能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2025年2月26日水曜日

独ドラマ Netflix/Sommerhaus Serien『皇妃エリザベート/Die Kaiserin/The Empress』(2024) シーズン 2:目線を変えれば最高の素材なのに





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『Die Kaiserin』(2024) TV Series-Season 2/独/カラー
/約50分・全6話/制作:Katharina Eyssen』
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シーズン2を見終わった。お姫様物語としては勢いがなくなった。しかし反対にもっと面白くなったとも言える。


私はシーズン1の感想で、このドラマは「重厚な歴史ドラマで面白くなりそうだ」などと書いたのだけれど、ネット上で他の人の感想を読んでみると…、皇妃エリザベート(の周り)の史実を知っている人ほど「史実と違う茶番である」と怒っているようで…。 私が少し前に『マリー・アントワネット』のドラマを見て憤慨していたのと同じように、歴史ファンのなかにはこのドラマにがっかりした人々もいたようだ。史実に詳しいと、ドラマを見る目はどうしても厳しくなりますね。

その史実と違うシーズン1の問題とは…、
フランツ・ヨーゼフ皇帝の弟のマキシミリアンがエリザベートに惹かれ、またマキシミリアンが兄のフランツ・ヨーゼフをライバル視していて、そのためロシアのプリンスをけしかけてフランツを困らせて…などというのはとんでもない話だそうだ笑。それに革命家のApafi 伯爵夫人が宮殿に忍び込むのもありえない、それから人物達の髪型や衣装も時代に合っていない…などなど気に障ることが結構多いらしい。

まぁともかくそれはおいといて…



さてシーズン2は、そのようなトンデモな内容はあまりなかったのではないかと私は思ったけれどどうだろう。このシーズン2では…誰と誰が好きで嫌いでライバルで嫉妬して…などのゴシップ的なものはあまり無く、むしろハプスブルグ家のオーストリアと周辺国との関係はどうなっているのか…などの歴史的な話がよく描かれていたように思った。

皇帝の弟のマキシミリアンはベルギー国の王女シャルロッテと結婚。イタリアのロンバルディア州ミラノに総督として、またロンバルディア・ヴェネトの副王としてイタリアに居住。

ハプスブルグ家の支配に抵抗していたイタリアの民衆の様子が描かれ、またそのイタリアの後ろにはフランスのナポレオン3世がついていて、(反オーストリアの)イタリアにフランスが武器提供をしている…などなど政治情勢が描かれているのがとても面白い。

ハプスブルグ家と軍隊がドイツ語を話し、イタリアの民衆はイタリア語で文句を言っている。フランツ・ヨーゼフとエリザベートが北イタリアを訪ねれば民衆の目線が厳しくていたたまれない。そして場面が変わればオーストリアとイタリアの様子を見守るフランスのナポレオン3世がフランス語で話している。

3つの国がそれぞれの言語で会話をしているのに興奮する。そうそうヨーロッパの歴史を描くのであればそうでなくちゃ…言語が変わるだけで私は無茶苦茶興奮した。この辺りの歴史には疎いのでネットで調べて勉強。なかなかいい。ヨーロッパの政治情勢をハプスブルグ家を通して描いているのが本当に面白い。…「ピエモンテ州が立ち上がった」と聞けばGoogle mapを開いてチェックする。面白い~。


しかしながらこのシーズン2、主役のエリザベートにはあまり輝く場面がない。それがこのドラマの根本の問題だと思った。

結局(わかっていたことではあるのだけれど)このエリザベート皇后というお方は、ティーンの頃にハプスブルグ家の皇帝に見染められて嫁入りするのはいいけれど、その後は不幸が続くことが多く、女性視聴者の喜ぶような色恋などのふわふわした話はほぼ描けないお方。…不幸が引き金になって彼女はオーストリアの宮廷生活にも馴染まず、子供も義母に取られ、結果宮廷での生活を避けていつも旅ばかりしているような女性で…、考えてみれば(おそらく)Netflixが期待したような「お姫様物語」が描けるような人ではない。彼女はそのような素材ではない。


しかし彼女が生きた時代の欧州は歴史的に見てかなり面白い時代…もしNetflixが意を決して欧州の激動の時代の大河ドラマを描こうとするならば最高の素材。例えばこのままの配役で(エリザベートはもっと似ている女優さんを連れてきて端役にして)、タイトルを『Habsburg/ハプスブルク』などにして当時のオーストリアの状況を描いた大河ドラマをつくればとても面白かっただろうに。いや~本当にもったいない。

それにもかかわらずこのドラマシリーズは、そこそこ知られている「悲劇のオーストリア皇后」のドラマを彼女のネームバリューだけで作ろうとしたのではないか。


というのもこのシーズン2を見た後でWikipediaを見たら、このドラマ…シーズン3で完結なのだそうですよ。あと6話で終わってしまうのだそうだ。なんとなんとなんと…え~本当か。ということは…せめてマキシミリアンのその後(メキシコ)は描かれるだろうとしても、おそらく息子ルドルフのマイヤーリンクは描かれませんね。あと6話だけなら無理だろう。それにエリザベート皇后も(ハンガリーとの関係以外は)ますます旅に出るばかりでウィーンの宮殿に寄り付かなくなってしまう…となれば宮殿での暮らしを描くこともできない。やっぱりこれは元々長続きする素材ではなかったのだろう。


しかしもったいないな~。できればハプスブルグ家の最後の様子をフランツ・ヨーゼフを中心に描いてもらいたかった。うん それなら見たい。本当に見たい。

イタリア語とフランス語とドイツ語が出てきて、そこにハンガリー語とロシア語、英語などの台詞が加わるドラマだったら面白かっただろうな~。いつかそういうドラマを作って欲しい。ドイツかオーストリアが本気を出してそういうドラマを作ってくれないものかな。