2025年12月26日金曜日

クリスマスの実験その2・ロースト・ビーフ



さて今年のクリスマスの目玉。今年は人生初めて真面目にロースト・ビーフに取り組もうと思った。

以前からロースト・ビーフにはあまりいい印象がなかった。そのようなお題で2012年にもこのブログに文句を書いている。


英国にいたとき、私はおいしいロースト・ビーフを食べなかった。旦那Aの同僚のアメリカンな奥様方とロースト・ビーフの専門店に行ってロブスターを食べていた。阿保である。

そんなわけで私はロースト・ビーフのことをよく知らなかった。この地に来てレストランで食べるまでは。2012年にロースト・ビーフの文句を書いてから、その後この地でプライムリブのローストを食べる機会が何度かあった。確かにおいしかった。なんだなんだなんだ…いいものを食べれば美味しいではないか。そういうことか。そういうことだ。そのプライムリブを食べるまで私は美味しいロースト・ビーフを食べていなかったわけだ。納得した。

しかしその後も自宅でローストをしたがやっぱりそれほど美味しいわけではなかった。安い肉、小さなサイズ、焼き過ぎてぱさぱさになったこともある。失敗が続いた。
…結局はいいお肉を買わなければプロの作るものほど美味しいものは作れない。それなら自分で焼くのはやめよう…となんとなく思い込んでいた。


今年なぜロースト・ビーフを思い立ったのかわからない。25日のディナーをやめて24日にしようと23日にスーパーにお肉を買いに行った。クリスマスの直前だからなのか、肉売り場に大量の巨大な肉の塊がたくさん並んでいた。驚いた。ビーフも様々な箇所の塊。大きなラムも、ポークもガラスのケースにみっちり並んでいる。

そうか…みんなクリスマスはローストなのか…。

もしかしたらそれを見てその場でロースト・ビーフにしようと思ったのかもしれぬ。よく覚えていない。今年は大好きなラムはやめて、まず基本のビーフに真剣に取り組もうと旦那Aと話し合う。

ガラスケースの中には長いテンダーロイン。1ポンド/453グラムの値段が高い。その下に紐で巻かれた大きな丸い塊。その塊の値段は1ポンドの値でそれほど高いと思わなかった。ああこれくらいならいいんじゃない?それで旦那Aが買っている間、私は肉売り場から離れて他のものを見ていた。

肉の塊の包みをカートに入れてやってきた旦那A。「いくらだった?」と聞けば、なんと1ポンドがお手ごろ価格だと思った肉は 2.8ポンド/1.3キロの大きさだった。なんと値段は名札で見た値段の3倍に近かった。目を丸くする。うなずく旦那A。その値段にびびる夫婦。どうやらプライムリブを買ってしまったらしいと後で知った。

なんとかやってみよう。これでダメなら二度とうちでローストをやらなければいい。覚悟を決めた。23日の夜に様々なネット上の情報を見て焼き方を研究した。


思う以上に狼狽えていたのかもしれぬ。私は24日の朝に早く目を覚ました。冷蔵庫から出した方がいいのか。一旦肉を冷蔵庫からとり出し、カウンターに置いて数分後にまた元に戻した。YouTubeで焼き方を検索したら「塩を塗り込んで4時間以上~一晩寝かせるするのがよい」という情報が出てきた。旦那Aが起きてきたので同ビデオを見せて「どうする?塩塗る?4時間以上寝かせるんだってよ。この人は18時間寝かせたと言っているよ。今日に間に合わないじゃん」

結果、4時間寝かせるだけなら24日のディナーにまだ間に合うので、そうしようということになった。午前に肉に塩をすり込み冷蔵庫にしまう。

その後、ヨークシャー・プディングを作ったらびっくりするほど上手くいった。それで気分が上がった。


今回のローストはとにかく本格的にやろう…と思った。肉が大きいので全てオーブンで処理する。フライパンで焼かない。ローストの方法が2通り出てきた。

①最初に高で焼いて肉汁を閉じ込め、後で温度を下げて焼く方法。そして②最初に低で焼いて後から高温にする方法。さてどちらだろう。②は肉汁が出てくるのではないか?それなら先に高音で肉汁を閉じ込める①にしよう。

高音で焼いて、その後オーブンの温度を下げ、温度計を肉に刺して中の温度が140°F/60°Cになるまで焼き、その温度に達したらオーブンから出してアルミホイルを被せて15分から30分…別のビデオでは30分以上90分まで放置とあった。

今回実際にやってみた作業の順番と数値を書いておこう。

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午前中に 2.8 ポンド/1.3 キロの肉を冷蔵庫から出す。
● シャープなナイフで余分な脂身と青みがかって見える筋を取り除く(後でソース用に使うのでとっておく)
● タコ糸で縛って形を整える。
● 塩大さじ1(以上)胡椒を適量すり込む。
● 冷蔵庫に戻す。カバーをせずに表面を少し乾燥させる。
● (最低)4時間後、肉を冷蔵庫から出し1時間。肉を室温に戻す。
● オーブンを500°F/260°Cにセット。
● バターとすりおろしガーリック/オレガノ/ローズマリー・タイムを混ぜてペーストをつくり、それを上に塗る(これは間違った方法、しかし大丈夫だったので一応記録)
● オーブンが温まったら、脂身を上にして肉をラックに乗せてロースト開始。
 500°F/260°Cで、20分間ロースト。お肉の外が焼ける(Maillard roasting)。
● 肉を取り出す(アルミを被せた)。オーブンを消してドアを開け温度を下げる。
● おそらく30分後、オーブンを325°F/163°Cにセットしてリスタート。
● オーブンが温まったら、肉をオーブンに戻す。アルミは被せない。
● 刺した温度計…肉の中央が145°F/63°Cになるまで焼く。目標の温度に達するまであまり時間がかからなかった。
 肉の温度を度々チェックする。温度が大切。時間は肉による。
● この温度の設定は、焼けた状態がミディアムになる設定。
● 肉の中央が 145°F/63°C になったら、肉を取り出す。
● アルミホイルを被せて、40分間放置(私は加熱不足、旦那Aは加熱し過ぎを心配した)
● 出来上がり。

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塩をすり込んでしばらく寝かせる
高音で焼いた後 この後ベーキングシートは取り換えた
できました


たぶん途中でちょっと間違ったと思う。ガーリック・ハーブ・バターは焼き上がった後に塗るべきなのに焼く前に塗ってしまった。だからバターはほぼ溶けてトレーに流れた笑。

それでも信じられないほど美味しいロースト・ビーフが出来た。レストランで食べるのと同じ味。なんとなんと極上のロースト・ビーフが出来てしまったらしい。これは嬉しい。とても嬉しい。

お肉の質が良ければ丸ごと全部美味しい。翌日も十分美味しい。どこを食べても柔らかいのに驚く。塩をすり込んだのがよかったのか、お肉のどこを食べても味がある。とても美味しい。

なんだこんなに美味しいのならまたやりたいね。なかなか出来ないけど大切な日のディナーならいいねと言えばうんうんとうなずく旦那。それにこんなに沢山お肉を食べられるならあの値段にも悔いはない。満足の方が大きい。半年分ビーフを食べた感じだ。

今年のクリスマスはとてもいい学びができた。実験は大成功。


新しい実験に夢中になって、クリスマス・ディナーのプレッシャーが無くなったのもよかった。ディナーも義務に感じると面倒だし苦しいが、新しいことに挑戦するならまた楽しい。毎年こういう感じでなにか新しいことに挑戦すればいいのだなと思った。それも学び。