能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

この度の能登半島地震で 被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。 一日も早い復興をお祈りいたします。 ★NHK による様々な支援情報 能登半島地震 義援金・支援金の受け付け始まる 窓口まとめ 【随時更新】 https://www.nhk.or.jp/shutoken/ne...

2018年1月23日火曜日

NHK 正月時代劇『風雲児たち』蘭学革命篇・感想



年の初めに放送されたNHK時代劇を2つ見た。一つは正月時代劇の『風雲児たち』。もう一つはスペシャルドラマ『龍馬の遺言』。この二つのドラマがそれぞれ正反対の印象だったのが面白い。

言いたいことをまとめるなら

・『風雲児たち』
スターを見るドラマとしては面白いけど歴史ドラマとしては中身も面白味も無い。
・『龍馬の遺言』
歴史ドラマとして面白いけれどペースが遅くて眠くなる。

…以前からどうやったら大河ドラマを復活できるのか…などとと考えているのだが、その答えはこの二つの正反対のドラマの間のどこかにあるのではないかと思った。

それぞれの感想を書いていこう。


---------------------------------------------
●正月時代劇『風雲児たち』
 
録画していたドラマ。
 
これ、三谷幸喜さんによるドラマで、登場人物達がことごとく『真田丸』に出ていた役者さん達なんですね。それだけでも面白かった。いや実はそこが一番面白かった。
 
★ネタバレ注意
ストーリーは単純。時代は江戸中期。蘭方医の前野良沢と杉田玄白が「解体新書」出版するまで。杉田玄白のアイデアでオランダの解剖学書「ターヘル・アナトミア」を翻訳して出版するのだが、完璧主義者の前野良沢が入稿直前に「まだ完全な訳ではないので私の名前を載せたくない」と言いだし、「解体新書」は彼の名を載せることなく出版される。

原作の『風雲児たち』とは、1979年に始まったみなもと太郎氏の歴史ギャグ漫画だそうです。長いシリーズから「解体新書」のエピソードをとりあげた。


それにしても配役だけでほとんど満足できたのがドラマとしていいのかどうかわからないけれど、とにかく『真田丸』づくしでした。最初はその事を知らなかったので、新しい役者さんが登場するたびに「あ、おこうさんだ、内記さんだ、板部岡さんだ、真田のパパだ、長宗我部さんもいる」といちいち喜ぶ。だって2016年は『真田丸』の登場人物達の似顔絵を一年間描いてましたもん。みなさんよ~く覚えてます。そこが一番楽しかった。

冒頭から「これは大河ではない(有働さんナレーション)」とありましたが、まぁ軽いエンタメドラマですね。そのとおりそのとおり。でもこれはこれで楽しい。原作はギャグ漫画だそうなので最初から重苦しい歴史時代劇でないのは明らか。楽しければそれでいいし、実際とても面白かったです。


しかしこういうドラマを見ると、あらためて私がいかに大河ドラマにこれとは違うものを求めているのかというのもよくわかる。もっと真面目にやって欲しいんですよ。大河ドラマには(このドラマと比べて例えるのなら)昭和の劇画調の重苦しい雰囲気を求めているんですよきっと。「明日のジョー」とか「巨人の星」とか「ゴルゴ13」とか(←どれも読んでいないけれど)…昭和の漫画は手塚治虫さんの漫画だってかなり暗くて重苦しかった。根性とか努力とか忍耐とか規律とか礼節とか…かなり重苦しい「思い込んだら試練の道を行くが男のど根性」←こういうやつ。ひゃ~歌詞を書くだけでも苦しい。

重厚大河とか本格大河なんて実際そういう重苦しさがあってこそではないのか。しかし今の若い世代の人達はそんなの見たくはないんですよね。

今回の三谷さんのドラマもかわいいんですよ。歴史的なリアリズムはゼロ。重苦しさも一切無い(役者さん達は大変素晴らしいけれど)。きっともう時代が違うのだな。時代が違えば人々がドラマに求めるものも変わってくる。今はほどんどの視聴者が「根性」や「努力」「忍耐」の話なんて見るのもめんどくさいんだろう。まぁそういう時代ということだ。

