能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2012年11月14日水曜日

Peter Gabriel - Games Without Frontiers (1980)



思いつき。


Peter Gabriel - Games Without Frontiers (1980)

 Album:  Peter Gabriel 3: Melt (Remastered)
Released: May 30, 1980 
℗ 2015 Peter Gabriel Ltd


こんな曲に映像があるなんて知らなかった。
 
 懐かしいなー。高校の頃プログレファンの先輩が教えてくれた。いい時代だったな。高校時代というのは、ほんとにいろんなジャンルの曲を手当たり次第に聴いてました。ラジオもよく録音したし、とにかく貪欲だったな。
 
ちょっとコマーシャルになったQueenを聴き、パンクを聴き、プログレを聴き、ニューロマを聴き、ヴァン・ヘイレンを、ケイト・ブッシュを、YMOを、CHICを…何から何まで混ぜて聴いてました。面白かった。
 
そういえば、このアルバムはアナログ・レコードを聴いてたけどCDで買わなかったな。
 
アルバムはPeter Gabriel3枚目。タイトルは『Peter Gabriel』。プロデューサーはスティーブ・リリーホワイト。この頃の英国のプロデューサーには凝った音を作るので有名な人が何人かいた。。今聴いても面白い。買おうかな。今はiTunesCDか…迷うところだ。

2012年11月13日火曜日

映画『フライト/Flight』:デンゼルさんはいい俳優さん


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Flight2012年)/米/カラー
138分/監督; Robert Zemeckis
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心理劇です。アクションムービーではありません。

まず最初にハリウッドのスタジオがこの映画をどのように売ろうとしているのかと、実際の映画との違いをはっきりさせたい。

もうネット上にも出ている映画の予告では、この映画、どうもアクション映画に見えてしまう。それもそのはず。主役はあのデンゼル・ワシントンさん。いつも強面のがっしり筋肉おやじ。その彼が今回は旅客機のパイロット。機器の不具合によりコントロールを失った飛行機を、このヒーローはたった一人で救う。なんと上下逆さまに飛んで一回転させて無事着陸(ええぇ…そんなこと可能なの?)。ところが事故後の調査で彼の血液中にアルコールが検出される。彼の技術により未曾有の大参事を免れたのは事実。それは誰も疑わない。だが乗務員2人を含む6人がこの事故で亡くなった。調査が入る。さて彼は本当にヒーローなのか…。

まず旦那Aがこの予告編をみてアレルギー反応を起した。この予告編の印象で、彼はこの映画が「アルコールをちょっとばかり飲んでたけど、飛行機をひっくり返して飛んで(アホのような話)無事着陸させた素晴らしいヒーローの話。デンゼルはやっぱカッコイイな的な映画」だと思ったらしく、そのようなハリウッドのアホ話には付き合えん!と言い張った。実は他に見たい映画も無かったので、結局いろいろと調べていたら、それ程浅はかなヒーローものでもないらしいと思い(あとは私の直感)嫌がる旦那Aを無理やり引き摺って見に行った。

良かったです。良作。旦那Aも大変満足したそうだ。
 
そんな風に、予告編を見ると音楽のノリも(アメリカ版の予告です。日本版はもう少し真面目)何もかもデンゼルさんのアクションヒーローものに見えてしまうのだけど、全く違う。実は非常に丁寧にリアルに作られた心理劇。この映画をアクションものだと思って見に行くと大変ガッカリさせられると思う。
 

ネタバレ注意

 
そんな風に予告編を見ると誤解をしてしまうので要注意。

監督はロバート・ゼメキス。『コンタクト』『フォレスト・ガンプ』『バックトゥザフューチャー(シリーズ)』のハリウッドの大御所監督。最近の映画は見ていないけど、まあこんな監督さんがそれ程ダメなものを撮ることも無かろう。

この監督と今回組んだ主役がデンゼル・ワシントン。実は私はあまり良く知らないのだが、この人はどうもがっちり筋肉質の強い男の印象が強い。古典的に強い男。優しいロマコメに出るようなタイプではない。威厳に溢れていて知的でとんでもないカリスマ。殺人鬼から大統領までこなせる実力派。かっこいいけど怖いおじさんタイプだと思っていた。とにかく正統派のカッコイイ人。

