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『Jane Austen a gâché ma vie/Jane Austen Wrecked My Life』(2024)
/仏/カラー
/1h 38m/監督・脚本:Laura Piani』
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フランスの映画です。Netflixで鑑賞。
ここのところ毎日米国の政治関連のテレビばかり見ていて、娯楽の映画やドラマを全く見ていなかったので、1時間半ぐらいの気楽に見れそうな映画はないかとNetflixを探していて見つけた。フランスのロムコムならきっといい感じだろう。
本好きの心をくすぐる設定。主人公のAgathe(アガッtと発音してますね)はパリの英語の本を扱う本屋「Shakespeare and Company」で働く若い女性。この本屋は昔、映画『Before Sunset』にも出てきた実在の本屋。
Agatheは小説家の卵。彼女の妄想文を同僚で男友達のフェリックスが無断で英国に送っていた。それが受け入れられ、彼女は「Jane Austen Residency」…英国の作家ジェーン・オースティンの家での2週間の滞在(小説家の卵やアーティスト向けの合宿のようなもの)を許される。フランス人Agatheと風変りな英国人たちとの交流、そして恋の行方を描く。
滞在するのは18世紀の作家ジェーン・オースティンのカントリーの自宅。この「Jane Austen residency」は現実でも「Jane Austen House Creatives in Residence program」として行われているそうだ。(撮影に使われたのは違う建物)
https://janeaustens.house/
フランス人女性が一人、英国の美しいカントリーに滞在する話。この映画に描かれている英国は、フランス人の女性がロマンティックに夢見る英国の姿なのかなと少し思った。
出てくる人々それぞれが皆エキセントリック(変わり者)な愛すべき人々。フランス人の見る…いかにもステレオタイプ的な英国の人々が出てくる。特にヒュー・グラント風の無骨なオリバーはいかにも英国の男のステレオタイプだし、彼の叔母もいかにも優しくラブリーな英国のお婆ちゃん、アーティステックでエキセントリックな叔父も英国人のステレオタイプなのだろう。
それにしてもこの映画は、英国の風景を撮っているのにどこかフランス映画の風景に見えてしまうのが不思議。全体の色合いも綺麗だし、いかにもお洒落な映像…フランス映画のようだと思った。田舎道を自転車に乗って走る女性の姿は、以前他のフランス映画でも見たと思う。英国式の古臭い花柄のインテリアもフランス人が撮ればラブリー。同じ風景でも英国の監督が撮ったら印象が全く違うのではないかと思う。フランス人にはフランス人なりの風景の捉え方、撮り方があるのだろうと思う。それが面白いなと思った。
フランス映画といえば…いつもロマンティックな男女のシーンの撮り方が上手いと思うのだけれど、この映画も(19世紀がテーマの)パーティーのダンスのシーンの二人の様子はなかなか熱っぽくていい。男女が見つめ合うシーンなどなど…フランス人は男女の場面を撮るのが上手いなといつも思う。だからおフランスは素敵なのね…などと私達外国人は現実も知らずに憧れてしまうのだろう。
音楽はシューベルトのピアノ曲が数曲、舞踏会のシーンではストラウスとワルトトイフェルのワルツが流れる。全体に音楽も心地よい。あんな風に皆いきなりワルツを踊れるのもすごいねと思ったけれど、あれは映画だからなのだろうネ。
フランス人が書いた脚本のせいなのか、役者の問題か、妙な台詞や微妙な芝居もところどころあったけれど、全体に微笑ましいストーリーで楽しめた。1時間38分で比較的短いし気楽に見れるのもよかった。今どきのいい映画と言えば2時間超え~3時間近くの長い映画が多くて、作品を見ることさえなかなか思いきれないのだけれど、これくらいの長さのお気楽に楽しめる映画ももっと撮って欲しいと思う。
この映画のように…欧州圏でも文化の違う人々が惹かれあうというのは実際にあるのだろうなと思う。お互いの違いが魅力的に見えてくるのだろう。可愛いフランスの女の子に惹かれる英国人男は沢山いるだろうし、また無骨な英国人男にちょっとだけ惹かれるフランスの女の子…というのは結構いるのだろうなとも思った。