能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2024年3月20日水曜日

テレビ東京 ドラマ24『きのう何食べた? 』シーズン2・第12話 最終回 家族の形…ケンジの愛情たっぷり特製弁当



テレビ東京系のドラマ24『テレビ東京ドラマ24』。ここではTV Japanにて。日本での放送は2023年10月7日(6日深夜)から12月23日(22日深夜)まで。この12話は2023年12月23日放送。


最終回が終わってしまった。これはいいドラマ。いまどきのポリコレ的な意味で素晴らしいというのではなく、役者さん達の上手さやドラマとしての心地よさがとにかく素晴らしかった。癒しのレベルMAX。素晴らしい素晴らしい💕


ゲイのカップル、筧史朗/シロさん(西島秀俊)と矢吹賢二/ケンジさん(内野聖陽)の仲の良さが何よりも癒し。微笑ましい。彼らを見ていると楽しくなる。なんだか幸せがこちらにもやってくるよう。仲のいい二人がご飯を作って幸せにおうちごはんを食べることの「幸福感」…いいですね~。30分のドラマでの単純な「フォーマット」なのに最高にいい素材。非の打ちどころがない。大絶賛。


ところで私はBLモノには全く興味がない。一応…もう45年ぐらい前、中学生の時に親友に進められて最初の2、3冊ほど『風と木の詩』は読んだ。意味がわからずあまりいい印象はない。親友はBLモノが好きで雑誌「JUNE」なども見せてもらったけれど残念ながらさっぱり良さがわからなかった。それからもずっとBLモノの良さはわからずじまい。単純に私は自分をストーリーの中に投影できる男女の恋愛モノのほうが楽しいと思った。

でもこのドラマを見ていると(これがBLなのかどうかわからないが)「男×男」の話がいかに微笑ましいのかがよ~くわかった。色恋の話題で女が出てこないドラマって…なんというか、雑音を感じないのですよね。見ていてストレスが全くない。それが自分でも面白いと思った。

普段私は男女の恋愛モノのドラマを見ていると、必ず頭の中の数パーセントで「なにかが変だ」とか「それはやめたほうがいいよ」「それは言わない方がいい」とか、男女の現実的な側面を思い出してなにかと批評的になりがちなのだけれど、「男×男」の話はま~ったく何のストレスもなく見れるのが面白いと思った。(あ、たぶんフィジカルなものはあまり見たくないと思う)

シロさんとケンジさんがスキスキで仲睦まじく楽しそうにやっていると、心から「よかったねぇ」とこちらも笑顔になる。このお二人は50歳ぐらいの設定なので、まさか自分の息子の世代の話というわけでもないのに、なぜか「かわいい」とか「微笑ましい」「ほのぼの」とかポジティブな感想ばかりが頭に浮かぶ。だからストレスフリー。これは私が女だからなのだろうかと思う。


以前のこのドラマの感想にも書いたと思うが、西島秀俊さんと内野聖陽さんが本当に楽しそうなのがいい。食べてるご飯も美味しいのだろうと思う。だから演技なのに楽しくて嬉しくて美味しいのが表情に出ているのが何とも言えず幸せ気分。いいドラマですよ。


さてこの最終回には現実的なLGBTQのお題も出てきた。

日本ではゲイやレズビアンの同性のカップルが家族になれる「結婚」がまだ出来ないらしいのだけれど、結婚できないことによって生じる問題…相続の話などについてこの回ではさらっと触れていた。これはつまり「家族か?家族でないか?」の話でもあって…例えば病院での家族としての扱いなども含まれるのだろう。

信頼し合って一緒に暮らしている同性の二人の人間が「家族」として社会に認識されるためには、今の時点では養子縁組と言う形になるそうだ。なるほど。しかしケンジさんは「一旦養子になったら法が変わって結婚できることになった時に結婚できなくなる」と言っていた。なるほど。「恋人の子供にはなりたくない」というのも確かに理解できる。


私はもう長い間、米国のドラァグ・クイーンの番組を見たり、過去にも英国のミュージシャンの夫婦(エルトン・ジョン氏等)をメディアで見ていたり、英国では実際に同性カップルの知り合いがいたり、この地でも結婚している男性が「My husband」と言うのを聞いたり、知り合いの弟さんが結婚している等々の話に度々触れていて…既にそういうものが当り前だと思うようになっているので、正直今の時代に同性愛者の「結婚」を阻む理由がよく理解できないのですよ。