そんな二人の組み合わせだから、旦那Aが(それに多くのこの映画の観客が)この映画を大掛かりなヒーロー映画と思っても納得できるというもの。ところがこの映画、実はアルコール中毒患者のあまりにもあまりにもリアルな話なのだ。あのデンゼルさんがカッコワルイ人をものすごくリアルに演じている。


デンゼルさんがものすごく上手い。脚本もいいんだろうと思う。これほどまでにカリスマと自信に溢れ堂々とした人物が、同時に実はどうしようもないほどのアル中だったという話。普段の彼があまりにも自信に溢れているので、一緒に暮らさない限り彼が中毒患者だなんて誰も思わない。もちろん彼自身も自分が中毒だとは思っていない。今までも上手く(隠して)やってきた。パイロットとして、プロとしてのプライドもある。自信があるからこそ自分の非を認めることが出来ない。体力もあって身体も大きいせいなんだろう、自分に対する絶対的な自信と誇りのために現実を見ることができないのだ。そうやって自分に嘘をつき、家族や回りの人々にも常に嘘をついて生きてきた。これがもうほんとにほんとにリアル。

これでデンゼルさんの株が上がったね。いやー素晴らしい俳優さんだ。こういうリアルな人間の弱みを見せてくれるような話が実は一番興味深い。上手い俳優さんは演技を見るだけで娯楽。いつもとってつけたように男らしくてステキなデンゼルさんが、ここまで弱い人間を演じてくれるとは…。惚れたわよ、マジで…俳優として。急にこの人に興味が湧いてきた。

自分が自分ににつき続けた嘘が、そのうち会社の政治的な駆け引きにも絡んでくる話の展開もドキドキする。彼の嘘がいつの間にか後戻りの出来ないものになっていく。自信たっぷりの強い男が徐々に追い詰められていく心理劇。ハラハラします。さあ彼はどうするのか…。

おっと…飛行機が落ちる場面は怖いです。海外在住の人間には非常に辛い。

これ、アカデミー主演男優賞…いくかも…。


2012年11月8日木曜日

Perfume香港公演がまたまた大成功


そうそう大統領選で忙しかったけど、
117日といえば
香港ではPerfumeのライブ。
またいいライブだったみたいですね。
みんな幸せそうだ。
着々と海外ライブも成功させてますね。
ほんとに凄いなー。
台湾と同じく、MCも日本語で堂々と、
現地の方とも上手くコミュニケートして、
Perfumeはもう、海外も余裕ですね…。
日本からのファンも香港のファンと仲良く交流して
素晴らしいじゃないですか…ほんとに。
日本三人女子組合Perfumeは香港でも愛されてます。
嬉しいね。
もうみんな日本に帰ったのかな…

それにしてもNHKのドキュメンタリーは切実に見たいな…



2012年11月7日水曜日

2012年米大統領戦ウォッチ-その8: オバマ大統領の勝利演説


オバマさん、おめでとうございます。
 
当選されました。はーやりましたね。なんだかほっとした、前にも書いたけど、彼の政策になんの保障が無いとしても、良心だけは信頼できる。強い者よりも弱い者に寄り添う姿勢もいい。だからあと4年間、何をやってくれるのかを見たいと思った。

複雑な家庭に育ったオバマさん。伝記を読んだわけじゃないけどほんとに苦労をしてきた人だというのはよく聞いている。アフリカ、ケニアからの留学生だった父親は、大学の同級生だった白人の女性(オバマさんの母親)と結婚してすぐに帰国。オバマさんが3才の時に両親は離婚。生涯で父親とは1度しか会っていない。母親はその後インドネシアの男性と再婚。アジア人ハーフの妹が生まれる。母親が研究者としてインドネシアに移住。オバマさんもそこで過ごすが学校教育を考えて10歳で一人ハワイに帰国。祖母と祖父とともにハワイに暮らす。母親はその夫とも離婚。その後も研究者として過ごしたらしいが、オバマさんが34歳の時に他界。オバマさん本人は学校では努力して努力して優等生。ほんとによく勉強したそうだ。その後アメリカ本土の大学に進む。法律を学び弁護士として仕事を始めた法律事務所で奥さんのミシェルさんと出会う。なぜ彼女と結婚したかの理由の一つに、彼女の暖かい家庭に憧れたと言った。複雑な家庭に育った寂しい男の子の姿が見えてくる。奥さんの家族に受け入れられて、やっと自分の暖かい家庭を築くことができた。
 
