王道。名曲は超キャッチー。
Casiopea – Halle (1985)
Album: HALLE
Released: Sep 10, 1985
マイブーム=ジンサク時代のカシオペアをめぐる旅も一段落。『Casiopea (1979)』から『Platinum (1987)』『Euphony (1988)』まで聴いた。いやー面白かった。CDを全部まとめて聴いたのは10年ぶりぐらいかな。カシオペアは面白い。日本のインストバンドで大スターになった方々ですもん。やっぱり伝説のバンドだわ。
(個人的な好みですけど)カシオペアの曲は初期の3枚までのアルバムがジャズ/フュージョンらしくていい。その後アメリカ西海岸のフュージョン・シーンと接触をするようになって、カシオペアは次第にポップ・インスト・バンドに変わっていった…楽曲がポップになり過ぎてつまんない(ダサいかも)…と以前のエントリーには書いた。さてそれはどうしてだったんだろう?
神保さんのドラムがカッチリし過ぎているのが理由かなとまず思った。それに野呂さんも途中でネタ切れしたのかも…(ジンサク時代の)後期にボーカルを入れた頃はどう考えても迷走…。しかしそれだけじゃないですよね。カシオペアが80年代にポップ・インスト・バンドになったのは時代の変化のせい…だと今回あらためて思った。
音楽的に実験的なフュージョンが流行ったのは70年代。フュージョンだけじゃない…プログレだって研究・実験を真剣にやっていたのは70年代。80年代になったらプログレもフュージョンもポップ化していった。GenesisもピーガブもYesもHerbie Hancockも、80年代には皆ポップな楽曲で大衆にウケた。80年代はみんなキャッチーな曲をやり始めた。
カシオペアもそんな時代に生きたバンド。アクティブなバンドだからこそ時代の影響を受ける。なによりも若いバンドなら大衆にウケて大きく成功してスターになりたいという野心もあっただろう。時代の流れに逆らうわけにはいかない。
インストの音楽というものは聴き慣れれば実験や即興も面白く聴こえるものだけれど、慣れなければ困難。メロディのはっきりしない曲は簡単に覚えられない。あぁあの曲だと口ずさめない。歌がないから曲を記憶するきっかけが摑みにくい。だから曲の題名も忘れてしまう。
音楽ファンが単純じゃないインスト曲を楽しんでウンウン唸って面白がるのはジャズ/フュージョンの道にすっかりハマった後。一旦そちらの道に入り込めば楽曲の複雑な音やアレンジも面白く感じるようになる。しかし大抵のカジュアルな音楽ファンはそこに行き着くまでに疲れてしまう。ハマる前にあきらめてしまう。
だからインストの曲でヒットを出すには…バンドとして大衆にウケるには、わかりやすい音楽の方がいい…と野呂さんは80年代初期にカシオペアの進む道を考え直したんじゃないかと思った。
例えば彼らの曲でも初期の「Time Limit」や「Olion」は覚えにくい。しかし「Asayake」や「Eyes Of Mind」はすぐに覚えられる。キャッチーであればライブでは客も沸く。手拍子をして喜んでくれる。わかり易いから売れる、そんな風にカシオペアは評判がどんどん大きくなっていくにつれて、客に喜んでもらうためにスタイルを意図的にわかりやすく変えていったのではないか。
80年代はインストのバンドでもホールやアリーナでライブが出来た時代。当時はフュージョンをやって大スターになれた時代。大衆もインストの楽曲を気楽に受け入れていた。キャッチーなら大衆にウケる。曲をキャッチーにしたのならカシオペアらしく技巧的な部品を曲中に散りばめればいい…そうやってカシオペアはカシオペアらしさを確立していく。
野呂さんが意図的にキャッチーな曲を書けばとことんキャッチーな曲ができる。メロディはところどころ日本的な感じもする…少し情緒的。カシオペアの曲は(ダサいくらい)わかりやすくてキャッチーでありながらも技は凄い。 カシオペアはインストのバンドなのに80年代当時よく売れていたそうだ。
そんなカシオペア全盛期に書かれたこの「Halle」は名曲だと思います。カシオペアらしい曲。印象は陽。明るい。どんどん気持ちが上がっていって空に届くような感じがたまらない。気持ちいい。ふあーと心が軽くなるような…。
キャッチーだからこそカシオペア。
正直今の私には何が出てくるかわからないような「Olion」や「Swallow」のほうが面白い。だけどこの「Halle」や「The Continental Way」「太陽風」「Princess Moon」を聴くと、鼻歌で歌える歌謡フュージョンもいいよなぁと思ってしまうのです。
全盛期のカシオペアの曲を聴くとなぜか切なくなったりする。当時は彼らの事を知らなかったのに。なぜだろう。不思議。
この曲「Halle」も聴くたびにほんの少しだけ哀しくなる。若かったあの頃を思い出して少ししんみりとするのだろうか。そういえば当時ハレー彗星は見えたのかなぁ。皆で騒いだのだけはよく覚えている。この曲も当時どこかで聴いていたのかもしれない。覚えていないけれど。
カシオペアはなによりもライブが要。アルバムでどうかなと思った曲もライブではとてもいい。『Thunder Live (1980)』も『Mint Jams (1982) 』ももちろんいいけれど、今回改めてCDで『Casiopea Live (1985) 』を聴いたら本当に凄いのでびっくりした。色んな音のギターが鳴っている。バンドは完成されていて隙が無い。この時メンバーは20代後半。本当に凄いバンドです。ライブが良すぎてスタジオ盤が全て予習用に思えてしまうぐらいライブがいい。どのライブも全ていい。1986年の『Perfect Live』の「Street Performer」の最後はどうやって合わせているんだろうかと思う。
そしてこの頃のカシオペアは海外でのツアーも成功させていた。
カシオペアは海外進出の大先輩です。
日本にいた時には、カシオペアのメンバーの方々も見に行った (^_^;)\ カシオペアは10年くらい前は活動休止中だったんだけれど野呂さんがソロ活動をなさってました。2008年にはISSEI NORO INSPIRITSで『INNER TIMES』をリリース。そのライブを2008年3月28日に Shibuya AXで見た。あのカシオペアの野呂さんと神保さんが拝見できる…ととても嬉しかった。 そして櫻井さんは本田雅人さんとのライブで2回ほど拝見。アノ…あの「Domino Line」の櫻井師匠が目の前にいる…と嬉しく嬉しくて最初から最後までデレデレニヤニヤし続けた。皆様素敵なお兄様…おじ様になっていらっしゃいました。拝見できてよかったです。