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『Fiddler on the Roof』(1971)
/米/カラー
/3h 1m/監督:Norman Jewison』
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忘れないうちに感想を書こう。先週の週末に鑑賞。YouTubeで広告付きでフリーで見れた。この映画を今見ようと思った理由はひとつ。10月にまたローカルの劇場・ダイアモンドヘッド・シアター(DHT)でこの演目が公演されるので予習のために見ようと思ったから。
この作品は日本ではミュージカルの舞台が有名ですね。以前森繁久彌さんの評判をメディアで聞いていた。森繁さんは1967年の初演から1986年まで19年間も主人公のテヴィエを演じられたそう。その後も西田敏行さん(1994 - 2001年)、それから市村正親さん(2004 – 現在)が主人公を演じ、この作品は本当に長い間日本で愛され続けているミュージカルなのだそうだ。
私は(もちろん作品の名前は知っていたけれど)実はこの作品の内容を数日前まで全く知らなかった。どういう設定の話なのかさえ全く知らなかったです。元々ブロードウェイの舞台でのミュージカルで(1964年初演)、その後1971年にこのミュージカル映画が作られていたことも知らなかった。全て初めて。
というわけで前知識の全くない状態で映画を見始めた。3時間の大作です。途中でインターミッションもある。
★ネタバレ注意
あらすじ
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時は1905年、帝政ロシアの支配下。ウクライナ地方の小さな架空の村『アナテフカ村/Anatevka』で牛乳屋を営むユダヤ人一家のストーリー。主人公は一家の夫/父親のテヴィエ。そして妻ゴールデと5人の娘たち。ユダヤの伝統を重んじるテヴィエは、娘たちの将来の幸せはユダヤの伝統的な生活の中にあると信じ、いい結婚相手を見つけようと骨を折る。しかし上の娘たち3人はことごとく父親にしたがわずに、恋に落ちた相手と結婚して幸せを掴む。
● ツァイテル❤村の仕立て屋のモーテル
● ホーデル❤学生・社会主義者・革命家のパーチック
● チャバ❤キリスト教徒の若いインテリ・フョートカ
ストーリーの後半では、次第に帝政ロシアのユダヤ人への弾圧が強まっていく。ある日警官隊長が村に現れ、荷物をまとめて3日以内に町を立ち退くようテヴィエ達村人に通告。彼らは長年住み慣れた故郷アナテフカの村を離れることになる。テヴィエとゴールデの夫婦と末の娘たち二人はアメリカ・ニューヨークの親戚を頼る。上の娘3人はそれぞれ夫と共にシベリア、ポーランドへ移り住んでいく。
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● 前半の家族の話
前半のテヴィエとゴールデの夫婦、そして娘たちの話は、よくある家族の人情モノの話。父親が娘たちを幸せにしようと心を砕くにもかかわらず、娘達はことごとく想定外の結婚をしてしまう。それでも愛情深い父親は娘たちの人生の選択を受け入れようとする。
この前半の父と娘、家族の話、それから昔の男女の結婚のあり方などは、世界中のどの文化、どの民族でもありうるストーリー。伝統を重んる保守的な父親。そして若い世代の娘が自由に恋に落ちて家を離れる話、そして(20世紀前半の)夫婦のなりそめは「お見合い」が多かったこと…などなどは、どの国でもあるあるの話でしょう。
このような家族の話は、昭和の東京や大阪の下町…どこの商店街でもありそうな話…そうそう、寅さんの設定とも似ている。町や村の小さなコミュニティーの中で皆が顔見知りで、皆が親切で皆が助け合って生きている…そのような人情モノの話なら、英国のイースト・エンドでもありだし、ニューヨークのイタリア系や中国系の話でもあるだろう。もっと昔の米国ミネソタ州の『大草原の小さな家』の村も同じような感じだ。英国のインド系やパキスタン系の家族でもありそうだ。…親や親戚や世話役のおばさんの持ってきた「お見合い話」を娘が蹴って恋人と駆け落ちする話なんて、どんな民族でも成り立つ話。
この前半の家族のストーリーはいかにも20世紀にどんな国にもあった人情モノのストーリー。いい話です。長女の結婚式の様子も楽しかった。(旦那Aは子供の頃ユダヤ系の結婚式に参列したそうだが、新郎新婦や彼らの両親が会場で椅子に乗せられて持ち上げられ、皆で踊って大騒ぎで楽しかったそうだ)
● ユダヤ人の伝統を重んじる生き方
映画の最初に父親テヴィエが「伝統、伝統、伝統」と歌っているのは、ユダヤの人々が伝統を重んじる様子を描いている。ユダヤの人々は、イスラエルの地を度々征服されて追い出され欧州各地に広がっていった歴史の中で、ず~っと伝統を守ってきた過去がある。伝統を重んじてきたからこそ、今でもユダヤの人々は独自のアイデンティティを保っているのですね。
上の3人の娘たちは、それぞれが自由に愛を掴んでいく。長女の相手は同じユダヤ人の青年なので問題はないだろうが、2番目の娘の相手は革命家で生活は安定しない。3女に至ってはなんとキリスト教徒と駆け落ちしてしまった。
● 帝政ロシアのユダヤ人への弾圧
映画の後半は…その伝統を守って律儀に生きてきた人々が、権力者から弾圧を受ける話が描かれる。映画の全体のトーンが長女の結婚式の辺りから変わっていく。
実はこのユダヤ人がアナテフカの村から追放される話が私にはかなりショックで、このミュージカルの印象が前半と後半では全く違うものになってしまったとさえ思った。先日私がここで「ユダヤ人/ユダヤ系の方々…彼等のディアスポラ(離散)の歴史について学ぶ」の文を書いたのは、映画の後半の展開でショックを受けたのがその理由です。最初は温かい家族のストーリーだと思っていたのに、最後は故郷を追われるユダヤの人々の話になったので驚いて歴史を調べようと思った。
前半で描かれた…コミカルで温かい家族と村人達が、最後はウクライナの村を追い出され、米国やポーランド、イスラエルへ移住するストーリーが描かれる。さて末娘はポーランドに移住すると言っていたが、その後ドイツが台頭することになったら大変なことになるのを私達は歴史で知っている。暗い気持ちになる。
実際にこの映画のような話はあったそうだ。旦那Aの仕事関係の友人の1人はウクライナから移住してきたユダヤ系の移民の子孫で、まさにこの家族のストーリーそのまま。ユダヤ系の方々の知り合いは多いのだけれど、こういう話はとても多いのだろうと思う(いちいち話を聞いたことはない)。
この映画がアメリカで名作として受け入れられたのは、前半のコミカルな家族の話に加えて、観客の多くがこの家族のストーリーに自分のルーツを見て共感できたからなのだろうとも思った。(ユダヤ人であるなしに関わらず)アメリカはほぼ全ての国民が移民の子孫。そういえば映画/ミュージカル『The Sound of Music/サウンド・オブ・ミュージック』も欧州からの移民の家族の話だった。状況や立場は違うけれど皆アメリカに移住してきたのは同じ。この『屋根の上のバイオリン弾き』も同じ移民のルーツの物語で、ユダヤの文化のエキゾチズム/異国情緒も加わって皆に愛される作品になったのだろうと思った。
「サンライズ・サンセット」がこのミュージカルのものだということも初めて知った。美しいシーン。いい曲。
3時間で少し長いけれど映画を見てよかったです。
これで舞台でのミュージカルの準備も出来た。
