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『Cloud Atlas(2012年)/独, 米, 香港, シンガポール/カラー
/172分/監督;Tom Tykwer, Andy Wachowski, Lana Wachowski』
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『Cloud Atlas(2012年)/独, 米, 香港, シンガポール/カラー
/172分/監督;Tom Tykwer, Andy Wachowski, Lana Wachowski』
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2回見ました。
前情報無しの1回目はとにかく「???」な状態で大変混乱する。172分の大作で時間を追うごとに次第に形は見えてくるのだけど、とにかく最初は訳がわからない。ちょっと眠りそうになった。見終わって「なんだかすごい話…」「なんとなくこんな話かな…」とぼんやりと解ったような解らないような…解っているつもりの内容が正しいのかどうかもあやあふやな状態で(私の英語の聞き取りの問題も大きい)、これはいかん…ともう一度見に行くことにした。旦那Aも一緒に2回目。
なんと…いい映画ですよこれ。本当によくまあこんな映画を作ったもんだと思う。分かりづらくしているのは構成のせい。一見繫がりの無いバラバラの時代のバラバラの話が細切れにバラバラにくっつけられて交互に出てくるので大変混乱する。だけど2回目に見るとぜんぶ辻褄があうからすごいです。
素晴らしいです。ほんとにほんとにスケールの大きな大きな話で、まずそれだけで感動する。手塚治虫さんの『火の鳥』や、アーサーCクラークさんあたりのSFを思い出した。たぶんSF小説に詳しい人なら同じような話がもっと見つかるのかも。ほんとに大きい話。
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ネタバレ注意(謎解き的な解説です。基本の話を理解すればそれ程複雑ではないです。ただ話の謎解きに0から挑戦してみたい方はこれ以降を読まないで下さい。混乱させられるのも娯楽だと思います)
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簡単に話の内容をまとめると…。
出てくる時代は6つ。
2. 1936年の英国、作曲家と筆記者/アシスタント(作曲家)。
3. 1973年のカリフォルニア、ジャーナリスト。
4. 2012年の英国、編集者でのちの作家。
6. 2144年の韓国ネオ・ソウル。
7. その数百年後、世界大戦後のハワイ島~宇宙。
もっとネタバレ注意(ここからはもっと踏み込んで内容を書いているので完全にネタバレです)
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それぞれの時代は一つの例外(ゲイの恋人)を除いて直接の関係は無い。だがそれぞれの時代に生きる人物は、同じ人物の生まれ変わりらしい。その生まれ変わりを解りやすくするため、違う時代の別の人物を同じ俳優が演じている。例えば、19世紀の夫婦は22世紀の韓国で恋人同士になる。また70年代の惹かれあった男女は遠い未来で夫婦になる…といった具合。
それにそれぞれの時代の人物達の行動や記録も間接的に繋がっていく。19世紀の人物の書いた本を30年代の作曲家が読み、その作曲家の曲を70年代の人物が聴く。2012年の人物の書いた本はいずれ映画になり、その映画を22世紀の女性が見る。その22世紀の女性がその数百年後に神様(偶像崇拝の対象)となる。そんなふうに時代は間接的に繋がっていく。
ここではネタバレをして映画の構成を全部解説してしまったが、これさえわかれば基本はそれ程複雑な話ではない。複雑なのは構成。前述したようにバラバラの時代が細切れにされて、それが交互に出てくるので非常に混乱する。
驚くべきは、6時代それぞれの話がかなり高レベルで仕上げられていること。全部編集し直して一時代分ずつまとめて見てもかなりいいんじゃないか。19世紀はいかにも時代劇風だし、2144年のネオ・ソウルは近未来バリバリのSF映画。それぞれが丁寧にお金をかけて作られているので、かなりの見ごたえ。おおまかに時間を計算すれば、ほぼ3時間180分÷6時代として1時代平均30分程の話になる。6本のショートフィルムを見るようなものだ。よくもまーこれほど詰め込んだものです。
2回目は話に集中して見れるので、映像の質の高さも俳優さん達のレベルの高さも、全てを良質のエンターテイメントとして楽しめた。実は1回目に、意味もなくバラバラに細分されてツギハギしただけに見えた編集が、2回目に見ると実は全て巧妙に考えられた編集だったというのにも驚いた。違う時代の場面に切り替わるタイミングが絶妙。ほんとうによく考えられている。これだけ手を広げてほんとによくまとめたものだと思う。非常に面白かった。やっぱりトム・ハンクスは凄い役者さんです。