そのお題について日本でのネット上の情報をさらっと探してみると、やっぱり「同性愛」ということが問題だと言う人が多いらしく、それからまた「結婚」とは「家族になるため…子供を作るため」と言う人もいるみたいでなかなか難しいらしい。

しかし「結婚」を「子供をもつ可能性のある男女が条件」だとするのなら、例えば60歳と63歳で出会った男女が幸せな「結婚」をして夫婦になることも問題なはずで、また(うちのように)男女でも子供のいない夫婦は結婚の条件を満たしていないのか?という疑問が湧かないでもない。


今必要なのは日本でも「今の時代の結婚の定義」を議論することなのだろうと思う。

「結婚」とは何なのか?頭ごなしに「結婚とはこうあるべきで…」と過去の前例や憲法の言葉を捏ねまわして賛成派と反対派が延々と水掛け論を続けるよりも、「今の時代においての結婚/パートナーシップとは何を基準に定義するべきなのか」をあらためて真剣に話し合った方がいいと思う。

「結婚とはなんなのか?」

何も外国を真似する必要はない。外国の前例をただよかれと議論もせずにただ飲み込むのが一番いけないと思う。まず日本人が「結婚とは、家族とはなんだろう?」とその意味を話し合うことが必要だろうと思う。それは何事もそうですよ。どのようなお題でも外国のやり方をただコピーするのではなく、まず日本の中で日本人が徹底的に議論をして結論を出していったほうがいいと思う。

一番大切なのは、誰にでも「幸せに暮らす権利はある」ということ。シロさんとケンジさんが結婚したいと思うのなら…いつまでも家族として幸せに暮らしたいと思うのなら、私は彼らが結婚できればいいと思うなぁ…。皆が幸せでありますように。


2024年3月19日火曜日

B15 Project, Lynsey Moore - Lately (Sol Brothers & Special Tee Remix)(2023)



勢い


B15 Project, Lynsey Moore – Lately (Sol Brothers & Special Tee Remix)
Lately - Single
B15 Project, Lynsey Moore
Released: November 13, 2023
℗ 2023 Jam Tasty


去年の年末頃か今年の初めにUK commercial pop club chartまたはUK upfront club chartに入っていたのをメモしていた。キャッチー。

それにしても英国のダンス系のアーティストは本当に層が厚い。チャートから好きな曲ばかりメモしているけれど、とにかくDJやシンガーの数が多い。それにどんどん新しい世代のアーティストも出てきている。英国では長い間このジャンルが活発で熟成しきっているのだろう。

それにしても日本ではダンスMusicはどうも定着しませんね。どうしてだろう。


★B15 Project
英国のgarage duo。オリジナルのメンバーはAngus CampbellさんとIan Wallmanさん。1998年に結成。2007年からDJ/producer のDanny Wynnさんが参加。

Lynsey Moore
英国のシンガー・ソングライター。New Barnet出身。House/EDM専門のソングライターだそうであらゆるジャンルのダンスMを歌うアーティスト。

Sol Brothers
最初はDJ デュオとしてスタートしたが、現在はAndrew Galeaさん一人。過去に使った名前はFreestylers • Sol Brothers • Mob Culture • Nightstylers • Soulseekerz • Phunk Warriors • Solasso • DJ Bomba。RihannaやBritney Spearsを始めとして30年以上様々なアーティストのリミックスを手掛ける。


お猫様H:おとなの女



またまた今年1月頃のお写真

猫さんはこの写真の頃
人の年齢でほぼ57歳ぐらいかな

カメラを近づけると耳が後ろにいきますね
おとなの顔になったな~と思う



2024年3月14日木曜日

VASSY - Off Switch (2024)



キャッチー


VASSY - Off Switch (2024)
Off Switch – Single
VASSY
Released: January 5, 2024
℗ 2024 Spinnin’ Records