近年今まで何度も大河ドラマを見ては「軽い軽い」と文句ばかり書いていたんですけど、もう文句を言っても無駄なんだろうなとも思った。もう重厚な歴史大河ドラマが作られることは二度と無いのかも。それなら感想を書く側もそれを受け入れなければならないのだろう。

このドラマが面白かったからこそ、なんとなくそんなことを思った正月時代劇でした。


2018年1月22日月曜日

映画『シェイプ・オブ・ウォーター/The Shape of Water』(2017):『スプラッシュ』の2017年版ダーク編


 


 
-----------------------------------------------------------------------------
The Shape of Water2017年)/米・加/カラー
123分/監督:Guillermo del Toro
-----------------------------------------------------------------------------


去年の年末に鑑賞。

まぁ…これは『スプラッシュ(1984)』ですね。人魚がダリル・ハンナちゃんだったのが、今回はリアルに不気味な半漁人に替わった。男女の役割もひっくりかえって人魚が男になった。恋をするのは人間の女性。うー…。

これもファンタジーなんですよね。しかしこれは納得できない。

キモチワルイ映画。


★あらすじ
60年初期。研究施設に送られてきた半漁人と掃除係りの女性が恋に落ちる。


この映画、アメリカの批評家の間ではものすごく高評価。Rotten Tomatoesでは去年の一時期94点。現在92点。だから見に行った。その高評価の理由はどこにある?


●いいところ

・セットと雰囲気がいい。
凝ってます。ちょっと前のアート系フランス映画や英国映画にありそうな演出。テリー・ギリアム、ジャン=ピエール・ジュネあたりを思い出す。光や色合い、雰囲気がいい。一目見て「あ~狙ってるな」と思う。

・主役はほぼマイケル・シャノン
怖い悪役なんですけどすごい迫力。ユーモアのかけらもない嫌な男。悪の大魔王。このマイケル・シャノンという俳優さんはとにかく迫力がすごい。お顔はホアキン・フェニックスに似ているのにホアキンさんのような柔らかくて弱い部分が全く見えない。この映画でもゴリゴリに悪い人になりきってる…それが凄い。…実はあまりにも悪い印象なので俳優さんに興味が湧いてTV出演のインタビューを見てみたら超面白いお茶目な人だった。驚き。ファンになりそう。

・全体に演技が上手い
ほぼ全員上手い。マイケル・シャノンさんの他にも役者さん達は皆上手い。主演のサリー・ホーキンスさんが喋れない役なのに演技だけでも観客の涙を誘う。全体のレベルが高い。

・半漁人を演じた俳優さんのカラダのバランスが素晴らしい。
カラダが綺麗な人っているのね。この俳優さんダグ・ジョーンズさんはこの監督さんと組んでいつも被り物をする役で有名だそうです。


★ネタバレ注意


●残念なところ

・ユーモアがゼロ
設定が似ていると書いた『スプラッシュ』は全編がユーモアに溢れていたんですよ。どうせファンタジーなら可愛くておかしい方がいい。しかしこの映画は妙にシリアス。それに暴力描写も多くて痛い。テーマがファンタジーで演出も漫画っぽいのに、全体に重苦しい雰囲気でユーモアを感じにくいのには違和感があった。雰囲気に馴染むまで時間がかかった。

・薄っぺらいラブロマンス
ロマンスが簡単すぎ。最初の出会いは女性が水槽に近づいていって半漁人にゆで卵をあげただけ。それだけで半漁人が急に手話を理解し始める。簡単すぎ。異質の者達が恐る恐る徐々に徐々に近づいていって理解しあうプロセスが殆どない。女性は怖く無いのかな?ゆで卵をあげたら次は音楽を聴かせて…もうお友達。異質の者と友情を育むのならもう少し繊細なプロセスを見せて欲しかった。

