能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2020年6月10日水曜日

映画『13th憲法修正第13条/13th』(2016):繰り返される苦しみ








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13th2016年)/米/カラー
100分/監督:Ava DuVernay
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 現在Netflix/ネットフリックスは、
この映画の全編をフルでYoutubeで無料で公開してます。
日本語の字幕も選択可能
 
13TH | FULL FEATURE | Netflix
 
 

今週は学びの週だ。
 
現在全米で起こっている抗議デモ関連のニュースなどを見ていて、昨日ネットで出会ったドキュメンタリー映画。2016年の作品。昨日の夜ソファに座り込んでiPadをお腹にのせて視聴開始。約1時間半後、お腹にどーんと鉛のしこりが出来たような重い気持ちになる。心が泣く。どうすればいい…この問題。
 
情報がかなり多く見逃したところもあったと思ったので、今日再度視聴。また心が泣く。しかし感情に押し流されないように、まず情報として真摯に受け止め、ジャーナリズムとしての評価は冷静になろうと思った。
 
 
おおまかにまとめると、アメリカは19世紀の南北戦争の後に、合衆国憲法修正第13によって奴隷制を廃止した。それにもかかわらず様々な状況で今もアフリカ系の人々の人権が否定され続けている。合衆国憲法修正第13条は「全てのアメリカ人の自由を保障する」としながらも「犯罪者を除く(=つまり犯罪者に自由はない)」とある。その抜け道に沿って、法律はアフリカ系の人々を貶めるように(この映画によると意図的に)制定され、メディアは印象操作し社会の不安を煽り人々を分断させる。結果多くのアフリカ系及び有色人種の人々が次々に不当に投獄され、現代でも奴隷のような扱いを受けている…という内容。
 
 
まず情報が多くて圧倒される。畳み掛けるようにアフリカ系の人々の苦しみが尽きることなく提示されて苦しくなる。心が泣く。しかしこれも学び。この心が苦しくなるようなアメリカの一面を知ることが第一の目的。まず知ること。
 
人種問題や歴史的背景に無知なままでいては、現在のアフリカ系の人々と警察の関係について議論できない。この問題には数世紀にわたる歴史的経過があるということを知る。
 
 
 
特ににショックを受けたのは、(人種問題とは別に)刑務所を産業化して株式会社として金儲けをする企業がいるという事実。それから、そのような企業に都合のいいように、企業と政治家が新しい法律を作成し議会に通すための保守派のロビーグループ…ALEC American legislative exchange council/米国立法交流評議会の醜い存在。(←また企業のロビー活動が出て来た。もううんざり。ぞっとする。これがアメリカの悪の根源だと私は思う)
 
そしてそのような刑務所の受刑者は、民間企業で無賃の労働力として使用される…まさに現代の奴隷制。それが十億ドルの利益を上げている。そのあたりの情報は(人種問題に関わらず)とにかく背筋が寒くなるような恐ろしい事実。全く知らなかった。
 
 
 
それにしても苦しい映画。1度目に見た時はショックを受けて言葉もなく。気が滅入る。決して気楽に見れるドキュメンタリーではない。気持ちが落ちて立ち直るのに時間がかかる。ものすごい量の情報に脳が痺れるようだ。
 
 
Internet Movie DatabaseIMDbでの一般の評価は8.2/10点。レビューもおおむね高評価。ただし少数の人々はこの映画のプロパガンダ的なサイドを指摘。確かに2回目には私も多少それが気になった。
 
例えば70年代の大量投獄は、なにもアフリカ系の人々だけを投獄するために仕組まれたものではないだろう(そのように見える描写)。当時ドラッグはアメリカでは人種を問わず大変な問題だったし、またニューヨークのハーレムなどは手がつけられないほど荒れていたとも聞いていた。また後半で、アフリカ系の方々の虐待される映像と共に、2016当時大統領選の候補者だったトランプ氏の言葉を編集して被せるのは、かなり意図的に印象操作のある演出ではないかとも思った。
 
だからこの映画を見て、すぐに感情的に反応するのは危険。情報を知る意図で見た映画が、誰かに憎しみをぶつける理由になってはいけないと思う。これからご覧になる方は冷静に視聴なさることをお勧めする。それでもこの映画から学べることは非常に多い。これをベースに他の資料に学びを広げていくこともできる。


