史の再現としては「ちょっと嘘っぽいよね」とも言っている。確かにわからないでもない。女の私にはラッセル夫人の成り上がり話が面白いのだけれど、男の旦那Aにはあまり面白くないらしい。

つまりは、このドラマは(シーズン1で)一旦話の枠組み…設定がわかってしまったら、後はだらだらと昼の奥様向けソープ・オペラとそれほど変わらないということだろう。あまり正確な歴史の再現でもなさそうだし。私には十分楽しめたけれど。


今回も様々なスパイスがあった。特に優秀なアフリカ系の女性ペギー・スコットの話は大きなスパイス。ニューヨークのハイソな女性達が小さな世界に閉じこもっている間に、ペギーちゃんは取材でアラバマ州まで遠征。彼女は上流階級の女性達にはできないことをやっている。

それからヴァン・ライン家の女主人アグネスの姪・マリアン・ブルック。彼女は(旧家の伯母にとってはルール破りの)「女性が自分の意志で物事を選択して生きること」の手探りをしている。彼女は鳥籠の中から出ようとしている。彼女のルール破りもこのドラマにはスパイス。


馴染みの顔…ラッセル家の夫婦ジョージとバーサ、彼女の息子ラリーと娘グラディス、またヴァン・ライン家の女主人アグネスと息子のオスカー、そしてアグネスの妹エイダ、姪のマリアン、そしてアグネスの秘書のペギー・スコットと彼女の両親。 また彼らと並行して、それぞれの家のバトラーや使用人や料理人達。彼らレギュラーのキャラクター達を中心に、社交界の人々…実在のアスター夫人や、マカリスター氏等々…と、すっかり見慣れた馴染みの顔を見てまったりと彼らのゆるい話を楽しむドラマになった。熟成したと言うべきか。このまま小さな閉じた世界でだらだらと話が続きそうだ。

相変わらずラッセル夫人はセクシーで魅力的。彼女の負けず嫌いの気の強さがいい。彼女が「勝つ」ととても嬉しい。夫のジョージと仲がいいのもいい。この夫婦は最初は悪役かと思っていたけれど、一番生々しく人間臭くてこのドラマでは一番魅力的だと思う。あ、お堅いヴァン・ライン家の人々も好き。


最後は綺麗に気持ちよくまとまった。いい話。いい気分でシーズンが終わる。それもまたよし。

次のシーズンも楽しみに待ちましょう。


ところで現在もロード・アイランド州/Rhode Island のニューポート/Newport には、当時の豪邸が残っていて観光地になっているのだそう。いつか訪ねてみたい。  





2024年6月18日火曜日

米ドラマHBO『The Regime』(2024):全6話:描きたかったのは政治風刺か中年女性のロマンスか?






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『The Regime』(2024) TV Mini Series
/米英/HBO/カラー/54 minutes
Creator: Will Tracy
No. of episodes: 6話
Release: March 3, 2024 – April 7, 2024
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少し前に米のチャンネルHBOで、1日1作品で近頃のドラマの再放送をやっていたのでいくつか録画した。このドラマは6話だけだったので最初に見始め、先週見終わった。

放送はHBO。オリジナルの放送は2024年3月3日から4月7日まで。



妙なドラマ。面白いかと言われたらあまり面白くない。しかし役者は上手い。いい役者も出ている。しかし話が…どうかな…これ、面白い?


東欧のどこか(架空の国)の女性独裁者と彼女に振り回される人々の話。女性独裁者は首相エレナ/Elena Vernham(ケイト・ウィンスレット/Kate Winslet)。上手い。さすが実力派の女優。タイタニックのローズもずいぶんどっしりとしたおばちゃんになったものだと感慨深い。いい女優さん。このドラマも彼女だから見ようと思った。そしてたぶん…見てよかったと思う。

中年の女性独裁者が絵に描いたように我儘で横暴。その国の国民は日々の生活にも苦労しているのにこの女性は贅を尽くした宮殿で豪奢な生活をしている。その我儘ぶり、傲慢さ、とんでもない自分勝手さに呆れかえる。おそらくドラマの意図は、この女性独裁者の自己中、我儘ぶりを見て面白がる…そのようなドラマだろうか。

