これからのアジア・将来への可能性 -3-------------------------
15-●まとめ・日本人はどうする
長々と書いてきた。基本的に言いたかったのは、現在文化的に、西洋と東洋の間には大きな溝があるということだ。この溝は私達日本人が想像する以上にずっと大きい。アジア人のポップスターや芸能人が西洋で苦戦する理由もそこなのだ。
音楽関係で言うのなら(アジア人が)曲の良さやパフォーマーとしての質の高さ、技術的なレベルの高さなどで、たまになら売れることも可能だ。だが、そんなパフォーマー本人が言葉もしゃべれないのに憧れの存在=アイドル(偶像)として西洋人の心を掴むのは、ほぼ不可能に近い。過去にアメリカで売れた日本人の楽曲も、曲は売れてもスター本人達はその後、誰もが名前を知るようなスーパースターににはなり得なかった。
だからと言って悲観する必要もない。現状をしっかり見据えることで見えてくることもある。こんな現状だから何をすればいいのか…何を予測できるのか。現状を分かっていれば、かなうはずもない夢を無駄に追い続けることだけは避けることが出来る。西洋へどのように出ていくのかはこれからの課題だ。やり方はいろいろとあると思う。過去のYMOなどの前例から学べることも多いだろう。業界の方々がK-POPの戦略を度々口にするのも、K-POPの戦略がこういった厳しい現状に対して彼らが独自に出した一つの答えだからなのだ。日本独自の方法も見つかるかもしれない。
幸いなことに世界の状況は日々変化している。西洋も今までのように排他的・保守的なだけではやっていけないだろう。インターネットでは、国や人種の壁がほとんど無くなってきている。世界中の若い世代の人達は、彼らの両親に比べればずっと異文化にも寛容であるはずだ。アジアの文化が西洋に出て行ける可能性はこれからもどんどん増えてくるだろうと思う。
だからこそ日本の様々な分野の方々にも頑張って欲しい。大雑把な言い方をすれば、インターネットでもいい、初音ミクでもいい、侍でも芸術でも漫画でもアニメでも、ポップスターでも、ファッションでも…何でもいいのだ。今すぐに大きな結果は出ないかもしれないが、もっとどんどん出て行っていいと思う。この波に乗っかった方がいい。せめて今からでも乗っかる準備を始めた方がいい。いつかきっと将来面白いことになる日が来ると思う。
日本のポップスター達を取り囲む環境も、西洋での一時的な成功を唯一の目標にして大騒ぎをするのではなく、単純に(私達のスターが)国外に出て行くことのプロセスそのものを、ファンも本人達ももっと気楽に楽しめるような空気感になればもっといいと思う。もう西洋は特別な場所ではない。海外なんて1日もあれば飛んで行ける時代なのだ。
今はアジア人が西洋で売れなくても当たり前。それは日本人やアジア人がダメだからではない。問題は西洋=アチラ側にあるのだ。だからこそ、ただただ気楽に挑戦し続ければそれでいい。当たるか当たらないかだけを心配して、今出来るいろんな事を躊躇しているのがいちばんいけない。今はリスクを一切負うことなく自己のプロモーションが簡単に出来る時代なのだ。動画サイトなどでの世界に向けたプロモーションなんて、誰にでも簡単に出来るのだから。
西洋社会での立ち位置は、日本人でも他のアジア人でも状況は全く同じ。西洋には日本人だから特別だという考え方は一切無い。以前のように「日本人の1人のポップスターがビルボードチャートでどこまでいけるのか」だけを気にかけるのではなく、もっと大きな括りで、西洋に向けて吹き始めたアジアからの風の一つとして(自覚を持って)展開していくことを考えたほうがずっとチャンスはあるだろうと思う(まずアジア市場に展開するのも一つの方法)。日本のファンも業界の方々もそれを理解したほうがいい。もう時代は変わってきているのだ。■