国を人種によって意図的に分断してきたアメリカの歴史は暗く重い。アメリカについてはまだまだ知らないことが沢山あるのだなと思う。
 
 
現在この映画を見て愕然としているんですけど、英国にいた頃の2001年にアメリカで同時多発テロが起こったときの感覚に少し似ている。あの時も「アメリカとはどういう国なのだ?」と大変なショックを受け、取り憑かれたようにアメリカの過去の外交政策についての資料や論評を読み漁った。その時の気分と少し似ている。全く知らなかった闇を知る。かなりショックを受けてます。

 

2020年6月8日月曜日

Systemic Racism Explained/システム的な人種差別とはどういうことなのかを学ぶ



Systemic Racism Explained
システム全体的な人種差別を解説する

大まかな内容の訳を文に書いてます
…おっと日本語の字幕がありましたね



今、皆が人種問題のことについて考えている時期で、情報も様々なものがネット上をめぐっているのですが、そんな中からいい動画があったので紹介する。

アメリカのシステミック(=システム全体的な/構造的な/制度的な/組織的な)人種差別とはどのようなものなのかを解説するビデオです。このビデオが作られたのは1年前の20194月。


昨日は英国のアーティスト、バンスキーさんが「有色人種の人々は白人が作った社会のシステムに苦しめられている」と書いたメッセージをとりあげたのですが、この動画か説明することがまさに「白人のシステム」のことなのだなと納得。たまたまタイミングよくぶつかったので記録しておく。

このビデオの事を教えてくれたのは、旦那Aの親戚の20代の女の子。彼女も(私が昨日言っていたような)中都市に住む大変健全な正しい白人の一人なのですが、彼女のような若い世代の人達が意志を持って世の中を変えようとしていることが嬉しい。いいことです。
このビデオでは私も沢山のことを学びました。
それにしても「Redliningとは知らなかった。酷いものですね。それから学校などの話は親戚から聞いていて…「例えばどれどれの地域はここの学校の校区だから、その辺りの家を探してる」などというのは、まさにこの話をしているのだなと思った。
アメリカの人種問題の現状は、皆がもうすでに出来上がってしまっている差別のシステムに、個人個人が合わせて生活をしているわけで、この悪のシステムが100年も前に決められていたと考えれば…、アメリカの人種問題の根は深い…としか言いようがないです。本当に深い。
私もこの国に来て、あらためて学んでます。アメリカの差別とは、町を歩いていて白人にからかわれたとか無視されたとか…そんな表面的なレベルではないのだということがわかりますね。いや~大問題だ。

私は以前から英国の人種問題とアメリカの人種問題は質が違うと自分の肌で感じていたのですが、私が個人的に感じたアメリカの田舎や地方都市の独特の微妙~な感じとは、こういうことからきているのかもしれません。

このビデオのおおまかな訳↓にも出てくるのですが、偏見を持つ人々が自らの偏見を自覚しているのかどうかで、受け取る側が受ける印象はかなり違うと思います。

 全訳はしませんが、大まかな内容を書いておこう。

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登場人物は、

貧しい地域に住む黒人のジャマル君
 彼の家のご近所はアフリカ系の人々
裕福な地域に住む白人のケビン君
 彼の家のご近所は白人ばかり

それぞれ公立の学校に通っているのだけれど、
学校はそれぞれの地域の住民からの税金で経費をまかなっているので、

ジャマル君の困地区の学校は経費が足りていない
 結果教育の質は落ちている
 ・人数の多すぎるクラス
 ・先生の給料も安い
 ・補助教員も足りない
 ・課外活動もできない
ケビン君の裕福な地区の学校は豊か
 質のいい教育を受けられる
 ・ゆとりのあるクラスの人数
 ・先生の給料は高く
 ・補助教員も優秀
 ・課外活動も盛ん

学校の質が違えば、それぞれの男の子達の人生は小学生の頃から違ってしまう


その「違い」の問題は19世紀の南北戦争の数十年後から始まっている。

奴隷が解放されて数十年後、白人は都市を経済的に投資して見込みがあるかどうかで仕分け。地図を赤い線で囲み(Redlining)…有色人種の多く住む地区は政府の援助や銀行などからの融資を拒否されるシステムを作る。結果、

