2012年5月2日水曜日

RuPaul’s Drag Race, Season 4, 最終回


今年のDrag Super Star、決定しました。 祝!

今年の1月、始まったばかりのこのアメリカのTV番組 RuPaul’s Drag Raceシーズン4、「今年はレベルが低いかも」などと言いっ放しで投げていたが、昨日最終回で完走。やっぱり面白かった。この番組、やっぱりいい番組だと思う。アメリカ在住の方は、これから何度も同チャンネルLOGO TVで再放送されると思うので、興味があるならお勧めしたい。

確かに今年は異色のレースだった。前シーズンのように見るからに美しい参加者は少なかった。だが彼女達はなんと生き生きと一生懸命なんだろうと、回を重ねるごとに番組に惹きつけられていった。 創造力も技術も十分に納得のいくものだった。そもそも野郎を美女に化けさせるなどという不可能を可能にしている人達なのだ。参加者のあまりの変わりように舌を巻く。過去の回と比べても遜色はなかった。 いろんなドラマもあった。笑いも涙もたくさんあった。全員文字通り自分の人生と誇りをかけて真剣に勝負している。

両親に勘当された子、父親に殴られて病院送りになった子、保守的な田舎の出身でいつも虐められた子、自分の素顔の弱さを隠すように全て完璧な人、以前の荒れた生活から刑務所住まいの経験者もいた。みんなみんな大変な重荷を背負って生きてきた人達だ。そんな彼女達がケーブルテレビとはいえ全国放送に出る。着飾ってお化粧をして涙を隠し、プロのエンターテイナーとして笑いと幸せを売る。みんな一生懸命。

そんな辛い過去のせいなのか、途中あきれるほど醜い言い争いもあってどうなることかと思ったが、回を重ねるごとに皆心を開いて解り合っていった。みんな心は繊細であると同時に、非常に強靭だ。今までいろんなことがあったのだろうが、そんな辛いことも全て笑い飛ばして生きてきた強さがある。それがすごい。


最後に残ったコンテスタントは3人。

Phi Phi O'Hara18歳の時、女装のことで父親に殴られ病院送りに。それ以来父親とは連絡をとっていない25歳。小柄なせいかいろんなところで酷い目にあったのだろう、口を開けば非常に辛辣。攻撃することで自己防御をするタイプだ。最初は皆に嫌がられていたのではないかと思うが、少しずつ心を開いて表情が柔らかくなっていくのが分かった。だれよりも勝つために一生懸命な努力家。

Sharon Needles;アイオワ州の農家の息子30歳。育った田舎は保守。ゲイや女装など受けいれられる環境ではない。当然子供の頃から酷い虐めにあっていた。女装スタイルも特殊。白いコンタクトレンズをしてマリリン・マンソン風やホラー映画のキャラクター風。「近未来型のドラァグクイーン」なのだそうだ。非常に冷静で、驚くほど頭がいい。

Chad Michaels;一番年長の40歳。シェールのプロの物真似をやっている。シェールの物真似は専門のネタらしいがそっくり。それにそれ以外の全ての女装も全て完璧に美しい。長年の経験からくるものなのだろう、非常に落ち着いていて上品。気品漂うマダム。私はこの人が好きだった。


ネタバレ注意


選ばれたのはSharon Needles。たぶん最強のクイーンではない。背は高いがアメリカでは致命的なガリガリの体。への字の口。悪い歯並び。歌も上手くない。ダンスも出来ない。女装もホラー映画風と、美しく才能に恵まれたグラマラスなドラァグクイーン達とは正反対の側にいる。保守的な田舎の生まれでいつも虐められていた。生き残るために身に着けたユーモアのセンス。自分を笑い飛ばすことは得意だが、決して自虐的ではない。常に背筋を伸ばして悪びれることなく、自分の位置をしっかりと把握している。全てのチャレンジを(ダンス以外は)そつなくこなした。何よりも非常に頭がいい。話術にも優れ、話が非常に面白い。

選ばれる直前のインタビューで、いつも苦労してきたこと、いつも美しくないクイーンだったこと、いつも美人コンテストでは負け犬だったことを話す。それでも、この番組で勝ち残ったことによって、現在、国中の(人と違うことで学校で虐められて)辛い思いをしている何百人もの子供達から、たくさんのファンレターが届くようになった。「こんな私でもみんなのお手本になれるの…。」と言って泣く。ついもらい泣きをしてしまう。ほんとにかわいい。そんな謙虚な誠実さも選ばれた理由の一つなのだろう。よかったね…(泣)。

とてもいいものを見せてもらった気がする。



勝ったものだけが得をするのではない。この番組に参加した13人は、全員が全国で名を知られるようになり、地元のゲイクラブでも人気者になることはほぼ確実だ。みんなに知られるようになることで味方もファンも増える。時には音楽の話が舞い込むこともある。過去の参加者も何人かシングルの作品を発表している。全員が何かを得て帰ることができる。だれも敗者ではない。それに何よりも参加者全員が、ルポールを先駆者として、同性愛者の方々の社会的な地位を上げる運動の一員になることができるのだ。人として当たり前の権利を勝ち取るための戦い。文字通り社会を変えているのだ。だからみんな誇らしそうな顔をしているのだろうと思う。薄っぺらな美人コンテストよりずーっと大きな意味がある。ありがとう…。ほんとにみんな心から応援したい。



追記;このような腹の中をとことん正直に見せて、清濁全てをさらけ出すようなリアリティーショーは、日本では不可能かもしれないと思う。周りと合わせる事を美徳とする国民性から考えると難しいのではないか。実力を実技で示し、自己の正当性を理論で強く主張し、正当な評価をはっきりと要求する参加者側、それに正当でありながらも非常に辛辣な評価を提示する審査員側など、西洋式のオープンなコミュニケーションスタイルが日本には合わないのではないか。内輪の分かり合った中では非常に居心地のいい日本式コミュニケーションスタイルはこういう番組とは対極にあると思う(おそらく西洋の社会そのものが正反対)。そういう意味でも非常に興味深い。