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『The Gilded Age』 (2025) Season 3
TV Series/米/カラー
/約1hr・全8話/
原案:Julian Fellowes』
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HBOのドラマ 『The Gilded Age』のシーズン3。オリジナルの放送は2025年6月22日~8月10日。全8話。
今年6月からのTV放送を録画していたのにすぐに見なかった。8月に放送が終ってから録画を見始めて先日やっと見終わった。
製作・脚本は、英国 ITV のヒット作 『ダウントン・アビー/Downton Abbey』 のジュリアン・フェロウズ/Julian Fellowes氏。彼がアメリカ・ニューヨーク市の1880年代からの物語を手がける。
時代の背景などの情報はシーズン1で書いたので省略。1890年頃の米国ニューヨークの上流階級を描いたドラマ。登場人物はほぼ同じ。主役は新興成金のラッセル家の夫婦。通りの向かいにはオランダ系旧家のヴァン・ライン家の人々。彼らを中心に当時のニューヨークのハイ・ソサエティーの様子を描く。
★シーズン2のまとめ
さて今回、まず以前書いたシーズン2の感想を読み直してみたのだけれど、私はほとんどシーズン2の内容を書いていなかった。
…上流階級は相変わらず閉じた社会で、その内部では旧家と新興成金のマダム達が格付けをし合っている。旧家のお嬢さんマリアンが女性の自立を手探りすれば、アフリカ系のペギーちゃんはジャーナリストとして米国南部まで出かけることで話にスパイスを加える…などと書いていた。
しかし実際にはもう少し史実に沿った設定もあったのですね。それを全く書いていなかったのでまとめておこう
シーズン2の主軸
① ジョージと労働者との対立
大富豪=新興成金(ニュー・マネー)・鉄道王ラッセル家のジョージは、鉄鋼業の労働者のストライキと向かいあっている状況.
② バーサが旧家に新オペラハウスで対抗する
ジョージの奥さんバーサ・ラッセル夫人は、相変わらず旧家(オールド・マネー)のアスター家などから「新興成金」だと言われ同格に見られていない。当時のニューヨークの旧家が集うオペラハウス「Academy of Music」でも、いいボックス席は全て旧家に押さえられていてラッセル家にはまわってこない。そこでバーサは新しく建てられた「Metropolitan Opera」をお金の力でサポート。またバーサはまた英国の貴族バッキンガム公爵をゲストとして招いて箔付けをする。旧家のアスター夫人との「どちらが上か」の戦い。
さて、この①の鉄道王と労働者のストライキの話はよく調べていないのだけれど、②のオペラハウスの話は今回歴史を少し調べてみた。
(上記の二つのオペラハウスの名前を見れば明らかなのだけれど)現在ニューヨークに残っているオペラハウスの名前は「Metropolitan Opera」。このドラマのシーズン2に描かれたオペラハウスを巡る旧家と新興成金の戦いは史実だったそうだ。
現在リンカーンセンター内の「Metropolitan Opera」は1966年にオープンした新しい建物。元々の「Old Metropolitan Opera House」は39ストリートに1883年に建てられていた。前述の排他的な旧家が集るオペラハウス「Academy of Music」では新興成金はいい席を確保できない。そこで旧家から排除された新興成金達が集い新しくオペラハウスを建てることになった。そのスポンサーは鉄道王のVanderbilts 家、銀行家のJP Morgan、James Alfred Roosevelt(第26代大統領の伯父)を始めとする70人の大富豪達。彼らが投資して「Old Metropolitan Opera House」を建設した。
シーズン2の話の軸は、史実の「オペラハウスを巡る旧家と新興成金の戦い」だったのですね。シーズン2の内容だけれどここに記録しておきます。
それからシーズン2の内容で直接シーズン3に関わってくる話もここにメモしておこう。
★シーズン2のネタバレ注意