そんな彼が今日アメリカの大統領に再当選。勝利演説は熱のこもった大変感動的なもの。この人は後ろから追い風が吹いている時は本当に自信に溢れている。こういう時の彼のカリスマは常人のレベルを超えていると思う。
 
私は決してイケイケアメリカ染まりの人間ではないが、今日の勝利演説はちょっと感動した。記録しておきたいので、またまた大雑把な訳をした(決して正確ではないです)。彼の熱意だけでも伝わればと思う。

 

 (会場の群集から大きな拍手と歓声)

「ありがとう。これから前に向かって進んでいこう。1つの国としてやっていこう。ここにたどり着くまでに道は長かったが、最高の時はまだこれからやってくる。どちらの政党もこの国をより良く変えるためにこの選挙に参加したんだ。」

……(中略)……
「いろんな人の声を聞いてきた。多くの人がこの国を良くしようと必死にがんばっている。だから私達は政治をやるんだ。だから政治は大切なんだ。3億の人々のいるこの国の民主主義は、時にうるさくてまとまりがないかもしれない。みんなそれぞれ違うからだ。皆それぞれの信念があるからだ。時には大変な決断をするときもある。そんな時には誰もが熱くなって反対意見も出るだろう。だけど、これからもそれは変えない。変えるべきでもない。なぜならそんな論争がこの国の自由を象徴するものだからだ。

意見が違ってはいても、皆未来への希望は一緒だ。」

……(中略)……
 「戦争を終わらせ、世界中の人々の自由と尊厳に基づいた平和を築きたい。私達は慈悲深く、思いやりに溢れたアメリカを信じている。辛抱強いアメリカでもいたい。すべての子供が、医者や科学者、エンジニアや事業主、外交官、大統領にもなることを夢見れるように…それが私達の希望だ。それが私達の進む道だ。
 
難しいこともあるだろう。いろんなことがあるだろうが、まず共通の希望を持つことから始めよう。」
 
……(中略)……
「この民主主義の国で、君達の仕事は投票だけで終わったわけじゃない。アメリカというのは、誰かがやってくれるのを待つのではなく、自分で何ができるかにかかっている。大変だけど自分達でやる。それが私達の住むこの国の建国の理念だ。」
 
……(中略)……
「なぜこの国アメリカが特別なのか。それは地球上で一番変化に富んだ様々な人々が一緒になれる理念:私達の運命が共にあり、お互いのために、また未来の世代のために義務を守り、(多くの人が戦ってきた)自由は、責任と権利(愛・慈善・義務・愛国心)とともにあること…それを信じられる国だということ。それがアメリカが素晴らしい理由なんだ。」
 
……(中略)……
 「いろんなことが大変だったけど、今日ほど希望に満ちた日は無い。そして皆もこの希望を捨てないで欲しい。ただ夢を見てるだけじゃない。現実を見ずに楽観して理想だけを語っているわけでもない。希望とは非常に一徹なものなんだ。どんなに違うと言われようとも、信じ続けること、努力し続けること、戦い続けることで、何かきっといいことが起こると私はいつも信じてきた。
 
…アメリカよ、私達はまだまだやれる。建国の祖先達の約束を守ることができる:もし一生懸命がんばるのなら、キミが誰であっても、どこから来ても、どんな外見でも、どこが好きでも、黒くても白くても、スペイン系でも、アジア系でもインディアンでも、若くても年寄りでも、金持ちでも貧乏でも、健常でも身体障害者でも、ゲイでもストレートでも…このアメリカなら、挑戦する者は誰でも成功できる。
 