・仲良しになる
一番の問題はここ。ちょっと無理ですよね。出会いのロマンスの描写(友情を育むプロセス)が短いから簡単にそちらに行ってしまうのも納得が行かない。いやそれ以前に魚…鱗…冷たい…むむむむりだわ。脚本が男性のせいなのか…どうも女性の事がわかってないのではないか。どう考えてもいやだ。会話もできないから相手の事が理解も出来ないのに。要はイノセントな友情に性を持ち出すから問題なんですよ。微笑ましい友情に留めておけば納得できたと思う。『E.T.』も『未知との遭遇』も…友情だけで十分じゃないか。Hを話にとり入れるのならもう少しユーモアが欲しい。この映画は品がなくて不快これも『スプラッシュ』に軍配があがる。あれは微笑ましくてかわいかった。

・結構痛い場面が多い。
おばちゃんには痛過ぎ。

・猫 😿

・余計な話が多すぎる
老齢の男性が会社からクビになってイラストレーターの仕事をしている…ゲイだからアウトサイダー…詳しく描いているんですけど必要性を感じない。孤独な男性だという情報は脚本でほのめかすだけにして、その時間を本題の半漁人と女性の出会いの描写に使って欲しかった。細々と散りばめられた他のエピソードの数々も…どうも納まりが悪い。

・狙いすぎの妙な雰囲気
カメラワークも演出も狙ってますね。これはアートな映画ですよ…という感じ。ジャン=ピエール・ジュネ監督…『アメリ』を思い出す…主役の女性がちょっと妙な子。悪役は極端な極悪人。ロシアのスパイはいい人。肝っ玉オバチャンの同僚。結構痛いグロ描写。不必要に多い性的な描写。バスルームの水タンク化も嘘っぽい。…キャラも演出も全体に漫画っぽい。しかしユーモアに欠ける。
『アメリ』はちょっと妙な感じがユーモラスな映画全体によく馴染んでいた思うけれど、この映画はどうも納まりが悪い。妙だからアート風というのも違うと思う。


うだうだ文句ばかり書きましたけど、要は世間の評価があまりにも高いので期待しすぎちゃったのよ。しかしこの映画が92点で『Greatest Showman』が55とは…おかしいですよね。プロの批評家達にとって「いい映画」とは何なのだろうと考えさせられる。ほんとに。

私はこの映画をいいとは思わない。なんだか全体にやたらと不快に感じた。キモチワルイそれに演出ばかり凝っているけど内容は結局『スプラッュ』じゃん。しかしダリル・ハンナちゃんの人魚のほうが可愛いかったし、あの映画はもっと夢があったよねぇ…と思ってしまった。ファンタジーは馬鹿馬鹿しいほどファンタジーらしくあってくれたほうがいい。『スプラッシュ』の最後のトム・ハンクスは竜宮城で幸せになっただろうなと思ったもの。

この映画のイライザさんはアマゾンのジャングルであの半漁人の嫁になったら苦労しそうだわねと思った。


2018年1月19日金曜日

The Greatest Showman – Come Alive (2017)



この曲が一番いい。

 
 
The Greatest Showman – Come Alive (2017)
Album:  The Greatest Showman (Original Motion Picture Soundtrack)
Released:  Dec 8, 2017
℗ 2017 This compilation Atlantic Recording Corporation for the United States and WEA International Inc. for the world outside of the United States. Motion Picture Artwork, Photos, and Fox Trademarks and Logos TM and © 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation.



