---------------------------------------------------------------------------
『Everybody's Fine』(2009)
/米/カラー
/1h 39m/監督:Kirk Jones
-----------------------------------------------------------------------------
去年のクリスマスの頃に見た家族をテーマにした映画の感想、第3弾。ずいぶん感想を書くのが遅れてしまったけれど記録しておこう。
【去年のクリスマスの頃…「家族がないから」と気分が落ちていた時。とにかく何か問題があったら「問題」をカーペットの下に掃きこんで忘れるのではなく、もっと掘り下げてみる。いい機会だから今回のクリスマスは「家族というもの」について考えてみようではないかと思い、暗い気持ちのままクリスマス仕様の家族映画をいくつか見てようと試みた】
この映画もNetflixのタイトルページに「おすすめ」で出てきたもののひとつ(クリスマスの時期だけの配信だったのか今はNetflixから消えている)。主役はロバート・デニーロ。成人した子供達と年老いた父親…いかにも家族の話だ。
★ネタバレ注意
まず一言。いい映画です。
見てからもう3カ月も過ぎてしまった。しかし見た時には王道のいい家族映画だと素直に思った。デニーロもいいし、成人している子供達もいい。ストーリーもいい。最後もいい気持ちで見終わった。
最初は小津安二郎監督の『東京物語』だと思った。年老いた父親をめんどくさがる子供達。突然訪ねてきた父親に皆戸惑っている。長男には会うことさえできなかった。皆、父を邪険に扱うほどではないけれど、かなり戸惑っているのがわかる。まぁそれはしょうがないだろう。誰でも親に突然来られたら戸惑ってしまうだろう。
皆予定があったり…それぞれの理由で、父親は子供達とゆっくりすることもできず(詳しくは覚えていない)…もしかしたらこのお父さんは子供達を訪ねない方が良かったのかな、現実は残酷かな…『東京物語』と同じだよね…などと思った。
そして色々とあって…飛行機の中で(薬が足りなくて)父親は心臓発作を起こす。
さて、そこで見る幻覚のシーン。父親が頭の中で考えたことが幻影になって現れたとするのならば、この父親は子供たちのことを驚くほどよ~く見ていたわけですよね。この父親は決して毒親ではないでしょう。
次男との会話で、この父親が子供達に対して多くを要求していたことを知る。あのデニーロ父が(怖いわ)子供達に「俺の自慢の息子になれ」などと日々プレッシャーをかけていたらしい。それを子供たちはかなり窮屈に感じていた。彼らは母親には本当のことを言うけれど、父親には話さないことも多かったらしい。デニーロ父は怖いお父さんだったわけだ。
しかしながら、例の幻影での会話…このお父さんは、訪ねて行った子供達の様子から驚くほど様々なことを理解しているわけです。しっかりと子供たちを見ている。この人は毒親ではないでしょう。
毒親とは、自分の要求ばかりを一方的に子供に押し付けるだけで。子供の気持ちなどわかろうともしないものです。
このデニーロパパは子供たちのことをよ~く見てますよね。そして今の子供たちのありのままを…そのまま受け止めている。そして「Everybody’s Fine」だと天国の妻にも伝えている。彼はいいお父さんですよ。愛情の表現が少し無骨なだけ。
それから最初は『東京物語』だと思った子供達の振舞いも、実は父親を気遣い心配した上での行動だったことがわかる。彼等も父親のことを思いやっていたわけだ。
だから最後は和気あいあいといい雰囲気で映画が終わった。
父親が(子供の将来のために)子供達に少し厳しすぎるほどのプレッシャーをかけ続けたために、子供達はこの父親を少し疎ましく(めんどくさく)思うようになっていた。しかしこの父親には今の子供たちをそのまま受け止める愛もあった。子供達も大人になって、そんな無骨な父親の愛が理解できるようになった。彼等も父親のことを気遣っていた。
…だからお互いにもう何の不満もわだかまりも無く、彼らはこれからも仲のいい家族としてやっていけるだろうと思わせてくれる。フィールグッドないい映画。
最後に大変申し訳ないが、私の妙なリアクションを記録しておこう。
そんなわけで私には「家族が無い」負い目がある…なんというか「人としてするべきだったことが出来なかった」という気持ちがある。たぶん「子供を持たなかったこと」への後悔ではない。実は子供がいないことがそれほど悲しいわけでもない。「子供を持つべき義務/家族を作る義務」のようなものを怠ってしまった…申し訳なかった…懺悔に近いような気持ちだと思う。それが負い目…少し居心地が悪い…私の弱点でもあるわけで…。
この映画を見て「いい映画だ」と思ったのは事実。それなのにこの映画を見たことを私はすぐに忘れていた。1月頃に「クリスマスに見た映画をメモしておこう」とリストアップしていた時、(まだ見てから1カ月も過ぎていないのに)この映画の記憶が飛んでいた。驚き。『コネチカット…』や『イカとクジラ』『クリスマスキャロル』『セッション』『クロース』のことは覚えていたのに。
もしかしたら私、自分にとってめんどくさいこと(家族関連のこと)に無意識に蓋をしようとしているのではないか?めんどくさいからカーペットの下に掃きこんで忘れようとしていないか?…な~んて思ってしまったぞ。ワタシやばいね。