私達には一緒に進む未来がある。政党で分かれることも無い。私達は外野が言うような皮肉屋でもない。私達は単なる個人の野心のレベルよりもずっと素晴らしい。私達はただの赤や青の州だけじゃない。私達は今もこれからも永遠にしっかりと結ばれたアメリカ(United States of America)なんだ。キミの助けとともにに、神様の恵みとともに私達はこれからも前方へと旅を続ける。世界にも知らしめよう、私達が世界中で一番素晴らしい国に住んでいるのだと。ありがとうアメリカ。アメリカに祝福あれ。」
 
 
 
日本から冷めた目線が漂ってきそうだけど、私も普段はこういう政治家のレトリックは嫌いです。しかし時には国のリーダーが国民に希望を語ることも大切。どんな国も酷い状態の時だからこそリーダーが皆に希望を示さないといけないんです。国民を安心させ元気を与え、国の理念、国民がどうあるべきかの指針を語るのもリーダーの重要な役目。それを今日のオバマさんは十分に果たしたと思う。立派です。本当に子供達が希望を持てる国になって欲しい。

 
 
 

 

2012年11月6日火曜日

2012年米大統領戦ウォッチ-その7: 今日(米国11月6日)は投票日です


今日は大統領選。旦那Aも投票してきた。私は外国人なので選挙権は無いのだけど、ともかくこの大統領選は国を挙げてのお祭りみたいなものなので、テレビを見てます。
 
どうですかね…オバマさん勝つかな。TVに出てくる赤(共和党)と青(民主党)に色分けされたアメリカの地図を見ていると、ほんとにこの国は地理的に見て真ん中と両側の海岸線沿いが真っ二つに分かれてるんですね。(日本時間午後2時頃)
 
地図の真ん中の州は保守の共和党の赤。ニューヨークやカリフォルニアの東西海岸線沿いは民主党の青。考え方も生き方も本当に全く違う2つの勢力がこの国を二分。もう真ん中と両側で別の国になっちゃえば…?と無責任な冗談を言ってしまいそうになる。そんな事を言っちゃいけないんですけどね。
 
 
 
さて簡単に(4年前まで私も全く知らなかった)大統領選の仕組みを説明したい。
 
今日、アメリカ全土で国民全員(実質60%強)が投票をするわけだけど、この国民は直接には大統領を選ぶ投票をしているわけではないんです。要するに投票者全員分の集計をして2億に近い(60%の投票率として)票を一つ一つ数えて、多かった方が勝ちというわけではないんです(私はこう思っていた)。
 
一般の投票者が選ぶのは、確かに候補者の名前(オバマかロムニー)。ただその後、この投票は州別に計算され、州別にそれぞれ勝った候補者が決定される。まず州ごとに勝ち負けを決めるわけです。TVの開票途中で地図が赤くなったり青くなったりしているのはそういうことです。
 
その次の段階が「大統領選挙人」。この「大統領選挙人」というのは、州の人口ごとに数か決まっていて、例えば人口が最大のカリフォルニア州で55人、アラスカ州で3人。この州別の「大統領選挙人」を合計してそれにワシントンD.C.3人を足した数が538。この人数が最終的な勝ち負けを決定することになる。
 
さて前述の、州別での勝ち負けでの結果、勝った候補者がそれぞれの州の「大統領選挙人」を全員独占するんです。これをWinner-Take-All(勝利者が全部取る)というらしい。例えばカリフォルニアで、もし候補者2人の選挙の結果が、45%対55%だったとしても、勝った側の55%だった候補者が「大統領選挙人」54人を全員独占できるというもの。州別に青か赤か、どちらの候補者かが決定されてしまうわけです。
 
その州別に選ばれた「大統領選挙人」を合計した数が、過半数(538÷2269で)270をとれば勝ちということになる。
 
お、今シカゴの勝ちでオバマさんが勝ったらしいぞ。決定かな。シカゴの人達は騒いでますね。とりあえず途中報告まで。
 


(それから暫く…日本時間現在午後3時過ぎ)