This is Me」では泣いたけれど、踊れるやつならもっといい。もういても立ってもいられない。手を叩いて踊り出す。劇場では必死で我慢。でも脚はバタバタしてほぼ踊り出してた。

ヒュー様すごいわ。全員がすごい。もう画面がかっこいいのだ。この歌は、社会の影に隠れて暮らしていたOddities奇人達を表舞台に連れ出す歌。

歌詞が素晴らし過ぎるので全訳することにした。大好き。

Come Alive

Hugh Jackman, Keala Settle, Daniel Everidge, Zendaya & The Greatest Showman Ensemble
--------------------------------------------------------

[Verse 1: P.T. Barnum]
つまずきながら生きてきたんだろう
うつむいて
君の空の色は灰色だね
迷路に迷い込んだゾンビのように
君の中は眠っている
でも(そんな日々)を振り落とすこともできる

[Pre-Chorus: P.T. Barnum]
なぜなら君は生きる屍のようだから
それしか生きる道が無いと思っているんだろ
でもスイッチを上げて暗い日を照らしてごらん
太陽は高く上り、色も眩しい
世界に出て独自の意味を見つけるんだ
偏狭な心を忘れて
もう前と同じじゃない

[Pre-Chorus: P.T. Barnum]
生き返れ、蘇れ
君の光に乗って
もっと輝かせて
空に手を伸ばして
ほら大きく開いているだろ
電気が通ったように君は輝く

[Chorus: P.T. Barnum]
世界がファンタジーになった時
君は何にだってなれる
なぜなら君は目を大きく開いて夢を見ているから
もう戻れないことはわかっているだろ
もう今まで住んでいた世界には
なぜなら君は目を大きく開いて夢を見ているから
さあ生き返れ!

[Verse 2: P.T. Barnum]
君の目の中に見えるよ
あの嘘を信じているだろう
君が顔を隠さなきゃいけないなんて嘘を
外に踏み出すことも恐れているんだろ
だから君はドアの鍵をかけてる
でもそんな風に生きちゃダメだ

[Lettie Lutz]
もう影に隠れては生きない
あなたも私も皆わかってる

[Lord of Leeds]
一度見てしまったら、もう二度と元には戻れない

[Both]
私達は光になって輝き
怒りを抑えて努力し続けよう

[All]
君はもっとすごいと証明できるよ

[P.T. Barnum]
もう怖がらないで

[Pre-Chorus: Ensemble]
生き返れ、蘇れ
君の光に乗って
もっと燃やして輝かせて
空に手を伸ばして
ほら大きく開いているだろ
電気が通ったようにキミは輝く

[Chorus: Ensemble]
世界がファンタジーになった時
君は何にだってなれる
なぜなら君は目を大きく開いて夢を見ているから
もう私達が戻れないことはわかっている
もう今まで住んでいた世界には
なぜなら私達は目を大きく開いて夢を見ているから
さあ生き返れ!

[Ensemble]
Come one! 一緒に
Come all! みんなおいで
Come in! こちらに来て
Come on! ほら

[Anne Wheeler]
夢ではちきれそうな者達へ

[Ensemble]
Come one! 一緒に
Come all! みんな
You hear 聞こえた?
The call あの呼び声が

[P.T. Barnum]
自由になる方法を探している者達へ

[Ensemble]
自由に
自由になろう

[Chorus: Ensemble and P.T. Barnum]
世界がファンタジーになった時
君は何にだってなれる
なぜなら君は目を大きく開いて夢を見ているから
もう私達が戻れないことはわかっている
もう今まで住んでいた世界には
なぜなら私達は目を大きく開いて夢を見ているから
(Hey!)

[Chorus: Ensemble and P.T. Barnum]
世界がファンタジーになった時
君は何にだってなれる
なぜなら君は目を大きく開いて夢を見ているから
もう私達が戻れないことはわかっている
もう今まで住んでいた世界には
なぜなら私達は目を大きく開いて夢を見ているから

[Outro: Ensemble and P.T. Barnum]
なぜなら私達は目を大きく開いて夢を見ているから

[Outro: Ensemble and P.T. Barnum]
生き返れ! 

