能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2015年2月25日水曜日

映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)/Birdman: Or (The Unexpected Virtue of Ignorance)』(2014):負けるな中年オヤジ!




 

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Birdman: Or (The Unexpected Virtue of Ignorance)2014年)
/米/カラー119分/監督:Alejandro González Iñárritu
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さて昨日のアカデミー賞のことを書いたエントリーで、私はこの映画のことを「面白いのか面白くないのかよくわからない(笑)妙な映画で…。その妙な具合が面白いのかな…という変な映画。」と書いた。
 
お話は、昔スーパーヒーロー映画「バードマン」で大スターだった主人公が、今度はNYブロードウェイで実力派の舞台役者として起死回生を図る。ショーのオープニングまでの奮闘記。
 
監督は2006年の映画『バベル』で有名なアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督。あーあの監督さんなんだ。『バベル』はいい映画でした。このことは今まで知らなかった。前知識ゼロで見た映画の感想です。
 
 
映画としてよく出来ているのか?

出来てます!

これだけは確実。アカデミー賞をとったのもそれが理由でしょう。感動の渦…涙が止まらない…一生の思い出…とか、そんな感想はまず出てこないけれど映画としてはとにかくよく出来ていると思う。
 
上手い。何から何まで上質。よく出来ている。
 
ポンポンリズムのある展開。凝ったカメラワーク。延々と続く長回しの撮影も巧み。カメラが上にいったり下に右に左に移動する。時間も移動する。非常に技巧的。役者も最高。配役も素晴らしい。演技最高。台詞もいい。小さな世界なのに人物の心理を掘り下げることで話をダイナミックに見せる。エッジのある世界感の中に散りばめられた小ユーモアの数々。展開も早いし最初からぐいぐい惹きつけられる。目が離せない。音楽はドラムのみ。時にドキドキさせられ時にイライラさせられるのも効果的。テンションが高い。最初からずーっと目が離せない…。
 
…などなど、映画としてはたいしたものだと思う。実験的な映画としてすごく面白かった。
 
 
役者も上手い人ばかりなので安心して見れる。それにしても1989年に映画『バットマン』で実際に大スターになったのに、その後鳴かず飛ばずだったマイケル・キートンさんをこの映画の主人公に抜擢したのは誰だ?おいっ冗談きっついなー。しかしこの映画の成功は、彼がプライドをかなぐり捨ててこの役をやって下さったことによる。だって誰が見ても「バードマン=バットマン」ですもん。現実のマイケルさんがこの主人公みたいなのかどうかはともかく、観客がそう見てしまうのはしょうがない。よくぞ引き受けてくれました。
 
そしてその期待を裏切ることなく、マイケルさんがやってくれてます。ハゲの中年オヤジが全身全霊をかけてガチで頑張る姿が素晴らしいです。人生はガッツあるのみ。いけ中年オヤジの星よ。負けるなオヤジ。やってくれっ。オヤジのガチの真剣勝負。本当に本当に素晴らしい。
 
 
★以下ネタバレ注意
アカデミー賞での紹介の映像でも出てきましたけど、このガチで頑張るオヤジとほぼニートの娘の怒鳴りあいのシーンがまた素晴らしい。私はたぶんこのシーンが一番好きだな。娘が「あんたなんかtwitterfacebookもやんないし全然だめじゃんジジイッ!」と噛み付くと、激怒したオヤジは、「俺はな人生を懸けて真面目に働いとるんじゃボケ。お前みたいなヒヨッコに何がわかるボケっ!」(←よく覚えてないけどたぶんこんな感じ笑)とエマ・ストーンちゃんをどやしつける。これが思いっきりスカッとしました。大きな拍手。
 
とにかく出てくる人がみんなキツイキツイ。バーでの女性の批評家もキツイな。エドワード・ノートンも嫌な奴で。この人は急に裸になったんでびっくりしたなもう…とても印象に残りました(^o^)。
 
なんだかよくわかんないけどテンションが高くて、なぜか全体におかしいんですよ。みんなガミガミ言ってるのにどこか微妙におかしい。金魚鉢の中で金魚が喧嘩してるみたい。妙なユーモアが全体に漂っている。へんな映画。
 
 
…さて、こんなに褒めたなら最高傑作か…?
 
問題はそこ。すごく面白いか…といわれたら…ウーンどうかな。最初からずーっとテンションが高いのでどんどん引き込まれていくんだけど、頭の隅に「これ面白いか?」という気持ちも常にあって…どうしてでしょうね。
 
最高レベルの材料を集めて作った映画だから最高の映画になりそうなものなのに、全体の印象はどうも地味。そうなのよ。どうも地味すぎる。華がない。深みも無い。これっていいのか?…世界中から最高の材料を揃えて最高の料理人を雇って出来上がった料理が牛丼だった(笑)…そんな感じ(贅沢と言えば贅沢ですけど)。
 
もう一つ。最後だけは納得がいかない。あれはなんなのだ? まんまそういうことなのか。それとも大成功ということなのか。そもそも銃を持ち出してきた時点で疑問。結果は明るいのか暗いのか? 暗い方の終わり方だったらかなり問題。あれは明るい方に受け取るべきなのか?ちょっとわかりづらかった。あれで「ええーっ?」となる人もいると思う。
 
でも十分面白かった。私は1回しか見てないんだけど、2回目からはかなり笑える映画だと思います。思い出すと笑えるシーンがかなり多い。アカデミー賞受賞もおめでとうございます。こういう妙な映画が評価されるのはとてもいいと思う。