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2023年10月13日金曜日

英ドラマ FX『ブリーダーズ 最愛で憎い宝物/Breeders』(2023) シーズン4:とうとう孫だ!家族の物語は続いていく






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『Breeders』(2020-) TV Series – Season 4/英 ・米
/カラー/約30分 ・全10話
Creators: Chris Addison, Simon Blackwell, Martin Freeman
Season 4 US Release Date: July 31, 2023
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『ブリーダーズ 最愛で憎い宝物/Breeders』のシーズン4。米国FXでの放送は2023年7月31日から9月25日まで。全10話。


とうとう『ブリーダーズ』が終わってしまった。ああ名残惜しい。このドラマシリーズのWorsleys家の子育て物語はこのシーズンで終了だそうです。


このドラマは面白かった。
● シーズン1は30代の夫婦と二人の小さな子供達の話…子育てのドタバタのコメディ。
● そしてシーズン2と3は(シーズン1から)6年後の家族の様子。子供達はルークが13歳でヱヴァが10歳。子供の思春期と両親の仕事や身体の変化が重なった状況を2シーズンをかけてリアルに描いた。
● そして今回のシーズン4は(シーズン3から)5年後。ルークは18歳、ヱヴァは15歳ぐらいか。そしてシーズン4は(トレイラーにもある通り)主人公の夫婦の長男・ルークがお父さんになる。びっくり。


このドラマのシリーズがシーズン4で終わることは最初から決まっていたそう。制作のスタッフは、Worsleys家のストーリーの最終章に何を持ってくるのかの問いに答えて、おそらく(英国的なブラック・ユーモアに満ちた)タイトル『Breeders/ブリーダーズ/繁殖家』の意味に立ち返ろうとしたのだろうと思った。ポールとアリーが(ブリーダーとして)子供を育てあげた後、今度は彼らの息子が父親になる/ブリーダーになる…家族のストーリーが継続していくことを想像させる終わり方にしたのだろう。


しかしそれにしても高校を卒業したばかりで職もないのに子供とは…早すぎる。

実は一番違和感があったのはそこ。ルーク君は子供の頃から感受性が強く神経質で…、幼い頃には細かいことを気にして眠れなかったり、また思春期には父親の荒い気性に苦悩するような「繊細/細かい/細部にこだわるタイプ」の男の子だったのだけれど、そんな人が将来も考えずについうっかり子供を作ってしまうのか?どうもルーク君らしくないではないか?と思った。 それでもドラマとしてはうまくまとまったのでいい。そういうこともあるのかもしれぬ。


私はシーズン3の感想で、このドラマは夫婦の子育てのドタバタコメディから「Worsleys家の家族の物語」になったと書いた。今回のシーズン4もその流れで緩やかに最終話を迎えた。Worsleys家の家族の時計はドラマが終わっても進んでいく。ランダムな問題に触れながらもそれらを完結させることなく、彼らの日常はこれからも同じように続いていくのだろうと将来を想像させながらドラマは終了した。いい気持ちで見終わることが出来た。余韻が残る。

だからロスがかなりありますね。え~これで終わりなのか~…。


あ…そうだ。なぜこのドラマがこんなに私の心に刺さるのか?それはこれが(ニューヨークでもパリでも東京、シカゴでもない)ロンドンの話だからだ。馴染みのあるアクセントや人々の気質を思い出し、理屈っぽいポールと強気なアリーを見ながら「もし私達が今もロンドンに住んでいたとしたら…」と思わずにはいられない。私が30代を過ごした10年間の、あのロンドンでの暮らしの延長線上の(実現しなかった/想像上の)展開がこのドラマの中に見える。懐かしさと迷いとが心の中に行き来する。だからこのドラマは私にとって特別なのだ。そうなのだ。
I could have been there. It could have been…or I wished to have been..., even I knew it’s not true.