 --------------------------------------------------------
Source: LyricFind
Songwriters: Justin Paul / Benj Pasek
Come Alive lyrics © Kobalt Music Publishing Ltd., Fox Music, Inc


この歌で皆踊り出す。みんな楽しそうなの。親指トム将軍もすごく嬉しそう。
最初はバーナムが誘っているんだけれど、後半からサーカスの団員達が自ら「私達が元の世界にはもう戻れない」と歌っている。そして皆で一緒に輝こうと誘っている。

これは皆の人生を祝福する歌。

音楽は元気をくれる。
何と素晴らしい。


映画『グレイテスト・ショーマン/The greatest showman』(2017):王道ミュージカル。美しい映画の魔法に泣く。
The Greatest Showman - This Is Me (2017) *


 

映画『グレイテスト・ショーマン/The greatest showman』(2017):王道ミュージカル。美しい映画の魔法に泣く。







 
-----------------------------------------------------------------------------
The Greatest Showman2017年)/米/カラー
105分/監督:Michael Gracey
-----------------------------------------------------------------------------

 
映画を見て泣く。大泣き。本当に素晴らしい映画です。これよこれ。これこそがミュージカル映画。映画の魔法。ミュージカル映画に期待する全てがここにある。なんと美しい。なんとゴージャスな。なんと華やかな。なんと楽しい。なんと元気の出る…。いくら言葉を繋いでも言い足りない。こんな映画は本当に久しぶり。思い出すだけでも涙が出る。この映画を作ってくださった方々に感謝します。大きな拍手。

映画の魔法とは…大きな映像と大きな音で現実を忘れさせてくれるもの、言葉もないほど幸せな気持ちにさせてくれるもの、我を忘れさせて夢中にさせてくれるもの、登場人物達と一緒に泣き、笑い、心は共に踊る…ミュージカル映画とはそういうもの。

La La Land』?あんなのはミュージカルじゃない。あんな踊れない歌えない俳優がミュージカルなんてやっちゃいかんのよ。ミュージカルはこれ。これです。プロのヒュー・ジャックマン様を拝むべし。これが本物のミュージカル映画です。

あらためて、まだミュージカル映画をちゃんと作れる人達がいたことにほっとする。ありがとうありがとう。

とにかくこれだけ涙を流したら公正な批評なんでできるわけがない。もうワタクシはThe Greatest Showmanのファンなので、そういう感想を書く。ああ幸せな105分間。


最初は曲1曲であまりにも事が速く進んでいくので「あ~これはミュージック・ビデオを見るような映画かも」と思った。最初から中身がスカスカだとも思った。ところが時間が経つにつれて、音楽と画面の豪華さにドップリ浸ることそのものが快感になる。そうなったらもう抜け出せない。…それにこれいい話じゃないの。

効果的なライティング。最高のカメラワーク。巧みな編集。足を踏み鳴らし一緒に歌いたくなる歌歌歌。そして場面ごとにいちいち輝く俳優の皆様。この監督さんは人物達をかっこよく美しくゴージャスに撮れる人。これぞ映画。これぞ王道のエンタメ。画面から溢れるパワーだけでぐっと心を摑まれる。

そう。そうなのよ。ミュージカル映画はこうでなくちゃ。画面の中で歌い踊り、私達を魅了する才能に溢れたゴージャスな人々。世間から「奇人変人/Oddities/フリークス」と呼ばれる人々を扱った映画なのに全員ぶっちぎりでかっこよくて楽しくて豪華。それでいいんです。ショーはこうでなくちゃ。ミュージカル映画はこうでなくちゃ。

いい映画は魔法だから。全てがフェイクな魔法だから。なんと素晴らしい嘘の世界。私はこれが好きだ。おとぎ話に惑わされて笑い、ドキドキわくわくして一緒に泣いて人生は素晴らしいじゃないかと思う。いいじゃないですか。そんな映画を、誰が神妙な顔で批評出来るだろう。

私は1回見て感動して、またあの音楽が聞きたくて、数々のシーンが見たくて、皆に会いたくて、もう1回見に行きました。また見たい。追記:3回目見てきた!3回目もやっぱりよかった。ところで下の文で採り上げた人物達の台詞は映画とトレイラーで違っていたぞ(1/20 Sat.)。


