能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2019年12月31日火曜日

MUSICAL★『レント/Rent』 - 20th Anniversary Tour - Dec 26, 2019


 

2016年から始まったツアーのプロモーション映像
 

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Rent – 20th Anniversary Tour
Musical
Music and Lyrics by Jonathan Larson
Book:  by Jonathan Larson
Language:  English
Basis:  La Bohème by Giacomo Puccini
Premiere:  January 25, 1996: New York Theatre Workshop, New York City
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Cody Jenkins:  Mark
Coleman Cummings:  Roger
Shafiq Hicks:  Tom Collins
Joshua Tavares:  Angel
Aiyana Smash:  Mimi
Samantha Mbolekwa:  Joanne
Kelsee Sweigard:  Maureen
Juan Luis Espinal: Benny
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Blaisdell Concert Hall
Dec 26, Thursday, 7:30pm

 
わーっ…ずいぶん休んじゃった。旦那Aがクリスマス年始2週間のホリデー中なので、毎日毎日一緒に海や山や街に出かけて文章が書けない。昨日30日は島の北に大波を見に行ったら米国本土からの観光客が沢山いてどこもギュウギュウ。西の町に着いたら車の渋滞が酷かったのでうんざりして折り返すことにするトホホ。途中でパイナップルアイスだけ食べて帰ってきた。やっぱりホリデーシーズンに観光地へは行くもんじゃない。というわけで今週末までクリスマス年始ホリデーを続行中なのですが、ちょっと時間が出来たので、先週見たミュージカルのレビューを書いておこう。

クリスマスの翌日26日の夜、『レント/Rent20th Anniversary Tourを見てきた。

『レント/Rent』とは、ニューヨークのブロードウェイのミュージカルで、このツアーは2016年から始まった20周年記念公演全米ツアー。この地の公演は1229日に終わったのだけれど、まだまだこれからも全米ツアーは続く…次の公演地はフロリダ州だそう。これからも色んなところに行くみたいですよ。
 
 
さてこの『レント』なのだけれど、ワタクシはこのミュージカルのことをよく知らなかった。20年ぐらい前にロンドンでポスターを見たりはしたけれど当事の公演も見ていない。だから何の話なのか全く知らない。今年の秋頃にこの地での公演のチケットがまだ残っていたので見にいくことにした。
 
実はミュージカルは歌詞が聞き取れないことが多いので、ストーリーを予習することにする。時代設定は1989。同居中の若者二人。クスリ漬けの階下の女の子。レズビアンのカップル。ドラァグクイーンと大学講師のカップル。登場人物の数名はHIVポジティブ等等…ずいぶんイマドキの話じゃないですか。なんだか近年の米ドラマPOSEの設定に似ているんですけど…。初演は1996だそうで…1996年ならまだまだLGBTQを扱ったテーマは珍しかったのかもしれませんね。どうだったのかな。
 
 
というわけでウミガメのびっくりするぐらい辛口レビュー! これからこのミュージカルを見る方々、『レント』がお好きな方は読まないほうがいいと思います。


★ネタバレ注意

開演早々すぐに歌詞が/ストーリーがわからなくなる。やっぱり。私はミュージカルはだめなんだわ…歌詞が聴き取れないのだ。今回は席が2階で舞台から遠かったものだから、演者のお顔がよく見えないのもいけない…誰がどの歌を歌っているのかもわからなくなる。アチャー…これは全然イカンやつやわ…。

音楽はロックです。ロックミュージカル。舞台上の左側でフルのバンドが演奏。音はまんまロックコンサートのよう。しかし…この大きなギターやドラムの音が、これまた演者の声を聴こえにくくする。ひゃ~これは最初からお手上げ。 やっぱりミュージカルは無理をしてでも前の席で見ないといかんよなぁ…。

というわけで、ロックコンサートのような元気のいい音なのに(ミュージカルだから)もちろん観客は立ち上がらず、ワタクシの席は後ろの方で舞台を遠く眺めながら最初から結構冷めてしまった。どうするよこれ。