今年に入ってから英国のcommercial pop club chartに入ってきた曲。VASSYさんは今までにも様々な曲がチャートに入っているらしいです。ビデオに筋肉マンが出てきますがゲイ・クラブの客がターゲットなのだろうか

★VASSY
Vasiliki "Vassy" Karagiorgosさん。1983年生まれの今年41歳、オーストラリアのしんがー・ソングライター、プロデューサー。ジャンルはPop、dance、EDM、indie pop。彼女の曲はディズニーの映画『Frozen』や、様々なコマーシャルや米のテレビドラマにも使われている。米国のダンスチャートの常連。また様々なDJとのコラボでシンガーとして各国のダンスチャートの常連。


Off Switch
VASSY
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[Verse 1]
何か電気のようなもの あなたと私の間 
私達の絆は 説明できない
私達は消えかかった境界線の上にいる
なぜ私はこの気持ちの高まりが怖いのか わからない

[Pre-Chorus]
いつもあなたか私を見つめる時
私は集中しようとして その瞬間に夢中
このアドレナリンは もう隠せない
もっとスピードを落とそうと思っているのに, oh yeah

[Chorus]

私の心に オフのスイッチがあればいいのに
だって, boy, 私これをどうやって止めたらいいのかわからない
いつもあなたを見かけるたび 
私は ooh la-la-la-la-la
Ooh la-la-la-la-la, 
Ooh la-la-la-la-la, 
私の心に オフのスイッチがあればいいのに

[Post-Chorus]
Off switch, off
止め方がわからない
Off switch, off
私の心に オフのスイッチがあればいいのに
Off switch, off
止められない
Off switch, off


[Verse 2]
あなたは私のシステムに留まって 私の血管を流れているよう
あなたは 私に正気になれればいいのにと思わせる
私が考えすぎてることの全ては
あなたの海の中 私の心は沈んでいく

[Pre-Chorus]
いつもあなたか私を見つめる時
私は集中しようとして その瞬間に我を忘れて
このアドレナリンは もう隠せない
スピードを落とそうと思っているのに, oh yeah

[Chorus]
私の心に オフのスイッチがあればいいのに
だって, boy, 私これをどうやって止めたらいいのかわからない
いつもあなたを見かけるたび 
私は ooh la-la-la-la-la
Ooh la-la-la-la-la, 
Ooh la-la-la-la-la, 
私の心に オフのスイッチがあればいいのに

[Post-Chorus]
Off switch, off
止め方がわからない
Off switch, off
私の心に オフのスイッチがあればいいのに
Off switch, off
止められない
Off switch, off

[Pre-Chorus]
いつもあなたか私を見つめる時
私は集中しようとして その瞬間に我を失う
このアドレナリンは もう隠せない
スピードを落とそうと思っているのに, oh yeah

[Chorus]
私の心に オフのスイッチがあればいいのに
だって, boy, 私これをどうやって止めたらいいのかわからない
いつもあなたを見かけるたび 
私は ooh la-la-la-la-la
Ooh la-la-la-la-la, 
Ooh la-la-la-la-la, 
私の心に オフのスイッチがあればいいのに

[Post-Chorus]
Off switch, off
Don't know how to stop
Off switch, off
I wish my heart, it had an off switch
Off switch, off
Don't know how to stop
Off switch, off
Don't know how to stop

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Written By Isaac McKelvey, Luke Conibear, Phil Bentley & Vicky Karagiorgos


米ドラマ FX『将軍/Shōgun』(2024) 第4話 The Eightfold Fence :Sex &Violenceの回




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『Shōgun』(2024) TV Mini Series
/米/Hulu, FX/カラー/55–70 minutes
Creators: Rachel Kondo, Justin Marks
Based on Shōgun by James Clavell
No. of episodes: 10話
Release: February 27, 2024 – April 23, 2024
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米国 FXにて。オリジナルの放送は2024年3月12日。


セックス&バイオレンスの回。西洋の若いオーディエンス(ミステリアス・エキゾティック・ジャパンを喜ぶ衆)向けのサービス回でしょう。内容的には最後の数分まで話があまり進まないし、ワタクシ的にはフィラー(隙間埋め)の回 笑。スマヌ