この映画の出演者は全員がプロです。皆歌って踊れる。それが一番すごいと思います。プロのエンタテイナー達の力技を見せ付けられる。

主演は中年女性のアイドル・ゴージャスな:ヒュー・ジャックマン様=主人公P・T・バーナムこんなに華やかななミュージカル・スターだったとは(『レ・ミゼラブル』は深刻でしたね)。いい男。共演の女性達が皆嬉しそうなの。御本人もすごくいい人なんですよね。そのヒュー様に当て書きされたかのような明るくて元気な主人公。彼だからいいんです。ヒュー様だからこの映画がこんなに素晴らしくなった。

おっとびっくり歌って踊れるのね:ミシェル・ウィリアムズさんバーナムの奥さんチャリティ一番地味なキャラ。しかしキャラとして奥さん/お母さんはこういうものかも。少女のようなイノセンスに時々おばさんの表情が顔を出す。

男臭いアイドルザック・エフロン君フィリップ・カーライル。彼はちょっと影があるのよね。青い目の古典的な正統派男前。ちょっと古臭い男臭さ。ガッチリ体形のこのお方がこんなに歌って踊れるとは。

驚愕のスタイルのかわいい美女21ゼンデイヤちゃんアニー・ウィーラまだ21歳。こういう方がアメリカには出てくるのよね。すごいな。あのアクションは御本人がなさったらしいです。すごいわ。
 
北欧の古典的美女レベッカ・ファーガソンさんジェニー・リンド。ああこのお方は古典的な美女。北欧の正統派の美女だから、このキャラクターにも説得力が生まれる。お見事です。

パワフルな声に圧倒される:キアラ・セトルさんレティ・ルッツパワーパワーパワー。サーカスの団員達のリーダーの彼女のパワーに圧倒されて涙が出る。

…スターはもっともっといる。この映画では皆がスター。
全員がスターです。

 
---------------------------------------------------
ところで余談だけれど、この映画、アメリカのプロの批評家には大変評判が悪い。Rotten Tomatoesは現在55点。なんと酷い。これはインテリが通ぶって文句を言ってるんだけなんですよね。

プロの批評家に評判の悪い理由は2つ。一つは悪名高い19世紀の興行師PT・バーナムを善人に仕立て上げたことが倫理的に正しくないから+歴史的に嘘だから気に入らない。そしてフリークショー(異形の人々を見世物にするショー)を心温まる美しい話に仕立て上げたことも倫理的に正しくないから+無神経だから気に入らないらしい。史実はもっと深刻で辛い話なのに砂糖菓子で覆ったように軽々しく綺麗ごとにしちゃったのが気に入らないらしい。

馬鹿ですね。全然この映画の趣旨がわかっていない。だからアメリカのインテリは薄っぺらいんだわね。アホですね。ほんとに。あきれてものも言えない。

この映画はそもそもファンタジーなのに…驚くほどポジティブで元気の出るファンタジー映画なのに。バーナムなんて悪名高い人物の(史実をすっ飛ばして)枠組みだけ借りてきて、究極のポジティブ・メッセージをこれでもかこれでもかと直球で観客に投げかけている作品なのに…。

アメリカの批評家は「人種」や「人権」、「フリーク」「見世物小屋」のタグだけで神経質になりすぎて(明らかに良くできた)映画も公正な目で見ることさえ出来ない。アメリカはやっぱりこじらせてますね。インテリほどそうなのかも。もっと映画そのものを楽しめばいいのに。

そんな世間体ばかりを気にするおろかな批評家達の心配をよそに、一般の観客は大喜び。ムービーデータベースの一般投票は810点。感想を読めば多くの人が大絶賛している。ポジティブなメッセージを織り込んだこんなにも楽しく美しくパワーに溢れた映画は、問答無用で人の心に直接訴えるんですね。理屈はいらない。一般の観客は正しい。

ちなみに史実のバーナム氏のサーカスとは、去年を最後に幕を閉じた有名な「リングリングサーカス」の元になったものだそうです。びっくり。
---------------------------------------------------


