趣味の翻訳。ネット上を見回してもこの記事の全訳が出てこなかったので訳することにした。自分のための英語の訓練。
元々はドキュメンタリー用にビリーさんにインタビューしたものを記事に編集したものらしいのですが、彼が彼の人生、トラウマ、彼の人生に付き纏った「恥」について語った言葉が載っています。素晴らしい記事です。
私はビリーさんのことをFXのドラマ『POSE』で初めて知り、まずその歌声に圧倒され、そしてドラマのキャラクター/プレイ・テルでの俳優としての上手さに注目。その後彼が既にブロードウェイのスターであることを知り、そしてもっと彼の事を調べるにつれ、彼の「明るく、陽気で、大袈裟で、おかしくて、ユーモラスで楽しくて、お茶目でかわいい」お人柄にも徐々に惹かれていったのですが、まさか彼がこれほど苦悩の人生を歩んでいたとは知らなかった。驚きました。
インタビューで御本人が「トラウマや苦悩を隠すのが上手い」とおっしゃっているのですが、本当に全くわからなかった。あの陽気なお人柄の後ろには…沢山の悲しみがあったのですね。だから惹かれたのかもしれません。このお話を聞いてビリーさんがもっと好きになりました。
それにしても『POSE』を制作した人々が、ライアン・マーフィーも含めて、彼の病気のことを全く知らなかったのは本当に驚きです。なぜならプレイ・テルのキャラクターのストーリーはビリーさんの実体験にあまりにも近いから。不思議なこともありますね。
彼が幸せになってよかった。これからも色々なプロジェクトが目白押しだそうです。楽しみ。ビリーさんはスーパー・スター。すごいなぁ。
この記事でのキーワードは
「shame」です。ビリーさんの人生に付き纏った
「恥」。文中で「恥」とかっこをつけて書いたのは、単純な言葉の訳の
恥の意味よりももっと多くの意味があると思ったから。この「Shame」には、恥じる感情以外にも、いたたまれない気持ち、罪悪感とか、不名誉であるとか、そこから生まれる苦しみだとか様々な意味を含んでいる。そこでただの恥と区別するため
「恥」とかっこをつけました。
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元記事はこれ
https://www.hollywoodreporter.com/news/general-news/billy-porter-hiv-positive-diagnosis-1234954742/------------------------------------------------------------
Billy Porter Breaks
a 14-Year Silence: “This Is What HIV-Positive Looks Like Now”
ビリー・ポーターが14年間の沈黙を破る:「これがHIV陽性者の現在の姿です」
For the first time since being diagnosed more than a decade ago, the 'Pose' star opens up about the shame that compelled him to hide his condition from his castmates, collaborators and even his mother, and the responsibility that now has him speaking out: "The truth is the healing."
10年以上前に診断されてから初めて、ドラマ『POSE』のスターが、共演者や共同制作者、母親にまで彼の健康状態を隠すことを強いた「恥」、そして彼に今話そうと思わせた責任について語る。「真実は癒しなのです」
BY BILLY PORTER, AS TOLD TO LACEY ROSEMAY 19, 2021
ビリー・ポーターは大きく息をついた。
「2007年から始めなくてはね」テーブルの向こうに座り彼は言う。
ウェスト・ビレッジのリトル・オウルで彼は告白しようとしている…あまりにも長い間覆い包まれていたために、彼もそれ以前の人生を思い出せないほどの…何かについて。
「あの年の6月」…パフォーマーとしての彼の神経さえも話す事を拒んでいるかのように…彼は続ける「私はHIV陽性者と診断されたのです」
それから14年間、このエミー賞を受賞した『POSE』のスターはそれを誰にも言わなかった。それまで必ずしも彼に親切ではなかった業界での疎外と報復を恐れたのだ。その代わり…その才能と誠実さで近年熱狂的なファンを開拓してきた…この51歳の彼は、FXシリーズのHIV陽性者のキャラクター、プレイ・テルを彼の身代わりにしてきたと言う。「私は私の身代わりを通して言いたかった事を全て言う事が出来たのです」そしてまた彼はショーに関わった誰も、彼が彼自身の人生からそのキャラクターを描いていた…とは知らなかったと明らかにした。