★ネタバレ注意
  

大坂を脱出して網代に辿り着いた一行。吉井虎永(真田広之)は勝手に江戸に帰ってしまって、ジョン・ブラックソーン(コスモ・ジャーヴィス)=按針鞠子さん(アンナ・サワイ)が、樫木藪重(浅野忠信)と彼の甥・央海(金井浩人)の元、網代の港町に残される。按針の船乗りの仲間は全員江戸に送られたらしい。それなのに大砲などの武器は藪重の元に残している不思議。

その按針を網代に残す目的は… 藪重の軍に西洋式の戦い方を6カ月間トレーニングするため。旗本の地位を与えられた按針は網代で土地と女性(虎永の家臣で切腹させられた宇佐美の奥方の)宇佐美藤(穂志もえか)をパートナーとして与えられる。鞠子さんは通訳として按針の側に。

それにしても虎永は按針と武器を藪重の元に残すのは危なくないか?実際にも劇中、藪重の甥・樫木央海が「按針の武器を奪って石堂に渡そう」などと言っている。確かにそれは十分可能。藪重達が按針を殺害して石堂に寝返るのは簡単なこと。だから虎永の考えが無謀にも思えた。

一方按針さんは、だんだん日本の生活にも慣れてきた様子で、温泉に入ったり納豆を試したりしてライフ・イン・ジャパンをエンジョイ中。いかにもサービス回だな。これから戦で忙しくなるだろうし、この回でそういうまったりジャパン・ライフを見せたのだろう。


お決まりサービスのハダカもあった。出た出た。なかなか生々しい光景でちょっと驚いた。それにしてもお菊(向里祐香)はただの遊女なのか、それともスパイとか忍者だったりするのだろうか? 按針の温泉シーンは無難。女性が一緒にハダカにならなくてよかった。

ただ…鞠子ちゃんはどうなの?文太郎はやっぱり助からなかったのか。そうか。

結局この細川ガラシャ風鞠子さんは、もうガラシャの人物像とは全く違ってきてますね。そもそも関ケ原の時は細川ガラシャは大坂にいてそれで命を落とすことになるので設定が既に違っている。しかし鞠子さんがそうなるということは…宇佐美藤さんの立場はどうなるのだろう。

ちょっとまて…
今もう一度そのシーンを見直してきた。
…按針が誰かといい夜を過ごして(暗闇だったのだろう)、翌朝、鞠子さんが按針に「今日はご機嫌ね」と言えば「そうだよ…オトモダチとの一夜の後なら」と嬉しそうに答える(按針は鞠子だったと思っている)。すると鞠子さんが「じゃあ遊女も大丈夫なのね(男が相手じゃなくてもよかったのね)、よかったわ。藤さまと私は彼女(遊女)があなたへのいい贈り物になると思ったのよ」と言う。按針は不思議そうな顔をして「え、わからない。僕は君が…」と不思議そうな顔のまま。そして「あれはとても素晴らしい贈り物だったよ」と下を向いてしみじみと言う。

ぇえええ?私も鞠子さんだと思ったぞ。そしてこの会話はたぶん藤さんにはわかっていないですね。ポルトガル語(英語)だから。そして鞠子さんは一人ふふふと笑顔。なんだなんだなんだ…。

あれは鞠子さんよね。でも秘密にしているのですね。う~む。私はね、第4回で二人がそうなってしまったことに「結構早いな」と驚いた。原作と1980年のドラマもそうだったのかな。この二人はもっと後になってから結ばれるものだろうと思っていた。


そして最後はバイオレンス。急に来ましたね。びっくり。しかし大変な問題だ。事件を起こしたのは虎永の息子・吉井長門(倉悠貴)。これどうする?石堂(平岳大)の仲間を攻撃したらもう後には引けないだろう。藪重が焦ってましたね。

かなりグロですが、しかしあれほどのダメージを受けた人間が普通に喋れるとは思えない。あまり痛そうじゃないもんね。このような場面は西洋の「Game of Thrones/ゲーム・オブ・スローンズ」もこういう感じなのでしょうか。グロはいけませんよグロは。これからもこういう感じなのかな~。ヤダヤダ