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マリアンの婚約は上手くいかなかったが、その後ラッセル家の息子ラリーと惹かれ合うようになる。ヴァン・ライン家のアグネス伯母の息子オスカーが詐欺に遭い一家の財産を騙し取られる。そして伯母のエイダが牧師と結婚するもののすぐに夫を亡くしたが、夫の遺産が多くそれが一家を救うことになる。…等々
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★シーズン3
さてそんなわけで始まったシーズン3。シーズン2でのオペラハウスの戦いでの勝利で勢いに乗ったバーサ・ラッセル。今度は(お金の力で)ラッセル家の名前に箔をつけようと試みる。バーサによる…娘のグラディスを英国の貴族バッキンガム公爵に嫁がせる計画。それから夫の鉄道王ジョージ・ラッセルは…鉄道を今の東海岸から西海岸に繋げようと各企業の買収のための交渉を試みている。その二つがシーズン3の軸。
今シーズンは(新旧の戦いに勝利した)ラッセル家がますますその力を確実なものにする様子を描いている。英国貴族との繋がりや、鉄道王がますます事業を大きく拡大する様子…時代が変わっていく様子が描かれていて面白かった。
★ネタバレ注意
シーズン3ではラッセル家の一人娘グラディスの婚姻とその後の様子が描かれている。シーズン1では印象の薄かったグラディスが、このシーズンではとてもいい女優さんで素晴らしかった。そしてこのストーリーは、娘を伯爵家に嫁がせる母親バーサのストーリーでもある。彼女は欧州に嫁いだ娘を励ましに海を渡り、娘の夫にしっかりしろと檄を飛ばし、別れの馬車の中では一人涙ぐむ。いいですねぇ。この女優さんCarrie Coonさんは本当にいい女優さん。彼女の魅力無くしてこのドラマはありえない。
米国の大富豪が(落ちぶれた欧州貴族)に富をもたらす話は、まさに原案/脚本のジュリアンフェローズ氏の『ダウントン・アビー/Downton Abbey』の話そのまま。私は『ダウントン・アビー』は2、3話ぐらいしか見ていないのだけれど、あのマナーハウスのグランサム伯爵の妻コーラは大富豪の米国人の設定。英国と米国の話が繋がりました。面白い。
この『The Gilded Age』でもバッキンガム公爵と彼の姉が、ラッセル家の娘との婚姻に関して「ヤンキーのお金が必要だ」とかなんとか言っている…いかにもそのような状況。(ヤンキーとは米国北東部の白人に対する俗称または蔑称、海外からは米国人全体を指すことも)
さてこのドラマのラッセル家とは、史実の米国の鉄道王で実業家…大富豪のヴァンダービルト/Vanderbilt家の人々をモデルにしていると言われているが、史実でも同じような話が出てきた…『The Gilded Age』の時代に生きたコーネリアス・ヴァンダービルト2世の娘のグラディスがハンガリーのLászló Széchenyi伯爵に嫁いでいるし、また彼の姪(弟ウィリアムの娘)コンスエロは英国貴族マールバラ公チャールズ・スペンサー=チャーチルに嫁いでいる。このような米国の大富豪と欧州貴族の婚姻は当時多くあったらしく、欧州の貴族に嫁いだアメリカ合衆国籍の富裕層の女性をダラー・プリンセス/Dollar princesses などと呼んだそうだ。
それから今シーズンでは、夫のジョージが鉄道を東と西海岸で繋げるためにアリゾナ州まで行って様々な買収を行っている様子が描かれているのだが、これはヴァンダービルト家の史実ではないらしい。ヴァンダービルト家が各鉄道会社の買収により東海岸から西に鉄道を伸ばしたのは中西部のシカゴまで。実際に西海岸と東海岸が鉄道で繋がったのは1869年でヴァンダービルト家は直接関わっていない。
ラッセル家の娘グラディスの婚姻と、ラッセル家の鉄道事業の拡大がシーズン3の主軸。そしてそこに登場人物達の個人的なストーリーが乗ってくる構成。シーズン3まで見てくれば、それぞれの人物達にも親しみがわいて単純にドラマとして彼らがどうなっていくのかを見るのも楽しい。
ヴァンライン家の召使いジャックの発明のその後の成り行きにドキドキし、ペギーとカークランド医師の出会い、マリアンとラッセル家のラリーの関係にニヤニヤする。シーズン1とシーズン2で私は結構文句を書いていたと思うけれど、このシーズン3はドラマとしても十分楽しんだ。
