2015年11月11日水曜日

Extreme - No Respect (1995)



迷ったけどこれにしよう。



Extreme - No Respect (1995)

Album:  Waiting for the Punchline
Released: 1995 ℗ 2008 A&M Records



Extremeアルバム評第四弾『Waiting for the Punchline

このアルバムは好き嫌いの分かれるアルバムかも。私は好きです。以前のExtremeからは考えられないほど重苦しい音。初期のアルバムはギターが飛び道具だったのに、今回は地下の岩盤をガリガリゴリゴリ削っているような音。でもこの質感はとても好き。

しかしこれも一般受けはしなかった模様。アメリカでのアルバムチャートでは40位。シングル「Hip Today」は200位内にも入らなかったらしい。そのせいなのかどうなのか、このアルバムのツアーの後バンドは解散。私はその頃忙しくてExtreme解散に関するメディアの記事を全く追わなかったんだけど、何があったんでしょうね。


それにしても本当に音が変わりました。バンドがスタジオでライブ録音したみたいな生な音。ライブのガリガリした音をそのまま聴くような感じ。でもそれがとても気持ちいい。

当時の空気感というのか、こういう音が気持ちよくなった時期があの頃確かにあった。80年代の終わり頃にかけて、ゴージャスで派手な音のプロデュースが流行っていたのに、(その反動からか)90年代に入ってメインストリームにもグランジが登場。巷でも粗い音が流行って、このアルバムが出た95年頃には私も、飾りの少ない生の楽器の音が気持ちいいと思うようになっていた。そんな中で出たこのアルバムの音も、とてもいいと思ったように記憶している。

いやこの音は今でも気持ちいい。なぜならこれ70年代のハードロックの音にも似ているから。アレンジは90年代なんだろうけど全体の雰囲気はハードロック。Led Zeppelin風の曲もあったりする。ヌーノ君印のギターでハードロックならそりゃー気持ちいい。やっぱりこのアルバムもギターを聴く。全体に曲が速くないのでまったりと聴く。地味だけど悪くない。


アルバムの内容は前作のような大袈裟なテーマがなくなって、非常にパーソナルで内省的なものになってます。結構ネガティブで文句を言ってるような曲が多いんだけど、前作の漠然とした世界平和なんかより、私はこういう正直な個人の気持ちを歌った歌のほうがいい。こういう歌の方が心に響きます。そういう意味でもこのアルバムは嫌いじゃない。

バンドの内情がどうだったのかわからないけれど、ちょっとギスギスした雰囲気を感じる。ギターとボーカルが喧嘩してるように聴こえる曲も。綺麗にまとまっていない感じがして全体に妙な緊張感がある。それがまた良かったりする。


3曲だけ新しいドラマーMike Manginiさんが叩いてます。私はドラマーがマイクさんに変わったのはポジティブに受け取った。パワーのあるマイクさんのドラムがExtremeに新しい元気をくれるだろうと思った。このアルバムの3曲も悪くない。

しかしながらこのアルバムのツアーを終えた後でバンドは解散。結局マイクさんのドラムでのExtremeの曲は3曲で終わってしまった。もう少しこの人のドラムで聴いてみたかった。残念。

本当にどうして解散しちゃったのかなぁ…。バンドとして味が出てくるのはこれからだったろうに。


さてExtremeはこのアルバムのツアーでも来日。1995711at 武道館。2階で参加。このライブは東京で1回だけしか見られなかったので、個々の曲はあまり記憶に残っていないんだけど「Midnight Express 」だけはどうやって弾くんだろうとガン見したのを覚えてます。ステージはシンプルでした。バンドはベテランの域。もしかしたらCheap Trickの「Surrender」を演ったのはこの日だったかもしれない。ライブの最後の頃、メンバーの頭上のライトが一個外れて天井から落ちてきて、ケーブルからぶら下がって振り子のように左右に大きく揺れていたのも、たぶんこのライブだった。