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ピーボディ賞受賞の…AIDS危機を背景にボール・シーンを描いた…ドラマシリーズ『POSE』が第3シーズンで最終章を迎える今、ポーターは次にやることの準備を始めている。彼が苦しみ締め切りを飛ばしながら書いている回顧録は今年後半に予定されているし、またNetflix/ネットフリックスでの彼の人生についてのドキュメンタリーは、『POSE』の共同クリエイターのライアン・マーフィーとの仕事を継続させている。2021年版『シンデレラ』で彼はフェアリー・ゴッドマザーを演じるし、また監督としてのデビュー、新しい音楽のホストなどなど…(仕事のリストは)とどまるところを知らない。
しかしながら、ブロードウェイで鍛錬を積んだ…EGOT(エミー賞/グラミー賞/オスカー(アカデミー賞)/トニー賞)からオスカーだけをまだ取っていないこの俳優は、彼に過去10年以上もつきまとった「恥」と共には…彼の人生とキャリアの…次の段階に進むつもりはない。そんなわけで、ライアン・マーフィーが彼の横にサポートで座り、またドキュメンタリー・カメラの集団が頭上に停止する場で、ポーターは彼のストーリーを語った。編集されたバージョンは後からリリースされる。
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あの伝染病を生き延びた後の私のいつもの質問は「なぜ私は免れたのか?なぜ私は生きているのか?」でした。
ともかく私は生きていて、だから話すことが出来る。あの時代の全世代がここにいて、私は彼らの肩の上に立っている。彼らが残してくれたレガシーがあるから、私は私としてこの場に、この時代に存在することができるのです。だからそろそろ大人になって話をしようと思ったのです。
私はもっとよく知るべきだった世代に属していました。そしてそれはやはり起こったのです。あれは2007年。人生で最悪の年でした。それまで10年間程、私は曖昧さの崖っぷちにいました。しかし2007年は最悪。2月までに私はタイプ2の糖尿病だと診断され、3月には破産申告をしていました。そして6月にはHIV陽性だと診断されたのです。その時に私が感じた「恥」は、それまでの私の人生ですでに(蓄積していた)「恥」と相まって私を沈黙させました。そしてその「恥」と共に私は沈黙の中に14年間も生きたのです。HIV陽性であることは、私が生まれ育ったペンテコステ派の教会と、非常に宗教的な私の家族にとっては、神から与えられた「罰」でした。
2007年にその全てが降りかかってきたのです。
それはまぐれ当たりのようなものでした。お尻に吹き出物ができてそしてそれがどんどん大きく固くなり痛むようになったのです。ある日「これはなんとかしなきゃ」と思いカレン・ロード・クリニックに行ったのです。そこのフロントの男の娘が「HIV検査する?たった10ドルよ」と言うので私は「ああそうね、ええ」と答えた。そうするべきだったので私は(それまでにも)6ヶ月ごとに検査を受けていました。それから私は吹き出物の手当てを受け、HIV検査を受け…、そして医者がやってきて私を見たのです。「なに?」と思いました。医者が座ったので私は「ダメ、ノォーッ…」。そして彼は「あなたの検査は陽性でしたよ」 ふぅ~~~っ。
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長い間、知る必要があった人々は皆知っています…私の母親以外は。 私は自分の人生とキャリアを築こうとしていました。そして(そのことを)もし間違った人々が知ったら、キャリアを築くことが出来るかどうか私には確信が持てなかったのです。既に十分差別的な職業で、それは私に対するまた別の差別の理由が増えるだけのこと。だから私はそのことについて出来るだけ考えないようにしたのです。そのことを考えることをブロックしようとしました。しかし(新型コロナでの)隔離が私に多くの事を教えたのです。誰もが、ともかく座って黙る必要があった。
私には既存の疾患(HIV陽性)があったわけで(新型コロナの)渦中にいるわけにはいかない。だから私と夫はロング・アイランドに家を借りました。私は自分を守らなければならない…真面目にそうしなければならなかった。私にはそれまでどのようなレベルであれ、セルフ・ケアとか健康的なバランスを考えるような余裕はありませんでした。ただ前に進まなければならなかったのです。COVID(新型コロナ)は私に一度立ち止まって、思い返し、私の人生のトラウマに取り組むための安全なスペースをもたらしてくれたのです。今私は長い間セラピーを受けています。25歳の時に始めて、それから何年も受けたり止めたりを繰り返しています。しかし去年、私は癒し(ヒーリング)のための本格的なトラウマ・セラピーを始めました。それまでの全ての心の層を剥がし始めたのです:5歳で精神分析医につれていかれたこと(子宮から出てきたばかりなのに大きなふてぶてしいクイーン(男の娘)だったから):7歳から12歳まで継父に性的虐待を受けたこと:そしてAIDS危機の時代の真っ只中に16歳でカミングアウトしたこと。