なかなか気持ちが温まらない状態で歌は続く。


そして派手なドラァグクイーンのエンジェルちゃんが出て来たっ!あっ…大好きなやつやっ!やっぱりこれは前で見ないといかん…。このドラァグクイーンはハイヒールで両脚を揃えて床からテーブルの上に一気にポーンと飛び乗ったぞっ…おおっすごいやないか。会場も湧く。

それからエンジェルちゃんの恋人のコリンズさんがすご~く歌が上手い。いいお声。あ…このお方は本当に上手いわ。このお方はスターの声。

…実は、このコリンズのShafiq Hicksさんが歌うまで演者が全員ちょっと微妙…だと思っていた。あまり歌の上手い人がいないかも…。ええっ?だってこれブロードウェイのツアーでしょ?もっとみんな上手いものじゃないのか?

というのも今回席が遠くて演者のお顔が見えないものだから、自然に演者の歌声を集中してじっくり聴くことになってしまい…結果、演者の歌の上手さ/微妙さがかなりはっきりとわかってしまったのだ。

どうやら後でパンフレットを読んだら、演者の方々は皆お若い方々。だからまだ舞台の経験が浅いのかもしれない…と思った。

上手い人ははっきりとわかる。この公演で飛びぬけて上手かったのは、
・コリンズのShafiq Hicksさん…このお方はスターの声の持ち主
・ミミのAiyana Smashさん…彼女もものすごく上手い 才能

そして
・エンジェルのJoshua Tavaresさんいい声 いい役
・ベニーのJuan Luis Espinalさん…出番は少なかったけれど彼も上手いはず

この4人以外は(基本的に上手いんだけれど)声が安定していなかったり、声にスターの輝きが足りなかったりする。皆さんお若いのでまだまだこれからなのかな…と思った。

そんな風に少し冷めた状態で見ながら一幕終了。

そして二幕が進むに連れて会場が温まってきた。だんだん良くなってくる。全体にレベルが上がってきた。ああ…演者も温まってノッてきたんだろう…おもしろいな…と思う。やっと盛り上がってきたと思ったらすぐに終了。ああ終わっちゃった。
 
 
これは1989の若者の話を1996にミュージカル化したもので、内容を考えれば話題になったのはよくわかる。しかしこれ、正直この音楽はそんなにいいかね?と思ってしまった。なぜならこのミュージカルの音楽は1980年頃の音楽。オールアメリカン・ロックの響き。普通のロック。ちょっと時代が古いんじゃないのか。
 
だって1989年と言えば…Bobby BrownPaula AbdulRoxetteMadonnaMilli VanilliPrinceJanet JacksonNeneh Cherry等等…もっとガンガンにダンス系の曲が流行っていた時代。だから普通のアメロックはちょっと違うよなぁ…と思ってしまった。
 
台詞の全てにいちいちメロディが付いて歌になっているのもつらい。だらだら無駄に歌っているように聴こえて苦しい。曲も微妙。一人一人の台詞の曲はキャッチーなメロディが少ない。うわーっと盛り上がれる曲が少ないと思った。台詞にいちいちメロディーが付いているのは、演者にとってもかなり演じにくい/歌いにくいのではないか?この作品の歌をうまく歌うのは演者にとってもかなり難しいのではないか?とさえ思った。
 
全体の曲の中で一番良ったのは、全員で525000 minutes…と歌うSeasons of Love。この曲は心に響いた。ぶっちゃけコーラスだから個人のアラがカバーされて曲が綺麗に聴こえる。キャッチーでいい。
 
 
なんだかね…そんな風にいろんな事が気になってどうも熱烈にモリアガルことが出来なかった。…ただ勝手に重箱の隅をつついているだけなんですけどね。台詞が聞き取れなかったこちらが悪いのに、なんだか文句ばかりになってしまった。あいすまぬ。単純に音楽が合わなかっただけだと思います。好みの問題。残念。ミュージカルはもっと前で見るべし。


とは言っても、このミュージカルはピューリッツァー賞をはじめ、トニー賞 ミュージカル部門の各賞、ニューヨーク市批評家協会賞などなど…ものすごい数の賞を受賞している名作なので、文句を言っているのは私だけだと思います。

 
ともかく
コリンズのShafiq Hicksさんと、ミミのAiyana Smashさんは注目だと思う。
このお二人は本当に上手かった❤❤❤❤❤

 

2019年12月23日月曜日

HAPPY HOLIDAYS!!!