どういうわけかドラマ全体の言葉遣いが汚い。皆ガラが悪い。初回からFワード満載で驚く。ケイト・ウィンスレットも回りの政治家達も皆言葉が粗い。独裁政権を牛耳る人々とは乱暴で荒いタイプ…のステレオタイプで描いたのだろうかと思うほど。


西洋(西側の国)には、どうやら(彼らにとって)理解不可能な存在…共産国家や独裁国家を茶化してドラマ化して笑おうというジャンルがあるらしい。2017年の英国の映画『The Death of Stalin』も同じような話。しかしあの映画は史実を元にしたもの…1950年代のダークで暴力的な共産国ソ連の政府を揶揄した話だったが…私はこのブログであの映画のことを「趣味が悪い」などと批判していた。基本的に思想の違う他所の国の暗い歴史を馬鹿にして笑いものにするエンタメに私はあまり同意できない…とかなんとかそういう風なリアクションだったと思う。


さてこのドラマはどうか?まずこの独裁国家は架空の国。だからダークだとはいえそれほどの不快感はない。ただよく解らない世界を観察するドラマ?。

史実での東欧の独裁国家といえば、昔のルーマニアのチャウシェスク大統領、ユーゴスラビアのミロシェヴィッチ大統領を思いつくが(名前を聞くだけで詳しくは知らない)、今調べたら昔の東欧にはもっと独裁者がいたらしい。今の東欧の独裁政権はロシアとベラルーシぐらいか。しかし独裁政権の国なら中東にアフリカ、東アジアの国々も含めて今も世界中に沢山あるわけで…架空の独裁国家をファンタジー仕立てでドラマにするのなら題材はいくらでもあるのだろう。


自己中で我儘で横暴で、思うままに豪奢な暮らしをする独裁者のステレオタイプ。主人公が女性であればもっとフィクションらしくもなる(独裁者は男性が多い)。そして話の要はこの中年女性の色恋。女性の独裁者が男臭いセクシーな側近ハーバート/Herbert Zubak(マティアス・スーナールツ/Matthias Schoenaerts)を雇い…そのハンサムな側近がいつしか彼女を虜にし、彼女をコントロールするようになる…。

ともかく独裁者が中年の女性で、雇われた側近が肉体派の男前であれば…何が起こるかは想像がつく。なるほどなるほど「この俳優さんはいいオトコやね」などと見続けるけれど…しかし話としてはあまり面白くない。

西洋ではこの手の作品をpolitical satire/政治風刺の作品と読んだりするのだけれど、…しかしこのドラマはあまり笑える場面がない。前述の『The Death of Stalin』では、あきれながらも…なるほどこれが面白いのか…とは思ったが、このドラマはケイト・ウィンスレットの頑張りにも関わらず、なんだか呆れるばかりのシーンが多かった。全体に画面が暗いし。「これいつ面白くなるのかな」などと思いながらも、俳優さん達は上手いのでだらだらと見続けた。



★ネタバレ注意




それで…色々とありまして(当然の事ながら)この傲慢なおばさんが皆に迷惑をかけながら独裁政権を続けられるはずもなく、ようやく話が動き始めて面白くなり始める…さてこれからどうなるのか。捕まるのか裁判か暗殺か…と思ったら、簡単に救いの手が差し伸べられた。

手を差し伸べたのは西洋の大国。ありがちですね。この東欧の国には資源がある。コバルトが出る。そこでとある西洋の大国が彼女を救うからいい関係で商売をしようや…という話になる。なんだなんだなんだなんだ…。これが製作側の思ううまいひねりのアイデアなのだろう。


結局何事もなかったように…。というわけで第6話までひっぱって面白くなりそうだと思ったら、あまりワクワクすることもなくさらっと終わってしまった。あまりにも短い時間でオチが来る。え? 今の何? …実は最初に見たときは意味が分からなかったぞ恥。 え?…と思って見直して意味がわかった。なんだずいぶん簡単に終わっちゃった。この時間配分はこれでいいのか?