オバマさん決まったみたいです。

たった今ロムニーさんが出てきて、負けた結果を受け入れての挨拶をしていた。こういうのが欧米の人というのは上手いですね。非常に紳士的で、今日までの敵にもおめでとうを言い、サポートしてくれた人々にも感謝してました。正々堂々と戦った後での紳士的なルールみたいなものでしょうか。戦いを終わったロムニーさんは穏やかに安堵さえしているようにも見えた。舞台上のロムニー一家は美しいですね。まさに前時代的で非常に伝統的な白人の政治家の家族という感じ。みなさんほんとうにおつかれさまでした。




 

2012年11月5日月曜日

Grace Jones - Slave to the Rhythm (1985)



女神様だと思う。



Grace Jones - Slave to the Rhythm (1985)
画面内のWatch on Youtubeをクリックしてください
Album:  Slave to the Rhythm
Released: Oct 28, 1985
℗ 1987 The Island Def Jam Music Group
 
 
私が美大生の頃の80年代に海外のファッション界隈で有名だった(文字通り)スーパーモデル。輸入雑誌やNYのアート界隈の記事、当時有名だったファッションイラストレーターの作品でよく見かけた。
 
とにかく怖いくらいの迫力の彫刻のような人。信じられない体形。女性とも男性ともわからないような、ただただ超人的に美しい姿。動く彫刻。そういえばクリストファー・ウォーケンさんと一緒に007にも出てました。かっこよかった。彼女はすべてを超越してますね。

さてジャマイカ生まれのジョーンズさんは、どちらかと言えばアメリカでは有名でも、日本にはあまり情報も入ってこないようなファッション関係のカルト的な人だったと思う。アルバムも出していて何曲かは覚えてるけど…この曲も聴いたのかな…よく覚えていない。しかしこの曲はカッコイイ。バックバンドが最高。Bass がいい。実は踊るのはこういうリズムが一番気持ちがいい。
 
プロデューサーはトレバー・ホーンだそうだ。ちょうど彼のプロデュースした別の曲を出そうと思っていたのでちょうどいい。ジョーンズさんの声も神々しくてかっこいい。



Slave to the Rhythm (live) - Grace Jones.

 (Night of the Proms 2010 - Belgium/Netherlands)


さてこれは2010年のライブ。とにかくこの人がいかに驚異的かが分かるビデオ。1曲まるまるフラフープをやって最後まで堂々と生で歌いきるこのお方はこの時62歳。すげー(笑)今年英国女王のダイアモンド・ジュビリー・コンサートにも出演されたのが動画サイトにあがっているが、この時もフラフープをやってる。今年64歳だそうだ。近年のライブの映像もあがっていて今も現役。世の中には超人と呼べるお方がいる。すごいです。


2012年11月4日日曜日

映画『クラウド アトラス/Cloud Atlas』:大作です・一言では言えない

 
 
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『Cloud Atlas(2012年)/独, 米, 香港, シンガポール/カラー
/172分/監督;Tom Tykwer, Andy Wachowski, Lana Wachowski』
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2回見ました。
 
前情報無しの1回目はとにかく「???」な状態で大変混乱する。172分の大作で時間を追うごとに次第に形は見えてくるのだけど、とにかく最初は訳がわからない。ちょっと眠りそうになった。見終わって「なんだかすごい話…」「なんとなくこんな話かな…」とぼんやりと解ったような解らないような…解っているつもりの内容が正しいのかどうかもあやあふやな状態で(私の英語の聞き取りの問題も大きい)、これはいかん…ともう一度見に行くことにした。旦那Aも一緒に2回目。
 
なんと…いい映画ですよこれ。本当によくまあこんな映画を作ったもんだと思う。分かりづらくしているのは構成のせい。一見繫がりの無いバラバラの時代のバラバラの話が細切れにバラバラにくっつけられて交互に出てくるので大変混乱する。だけど2回目に見るとぜんぶ辻褄があうからすごいです。
 