HAPPY HOLIDAYS!!!


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とりあえず年末の色んなことが一段落して、また文を書き始めようと思ったのですが、やっぱりまだまだいろいろとあって時間がとれない。というわけで、もう少しお休みします。



2019年12月17日火曜日

BABYMETAL - DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)(2019)



いいと思うぞこれは…いいよねっ!かっこいいな

 
 
BABYMETAL - DA DA DANCE (feat. Tak Matsumoto)(2019)

Album:  METAL GALAXY
Released: Oct 11, 2019
℗ 2019 BABYMETAL RECORDS / Amuse Inc. under
exclusive licence to Cooking Vinyl America Inc. / 5B Records Inc.
 
 
 
お…出ましたねーダダダンス ホーッ!
いい感じ。イイ感じよ。ね。

やっぱりこの曲は元気がいいわ。モリアガル。イントロが終わって「ベイビーベビーベイビ…」とコーラスが始まると「おっいいねー…」すごく嬉しくなる。目が覚める。そして女の子3人が踊る踊る。わー楽しい。

この曲は、


明るいな。元気がいい。やっぱ若い女の子達が元気に笑って歌って踊るのはとてもいい。やっぱりBABYMETALはこれだわ。

明るくて、元気がよくて、陽で、ガンガン踊って、小難しいことはどうでもいいよねっ、

という感じですね。女の子が元気がいいって大切ですよやっぱ。若いんだもの。この曲のサビで「だーだーだーっだだだー」と歌いながら満面の笑顔で腕をぶんぶん振り回して踊るもあちゃんが特にいい。カワイイ+カッコイイ! この彼女の笑顔で「あ~ベビメタはいいよねーっ」と幸せになる。
 
この曲はBABYMETALが最初に注目された『ギミチョコ』のエネルギーに似てますよね。(面白さでウケた『ギミチョコ』ほど評判になるかどうかはわからないけれど)エネルギーの向きが同じ方向。とてもいいと思うぞ「だだだーっだだだーっ」のサビで、小さな子供達が手を左右に振って振りコピをしそうだな。赤ちゃんも踊るぜ。


ところで今年出た曲のMVは全部ライブの編集映像なので、ちょっと飽きたかなと思ったけれど、

コレハイイ。

この曲はこれでいい。編集もカメラワークも素晴らしい。ものすごくエネルギーを感じるからいい。元気が出る。最初にこの曲をアルバムで聴いた時は、まー…なんとユーロですか…と思ったのだけれど、…いや…実際これはジャンル云々というよりも、

エネルギーが高いからいい。

楽しくロック/メタルをやってる感じじゃないですか。BABYMETALならでは! いいですね。ダンスも楽しいしね。しかしよく踊るね。すごいね。ダンスがいい。間奏のダンスもかっこいい。いいね。

そういえばこの曲は構成も複雑ですよね(色んなパートがある)。近年のBABYMETALの曲はAメロとBメロだけの単調な曲が多いのだけれど、この曲は構成も面白い。だから飽きない。何度も聴ける。最初の印象よりもずーっといい曲。

 
BABYMETALはさぁ…やっぱり元気がいいからかっこいいのだと思うのよ。女の子達がガンガン踊って元気がいいから楽しいのだと思う。みんなかっこいい。女性が見ても嬉しいですよね。
 
もうこの曲のサビでは「だーだーだーっだだだー」と歌いながら手を左右に振らずにはいられないもんね。癖になる。…んもーほんとにこまけーこたーいーんだよななななっ!楽しけりゃいいのだわねっ踊れや踊れ これライブではオープニングなのだろうけれど、盛り上がりますね。
 
 
音が密で大きく勢いがある上に、かっこいいすぅちゃんのボーカルもクリアで元気がいいし、3人も元気で楽しそうだし、ダンスも激しくて(りほちゃん+ももこちゃんもかっこいい)いろんなエネルギーが前面に

