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『The Favourite(2018年)/アイルランド・英・米/カラー
/119分/監督:Yorgos Lanthimos』
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力強い映画です。
ダークな喜劇。豪華な宮殿に優雅な衣装。しかし中身は生々しい女の戦い。実は下品な話。しかし不思議なことにかなり楽しめるハッハッハ…。これは映画のパワーでしょう。
★あらすじ
18世紀初頭。英国のアン女王。女王の側には「お気に入り」のレディ・サラ。サラは常に女王の側にいて、女王の寵愛を受けると共に権力をも手に入れ国の政治まで動かす。そこへやってきた彼女の若い従姉妹アビゲイル。アビゲイルはサラと女王の間に割って入り、女王の寵愛を受けるべくサラに戦いを挑む。さて女王の「お気に入り」になるのはどちらか?
一見ゴージャスな歴史もの。3人の女性達…アン女王、サラ、アビゲイルは歴史上実在の人物達。しかしストーリーの中心はサラとアビゲイルの女の戦い。内容はほぼフィクション。この映画は、歴史映画ではなくて実在の人物の設定を借りて描いた意地悪なエンタメ娯楽作品でしょう。
●いけずなエマ・ストーン/アビゲイル
エマ・ストーンちゃん。彼女は実は性格がキツイのかも。彼女の悪女ぶりを見てほぉ~へぇ~と感心する。
個人的にこの女優さんはあまり好きではない。実は昔、米国のコメディ番組サタデーナイトライブを見ていたら彼女が出てきたんですけど、「あれ?彼女はもしかしたら嫌な女かも…」と思った瞬間があってですね…実際はどうなのかな。
そんな彼女は現在ハリウッドで一番人気の若い女優さんなんですけど、
この映画のアビゲイルは、まー嫌な女なのだわ。
だからいい。
だから面白いんですねぇ。エマちゃんがアビゲイル=悪い女になりきっている。たいしたものだ。真面目な女優さんなんだろうな。こんな役を思い切り演じきったのを見てちょっと彼女を見直しました。あの嫌な感じは女優として演じたものなのか。それとも御本人の中身から滲み出たものなのか…?
●ドSなお姉様レイチェル・ワイズ/レディ・サラ
レイチェル・ワイズ演じるレディ・サラがまたキッツイお姉さんで、
素敵
超ドSな姐さん。怖い先生。普段は上品な英国の女優さんがここまで激しいキャラを演じられるとは。あっぱれ。ちょっと惚れた。
かっこいいもの。
女優さんてすごいもんだなと思います。綺麗な女優さんのキッツイ姿を見るのはとても楽しいほほほほ すごいねぇ。
●感想
(ネタバレ注意)
女同士が戦う話。教科書に出てくるような史実に沿った真面目でお堅い歴史物を期待してはいけない。あまり気持ちのいい話でもないです。この映画はダークなエンタメ。18世紀の英国王室を舞台に王室の腐敗と、権力、富をめぐっての女同士の醜い戦い。それを見てひゃ~と驚きげげっとショックを受けふははと笑って楽しむ。
(話の舞台になった)18世紀初期の英国の王室の様子を、気合を入れて再現してくれているのも嬉しい。歴史好きには大変楽しい18世紀英国宮廷ライフの再現。色々とToo
Muchで滑稽なのは狙っているのだろう。
そして3人の女優さん達の力技。3人とも本気です。
この映画は、最高の俳優さん達、最高の衣装、最高のロケーションで、効果的な音楽、巧みなカメラワークに上手い脚本で、18世紀の王宮の日々を再構築しながら、描いたのは
下品な女の戦い
だから面白い。エンタメ/娯楽として面白い。大変贅沢な映画。
ダメダメなアン女王を演じた女優のオリビア・コールマンさんもあっぱれ。無能なのに己の権力だけは自覚している(周りにとっては大変迷惑な)わがままな女王様を熱演。しかしあのキャラもほとんどフィクションですよね。本当にひどいよなぁ。
ちなみにネット上をつつくと、この映画で描かれた女王と女性二人との関係もああいう親密なものではなかったらしい。そりゃーそうだろう。そもそもこの映画で描かれた時代にはアン女王は未亡人ではなかったそうで。アン女王は天国で「あれは私じゃないわ」と文句を言ってますよねぇきっと。
それにしても国の歴史上の実在の君主をデタラメに脚色して娯楽にしてしまうのもすごいものだと思う。娯楽は娯楽として割り切ってるんでしょうか。ドライですね。歴史との距離のとり方が冷めてますよね。
とても面白かった。
女優さん達が大変素晴らしい。女優さん達の力技にほーっと感心する。個人的にドSのレイチェル・ワイズ最高…冷たく厳しい口調も気持ちいい。気性の激しい美人を見るのは楽しい(現実には会いたくない)。
一見ゴージャスなのに中身は意地悪で趣味も悪いし、あまり気持ちのいい映画でもないはずなのに、上手い女優さん達の頑張りと、映画全体の熱量に圧倒された。パワフルな映画です。歴史とはほぼ関係ないですけど。