ここからは、自分用の記録のために内容に踏み込んで感想を書いていきます。まだ見ていない方は読まないほうがいいかもしれない。まず劇場にいって、何の前情報にも邪魔されることなくただスクリーンを見つめて、豪華なシーンと音楽に浸ってこの映画を楽しんだ方がいいと思います。


★ネタバレ注意
感動した場面場面をまとめておこう。「」内は楽曲名。

●冒頭The Greatest Show
短いけれど最初から魅せてくれる。ヒュー様かっこいいわ。最初に白い馬がポクポク出てきたところでああああっと思う。ああ素敵だ。

A Million Dreams
バーナムとチャリティ夫婦の子供時代を駆け足で。息をつく暇も無い。ヒュー様は歌が上手い。ミシェル・ウィリアムズさんが歌って踊れるとは知らなかった。

Come Alive
サーカスと見世物小屋がオープンして全員で歌い踊る。最高。脚をバタバタさせて手を叩き立ち上がって一緒に踊りたい。圧倒される。ダンサー達がかっこいいのね。最高。ああまた見たい。

The Greatest Showman - Come Alive (2017)  歌詞和訳

●ヒューとザックThe Other Side
バーでバーナムがカーライルをビジネスに引き込む交渉の場面。かっこいいですねぇ。最後はバーテンダーも踊り出す。気持ちいい。

●北欧の美女Jenny LindさんのNever Enough
この歌を聴くヒュー様の表情がたまらない。あの目。呆然と立ち尽くして目には涙。これは恋だわね。彼女の歌声を聴いて雷に打たれたように男は立ちつくすす。これからのビジネスの成功とか彼女の歌の実力とか…いろんな他の理由もあるだろうけれど、この場面のバーナムさんは、とにかくジェニーさんの歌声と美しさに圧倒されて一瞬で恋に落ちているのよ。間違いないです。あの男の目はね…ああいう目で見られたらどんな女も嫌とは言えない。恋は化学反応。ジェニーさんもヒュー様のあの泣きそうな表情を見て「全てを捨ててこの人と一緒にアメリカでやってみよう」と思ったんですね。最高ですこれ(涙)。それを奥さんのチャリティさんが心配そうに見る場面もなかなか苦しい…。その後のパーティーでの会話では、もうジェニーさんがバーナムを誘っている。ジェニーさんももちろんバーナムに惹かれているのね。ヒュー様はいい男だものね。困りましたね。それはともかく、ジェニーさんが文句の言いようのない古典的な美女なのがすごい。美女を画面に大写しにするだけでも涙が出そうになる。だから一瞬で恋に落ちるヒュー様の気持ちもよくわかる。昔のシルバースクリーンの女優さんとはこういうものだったのよ。

●魂のさけびThis Is Me
パーティーから締め出されたサーカスの団員達が立ち上がる。髭のレティさんが仲間を率いて踊り歌う。パワフルです。キアラ・セトルさんの声が響き渡る。世間から奇人変人/Oddities/フリークスと呼ばれる者達(=自分が周りに上手く馴染んでいないと思う者なら誰でも)が「私は負けない。もう隠れたりもしない。前に向って歩く。もう見られることも恐れはしない。もう恐縮もしない。これが私だから」と誇り高く歌い上げる。傷ついた者の魂の叫び声です。もう………この歌でね、私は涙腺崩壊。止めようとしても涙が溢れ出て止まらない。だって白人の家族に嫁いだアジア人の私もぶっちゃけ自分をフリークだと思うことが実際にあるから。ありがとうこんなに励まされる歌は他にない。泣いて泣いて今も泣く。みんな本当にかっこいい。みんなが美しい。そうだ元気を出さなきゃ。ありがとう。