だだだぁ~っ

止まることなくマシンガンのように迫ってくるのがとてもいい。ロックは勢い!嬉しいよ。私、今笑顔ですもんこれ書きながら。楽しいわ。BABYMETALには明るく楽しくやって欲しいわやっぱはははは。みんな笑おうぜ😃😃😃ヤッター

 

2019年12月16日月曜日

お猫様H:師走の猫



今日もブラッシングよ
大きなオシリ
大きな目
かわいい
…と思ったら突然キレる。これがフォトグラフィック・エビデンス。
なんでよ~っ。あ…そうか…後ろ足に触ったから?そうか…ごめんね。
エー…イージャナイ また触っちゃおうかな キャーッイタタタタ
そしてワタクシの腕には4本のミミズ腫れ

ま…美人ちゃんやね
まったり
綺麗。

 
なんとかクリスマス前の忙しさが落ち着いたわ。毎年12月の始めはいろいろとあって忙しい。気持ちも落ち着かない。今年はリースを作るつもりだったのに無理だわね。まだツリーも飾っていないのだ。明日飾るか。
 
そして猫さんは人間が外出するたびに機嫌が悪いのです。でも美人の猫ちゃんは何をやってもかわいいかわいいかわいいの。たまらず海亀は猫さんにウムウムウムウムウムウムウムといつもドライなチューをするのだ。額や頬にチューをしても、彼女は決して人間の顔を攻撃しないのです。
いい子だなぁ。


 

2019年12月9日月曜日

Mantronix ft. Wondress- Got To Have Your Love (1989)

 
 
かっこいい音
 
 
 
Mantronix ft. Wondress- Got To Have Your Love (1989)


Album:  This Should Move Ya
Released: 31 Dec 1989
℗ 1990 Capitol Records, Inc/Solar Productions, Inc
 
 
 
今年の7月頃、米のドラマ『POSE』に影響されて1990年頃の曲を動画サイトで探っていたら、気になる曲が数曲出てきた。ここに取り上げるつもりだったのに時間が過ぎてそのままになっていた。この曲もその一つ。
 
 
そういえば1989年頃は忙しかったせいかあまり洋楽を聴いてなかった。あー…そうだ、この頃は『イカ天』に出ていたバンドをライブハウスに見に行ったりしていた。この曲も米では結構売れたらしいのに全然知らなかった。記録しておきます。
 
 
ところで今年も12月はいろいろと忙しくて、一段落するまであまり文を書けないと思います。書きたいことは沢山あるのに…。あー…米のドラマの感想も書きたいのになー…



 

2019年12月5日木曜日

Highness - I'm Gonna Do (2019)



新人かな。

 
 
Highness - I'm Gonna Do (2019)

I'm Gonna Do - Single 
Released: May 10, 2019
A Polydor Records Release; ℗ 2019 Polydor Records,
a division of Universal Music Operations Limited

 

UKダンスチャートに半年前ぐらいにチャートに入っていた曲。いい曲。

 
Highness さんとは、
ロンドン在住のDJ/producer。デビューは2018年だそうで新人かな? mo-town soulrock に影響されたhouseをなさるお方だそうです。



2019年12月4日水曜日

映画『三度目の殺人/The Third Murder』(2018):2回目 改めて謎解き+映画の主題とは







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『三度目の殺人(2017年)/日/カラー
124分/監督:Hirokazu Koreeda
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「三度目の殺人」をもう一回見た。昨日は1回だけ見てモヤモヤとしたまま感想を書いたのだけれど、煮詰まったので今日もう1回見ることにした。メモを取りながら見た。なんとか理解できた気がするので書いておこう。
 
自分なりにこの映画の主題とはこのようなものではないかと結論も出した。後で読んでもわかるようにまとめておきたい。昨日書いたものはずいぶん乱暴で間違っていたところもあったのでそれも修正していく。
 
 
映画を見ていない方はここでストップしてください。

★大いにネタバレ注意↓

 

 

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この映画は、運命に翻弄された社会的な弱者の話だと思った。弱者の辿るやり直しのきかない人生。一度つまづいて、また再度つまづく。三隅に起こった様々な出来事は…たまたま不運が重なったとしか言いようがない。本来なら人を裁き、場合によっては救いの手を差し伸べるはずの司法も、この弱者を救い出すことはできなかった。社会は時に意図的にそんな弱者を振るい落とすこともある。そして彼は、一つの光(咲江)を胸に、無言のまま消えていく。不条理。そんな話だと思った。