バランスが悪い印象。急に話が展開してあっという間に終わったけれど、これは意図的なものだろうか。ハンサムなハーバートもあまりにも急な展開だし、それにオスカー君はあの後どうなった?やっぱりバランスが変。



俳優さんは全員素晴らしい。だから最後まで見続けた。ケイト・ウィンスレットが上手いのは当然。周りを固める役者さん達…熟年の俳優さん達が皆上手い。あ、そうだ皺の増えたヒュー・グラントが出てくる(彼のキャラもよくわからないキャラ)。

そして何よりもベルギーの俳優さんマティアス・スーナールツさんが強烈な印象。このお方はIMDB/International Movie Databaseのページの写真では若い優男風の写真なのに、このドラマではま~~~ゴツイゴツイ。いかにも西洋の女性が好きそうなゴリゴリ骨太の男臭いルックス。髪が短いせいかとんでもなくゴツイ肉体派に見える不思議。西洋の女性にはモテるでしょう。ベルギー人だそうだけれど、この手のお顔はドイツやオランダ…ヨーロッパ大陸の北の方に多いお顔。頭蓋骨が丸くてジャガイモみたいに見える。いいオトコだと思う。タイプじゃないけど。このドラマでの彼は大声を出して暴力的な場面が多いが、第6話の演技を見て繊細な表情もできる上手い役者さんだと思った。このベルギー人の俳優さん、日本では知られているのかな。

とにかくこの俳優さんが強烈で、ドラマもケイトさんと彼を描く場面が多く、そのせいもあってかこのドラマ、政治的風刺ドラマと言いながらハーレクイン・ロマンス小説風の場面もかなり多い。実際この作品は、女性独裁者の横暴と彼女の失墜を描きたかったのか、それとも中年女性と男前の恋人のロマンスを描きたかったのか…どちらを描きたかったのかよくわからない。政治風刺かと思えば恋愛場面になってよろよろしている。どっちつかずの印象。やっぱりバランスが悪いのかも。

たった6話しかないし、俳優さん達が上手いのでそこそこ楽しめたとは思うが、あまりいい作品だとも思えず。風刺だと思って見ていてもあまり笑えず戸惑った。画面も暗い。なんだか上手い俳優さん達がもったいないと思った。 ベルギーの俳優さんはもう少し他の作品を見てみたい。


…あ、ちょっと待って…。このベルギー人の俳優マティアス・スーナールツさん、以前ここに感想を書いた映画ヴェルサイユの宮廷庭師/A Little Chaosにもケイト・ウィンスレットと出ていたぞ。あの人か。え~!全然印象が違う。あの映画の彼はずいぶん大根だと思ったけれどな~。このドラマのマティアスさんは上手いと思ったぞ。またケイトさんと?相性がいいのかな。


2024年6月4日火曜日

米ドラマ Netflix 『三体/3 Body Problem』(2024) Season 1・全8話 感想



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『3 Body Problem』(2024) TV Series
/英・米・中/Netflix/カラー/1 hr
Creators: David BenioffD.B. WeissAlexander Woo
No. of seasons: 1
No. of episodes: 8話
Release: March 21, 2024
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先週末やっと全話を見終わった。面白かったです。

しかしそれにしても話が大きい。話が大きすぎてシーズン1を見終わった全体の印象は、

…まだストーリーは始まったばかり

実際にシーズン1が終わっても、まだ何も始まっていないし何も解決していない。シーズン1全体がこれから始まるメインのストーリーのイントロのような印象も受けた。


世界各地で起こる科学者達の謎の死。謎の実業家の存在。1960年代文化大革命の頃の「話のきっかけ」。現代の若い科学者達が謎のヘッドギアによって「試験」を受け、合格した者だけが次に進む。合格した者が玉ねぎの皮をひとつひとつめくるように謎を解き明かしていく。その様子を視聴者も共に体験しながら見ていく。

そして8話で行きついたシーズン1の終わりは…、

● あるプロジェクトはおそらく失敗に終わり、
とあるプロジェクトにメンバーが選ばれた

それだけかな?シーズンの終わりとしてはっきりとした結末もなく宙に浮いたような状態で終わった。もちろんストーリーは今後広がっていくのだろうしこの続きも見たいと思う。人物達がこれからどうなっていくのかも知りたい。しかしもしかしたら次のシーズンは何百年も後の話かもしれないね(原作は呼んでいない)などと旦那Aと話す。


映像が豪華。「試験ゲーム」の過去の映像も壮大でゴージャスだったし、グロはグロで凄惨(そこは求めていない)。様々なビジュアルの見せ方が大変豪華だと度々感嘆した。間違いなく映像も見どころの一つ。