素晴らしいです。ほんとにほんとにスケールの大きな大きな話で、まずそれだけで感動する。手塚治虫さんの『火の鳥』や、アーサーCクラークさんあたりのSFを思い出した。たぶんSF小説に詳しい人なら同じような話がもっと見つかるのかも。ほんとに大きい話。
 
 
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ネタバレ注意(謎解き的な解説です。基本の話を理解すればそれ程複雑ではないです。ただ話の謎解きに0から挑戦してみたい方はこれ以降を読まないで下さい。混乱させられるのも娯楽だと思います)
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簡単に話の内容をまとめると…。
出てくる時代は6つ。
 1. 1849年の南太平洋、アメリカ人の弁護士と奴隷。
 2. 1936年の英国、作曲家と筆記者/アシスタント(作曲家)。
 3. 1973年のカリフォルニア、ジャーナリスト。
 4. 2012年の英国、編集者でのちの作家。
 6. 2144年の韓国ネオ・ソウル。
 7. その数百年後、世界大戦後のハワイ島~宇宙。
 

もっとネタバレ注意(ここからはもっと踏み込んで内容を書いているので完全にネタバレです)
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それぞれの時代は一つの例外(ゲイの恋人)を除いて直接の関係は無い。だがそれぞれの時代に生きる人物は、同じ人物の生まれ変わりらしい。その生まれ変わりを解りやすくするため、違う時代の別の人物を同じ俳優が演じている。例えば、19世紀の夫婦は22世紀の韓国で恋人同士になる。また70年代の惹かれあった男女は遠い未来で夫婦になる…といった具合。
 
それにそれぞれの時代の人物達の行動や記録も間接的に繋がっていく19世紀の人物の書いた本を30年代の作曲家が読み、その作曲家の曲を70年代の人物が聴く。2012年の人物の書いた本はいずれ映画になり、その映画を22世紀の女性が見る。その22世紀の女性がその数百年後に神様(偶像崇拝の対象)となる。そんなふうに時代は間接的に繋がっていく。
 
ここではネタバレをして映画の構成を全部解説してしまったが、これさえわかれば基本はそれ程複雑な話ではない。複雑なのは構成。前述したようにバラバラの時代が細切れにされて、それが交互に出てくるので非常に混乱する。
 
 
 
驚くべきは、6時代それぞれの話がかなり高レベルで仕上げられていること。全部編集し直して一時代分ずつまとめて見てもかなりいいんじゃないか。19世紀はいかにも時代劇風だし、2144年のネオ・ソウルは近未来バリバリのSF映画。それぞれが丁寧にお金をかけて作られているので、かなりの見ごたえ。おおまかに時間を計算すれば、ほぼ3時間180分÷6時代として1時代平均30分程の話になる。6本のショートフィルムを見るようなものだ。よくもまーこれほど詰め込んだものです。
 
2回目は話に集中して見れるので、映像の質の高さも俳優さん達のレベルの高さも、全てを良質のエンターテイメントとして楽しめた。実は1回目に、意味もなくバラバラに細分されてツギハギしただけに見えた編集が、2回目に見ると実は全て巧妙に考えられた編集だったというのにも驚いた。違う時代の場面に切り替わるタイミングが絶妙。ほんとうによく考えられている。これだけ手を広げてほんとによくまとめたものだと思う。非常に面白かった。やっぱりトム・ハンクスは凄い役者さんです。
 
 
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特筆したいのは近未来韓国ネオ・ソウルの話。たぶん一番の目玉。非常にショッキングだからこそ、全体の話の中で大きな意味を持つ。ところで今までのこういう「近未来+アジア」の設定では、日本が舞台になることが多かったと思うのだけど、今回は韓国が舞台。おそらく今までに「近未来+TOKYO」の設定がありすぎたため(映画、日本のSF漫画、アニメなど多数)マンネリ化を避けるためではないかと思う。それにしてもまたアジアがこういう近未来の設定に使われたというのも興味深い。
 