黒人の住む地区は投資をされないまま放置され、
当然その中に住む黒人達も銀行からの融資を拒否される。
黒人の家族は銀行のローンを拒否されたため家を購入できない
また大学への道も閉ざされる

一方白人は白人の住む地域で融資を受けて家を購入でき
トップレベルの大学はそもそも伝統的に白人にしか門戸を開いていなかった。
そんな風に白人の資産と裕福な生活をつかむチャンスは白人から白人の子孫に受け継がれてきた

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例えば1980年代でさえ、ジョージア州アトランタの不動産業界では、銀行は中~高所得の黒人の家族よりも、低所得の白人の家族への融資を優先していた

そのような人種差別の結果、現在

白人の家族が100ドル得るのに比べ、
黒人の家族は5ドルしか得る事が出来なくなっている

2017年の調査では、例えばシカゴ市など未だに(南北戦争後になされた)地域ごとの仕分けRedlining)が不動産の価値を左右している

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問題はもっとある。(社会を構成する)個人の中にある

無意識のバイアス/偏見

例えば、子供の名前

白人的な一般的な名前=ケビン
黒人的/白人から見て個性的な名前=ジャマル

の場合、例えばこの二人の学生は全く同じ成績で同じ科を専攻したにもかかわらず、

履歴書の段階で

白人の一般的な名前は、黒人的名前の学生よりも

2倍の仕事のチャンスが与えられる(企業からの連絡など)

そのような理由もあって、
同等の大学の卒業の資格があっても

黒人の失業率は、白人の失業率の

2倍。

それ以外にもシステム的な人種差別の証拠は様々なところにあり、
白人と黒人の格差となって現れている…

 
 投獄される率
 政治の場へ自分達の代表を送れるのか
 教育

などなど、多くの分野での人種差別による格差が生まれている


一番の問題は、それらのシステム的な人種差別は、
 ・たった一人や、
 ・一つの団体(企業などの様々なグループ)
などに責任を負わせれば解決されるものではない(=人種差別は様々な理由が絡み合っているため、単純にこれを正せば解決するというものではない)ということ

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人種差別の現状を改善する為にできることは、個人個人が
自分自身の中にある無意識のバイアス/偏見を認識すること

過去の奴隷制とジム・クロウ法(※後述)が、今でも有色人種の人生のチャンスに影響を与えていることを知ること

皆が平等にチャンスを与えられるための、システム的な変化(法を変えるなど)をサポートすること

例えば、公立学校の財源を地区の税収から独立させる…地区の税収に関わらず学校に平等に資金が行き渡るようにする …等等



システム的な問題はシステム的に対処するしかない。誰もがシステムの中に暮らすことから、誰もが世の中を変える力を持っている。


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※ジム・クロウ法
1876年から1964年にかけて存在した、人種差別的内容を含むアメリカ合衆国南部諸州の州法の総称。 主に黒人の一般公共施設の利用を禁止制限した法律を総称したもの。この対象となる人種は「アフリカ系黒人」だけでなく、「黒人の血が混じっているものはすべて黒人とみなす」という人種差別法の「一滴規定(ワンドロップ・ルール)」に基づいており、黒人との混血者に対してだけでなく、インディアン、ブラック・インディアン(インディアンと黒人の混血)、黄色人種などの、白人以外の「有色人種」(Colored)をも含んでいる。

2020年6月7日日曜日

現行の問題に関してBanksy/バンクシー氏のメッセージ



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People of colour are being failed by the system.
有色人種の人々は 社会のシステムによって貶められている
The white system.
白人の(作った)システム
Like a broken pipe flooding the apartment of the people living downstairs.
まるでアパートの(上の階で)水道のパイプが壊れて
             下の階が洪水になっているかのよう
The faulty system is making their life a misery,
そんな欠陥のあるシステムが
          彼ら(有色人種)の生活を苦しめているが、
but it's not their job to fix it.
その問題を直すことは 彼ら(有色人種)仕事ではない
They can't, no one will let them in the apartment upstairs.
彼らにはできないのだ 
     誰も彼らをアパートの上の階に入れようとしないから
This is a white problem.
これは白人の問題だ
And if white people don't fix it,
そして白人達が問題を正さなければ
someone will have to come upstairs and kick the door in,
誰かが上の階にやってきてドアを蹴破ることになる

