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『Moneyball (2011)/米/カラー
/2h 13min/監督:Bennett Miller』
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野球好きにはますます面白い映画。
今年の夏、生まれて初めて野球にはまった。夏の間中、毎日MLBの結果を見て一喜一憂。テレビの画面から聞こえてくる歓声も賑やかで楽しい。すっかりはまった。特にポストシーズンにはまった。
それ以上に旦那Aが夢中になった。私が大谷翔平さんを見るために試合の中継やまとめ番組を見て、じわじわと「野球面白いね」などと言い始めるよりも前に、旦那Aがまず野球にはまった。
…週末に野球の中継を見て大声で「あ~」だの「お~」だの言いながら応援する。そして時々試合の中継を一時停止して「あのね、ここが一番大切なのよ。これなんだよ。これがねぇ…」と解説を始める。大変迷惑。時々我慢できずに「ちょっと…黙っててようるさいわぁ」などと私も文句を言いながら中継を共に見る。
そんなふうに夏の日々を過ごしていた頃、旦那Aがこの映画のテレビ放送を勝手に録画していた。「メジャーリーグの話よ。見ようぜ」と言うのだけれど、私はなかなかその気になれずそのままになっていた。旦那Aは一人で見ていた。
11月になりMLBのポストシーズン…ワールド・シリーズも終わり、海亀は少し野球ロスになった。そんなわけで録画機に入っていたこの映画を見ることにした。もちろん旦那Aの解説付き。
面白かったです。
大雑把なあらすじは…
予算の少ないメジャーリーグのチーム、オークランド・アスレチックス/Oakland Athleticsが、ゼネラルマネージャーのビリー・ビーン(ブラッド・ピット)の手腕で…貧乏なチームながらも安いプレイヤーを効果的に配置し…勝利チームへと躍進するという話。ほぼ実話だそうです。なんと素晴らしい。
★ネタバレ注意
冒頭に2001年のアメリカン・リーグ、ディビジョンシリーズでの、ニューヨーク・ヤンキースとオークランド・アスレチックスの試合の様子。もちろんアスレチックスは負けるわけですが、その後上手い選手達がアスレチックスを抜けてもっとお金持ちのチームに行ってしまう。さぁ大問題。そもそもこの二つのチーム、予算が桁違い。ヤンキースはお金持ち。アスレチックスは貧乏。要するにそういうことです。
貧乏なチームは優秀な価値の高いプレイヤーを雇えない。
有能な上手いプレイヤー達は人気者だから高い報酬を払わなければチームに来てくれない。結果上手い選手は、大抵ヤンキースとかドジャースなどのお金持ちのチームに取られてしまう。
結局お金なのか。貧乏なチームにチャンスはないのか?
それにチャレンジしたのがこの映画の主人公ビリー・ビーン…彼も元々は野球選手。しかし成績は振るわずその後スカウトに転身。
2002年。ビリー・ビーンは、2001年のシーズンの後で上手い選手達を失ったアスレチックスの再構築をしようとプレイヤーのスカウトに奔走する。そんな彼に…具体的な数字で新しいスカウトのやり方…を示したのはピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)。クリーブランド・インディアンスのオフィスで仕事をしていたピーターは、イエール大学で経済を学んだ秀才。ピーターは、各種統計から選手を客観的に評価する「セイバーメトリクス」を用いて、他のスカウトとは違う尺度で選手を評価していた。 ビリーはピーターを引き抜き、(ピーターの)統計を元にした選手の再評価により、安価なプレイヤー達をアスレチックスに雇い、効果的に配置して強いチームを構築していく。
そのプロセスが面白い。もちろんお約束は…感動的な結果に繋がる。アスレチックスは強いチームに変わるわけです。興奮する。すごい話。
その統計を元にした選手の再評価とは…
例えば…スコット・ハッテバーグ/Scott Allen Hatteberg。
彼は元々キャッチャーだった。ところがキャリアの途中で肘の怪我。そのために強いボールを投げられなくなってしまった。キャッチャーが上手く投げられないのは大問題。というのもキャッチャーは、敵のランナーの一塁から二塁への盗塁を見たら素早くホームから二塁へボールを投げなければならない。また一塁や三塁に投げるケースも多い。しかし彼は肘を負傷してボールが投げられない。致命的。どのチームもキャッチャーとしての彼に高額の報酬を払いたいとは思わない。むしろ安く叩かれてしまう。
投げられないキャッチャーは使い物にならない。しかし彼は打てる。それなら彼を一塁手に育てたらどうだろう。一塁手なら、キャッチャーに比べて大きく投げる場面は少ない。一塁手は球を受け取る場面のほうが多い。一塁手なら彼にも出来る。そんなわけでアスレチックスはハッテバーグを95万ドルで契約。そして彼は打者として、一塁手として大活躍する。
そんなふうにアスレチックスは、負傷した選手、年をとり過ぎた元スター選手、素行の悪いやんちゃ選手…等等を比較的安価で契約し新しくチームを構築。プレイヤー達の個々の成績…出塁率/長打率/選球眼/慎重性/投手/与四球/奪三振/被本塁打数/被長打率…などなどを数字で分析し、それにしたがってプレイヤー達を適材適所に置いて最大限の効果を引き出す。そうやって出来たチームは、驚くほど強く成長した。
いい話です。ひととおりMLBのシーズンを楽しんで、様々なニュース等を見て知識を得た後で見るととても解かりやすかった。もちろんわからない事があれば旦那Aの…大得意で説明してくれる…便利な解説付き。すごく面白かったです。
なによりも、金さえ出せば上手い選手を買い放題の金持ちのチーム達を相手に、予算の足りない貧乏チームが立ち向かい孤軍奮闘する様子には燃える。そしてしっかり結果を出す。興奮する。すごいね。ほぼ実話だそうだ。
映画の元になった話は、マイケル・ルイスによるノンフィクション書籍…このアスレチックスの成功を記録した『マネー・ボール~奇跡のチームをつくった男/Moneyball: The Art of Winning An Unfair Game』による。
…オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャー(GM)に就任したビリー・ビーンが「セイバーメトリクス/Sabermetrics」と呼ばれる統計学的手法を用いて、MLB随一の貧乏球団であるアスレチックスをプレーオフ常連の強豪チームに作り上げていく様を描いたもの(wikipedia)…それを元に映画が制作された。
●ブラッド・ピット演じるゼネラルマネージャー(GM)ビリー・ビーンは実在の人物
●経済を学んだイェール大学卒のGM補佐=ピーター・ブランドのキャラクターの、実際の人物の名前はポール・デポデスタ。彼はハーバード大学で経済学を学んだ。クリーブランド・インディアンスのフロント・オフィスからオークランド・アスレチックスに移り、GM補佐としてGMのビリー・ビーンを5年間支えた。デポデスタ氏は映画で実名が使われて有名になることを好まなかったらしい。そこでピーター・ブランドのキャラクターが作られた。
MLBの裏話が見れて面白かった。この『マネーボール』のアスレチックスの話は2002年。もう20年も前の話だ。
MLBの裏話が見れて面白かった。この『マネーボール』のアスレチックスの話は2002年。もう20年も前の話だ。
今年のMLBもシーズンが終わって、今の季節は各チームが新しいプレイヤーの獲得に奔走しているはずだが、この映画で描かれた「セイバーメトリクス」の方法は、現在どのチームも採用しているのだそう。またアメリカの主要なスポーツメディアは、セイバーメトリクスの各種の指標を選手成績として公表しているそうだ。まさに革命的な事件だったのですね。すごい話。