能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2023年5月9日火曜日

WOWOW 連続ドラマW『ギバーテイカー』全5話



全5話。日本での放送はWOWOWの「連続ドラマW」枠で2023年1月22日から2月19日まで。主演は中谷美紀さん。原作はすえのぶけいこさんの漫画『ライフ2 ギバーテイカー』。


モンスター級の殺人鬼が主人公の女性を追い詰める。女性は強く立ち上がり最後はモンスターと女性の一騎打ち。

近年の私は、ドラマも映画も「怖いもの」「痛いもの」「グロなもの」「辛いもの」はできるだけ避けるようになってきていて、このドラマも最初は大丈夫かと思いながら見ていた。しかしどんどん話に引き込まれ、とにかくこの殺人鬼ルオトがなぜああいう風になったのかが知りたくて最後まで見続けることになった。

演出がいい。俳優さん達の演技もいい。ストーリーは結構見るのが辛いテーマ。しかし「辛い」ということよりも話の続きが知りたくて後半は次の回が待ちきれなかった。すっかりはまった。


★ネタバレ注意


いやぁ人間は怖いなと。貴志ルオト(菊池風磨)はどうしてあんなことになったのだろう。母親がまっとうな愛情で彼を育てなかったから…というのが表向きの理由だろうが、だからといって(一般的に)そのように育てられた子供が皆人を殺めるとは思えず。むしろ(あまり認めたくはないとはいえ)元々彼はどこかおかしかったのではないか…と思わずにはいられなかった。生まれながらのモンスター、サイコパス。理由なきモンスター、それが一番怖い。

貴志ルオト は12歳で殺人を犯し(その前には妹も殺害)、12年間も医療少年院に入って更生し社会に帰ってきた。しかし彼の中の悪意が消えることはなかった。過去の殺人からもう12年も経っているのに、彼はその殺害した被害者の母親・倉澤樹(中谷美紀)を執拗に追い始める。そしてその理由が、彼の当時の先生=倉澤の「よくできました」だとか「先生が飴を取って僕の手にはナイフが残ったから」などの理由だとあった。そこのところがどうも説得力に欠ける。

彼が殺人を犯したのは12歳。子供時代の時間は長い。12歳の少年が12年間も医療少年院に入って指導を受けていたのなら心理的になんらかの変化はあったはずで、なぜ彼はわざわざまた倉澤を追い詰めるのかの理由がわからない。倉澤に対して一方的な恨みがあるわけでもなさそうなのになぜ彼は倉澤にこだわるのか。

もし自分の過去の過ちが母親によるネグレクトからくるものなら、むしろ彼の怒りは母親に向かうものではないか?彼が赤の他人の先生に怒りをぶつけているのなら、結局彼は理由なきモンスターだということになってしまう。


殺人犯とその生い立ちがテーマだろうか。ドラマを見ながら考えさせられた。それにしてもルオトは母親から十分な愛情を受けれていたのなら殺人鬼にはならなかったのか。それとも母親の愛情不足は「単なるきっかけ」なだけで、更生することのないモンスターは存在するという話なのか…とも考えた。


そのようにすっかり内容にはまったということは、ドラマとしてよく出来ているということなのだろう。音楽も演出も怖い。ドキドキさせられた。しかし視覚的に不快な場面は少な目で、そのため私のような小心者もかろうじて見続けることが出来たのはよかった。


最後に、違和感を感じた最終話の倉澤とルオトの対決場面のことを書いておこう。
ルオトと二人きりで対峙する倉澤。両者とも拳銃を相手に向けている。ルオトがうだうだと倉澤を言葉で追い詰め、言葉で長々と説明をしていたが、あれはドラマならではの綺麗ごとだろう。

まず延々と話し続けるルオトを「黙らせなさいよ」と思い、あまりにも説明が長いので「さっさと撃てばいいのに」と思った。私は米国の警察のやり方に同意するわけではないが、ルオトが倉澤に拳銃を向けている限り、倉澤には正当防衛が可能(日本は駄目だそうだ。米国はOK)。アメリカだったら倉澤は迷いもなくルオトを射殺していただろう。それから倉澤はルオトに「裁きを受けなさい」と告げていたけれど、彼は既に3人も殺しているわけで死刑は免れないだろう。もちろん日本のドラマとしては「正しい裁き」がフェアな正しいやり方でそれを見せるべきなのだろうけれど。そういえば狙撃班が二人の様子を見てましたね。彼らはあそこで何もしないのか?

そもそも倉澤が殺人犯に屋上でたった一人で対峙するのが無謀。相手は拳銃を持ってるのに危ない危ない。それからルオトに彼の意図を語らせるのであれば、なんとかして彼の音声をスマホで録音は出来ないものかとも思った。ドラマチックなはずの最後の場面が冗長で嘘っぽく感じたのは残念。


それでもドラマ全体は十分楽しんだ。

気味の悪い殺人モンスター・ルオトを演じた菊池風磨さんは不気味。うまい。倉澤樹の中谷美紀さんは流石。彼女は日本を代表する女優さん。ルオトの母親の斉藤由貴さんも怖い。ルオトに利用される馬場ふみかさんも追い詰められた表情がうまい。見ていて辛い。ベーカリーの主人の吉田ウーロン太さんはイヤな野郎が最低。うまい。皆いい。

というわけで面白かった。見てよかったです。
全5話で終わったのもちょうどいい長さだと思う。
WOWOWのドラマはいいですね。これからも期待してます。