鞠子さんのアンナ・サワイさんはこれからハリウッド・スターになりますね。堂々としてかっこいい。すごく綺麗。彼女はこれから様々な海外の映画に出る女優さんになると思う。 そして按針君のコスモ・ジャーヴィス君の魅力が私には今のところいまひとつわからないのだ。ちょっと私には骨太でガサツ過ぎる。鞠子さんとの翌朝のドキドキシーンはちょっと可愛かったけれど、なんだか全体に荒っぽい印象。声も割れている。昔のリチャード・チェンバレンは船乗りにしてはインテリすぎ細過ぎな感じがしたけれど、実際の三浦按針はどちらかと言えばこういう骨太な感じだったのだろうか。 悪声と言えば浅野忠信さんの藪重のキャラがちょっと面白くなってきた。浅野さんは声がガシャガシャに割れているといつも思うのだけれど(スマヌ)しかしこの藪重のキャラはすごく面白い。表情豊かで悪声もキャラに合っていていい。彼は予測不可能。


2024年3月13日水曜日

映画『とんび』(2022):人生は大河のように







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『とんび (2022)/日/カラー
/139分/監督:瀬々敬久』
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TV Japanで過去に放送されたものを録画していた。やっと鑑賞。原作は重松清「とんび」。脚本は港岳彦。監督は瀬々敬久。


以前ここに映画『幼な子われらに生まれ』の感想を書いた。家族がテーマの話だった。原作は重松清氏。今回のこの映画の原作も重松清氏。この話のテーマも家族。

前情報は全く見ずに鑑賞。



1962年(昭和37年)、市川安男/ヤス(阿部寛)美佐子(麻生久美子)に息子・旭(北村匠海)が生まれる頃からストーリーは始まる。親の愛情を知らずに育った二人は、息子が生まれて家族になった幸せを噛み締める。時は昭和40年頃、1960年代の半ばの高度経済成長時代。舞台は瀬戸内海に面した広島県備後市。

ヤスはいかにも昭和の男。根は優しいが気が短く頑固、真面目な男だが不器用で照れ屋。言葉が出てこないから手が先に出る。彼は運送会社に勤務していて、会社の同僚や近所の仲間は皆家族のように親しい。男達は皆騒がしく、なにかといえば飲んでわいわい大騒ぎ。皆が集まる飲み屋の女将はヤスの姉貴分・たえ子(薬師丸ひろ子)。近所の寺の跡取りは幼馴染の照雲(安田顕)そしてその妻・幸恵(大島優子)

この映画もまたノスタルジックな「明るい昭和」の映画だと最初は思っていた。幸せな家族の話だろうと思った。ところが映画の初めの頃に美佐子が事故で命を落とす。ヤスは一人で息子・ 旭を育てていくことになる。それからの父と子の物語。

上手い役者さん達が沢山。丁寧に作られた映画。



★ネタバレ注意



息子・旭が生まれたのが1962年(昭和37年 )。原作の重松さんは1963年生まれだそう。そして主人公のヤスは1934年(昭和9年)生まれ…ヤスを演じる阿部寛さんは1964年生まれ。

…ということは、旭は重松さんと同世代。そしてその旭の父・ヤスを(現実で同世代の)阿部寛さんが演じていることになる。つまり映画の最後の2019年の場面で(1962年生まれの)旭は57歳。アラ還だ。 始めは昭和の話だということで「いつの世代の話だろう」と思ったのだが、旭が私に近い年齢だとわかってからはストーリーがもっと身近に感じられるようになった。

この映画には昭和の「普通の人々」の生活が描かれている。昔は特別なことではなかった人と人の距離の近さ。父・ヤスは旭を一人で育てているけれど、子育てに迷えば友人や知人がやってきて手を差し伸べてくれる。特に寺の住職・海雲(麿赤兒)とその息子の照雲と妻・幸恵はまるで家族のように何度もヤスと旭の家庭に踏み込んで助けてくれる。旭の成長は町の皆が見守ってくれている。

そのような環境で旭は成長する。小学生の頃はヒバゴンに興味を示し(ツチノコもあったよね)、高校生になったら野球部に入る。そして旭は成績も優秀。高校を卒業後は東京の早稲田大学に進学する。映画のタイトルの『とんび』とは「とんびが鷹を生んだ」からのもので、「とんび」とはヤスのことなのだろう。