YouTubeの動画を探したら『The Gilded Age』が史実とどう違うのかの検証動画がでてきた。
ペギーの話は(シーズン2のエピソードも含めて)かなり史実に近いらしいことに驚いた。ニューヨークのアフリカ系の裕福なミドルクラスも当時実在していて、彼らもまた白人の上流社会のように格付けをし合っている(カークランド医師の母親の言葉)ことも興味深い。
白人の上流社会は相変わらず狭い世界で、今回は夫から一方的に離婚を告げられるオーロラ・フェインが社交界で顔を失う様子も描かれた。
さてバーサ・ラッセルはとうとうこのシーズンで社交界のトップに上がったのだろう。一方で今まで権威を誇っていたアスター家の夫人は娘のスキャンダルとともに力を失っていく。窮屈な上流階級の古いしきたりを破りながらバーサ・ラッセルは最後に盛大な舞踏会を開き大勢のゲストを呼んで社交界での力を誇る。
バーサ・ラッセルが娘のグラディスの肖像画のために雇った画家はジョン・シンガー・サージェント/John Singer Sargent。彼は上流社交界の人々を描いた優雅な肖像画で知られる実在のアメリカ人の画家。主にロンドンとパリで活動した。ちなみに彼によるコーネリアス・ヴァンダービルト2世の娘グラディスの肖像画 (1906)も現存している。
興味深かったのは、実在の人物マカリスター氏(Ward McAllister)。以前はアスター夫人と共に上流社交界の名家400家のリストなどを作り権力を誇っていたにもかかわらず、彼は1890年に社交界の暴露本『Society as I Have Found It』を出版。上流階級のゴシップを書いて本にしたことから彼はニューヨーク社交界での居場所を無くしてしまう。
このマカリスター氏の話は、後のトルーマン・カポーティによるニューヨーク社交界の暴露小説『La Côte Basque 1965 (1975)』のエピソードを思い起こさせる。カポーティもその暴露小説のせいで社交界の多くの友人を敵に回した。これら二つのエピソードがあまりに似ているので最初はこのドラマがフィクションなのかと思ったが、マカリスター氏の話は史実らしい。カポーティはこのマカリスター氏の暴露本の話を知っていたのだろうかと思った。
このドラマでニューヨークの歴史に興味が持てたのもよかった。YouTubeで検索すると、現代に残る The Gilded Ageの豪邸を紹介する動画が出てくる。ドラマでは豪邸のスケールがわかりにくかったのだが、今も米国に実在する豪邸の写真をいくつか見るとこのThe Gilded Age当時の米国の大富豪の富がいかにものすごかったのかがよくわかって面白い。
とにかく Gilded Age=金箔の時代と言われるほど、どの豪邸もギラギラと派手で贅沢。いやあれは間違いなく「米国の宮殿」なのだろう。そのような米国の金箔の時代の建物の凄さを見て「…欧州の王族との差はなんだろう」とさえ考えてしまった。とにかくものすごいのだ。その疑問には…なんとか自分なりに答えを見つけたつもりだが…「米国はやっぱり商売人の国」。 …それにしても数々の米国の宮殿の写真を見ながら色々と考えさせられた。唸った。いつか見に行きたいものだ。
すっかりドラマに馴染んで楽しめたので、これからのシーズンも楽しめると思います。ペギーちゃんとマリアンちゃんはよかった。嬉しかった。
そうそう、なんとマリアンちゃんはメリル・ストリープの娘さんだそうだ。
さてこれからのラッセル家の夫婦の関係はどうなる?そしてよろよろしているオスカーはだいじょうぶなのか?(その女はやめたほうがいい)。
…これからのシーズンも楽しみに待ちましょう。
…上流階級は相変わらず閉じた社会で、その内部では旧家と新興成金のマダム達が格付けをし合っている。旧家のお嬢さんマリアンが女性の自立を手探りすれば、アフリカ系のペギーちゃんはジャーナリストとして米国南部まで出かけることで話にスパイスを加える…などと書いていた。
しかし実際にはもう少し史実に沿った設定もあったのですね。それを全く書いていなかったのでまとめておこう
シーズン2の主軸
① ジョージと労働者との対立
大富豪=新興成金(ニュー・マネー)・鉄道王ラッセル家のジョージは、鉄鋼業の労働者のストライキと向かいあっている状況.