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特筆したいのは近未来韓国ネオ・ソウルの話。たぶん一番の目玉。非常にショッキングだからこそ、全体の話の中で大きな意味を持つ。ところで今までのこういう「近未来+アジア」の設定では、日本が舞台になることが多かったと思うのだけど、今回は韓国が舞台。おそらく今までに「近未来+TOKYO」の設定がありすぎたため(映画、日本のSF漫画、アニメなど多数)マンネリ化を避けるためではないかと思う。それにしてもまたアジアがこういう近未来の設定に使われたというのも興味深い。
同じアジア人としてもこの話は他の時代より気になる。なぜ2144年の話がアジアの話なのか。それはあの話が非常にショッキングで悲しいものだからではないかと思う。ああいう話を映像化するのに、顔の知れた西洋人の女優を使うと、欧米の観客にはかなり不快なものになる可能性があること。それに普段から女性の強い西洋ではリアルな感じがしないからではないか。西洋にまだぼんやりと存在する「穏やかでイノセントなアジア人の女性」のステレオタイプは記号として使える。それが理由だろうと思う。準主役とも言えるこのアジア人女性に抜擢されたのは韓国の女優ペ・ドゥナさん。
一般的に西洋ウケするアジアの美女と言うよりも、子供っぽい女優さんだなと思った。どちらかと言えば可愛いタイプ。子供のようにイノセント。言葉にもアクセントがあってたどたどしい感じだ(…と思っていたが旦那Aによると殆どアクセントの無い自然な英語だそうだ)。最初はこのキャラクター設定の意味が解らなかった。しかし話が進むにつれて彼女のイノセントさが非常に重要なのだということが解ってくる。子供のように純粋なキャラだからこそショック倍増。本当に悲しい。彼女のような若い女優さんを選んだのも演出上そういう効果を狙ったものなんだろうと思う。(成人女性なのに)あの華奢で幼い感じは西洋の女優さん達には出せないだろうと思う。難しいキャラクターを、英語が母国語ではないこの女優さんは本当によく演じていらっしゃる。彼女の顔が暫く頭から離れない。
ところで旦那Aは20世紀初頭の作曲家の話が好きだそうだ。若い筆記者/アシスタントの台詞が非常に上品で美しいらしい。音楽も美しい。
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素晴らしい映画です。面白かった。見ごたえ十分。細切れで謎解きのような構成も面白い。それにしても大きな話。生まれ変わりの話だが、仏教の輪廻転生やカルマの法則のように、前にやった悪いことが後で自分に返ってきたり、前にいいことをしたから後は幸せ…というような話ではない。ただ淡々と、人間は何度も生まれ変わってそれぞれの時代を作っていく。そうやって長い長い時代を人類は紡いでいく…という内容。
そんな大きな話を、3時間でまとめるというのも無理難題だったろうが成功している。原作があるそうだが、おそらくこの手の話の重厚さを本の印象のまま映画化するのは無理だろうと思う。映画という時間の限られた表現方法で、よくこれほどの話を紡げたものだと驚いてしまう。
たまにはお金を大量に使った大掛かりな映画もいい。日常の生活の中での普通の人の心理劇もいいけど、たまにはこんな映画らしい映画というのも嬉しい。「うわ~っすごいなー」と思えることは素晴らしい娯楽。だから決して大作映画を切り捨てようとは思わない。近年大掛かりな映画というと、アクションとこけおどしばかりで中身の無いものが多いように思うが、この映画にはそれなりの思想やメッセージがある。これだけの娯楽大作でありながら真摯に話のテーマを貫ぬこうとした姿勢は素晴らしいと思う。
…ところで、またアジアの女性がああいう風に扱われたとか、アジアの都市だからって俳優全員を単純に特殊メークで小さい目にしてアジア人にするというのも強引だとか、多少違和感のある場面もあるけれど…この映画全体の完成度を考えれば、まあこういうことに文句を言ってもあまり意味は無いだろうと思う。
…一般の様々な感想を読んでみると、かなり激しく好き嫌いが分かれる模様。もちろんこんな映画を子供に見せてはいけない。トラウマになる。この映画を嫌う気持ちもよく理解できる。物議をかもしやすい映画であることは間違いないのだろう。
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クレジットでドイツ人の名前を多く見かけたのだがドイツの制作なんですね。原作は2004年の英国の作家の作品。丁寧に丁寧に作られた見ごたえのある映画。俳優さん達も素晴らしい。謎が多いのもまたいい。映画の魔法ももちろんあります。音楽も素晴らしい。大変満足。拍手喝采。
こういう映画がお好きなら2回見るのをお勧めしたい。2回目は本当によく解るから。