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最初はこの英国人のアーティストも、今回のアメリカで起こった問題を外から見守ろうと思っていたらしい。メッセージの冒頭に彼はこう書いている。

At first I thought I should just shut up and listen to black people about this issue.
(最初はただ黙って黒人の人々に耳を傾けようと思った)


なぜ彼がこの「アメリカの人種問題についての分析」メッセージを書こうと思ったのかは、彼も白人の一人だから…ということみたいですね。実際には彼は英国人なのだから、アメリカの人種問題には直接関係ない(と私は思う)のだけれど、これは彼の良心から出た分析と(彼と同じ)白人に対しての問題提議なのだろうと思った。


同意します。今世の中で起こっていることに関して、外国人で問題の外にいる私が個人的に誰かに怒りを表明することには違和感があったのだけれど、このメッセージには賛同します。ただやみくもに何かに怒りをぶつけるより、問題を分析してメッセージとして世に示したほうが人種問題を解決するための根本の課題に気付いていない人々の心には響きやすいかもしれないと思う。響けばいいと思う。


人種云々では私にも今まで嫌な経験がなかったわけではない。アジア人が白人の社会に関わっていけばがっかりすることも傷つくこともある。ほんの少しの経験ではあるけれど、そんな個人的な経験から私は、米国の人種問題の最大の課題とは…偏見の自覚のない人々(白人)なのではないかと思うようになった。

保守的な東南部の人々は言うに及ばず。 もっと深刻な問題は米国の普通の常識的な人々の中にある。例えば(私が今までに直接出会った)米国の東側から中西部に住む白人の方々。彼らは…会えば悪い人達じゃない。特殊な人達でもない。普通の人々。きちんと教育を受けていてむしろリベラルな人も多い。自分達が世界で一番正しく偉くて何も間違っていないと信じきっている人々。小さな世界に住む自信満々で健全すぎる人々。そんな彼らは白人の多い地域社会の中で平和に健全に暮らしている。

残念なことにそんな人々の多くは自らの心の奥深くにある偏見に全く気付いていない。自分達の言動が疑いようもなく「偏見を持つ側」のものであることにも全く気付かない。


そんな unaware な(上の階の)人々の問題とは…
    このバンクシー氏のメッセージに追加するなら、

上の階で水漏れして、アパートの建物そのものが腐りかけているのに、上の階の人々はそれに気づきもしないし、気付いても自ら直そうとはしない。そもそも彼らは直す必要があるとも全く思っていない。そして下の階から誰かがやってきてドアをノックすれば、彼らは「水漏れは下の階の問題だ」と言い、しまいには自己防衛だと銃を持ち出してくる。

そして下の階に住む人々は上の階の人々に対しての怒りを溜め込むことになる。それがアメリカの人種問題。


自信のあり過ぎる白い人々は(白人の作った)システムの外側の人間の苦言やアドバイスなど聞こうともしない。彼らは問題について話しかければしらをきり、問い詰めれば逆切れする。どこからどう手をつけていいのかさえわからなくなる。彼ら自身も問題をどう解決すればいいのかわかっていない。だから知らぬふりをする。

メッセージでバンクシーさんが言いたかったのはそういういことなのだろう。白人が自らの中にある偏見を自覚しなければ人種問題は決して解決しない。



米国の人種問題が綺麗に解決することは、欧州での(質の違う)問題のあり方と共に、あと何十年経っても解決することはないと私は個人的には思う。現行で未だ問題の山積みする米国の人々が、感情的+心情的に完全に平等になるのはほぼ不可能に思えてしまう。

だからこそ、そのシステムを作っている側の良心的な人々が、問題の根本を理解し、法を整備し教育を改善して、遠い将来皆が平等になるようにせめて努力だけはしていってほしいと思う。まず事実を知ることは何よりも大切です。

バンクシーさんのこの言葉を記録します。