★曲別
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#1. There is No God
スローなスタート。生な音。ファンキーなリフ。歌が始まると早速ボーカルとギターが喧嘩。競争するようにボーカルにギターが被さる。これがいい。歌詞はいきなり前作を全否定するような内容。「神様なんていない!」文句ブーブーです…前作の自分に対してなのか、それとも前作を否定した批評家に対してなのか。歌詞はこれくらいひねくれていたほうがいい。進歩は現状の否定から始まる。ソロはちょっと中近東?怒りのボーカル。怒りのギター。中二病上等。
#2. Cynical
ギターゴリゴリ。ベースゴリゴリ。最初からいい。音が好き。かっこいいな。歌詞もまた怒ってますね「今日は明日よりはまし、昨日は思い出したがりやの馬鹿のため、古きよき日々はそんなに良くなかった。俺がやることは誰かが先に既にやってる…」ひゃー怒ってる怒ってる。何が原因かは知らないけれど、これぐらいの世界感の方が前作よりずっとリアル。理解できる。「俺はシニカルな野郎。愛が必要だ。」中二病上等。音がかっこいい。ギターがグワグワ鳴ってる。
#3. Tell Me Something I Don't Know
音が最初からいい。もうこの音ですぐOK。音が良ければ全てよし。気持ちいい音。「俺の知らないことを教えてくれ」シンプルです。こんなシンプルな歌詞の方がリアル。迷ってる…迷っていいんです。20代は皆迷うのよ。人間は考える葦である。
#4. Hip Today
いきなりメタルドラム。ベースがゴリゴリ。「今日は流行の最先端…明日には消える。いつも新しいのが出てくるからお前はとり残される。年取る前に死にたくない。」無慈悲な真実。普遍的な内容ですが、過去に一度全米No.1だった彼ら自身のことでもあるでしょう。しかしこういう歌詞が書ける人が、どうして前作みたいな薄っぺらな歌詞を書いたのか今でも不思議。こういう歌詞の方が直球でいい。ドラムはマイクさん。
#5. Naked
これもゴリゴリの音。楽器の間の隙間がいい。音はとても好き。歌というよりもインスト曲として聴きたい。この曲もギターばかり聴いてしまう。
#6. Midnight Express
アコギのインスト。あ~…これはなー…本当にすごいですね。凄まじい。魂を持っていかれる。技巧的な凄さ以上に曲そのものが素晴らしい。傑作。ヌーノ君にますます惚れる。いや尊敬です。リスペクト。本当にこの人の手はどうなっているだろうと思う。ただただかっこいい。リズムがすごい。好き。これ当時の雑誌に楽譜が載っていて今も切り抜きを持ってる(おっと違ったダウンロードだった)。ギターのチューニングを合わせるぐらいはやったカモ。
#7. Leave Me Alone
「落ち込んでるから一人にしてくれ」という歌。シンプルです。パーソナルは悩みは普遍になり得る。曲の印象は弱い。ドラムはマイクさん。
#8. No Respect
これが一番キレがいい。ドラムはマイクさん。曲がシンプルなせいか勢いがいい。ゲイリーさんがガミガミ怒鳴っていてうるさいですが、この曲のボーカルは歌声というよりも楽器…内容に沿った演出上の効果音。歌詞は真っ直ぐで正直。「なんで皆尊敬がほしいのか」とキツイ口調。
#9. Evilangelist
これはExtremeLed Zeppelin…オマージュかインスパイアかパクリか…?Led Zeppelinは好きだけれどQueen程の思い入れはないので問題なく聴ける。「Kashmir」かな。でも元歌のほうがいいかな。EvilangelistとはEvil ()evangelist (伝道師)を合わせた造語です。カルト宗教で金儲けをする人を非難してるんでしょう。
#10. Shadow Boxing
穏やかなバラードかと思ったらまたLed Zeppelin。「自分との戦い」内省的です。しかし曲としては弱いかも。Led Zeppelin風イントロとA+Bメロ、キャッチーなサビ、ソロがうまく嵌っていないかも。バラバラに聴こえる。それでもそれなりによく聴こえてしまうのは流石。
#11. Unconditionally
アコギ。いいよなぁこのギター。なんか…いい意味でExtremeが年取ったなという歌。落ち着いたな。ちょっと弱いか。ソロはいらない。
#12. Fair Weather Faith
音はかっこいい。これもソロが曲から剥離してますね。そのせいか印象が弱い。パーツはかっこいい。
#13. Waiting for the Punchline
シークレット・トラック。うひゃ~最初からゴリゴリ。すごいな。いい。やっぱりギターがいい。歌詞は…う…これは苦しんでますね。かなり切実「人は俺のユーモアのセンスがなくなったと言う。なんでつまらない事で息を無駄に吐く。ネタが切れたのさ。楽しかった昔はよく笑った。いいものは廃れる。機転も面白かったのにもう面白くなくなった。…今でも面白いオチを待ってるのに。」うわースランプかな。アイデアが出てこないのゲイリーさん? この曲もボーカルとギターが喧嘩してます。不協和音に近いのにその緊張感がかっこいい。バンドの化学反応の面白いところ。綺麗ばかりがいいとは限らない。
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Extreme – Cupid Is Dead (1992)
Extreme - He-Man Woman Hater (1990)
Extreme - Get The Funk Out (1990)