同じアジア人としてもこの話は他の時代より気になる。なぜ2144年の話がアジアの話なのか。それはあの話が非常にショッキングで悲しいものだからではないかと思う。ああいう話を映像化するのに、顔の知れた西洋人の女優を使うと、欧米の観客にはかなり不快なものになる可能性があること。それに普段から女性の強い西洋ではリアルな感じがしないからではないか。西洋にまだぼんやりと存在する「穏やかでイノセントなアジア人の女性」のステレオタイプは記号として使える。それが理由だろうと思う。準主役とも言えるこのアジア人女性に抜擢されたのは韓国の女優ペ・ドゥナさん。
 
一般的に西洋ウケするアジアの美女と言うよりも、子供っぽい女優さんだなと思った。どちらかと言えば可愛いタイプ。子供のようにイノセント。言葉にもアクセントがあってたどたどしい感じだ(…と思っていたが旦那Aによると殆どアクセントの無い自然な英語だそうだ)。最初はこのキャラクター設定の意味が解らなかった。しかし話が進むにつれて彼女のイノセントさが非常に重要なのだということが解ってくる。子供のように純粋なキャラだからこそショック倍増。本当に悲しい。彼女のような若い女優さんを選んだのも演出上そういう効果を狙ったものなんだろうと思う。(成人女性なのに)あの華奢で幼い感じは西洋の女優さん達には出せないだろうと思う。難しいキャラクターを、英語が母国語ではないこの女優さんは本当によく演じていらっしゃる。彼女の顔が暫く頭から離れない。
 
 
ところで旦那A20世紀初頭の作曲家の話が好きだそうだ。若い筆記者/アシスタントの台詞が非常に上品で美しいらしい。音楽も美しい。
 
 
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素晴らしい映画です。面白かった。見ごたえ十分。細切れで謎解きのような構成も面白い。それにしても大きな話。生まれ変わりの話だが、仏教の輪廻転生やカルマの法則のように、前にやった悪いことが後で自分に返ってきたり、前にいいことをしたから後は幸せ…というような話ではない。ただ淡々と、人間は何度も生まれ変わってそれぞれの時代を作っていく。そうやって長い長い時代を人類は紡いでいく…という内容。
 
そんな大きな話を、3時間でまとめるというのも無理難題だったろうが成功している。原作があるそうだが、おそらくこの手の話の重厚さを本の印象のまま映画化するのは無理だろうと思う。映画という時間の限られた表現方法で、よくこれほどの話を紡げたものだと驚いてしまう。
 
たまにはお金を大量に使った大掛かりな映画もいい。日常の生活の中での普通の人の心理劇もいいけど、たまにはこんな映画らしい映画というのも嬉しい。「うわ~っすごいなー」と思えることは素晴らしい娯楽。だから決して大作映画を切り捨てようとは思わない。近年大掛かりな映画というと、アクションとこけおどしばかりで中身の無いものが多いように思うが、この映画にはそれなりの思想やメッセージがある。これだけの娯楽大作でありながら真摯に話のテーマを貫ぬこうとした姿勢は素晴らしいと思う。
 
 
…ところで、またアジアの女性がああいう風に扱われたとか、アジアの都市だからって俳優全員を単純に特殊メークで小さい目にしてアジア人にするというのも強引だとか、多少違和感のある場面もあるけれど…この映画全体の完成度を考えれば、まあこういうことに文句を言ってもあまり意味は無いだろうと思う。
 
…一般の様々な感想を読んでみると、かなり激しく好き嫌いが分かれる模様。もちろんこんな映画を子供に見せてはいけない。トラウマになる。この映画を嫌う気持ちもよく理解できる。物議をかもしやすい映画であることは間違いないのだろう。
 
 
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クレジットでドイツ人の名前を多く見かけたのだがドイツの制作なんですね。原作は2004年の英国の作家の作品。丁寧に丁寧に作られた見ごたえのある映画。俳優さん達も素晴らしい謎が多いのもまたいい。映画の魔法ももちろんあります。音楽も素晴らしい。大変満足。拍手喝采。
 
 
こういう映画がお好きなら2回見るのをお勧めしたい。2回目は本当によく解るから。