② バーサが旧家に新オペラハウスで対抗する
ジョージの奥さんバーサ・ラッセル夫人は、相変わらず旧家(オールド・マネー)のアスター家などから「新興成金」だと言われ同格に見られていない。当時のニューヨークの旧家が集うオペラハウス「Academy of Music」でも、いいボックス席は全て旧家に押さえられていてラッセル家にはまわってこない。そこでバーサは新しく建てられた「Metropolitan Opera」をお金の力でサポート。またバーサはまた英国の貴族バッキンガム公爵をゲストとして招いて箔付けをする。旧家のアスター夫人との「どちらが上か」の戦い。
さて、この①の鉄道王と労働者のストライキの話はよく調べていないのだけれど、②のオペラハウスの話は今回歴史を少し調べてみた。
(上記の二つのオペラハウスの名前を見れば明らかなのだけれど)現在ニューヨークに残っているオペラハウスの名前は「Metropolitan Opera」。このドラマのシーズン2に描かれたオペラハウスを巡る旧家と新興成金の戦いは史実だったそうだ。
現在リンカーンセンター内の「Metropolitan Opera」は1966年にオープンした新しい建物。元々の「Old Metropolitan Opera House」は39ストリートに1883年に建てられていた。前述の排他的な旧家が集るオペラハウス「Academy of Music」では新興成金はいい席を確保できない。そこで旧家から排除された新興成金達が集い新しくオペラハウスを建てることになった。そのスポンサーは鉄道王のVanderbilts 家、銀行家のJP Morgan、James Alfred Roosevelt(第26代大統領の伯父)を始めとする70人の大富豪達。彼らが投資して「Old Metropolitan Opera House」を建設した。
シーズン2の話の軸は、史実の「オペラハウスを巡る旧家と新興成金の戦い」だったのですね。シーズン2の内容だけれどここに記録しておきます。
それからシーズン2の内容で直接シーズン3に関わってくる話もここにメモしておこう。
★シーズン2のネタバレ注意
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マリアンの婚約は上手くいかなかったが、その後ラッセル家の息子ラリーと惹かれ合うようになる。ヴァン・ライン家のアグネス伯母の息子オスカーが詐欺に遭い一家の財産を騙し取られる。そして伯母のエイダが牧師と結婚するもののすぐに夫を亡くしたが、夫の遺産が多くそれが一家を救うことになる。…等々
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★シーズン3
さてそんなわけで始まったシーズン3。シーズン2でのオペラハウスの戦いでの勝利で勢いに乗ったバーサ・ラッセル。今度は(お金の力で)ラッセル家の名前に箔をつけようと試みる。バーサによる…娘のグラディスを英国の貴族バッキンガム公爵に嫁がせる計画。それから夫の鉄道王ジョージ・ラッセルは…鉄道を今の東海岸から西海岸に繋げようと各企業の買収のための交渉を試みている。その二つがシーズン3の軸。
今シーズンは(新旧の戦いに勝利した)ラッセル家がますますその力を確実なものにする様子を描いている。英国貴族との繋がりや、鉄道王がますます事業を大きく拡大する様子…時代が変わっていく様子が描かれていて面白かった。
★ネタバレ注意
シーズン3ではラッセル家の一人娘グラディスの婚姻とその後の様子が描かれている。シーズン1では印象の薄かったグラディスが、このシーズンではとてもいい女優さんで素晴らしかった。そしてこのストーリーは、娘を伯爵家に嫁がせる母親バーサのストーリーでもある。彼女は欧州に嫁いだ娘を励ましに海を渡り、娘の夫にしっかりしろと檄を飛ばし、別れの馬車の中では一人涙ぐむ。いいですねぇ。この女優さんCarrie Coonさんは本当にいい女優さん。彼女の魅力無くしてこのドラマはありえない。
米国の大富豪が(落ちぶれた欧州貴族)に富をもたらす話は、まさに原案/脚本のジュリアンフェローズ氏の『ダウントン・アビー/Downton Abbey』の話そのまま。私は『ダウントン・アビー』は2、3話ぐらいしか見ていないのだけれど、あのマナーハウスのグランサム伯爵の妻コーラは大富豪の米国人の設定。英国と米国の話が繋がりました。面白い。
この『The Gilded Age』でもバッキンガム公爵と彼の姉が、ラッセル家の娘との婚姻に関して「ヤンキーのお金が必要だ」とかなんとか言っている…いかにもそのような状況。(ヤンキーとは米国北東部の白人に対する俗称または蔑称、海外からは米国人全体を指すことも)