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★ストーリー

この主人公三隅は、元々人を殺すような人ではなかったのかもしれない。出身は北海道の元炭鉱の町。炭鉱が閉じられてから街ではヤクザが高利貸しをして人々を苦しめるようになった。三隅は当時結婚していて娘もいた。元々正義感が強かった上にキレやすかったのが災いした。人々の苦しむ様子を見ていられずに高利貸し2人を殺害。そして放火。それが30年前。一度目の殺人
 
出所して関東に出てくる。前科者の彼を受け入れてくれた小さな町工場で働くが、そこでも問題にぶつかる。ある日、社長の娘・咲江から、彼女が父親に性的に暴行を受けていることを本人から聞いてしまう。見過ごすことは出来なかった。社長を殺す。二度目の殺人
 
二回目の殺人は、たまたまぶつかった不運だとしか言いようがない。しかし過去に自分の娘を不幸にした三隅は、咲江の苦しみを見過ごすことができなかった。咲江を救おうと父親の社長を殺害…この殺人で、三隅は死刑を免れないと覚悟を決めたのだろう。
 
途中、三隅の計画が狂う。咲江が弁護士に父親との関係を話してしまった。彼女は三隅を救うために法廷で証言したいと言う。それは困る。三隅は咲江を救うつもりで彼女の父親を殺害したのに。
 
そこで「殺人をやっていない」と大芝居。そこから話はめぐって三隅は(計画通り)死刑を宣告される。三隅が(自分の死刑への流れを作った)三度目の殺人咲江も証言をしなかった。彼女は守られた。


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ストーリーとして、昨日詰めが甘いと書いたのは、咲江が法廷で証言をすると言ったあと…三隅が急に「殺人をやってない」と言い始め、そこから死刑宣告までの流れが不自然たと思ったから。司法のことはよく解からないのだけれど、あの時点で三隅が突然「やっていない」と言っても、必ずしも裁判のやり直しにならないとは限らない。死刑が宣告される確証もない。(確かに以前から三隅の証言はコロコロ変わることは知られていたようで)最後にまた証言を覆すことは裁判官の心証を悪くするだろうし、結果も(計画どおり)死刑になったわけだが、確実なやり方ではない。それに咲江が証言をしないままでいる確証もない。
 
咲江が最後に法廷で「父に感謝している」と言った場面も不自然。無駄に混乱する。
 
また咲江は,重盛に三隅を救うために「証言をするな」と言われて従ったわけで、それで結果的に三隅が死刑になってしまったら、その後心穏やかに沈黙していられるのかも大きな疑問。
 
そのあたりが1回目に見て、混乱させられモヤモヤとした印象をもった理由だろうか。

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★三隅の人生
 
一度目、二度目と不運が重なり人を殺害し、司法からも(不都合だからと)振り落とされて死刑を宣告される三隅。最後は意図的に自らを死刑に仕向けるように行動する…それで自らに向けた三度目の殺人。
 
三隅がそうなった理由は、彼が一度目の殺人での刑期を終えた後、新しく始まった第二の人生で、また見逃すことの出来ない状況に不運にもぶつかってしまったから
 
もう運命から逃れられないと思ったのだろう。
 
独房で、彼が小鳥に餌をあげようとした場面に静かな音楽が流れる。小鳥は、彼にとって唯一愛情を注げる対象だった。飼っていたカナリアを一羽だけ逃がしたのは、咲江を逃がすという意味だろう。冬に放されたカナリアが生きていけるのかはわからない。咲江がどうなるのかもわからないが、三隅は自分が彼女を救ったと思いたいのだろう。
 