映画の始めにヤスは最愛の妻を、そして旭は母親を亡くす。大きな悲劇。しかし彼らの日常はその後も続いていく。それがメインのテーマなのだろう。時が過ぎれば悲しい事故も過去のものになる。哀しみを溜め込むのではなく、ヤスは雪を解かす海のように哀しみを飲み込んで息子を育てていく。近所の友人たちに助けられながら前を向いて旭と共に歩いていく。

淡々と日々が過ぎる。あたりまえの日常…特に現在アラ還の世代には「ああそうだな」と懐かしく頷く場面も多い。旭の背中には沢山の人々の温かい手。ヤスは立派に旭を育て上げる。父と子の日常を描いて2時間、市川家の二人を見守り続ける映画。


途中でじわっと涙が出るような場面が何度も出てくる。特に人と人の絆の修復を描いた場面に心動く。飲み屋の女将・たえ子の後悔と再会。カウンターに並ぶ美味しそうなご飯に娘への愛を見る。そしてヤスと父親の関係の修復…ヤスが父に話しかける「俺を生ませてくれてありがとうございました、おかげでわしの人生は幸せそのものじゃった…ありがとう、お父ちゃん」


そして映画最後の場面は幸せの風景。旭と由美(杏)と息子が浜辺で遊ぶ様子を、ヤスが25年前の「自分と美佐子と旭のいた幸せな風景」に重ねながら眺めている。25年前のヤスの幸せそのままに、旭にも彼の家族が出来た。美しい情景。

その最後の場面の頃には私の目尻もヨレヨレに緩んでいた。2時間をかけてヤスと旭の25年間の旅を見終わって感無量。そしてその後のヤスも幸せだったことを考える。

「山あり谷ありのほうが人生の景色は綺麗なんよ」

ヤスの孫も大きく成長した2019年、ヤスは85歳、旭は57歳。旭の家族がヤスのお葬式のことを話している。旭は小説家にとして成功しているようだ。長い時間が流れた。


幸せが繋がっていく。ヤスの孫たちもこれから結婚し、いつか旭にも孫ができるだろう。そうやって家族は次の世代へと繋がっていく。

最後に私の目尻がヨレヨレになったのは、ヤスや旭の生きた人生がほんの少し羨ましかったからなのだろうと思う。これからも広がり繋がっていくヤスと旭の家族の未来を羨ましいと思ったのだと思う。

ヤスの晩年が幸せで本当によかった。



少し余談だが1960~70年代の再現が驚くほど丁寧。懐かしいものが沢山。

1974年昭和49年の市川家の食卓には見覚えのある物が並ぶ。派手な色のトースター、花柄の白いポット、日東紅茶ティーバッグの黄色と赤の箱、台付きの白い灰皿?、壁には鎌倉彫の壁掛け。奥の部屋にはチャンネルをカチャカチャと回すテレビ。その上には大阪万博の太陽の塔の像。横の床にはビニールのテープで編んだゴミ箱。ヤスの後ろの茶箪笥の引き戸の丸い金具をはめ込んだ取っ手、その茶箪笥の上の籠の中には雪印マーガリンの箱も見える。キッチンの窓辺には白地に赤い模様のホーロー鍋。そして旭の後ろの棚の上には青く塗った金属の懐中電灯、笠をかぶった狸の置物。あの頃の物が懐かしい(北海道土産のヒグマの木彫りはどこだ笑)

1978年昭和54年には屋内の物が少し変わっている。壁には海の風景を写した写真のシンプルな額縁。居間の電話はグレーの押しボタン式。食卓にはハイライトのタバコとLarkの缶灰皿。旭の部屋にはファンシーケース。その上には旧ロゴのアディダスのバッグ。その隣は(縦になっていて見えないが)マジソンスクエアガーデンのバッグだろう(縁が銀)。壁には修学旅行のお土産の奈良と別府の三角形のペナント。カラーボックスの上の時計は数字のカードがパタンと捲れる仕組みのデジタル表示。机の上には日本史や英語の参考書。見覚えがある笑。

