能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2015年7月1日水曜日

NHK 木曜時代劇『かぶき者慶次』全11回・感想



いいドラマでした。穏やかなドラマで安心して見れた。なんだか昭和の香り。ゆっくりとした空気が流れる落ち着いた大人の時代劇。

時代は江戸時代初期。関ヶ原の戦の後、武将・前田慶次が故・石田三成の遺児を自分の息子として育てたとするフィクション(だと思う)。歴史を背景としたフィクションで、ドラマもそのことを中心に回っていくのだけど、実はこのドラマのポイントはそこじゃない。このドラマの魅力は、非常に古典的=昭和的な家族の再現…古きよき時代の家族を懐かしむようなドラマであること。


まずお父さん(主人公)。変わり者とはいえ社会的な地位もあって尊敬されている。(普段は穏やかで料理を作ったりしていても)ゆるぎない家長としての威厳。一見ひょうきん者でユーモラスだが根は頑固。家族思いで優しいとはいっても、これ見よがしにベタベタした愛情表現はしない。それでも危険が及べば命を懸けて家族を守る。正しいことにはあくまでも意志を通す。時にはキレる(毎回誰かを怒鳴っている)。外には愛人(?)もいたりする…それがバレても悪びれることもない。一見奥さんを恐れているが、実はそんなふりをしておどけているだけ…。藤竜也さんの前田慶次は古臭い昭和の親父なんです。だから素敵なのよ。

強いお父さんがいてしっかり者のお母さんがいて、そこに年頃の子供達がいて、そろそろ結婚の話も出てきた…そんな話なのね。

藤竜也さんと江波杏子さんの夫婦の関係が素晴らしい

主人公・前田慶次は、一見自分勝手な変わり者の親父なんだけど非常に魅力的。人物に芯が通っている。ユーモラスだが締めるところは締める。腕には力。子供達にも尊敬される父親。奥さんにも愛されている。そう。愛人がいても、優しい言葉がなくても、奥さんは前田慶次さんを愛しているのね。この夫婦は絶対的に信頼し合っているんです。

この夫婦が本当によかった。愛人とか別居とか、そんなものはこの夫婦には取るに足らないこと。二人の信頼関係はそんな雑音ではびくともしない。妻は夫を立て信頼し夫は言葉少ないながらも妻を信頼し感謝している。お互いベタベタしなくても絶対的な信頼関係で結ばれた夫婦。そんな関係が素晴らしい。

社会の中で、まず家があって家長がいる。それを妻が支える。しっかりしたお父さんとお母さんがいるから、子供たちがすくすくと真面目に育つ。年配の俳優さん達が醸し出す落ち着いた雰囲気の中で、若い俳優さん達もそれぞれがほほえましい。礼儀正しく真面目に育ったいい子供達。だからこの家族は見ていて気持ちがいい。しみじみといいなぁと思う。


このドラマは様式美です。昔はあたりまえだった家族のあるべき姿。何よりもしっかりとした家族愛が軸にあるから、何が起こっても安心して見ていられる。奇をてらわない演出。全てが古典的な様式美。だから穏やかに心地よいドラマ。

最初はずいぶんゆっくりなドラマだと思ったのだけど、この雰囲気に馴染むと大変心地よく、回を重ねるごとに人物達にも愛着が湧いてくるし、三成の息子云々も目が離せない…というわけですっかりこのドラマのファンになってしまった。俳優さん達を見ても、もともと年配の視聴者に向けられた時代劇作品だったのでしょうが、近年の大河ドラマの迷走に比べると、落ち着いていてしみじみといいドラマ。むしろこの落ち着きは新鮮にさえ思える。

ベテランの俳優さん達がとにかく素晴らしい。藤竜也さん。江波杏子さん。火野正平さん。前田美波里さん。伊武雅刀さん。この俳優さん達の芝居の落ち着いた雰囲気の中で、若い俳優さん達が瑞々しく輝く。またこういうドラマが見たい。


余談だけれど、それならこのドラマを大河ドラマ枠に持って来たらどうだろう? たぶん無理ですね。かなりゆっくりの展開に様式的な内容でも楽しめたのは、これが全11回のドラマだから。この穏やか過ぎるドラマの雰囲気を全50回の大河に持って来たらたぶん間延びして退屈。大河ドラマにはやっぱり花火的な華が必要でしょう。

このドラマの魅力は、昭和の時代にはどこにでもあった古風な家族ドラマを、時代劇の枠で丁寧にこじんまりとした小作品にまとめたこと。いいドラマでした。昭和の頑固親父が懐かしい。録画をまた見直したい。