この家族が本当に好きになった。なんだか友人の夫婦を見ているような気分になった。ポールやアリーの正直過ぎるほどのあけすけな様子も、口の悪さも気の短さも激しさも面白かった。家族とはああいうものだよね。そりゃー子供にキレることもあるよね。あるある。そして子供たちが思春期の頃の話では考えさせられた。「もし私達夫婦に子供がいたら、どうしていただろう」と沢山の疑問を頭に浮かべた。子供を持たなかったことへの後悔と(ある意味)安堵と、そして空虚と、人生へ疑問と、様々な思いが心の中を行き来した。このドラマはず~っと私の心に残るものになると思う。いいドラマだった。



★ネタバレ注意


このシーズン4は(前シーズンから)5年後。 最初はアリーとポールが離婚しそうなのに、ルークのニュースで全てがひっくり返る。彼ら夫婦はまだ50歳前後で若い。彼らの戸惑いは理解できる。

ルークのパパになることへの期待と恐れ。そしてルークには進学の話も絡んでくるから状況は複雑だ。ポールとアリーはタッグを組んでルークを助けようと協力し合う。その間に二人の仲はしっかりと固まる。

そしてある日ポールは(中年になった)今の時点での自分の人生を振り返り「これも悪くない」と納得する。アリーは家族に温かい愛を見出す。またヱヴァは新しい恋に目覚める…それが恋なのか憧れなのか…曖昧な彼女の心も繊細に描かれる。

そして新しい命が誕生する。ルークの戸惑いと恐れにポールが寄り添う姿が心に沁みる。第3話のポールからルークへの言葉、そして第8話でポールがルークに優しく寄り添う様子には涙が出そうになった。いつもイライラして怒鳴るばかりだったポールが、戸惑うルークに(人生の先輩として)優しく寄り添っている。

第9話と10話ではポールの両親ジャッキーとジムの老いが描かれる。彼らも戸惑いながら迫りくる老いに向かい合う。そして両親を支えることを誓うポール。両親と自分と子供と孫…家族はこれからも共に道を歩んでいく。

そして最後に本当の愛に気付いたヱヴァの勇気がすがすがしかった。良い場面だった。


大きな事件が起こってドラマが終わるわけではない。私は最初、このドラマは(キリがいいから)ルークの赤ちゃんが生まれるところで終わるのだろうと思っていた。ところが(ポールのガールフレンド)マヤの出産は第8話。そして第9話にはその半年後が描かれている。

制作が赤ちゃんの誕生(事件)をドラマの締めくくりにしなかったのは、意図的だったのだろうとも思った。赤ちゃんが生まれても家族の日常は続いていくのだ。Worsleys家の日常はこれからも山あり谷ありだろうけれど、これからも彼らの物語は続いていく…それがシーズン4のメッセージなのだろう。その後が描かれることはないけれど、彼らはこれからもきっと大丈夫。


脚本も一流。一見コメディ風ながら人々の描写はリアルで、果ては人の人生の本質にまで触れている。俳優の演技も超一流。丁寧に作られたロンドンの「現代版・普通の人々」のストーリー。これほど心に沁みるドラマもなかなかない。


第5話でポールが「この人生も悪くない」と納得していたのが印象的。
最後の夫婦の場面もしみじみといい場面。ルーク君の子供の頃を思い出す。

いいドラマでした。これからもWorsleys家の幸運を祈る。

また10年後ぐらいに彼らのドラマをやってくれないかな…。


EPISODES Season4 --------------------------------------------------

1 Noël
夫婦の過去5年間を振り返る。夫婦は離婚寸前。ルークがパパに?
2 No Alternative
事実が受け入れられない夫婦。ルークはガールフレンドと同居を始める。
3 No Age
アリーが50歳に。ポールが不安なルークに寄り添う。ヱヴァがホリーに出会う。
4 No Dinner
ヱヴァがカミングアウト。計画が狂いっぱなしの夜のドタバタ。
5 No Regrets
ルークの進学問題。ポールの両親が独立型ケア付アパートへ。ポールの人生観。
6 No Arseholes
アリーの女友達との距離。アリーには家族がいる。
7 No Kids
ポールとアリーが旅行へ。
8 No Control
マヤの出産。両親の不在で狼狽えるルーク。
9 No Matter What: Part 1
ルークが学校と家族との時間の調整に苦しむ。ジャッキーの老い。
10 S4.E10 ∙ No Matter What: Part 2
老いる両親を支えるポール。ルークの意志。何が起こっても…これからも家族は続いていく
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