私がトラウマの中にいなかった時期はなかったのです。そのことを私は去年発見したのです。またそのトラウマは私の中の原動力でもありました。私のトラウマと私のストーリーは私が前進するために役に立っていたのです。 そしてまた私は、アーティストとして自分の問題に取り組む機会を与えられてきた事を感謝しています。キンキーブーツの仕事を受けた時、そのキャラクター、ローラの歩んだ道は、彼女の父親を許すというものでした。週に8回、3年間もの間、私は物語の中で「許すこと」を練習するという有り難い贈り物を与えられ…週に8回も…ステージ上で私の父と継父の二人をその場所で許そうとしていたのです。毎日が許すことへの開放でした。そして『POSE』…(HIV)による「恥」に取り組む機会により…それは私が今到達した場所をもたらしてくれた。プレイ・テルの素晴らしさと(彼を演じることの)幸運は、私がその「身代わり」を通して私が言いたかったことの全てを言う事が出来たことなのです。私がそれまで自分の感情と心を押し殺し、問題を自分から切り離していた力があまりにも強かったために、(キャラクターを演じることで)トラウマを受けているのか、それとも触発されているのかさえわからなかった。私はただ誰かが私を真面目に俳優として受け止めてくれている事がとても嬉しかったのです。
私は生き延びた。だから話をすることが出来るのです。そのために私はここにいる。私はただの(情報を運ぶ)器であり感情的にはそれでも十分でした。(2017年に)結婚するまでは。今私は家族を持とうとしています;もう私だけのことではないのです。そろそろ前に進む時です。 「恥」は破壊的で、対処しなければ人生の道のりで全てを破壊していきます。そして私の「恥」は、私の母との関係と、私の教会との過去の関係に関わっていました。母は私が同性愛者であるために、既に彼女の属する宗教的コミュニティからあまりにも多くの迫害を受けていました。だから私は彼女に、もう宗教団体の言う「だから言ったでしょ」的な迫害の中では生きて欲しくなかったのです。彼女にそんな経験をして欲しくなかった。私は恥ずかしかったのです。自分を恥じていました。誰もがそう予想したように…私は単なる統計上の数字。私は彼女が死ぬまでそれを言わないと自分に誓ったのです。正直に言うなら母の死を待っていたのです。彼女をアクターズ基金の特別養護老人ホームに入れた時に私は「母はきっとそれほど長く生きない。そうしたら私は本を書いて皆に明らかにしよう。彼女はHIV 陽性の子供を持つ恥と共に生きなくてもいい」 それが5年前のこと。母はまだまだどこにも行きませんね。
そこで私は姉と計画を立てました。ワクチンを打ちに行く時に母に会いに行こうと。特別に部屋を用意してそこで告げようと。 『POSE』の撮影の最終日に目を覚まして私が感謝日記を書いていた時、突然母が私の頭に浮かんだのです「ママに電話しようかな」。そして彼女と話していて2分も経たないうちに母が「どうしたのよ?」と聞いたので「なんでもないよ」と言うと、母は「息子よお願いだから言ってちょうだい。どうしたの?」それで私は心の絆創膏を剥がして彼女に話したのです。母は「あなたはそれを14年間も抱えていたの?二度とそんなことはしないで。私はあなたの母親よ。何があっても愛しているわ。確かに私も最初の頃はどうすればいいのかわからなかったけど、でももう数十年も経っているわ」。 それが真実だったのです。それは私自身の「恥」だったのです。長い間のトラウマは人を臆病にします。しかし真実は人を自由にしますね。私の心が解放されるのを感じています。私は長い間、手が私の心臓を固く握り締めているように感じていました…本当に長い間…そしてそれが全て消え去ったのです。そしてそれは最高の時期に起こりました。私が今まで見た孤独な夢の全ては、今この時に現実になったのです。全て同時にです。(今)私はシンデレラのフェアリー・ゴッドマザーを演じる準備をしていて、新しい音楽も出すし、私の回顧録も出ます。『POSE』も放送されている。そして初めて映画の監督もやります。私は今を生きようとしているのです。そして溢れる喜びを感じようとしています。トラウマの影響の一つは人生の喜びを感じる事ができないことなのです。
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写真のキャプションポーターとたびたびのコラボレーター、ライアン・マーフィー。ポーターの人生の現在についてのNetflix/ネットフリックスのドキュメンタリー『Rise/ライズ』を共同で制作中。「ブロードウェイの話もしているし、他にも沢山のことを話している」とマーフィーは言う。「『POSE』で終わりではない。私たちは生涯をかけてのコラボレーターだ」