The Greatest Showman - This Is Me (2017)  歌詞和訳

●ザック君とゼンデイヤちゃんの禁断の恋Rewrite the Stars
人種問題を扱ったパート。上流階級のぼんぼんと黒人娘の空中ブランコのり。社会的に大問題なわけです。この映画の時代は南北戦争より前。まだ実際に奴隷がいた時代なのね。だけどザック君は美しいゼンデイヤちゃんに一目ぼれしちゃう。最初に好きになったのは彼。彼女は戸惑っている。ザック君はハイソな両親に「HELPの子と付き合うなんて恥ずかしい」と咎められ「世界は変化しているんです(トレイラーのみ)」と訴える。
人種と階級の壁に阻まれる二人の歌は会話のよう…ザック君が「大丈夫だよ」と言えばゼンデイヤちゃんは「大丈夫じゃないわ」と答える。その二人の歌をゼンデイヤちゃんの空中ブランコの練習シーンで演出。これもすごいシーンですよ。どうやってこんな振りを考えたんだろうと思う。もう言いようも無いほどゴージャスで溜息。これはすごいです。
歌って踊れるザック・エフロン君。青い目が綺麗。彼がこんなに動けるとは驚き。そして21歳のゼンデイヤちゃんの才能。長い脚。あんなに美しくて歌って踊れる。そして病院でザック君に付き添う時の涙ではもらい泣き。こういう才能のある若い人が出てくるアメリカはやっぱりすごいと思う。

●そしてヒュー様とジェニーさんの別れ
ジェニーさんのツアーでのホテルで、ジェニーさんは当たり前のようにバーナムとお近づきになろうとする。ジェニーさんの猫のような青い目。狙いを定めて獲物を逃さない目。それを善人ヒュー様は受け止めるのか…。
この場面では私はジェニーさんの味方になってました。だって彼女の恋心に火をつけたのは元々バーナムの方だから…最初の舞台でヒュー様にあんな目で見られたから、ジェニーさんも「この人と一緒にアメリカでやってみよう」と思ったのに。(ステージ上とはいえ)一度は間違いなく惹かれあった二人なのに…。
そこが問題なんですね。舞台上での一瞬の恋は間違いなく本物。だけどそれは現実の世界には存在しないもの…。それなのにいつの間にかジェニーさんの恋は本物になってしまっていた。そもそも男女が二人でツアーに出ているのに何もないわけがなかろう。それをヒュー様が突然現実に引き戻す。んまーあの場面で私はヒュー様の横っ面をひっ叩きたくなりましたね。今さら何を言っているのよ。…彼女がかわいそうだわ。
確かに二人が仲良くなれば不倫。しかし男女が惹かれあうのは理屈ではない。そもそもこのバーナムは善人設定なのだから、彼がジェニーさんに一歩踏み出すことはありえないのだろう。それでも(どんなに真面目な既婚の善人でも)誰かに理屈抜きで魅了されることはあると思う…それが恋というもの。だからジェニーさんとのこのエピソードはいいんですよ。ちょっと心動かされますね。…そしてバーナムが一歩踏み出さない…踏みとどまるからまたいいわけだ。

From Now On
ヒュー様がバーで落ち込んでいる時にサーカスの団員達がやってくる。「あなたは私達を見世物にしたけれど(トレイラーのみ)本当の家族も与えてくれたわ」そしてバーの中で皆で踊り狂う。この団員達は皆プロのダンサーの方々なのね。ダイナミックに全員が『Fame』スタイルで踊り狂う。全員が輝いてます。圧倒されます。いい場面です。ヒュー様は家族を迎えに行く。ヒュー様の声が素晴らしい。

●最後は豪華なテントでのショーのシーン
数頭の象が出てきて、シンメトリーにライオンが輪をくぐる。CGだとわかっているけれど、いいんです。ゴージャスならそれでいい。なんと美しい。なんと楽しい。なんとエキサイティングな…。ああこの映画は本当に素晴らしい。ああ王道のエンタメとは本当に素晴らしい。

こんな映画を作ってくれて感謝です。心から楽しかった。映画を見てこんなに興奮したのは久しぶりです。ありがとう。ありがとう。大きな拍手喝采。また見たい。