一番のメインのキャラクター Dr. Jin Chengを演じるJess Hong さんがいい。ネット上を検索するとお化粧をして女性的な装いの彼女の写真が出てきてびっくりしたのだけれど、このドラマのあまり身なりに構わない自然体の科学者の彼女がとてもかっこよかった。ほぼノーメイクでサバサバとしていて、このドラマの彼女の印象はまるで…少年と少女と女とおばさんが一人の人物の中にいるような印象。その少し掴みどころの無いような不思議な雰囲気がとても魅力的だと思った。芝居も自然。すごくいい女優さんだと思う。



★ネタバレ注意



超現実的な年寄海亀の思った穴
さて年寄が理屈をこねる。何度か首を傾げた内容があったのでメモしておこう。重箱の隅をつつくのもSFの楽しみ。

● 
SFのお決まりの科学的な話(ナノファイバー等の)は、本当に可能なのか…まさか今現実に存在しているとは思わないが、理論的にも可能なのか???そしてそれを両杭に張りつめれば、金属のような硬い物にもあれだけのダメージを与えられるのか…???そのあたりは私にはおとぎ話に思えた。

ドラマとして映像は凄惨。恐ろしい映像。たぶん制作側が力を入れて撮りたかった場面ではないかと思うが、しかし…現実問題として目に見えない程の線が(現時点ではともかく、たとえ将来的に考えても)あのように使えるのか…は、私には疑問の方が大きい。

 
そして再度ナノファイバーの使用プラン…宇宙に打ち上げた脳を運ぶカプセルに取り付けられたナノファイバーのパラシュート。ナノファイバーって目に見えない物なのに、どうやって布を織れるのか?

● 
脳を切って冷凍にして送るというけれど、脳は血管を切られて物になったら(相手側/San-Ti側が興味を持って脳を活性化するための処置(血管を繋いで血液を再度流すとか)をしなければ、脳はただの物体。

● 
地球側の科学者達は、なぜ相手側/San-Ti側が冷凍された人間の脳に興味を持つと思うのか? San-Ti側は地球の人間を「虫けら」だと言っているのに、彼らが虫けらの脳みそから何かを学ぼうと思うのか疑問。それを「アイデア」として考えた人間の科学者の思考も疑問。

例えば私なら…害虫が「これが僕の脳です、見て下さい」と言っても見ないと思うのよ。だからこの脳を送るプロジェクトの意味が私にはわからない。また相手/San-Ti側がどのような考え方をするのかもわかっていないわけで、一見壮大なプロジェクトに見えるようだけれど、人間側のこのプラン…実は成功の見込みも考えずに「とりあえず送ってみるか」ぐらいのいい加減なプランに思えてしまった。

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400年たったらSan-Ti側以上に人間の方が進歩しているだろうと言っていた(だからプローブを地球に送り人類を監視して進歩を止めると言っていた)けれど、それも理論上の話。地球の人間がこれから400年の間に計算通りに進歩するとも限らない。400年もあったら幾度もの世界大戦や地殻変動や環境破壊によって地球そのものが変わっている可能性もある。

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というわけで、これから400年も先のことに今の時点で莫大な資本をつぎ込み、ほぼ「当てずっぽう」に近い「当たるも八卦当たらぬも八卦的な計画」を実行するぐらいなら、今の世界情勢を改善し今の人々の生活を豊かにしたほうがいいのではないかと私は思った。正直400年先の人類がどうなろうと私にはよくわからない…のは私に子供がいないせいなのだろうか。海亀は自分でも身も蓋もないほどの超現実主義者なのだろうと思った。


元々科学畑の旦那Aに「あなただったらどうする?彼らのやってること=「400年後の人類滅亡回避」の計画をあなたならやってみようと思う?賛同する?と聞いたら、「うん僕はやってみたほうがいいと思うよ」と言った。彼は科学浪漫の人なのだろう。

文句をだらだら言っているようだけれど、そういうことを考えながら見るのも面白かった。私はSFの浪漫は好きなのだけれど、今は年を取ったこともあってずいぶん現実的なのだなと思った。

しかしこれからもドラマは楽しみにしてます。この話がこれからどうなるのか興味津々。また文句を言いながら熱中して見続けると思う。旦那Aが本を買わないかな。