さてこのドラマのラッセル家とは、史実の米国の鉄道王で実業家…大富豪のヴァンダービルト/Vanderbilt家の人々をモデルにしていると言われているが、史実でも同じような話が出てきた…『The Gilded Age』の時代に生きたコーネリアス・ヴァンダービルト2世の娘のグラディスがハンガリーのLászló Széchenyi伯爵に嫁いでいるし、また彼の姪(弟ウィリアムの娘)コンスエロは英国貴族マールバラ公チャールズ・スペンサー=チャーチルに嫁いでいる。このような米国の大富豪と欧州貴族の婚姻は当時多くあったらしく、欧州の貴族に嫁いだアメリカ合衆国籍の富裕層の女性をダラー・プリンセス/Dollar princesses などと呼んだそうだ。
それから今シーズンでは、夫のジョージが鉄道を東と西海岸で繋げるためにアリゾナ州まで行って様々な買収を行っている様子が描かれているのだが、これはヴァンダービルト家の史実ではないらしい。ヴァンダービルト家が各鉄道会社の買収により東海岸から西に鉄道を伸ばしたのは中西部のシカゴまで。実際に西海岸と東海岸が鉄道で繋がったのは1869年でヴァンダービルト家は直接関わっていない。
ラッセル家の娘グラディスの婚姻と、ラッセル家の鉄道事業の拡大がシーズン3の主軸。そしてそこに登場人物達の個人的なストーリーが乗ってくる構成。シーズン3まで見てくれば、それぞれの人物達にも親しみがわいて単純にドラマとして彼らがどうなっていくのかを見るのも楽しい。
ヴァンライン家の召使いジャックの発明のその後の成り行きにドキドキし、ペギーとカークランド医師の出会い、マリアンとラッセル家のラリーの関係にニヤニヤする。シーズン1とシーズン2で私は結構文句を書いていたと思うけれど、このシーズン3はドラマとしても十分楽しんだ。
YouTubeの動画を探したら『The Gilded Age』が史実とどう違うのかの検証動画がでてきた。
ペギーの話は(シーズン2のエピソードも含めて)かなり史実に近いらしいことに驚いた。ニューヨークのアフリカ系の裕福なミドルクラスも当時実在していて、彼らもまた白人の上流社会のように格付けをし合っている(カークランド医師の母親の言葉)ことも興味深い。
白人の上流社会は相変わらず狭い世界で、今回は夫から一方的に離婚を告げられるオーロラ・フェインが社交界で顔を失う様子も描かれた。
さてバーサ・ラッセルはとうとうこのシーズンで社交界のトップに上がったのだろう。一方で今まで権威を誇っていたアスター家の夫人は娘のスキャンダルとともに力を失っていく。窮屈な上流階級の古いしきたりを破りながらバーサ・ラッセルは最後に盛大な舞踏会を開き大勢のゲストを呼んで社交界での力を誇る。
バーサ・ラッセルが娘のグラディスの肖像画のために雇った画家はジョン・シンガー・サージェント/John Singer Sargent。彼は上流社交界の人々を描いた優雅な肖像画で知られる実在のアメリカ人の画家。主にロンドンとパリで活動した。ちなみに彼によるコーネリアス・ヴァンダービルト2世の娘グラディスの肖像画 (1906)も現存している。
興味深かったのは、実在の人物マカリスター氏(Ward McAllister)。以前はアスター夫人と共に上流社交界の名家400家のリストなどを作り権力を誇っていたにもかかわらず、彼は1890年に社交界の暴露本『Society as I Have Found It』を出版。上流階級のゴシップを書いて本にしたことから彼はニューヨーク社交界での居場所を無くしてしまう。
このマカリスター氏の話は、後のトルーマン・カポーティによるニューヨーク社交界の暴露小説『La Côte Basque 1965 (1975)』のエピソードを思い起こさせる。カポーティもその暴露小説のせいで社交界の多くの友人を敵に回した。これら二つのエピソードがあまりに似ているので最初はこのドラマがフィクションなのかと思ったが、マカリスター氏の話は史実らしい。カポーティはこのマカリスター氏の暴露本の話を知っていたのだろうかと思った。
このドラマでニューヨークの歴史に興味が持てたのもよかった。YouTubeで検索すると、現代に残る The Gilded Ageの豪邸を紹介する動画が出てくる。ドラマでは豪邸のスケールがわかりにくかったのだが、今も米国に実在する豪邸の写真をいくつか見るとこのThe Gilded Age当時の米国の大富豪の富がいかにものすごかったのかがよくわかって面白い。
とにかく Gilded Age=金箔の時代と言われるほど、どの豪邸もギラギラと派手で贅沢。いやあれは間違いなく「米国の宮殿」なのだろう。そのような米国の金箔の時代の建物の凄さを見て「…欧州の王族との差はなんだろう」とさえ考えてしまった。とにかくものすごいのだ。その疑問には…なんとか自分なりに答えを見つけたつもりだが…「米国はやっぱり商売人の国」。 …それにしても数々の米国の宮殿の写真を見ながら色々と考えさせられた。唸った。いつか見に行きたいものだ。
すっかりドラマに馴染んで楽しめたので、これからのシーズンも楽しめると思います。ペギーちゃんとマリアンちゃんはよかった。嬉しかった。
そうそう、なんとマリアンちゃんはメリル・ストリープの娘さんだそうだ。
さてこれからのラッセル家の夫婦の関係はどうなる?そしてよろよろしているオスカーはだいじょうぶなのか?(その女はやめたほうがいい)。
…これからのシーズンも楽しみに待ちましょう。