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実際にライアンは(POSEの)シーズン1で私にそれを指摘しました。私はウィルシャー・ブールバードのフレッドに呼び出され、そして彼が座ってこう言ったのです「喜びを全力で感じて欲しいんだよ、それが必要なんだ」ひゅ~、それは予想していなかった。私は苦悩を隠すのがとても上手いのに、彼はそのことを指摘したのです。それから私たちは素晴らしい話をしました…私がそれまでやってきた仕事のこと、そしてこれが私の表舞台…私が王座に座る番…主役になることを。 私には『POSE』より前にも「ほぼ主役になれそうな」ことが沢山ありました。1994年に初めて『Angels in America』を見て考えたことを覚えています。「黒人のクィアな同性愛者の男が脇役ではなく…このとんでもないストーリーの中心にいるじゃないのよ。あれが私だわ。あのアーティストが私。どうやればあの場所に行けるのかしら?」 その頃私は近くの劇場で『Grease/グリース』を演っていて、14インチのオレンジ色のゴムのかつらを被ってクラック(コカイン)を吸ったリトル・リチャードのロボットみたいに踊りはねていたのです。それは私がやりたいことじゃなかった。それをやるために私はここに来たんじゃない。そして今、ライアンが私に喜びを全力で感じて欲しいと言う…それが私には出来なかった。
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幸せはありました。Yes。表面的な喜びも。しかし不安と恐怖も一日中、毎日あったのです。自分の状態が明らかになることや、また誰かがそのことを明らかにするのが怖かったわけではないのです。それはただ「恥」…まずそこでした。黒人として…特にこの惑星上の黒人の男は完璧でなければならない…そうでなければ殺されてしまう。しかし私を見てください。そう、私は統計上の数字、しかし私はそれを超越したのです。これが今のHIV陽性者の姿なのです。私はHIVで死ぬ前に他の理由で死ぬでしょう。私のT細胞は薬のおかげであなたの2倍あるんですよ。私は黒人の51歳の男として3ヶ月ごとに医者に行きます。それは私のコミュニティでは珍しいことです。私達は医者を信用しないからです。しかし私は医者に行く。そして私は私の身体に何が起こっているかも知っています。私は私のこれまでの人生の中で今一番健康なのです。だから全てを解放して違うストーリーを話す時期なのです。もう汚名や烙印は終わり…おしまいにしよう。今がその時なのです。私はそれと共に生き、十分長い間「恥」の中にいました。それはきっと私に付き纏うだろうとも思います。皆はまずこのことを話すでしょうね「HIV陽性がうだうだうだ…」と。オーケイ。まぁいいわ。私はそれだけのものではないし。私にはそんな診断結果よりももっと別のものがある。それにもし誰かがそのために私と仕事をしたくないのなら、その人は私にとって価値のない人です。
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そんなわけでその朝に母に話をして、そしてこの素晴らしい…それが最終的には私の「恥」を解放する励みとなった…芸術作品で仕事をして、そしてふと思ったのです「私達は皆で一緒にこの作品を作り上げたし、この人達は皆知るべきだわ、私のママが知るべきだったように」。 ショービジネス界で今私達がそう呼ぶ「何か」をやっと手に入れようとしている…51歳の男として、私が最も深く経験した気づきの一つは…、私は沢山の時間を…私の前にやって来てあまりにも早く燃え尽きた光(他の俳優達)を観察して過ごし、長い間それが何故なのかを調べて考え、そして私にとってのその答えは常に「authenticity/誠実さ」であるとたどりついたのです。そこで私は、共演者達とスタッフ、この場所を作り上げた全ての人々の前に立ち、本当のことを話したのです。ある時点で真実は責任を伴った道だからです。真実は癒し。これが私を自由に解放してくれればいいなと思います。私を解放してくれて…私がリアルな経験ができるように、ピュアな喜び、心の平和、そして親密さを経験出来るように、「恥」を感じずにセックスができるように。これは私のためなのです。私自身のためにやっているのです。私には沢山のやる事があって、もう何も恐れてはいません。母にも言ったし…あれが一番難しかった。誰が何と言おうともう気にしません。私に寄り添ってくれるか、それともただ立ち去るかだけなのです。
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This story first appeared in the May 19 issue of The Hollywood Reporter magazine.