そして時は流れ1988年昭和63年はバブルの頃。旭は出版社で働いている。編集部の雑然とした様子は私の知るあの頃の出版社編集部の様子と同じ。ポジフィルムを見るライトボックス。デスクで煙草を燻らせる編集者。ハンガーにかかった社員達の上着がカラフル。男性社員の着るセーターも派手。由美の前髪はムースで固められてゴワゴワだろう(私も固めていた)。


どの時代も丁寧に再現されていて懐かしかった。それでふと思った。私が子供の頃…旭が子供だった頃の1970年代は、もしかしたら今から見ればもうすでに過去の歴史上の時代になっているのではないかと。40年前の1984年はマドンナやマイケルが流行っていた頃。彼らもそろそろ歴史上の人物になりつつあるのではないか?…そのことをふと思いついて何とも言えない気持ちになった。あの頃は遠い昔。


2024年3月8日金曜日

テレビ東京 ドラマ24『きのう何食べた? 』シーズン2・第10話 ケンジ家族と遂に対面…鰻のフルコース!



テレビ東京系のドラマ24『テレビ東京ドラマ24』。ここではTV Japanにて。日本での放送は2023年10月7日(6日深夜)から12月23日(22日深夜)まで。この10話は2023年12月9日放送。


毎週楽しみに見てます。この話も主なテーマはLGBTQだと思うけれど、このドラマの主人公のお二人の関係は、少し前にここで感想を書いた『作りたい女と食べたい女』シーズン2のお二人に比べるとずっと落ち着いている。

『作りたい女と食べたい女』が女同士の初めての恋…告白したりドキドキしたり…がストーリーの中心にあったのに比べて、この『きのう何食べた? 』は、主人公のゲイのカップル…筧史朗さん(西島秀俊)と矢吹賢二さん(内野聖陽)がもう同居して長いのだろう…二人の関係が熟年夫婦のように落ち着いていて何の心配もなく見れるのがいい。二人の関係がとても微笑ましい癒しのドラマ。

お二人の周りの人々は…皆二人がゲイのカップルであることを理解しているらしく、二人がゲイであることに悩んだり苦しんだりする様子はほとんどない。まるで仲のいい夫婦のように二人は周りに受け入れられて幸せに暮らしている。。


ところがこの第10話では、(おそらく今まで避けてきた)家族との問題に触れていた。シロさんがケンジさんの母と姉二人に初めて会う話。緊張の食事会は鰻フルコース。それぞれが初対面でとても緊張している。

その食事会で、ケンジさんの母・峰子(鷲尾真知子)が二人の関係に理解を示していることが語られた。平和的に「他人だけれど身内」、何かあった時にシロさんを身内として認識したいとのこと。


いい話。若い世代のケンジさんの姉二人が弟の恋人を受け入れるのは理解できる。しかしケンジさんの母親が二人の関係を理解するのには時間がかかったのだろうと思う。それでも息子がもう長い間シロさんと共に暮らしていることを考えたら(相手のシロさんが)いつまでも「一度も会ったことがない他人」というのも不自然だと思ったのだろう。そのことをお母さんはよくお考えになったのだろうと思う。

無理をせず、喧嘩別れになることもなく、母親は息子の生き方を静かに受け入れた。多分時間がかかったのではないかと思うが、それでも母は息子の幸せを願うからこそ息子の生き方を受け入れることにした。すごくいい話。またちょっと感動した。


このドラマは本当にいい。お互いに信頼し合った二人が、おうちで「おいしいね」と笑顔で一緒にご飯を食べる様子は、人と人の関係の基本の幸せなかたちだと思います。このドラマを見ていると毎回そのことを感じる。

西島秀俊さんも内野聖陽さんも「ほんとに好きなのかな?笑」と思うぐらい自然なのがすごいと思う。お二人とも本当に楽しそう。演技以上にお二人が一緒にいることを楽しんでる様子が伝わってくる。ご飯もおいしいんだろうね。いいな。

シロさんがちょっと昔の男っぽいのね。ケンジさんに「お前」「おい」とか言っている。そしてケンジさんがくねくねしてかわいい。本当にかわいい。LGBTQとか難しいお題が無くても、このドラマはただただ二人の会話が微笑ましくていい。幸せのドラマ。癒し。