 
最後に三隅が重盛に告げる
 
「ずっと生まれてこなければよかったと思っていた。私はいるだけで人を傷つける。でもあなたの言うとおりなら、こんな私でも誰か(咲江)の役に立つことが出来る。」
 
映画の場面ではあやふやな描き方をされているが、これは彼が本当に思っていることを言っているのだろう。
 
 
自らの人生に不運が重なって(避ける事が出来ずに)人を二度殺害した三隅は、せめて一人(咲江/一羽のカナリア)を救ってから自分の人生を終わらせようと思ったのだろう。
 
悲しい話ですね。
 
これはそもそも裁判の映画ではないのだろう。結論のある裁判映画だと思うから肩透かしを食わされる。しかし映画全体を、弁護士重盛との会話で明らかになってくる三隅の人生の話だと思えば納得できる。


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三隅も自分の人生や世の中に不満がないわけではない
劇中での三隅の本心らしい言葉を拾ってみた

・色んな事を見て見ぬ振りしなきゃやってられない
・生まれてこない方がよかった人間がいる
・人間の意志とは関係なく命を選別されてる
・理不尽に命を奪われたりする
・人の命を弄ぶ人がいる。理不尽だと言いたい
・彼らの意思とは関係なく命を選別されている
・裁判長には憧れた…人の命を自由にできる
・ずっと生まれてこなければよかったと思っていた
・私はいるだけで、人を傷つける
・でもあなたの言うとおりなら、こんな私でも誰かの役に立つ事ができる。それがたとえ人殺しでも。

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三隅が何度も証言を覆したのは、自分の不本意な人生と、不当に自分を裁くシステムに対する抵抗だったのだろう。三隅の事を「」と言った意味は、自分の意思に関係なく運命に翻弄されていく彼の人生からきているものだろうか。
 
 
 
★弁護士の重盛や、咲江、咲枝の母親のこともまとめておこう。

咲江
父親から虐待を受けていた。私は彼女の脚の問題も虐待からではないかと思ったが、彼女が言うとおり、高所から飛び降りた時の怪我かもしれない。もし虐待が幼い時から始まっていたのなら、それが辛くて自傷として飛び降りた可能性もありますね。

彼女は父親の殺害にはかかわっていない。河川敷での殺害の場面にもいなかった。昨日の感想では思い違いをしていた。三隅がタクシーに一人で乗っているのなら、彼女は現場にはいなかった。三隅に父親の殺害も頼んでいない。殺害は三隅が勝手にやったこと。

社長/咲江の父親
咲江を幼少時から虐待していたと思う。

母親/美津江
長い間。夫の娘への虐待を見て見ぬふりをしていた。咲江が重盛に「母みたいに見ないふりをしたくない」と告げる場面があることから、そうだったのだろう。酷い状況をわかっていても美津江は夫と離婚もせず、咲江にも「余計な事を言わないで」と虐待のことを黙っているように告げていた。咲枝に「お父さんだけが悪いわけじゃないでしょ」とさえ言っている。酷い母親。食品偽装の問題もわかっていても見ぬふりをしていた。そういう女性なのだろう。

三隅が美津江の保険金の話のデマを言った理由は、咲江を苦しめた母親・美津江を一時的にでも困らせようとしたのだろうか。

弁護士重盛
殺人犯の弁護はあくまでもビジネス。これまでもサバサバと仕事をしてきたのだろうが、三隅との長い対話の中で、人として、弁護士としての倫理を考えるようになる。彼が最後に十字路の真ん中に立っている場面は、これから十字架を背負って生きていくことを示しているのか、それともこの先に何かの行動を起こすことを示しているのか…。


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私は宗教的な十字架の意味をよくわかっていないので、この映画で何度も繰り返される十字架の意味がよく解からなかった。十字架を背負う意味で使われているだけではないような気がするのだけれど(小鳥のお墓の十字など)、どう解釈していいのかわからない。
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結末がわかった上で2回目に見てなんとか理解できたと思った。裁判モノ、推理モノのように結末を追うのではなく、社会的弱者…と言うべきなのかどうかわからないが…( やむを得ず)二度の殺人を犯した三隅の、辛い人生を描いた話だった。重なった不運、決して完璧ではない司法によって裁かれ、運命に翻弄された男の人生の中で、死刑の判決を受けてでも守りたかった咲江は、彼の人生の唯一の光だったのだろう。彼の心はそれで救われたのだと思いたい。