なぜアジア人は苦戦するのか -3--------------
9-●アジア人の立ち位置2 20世紀はアメリカ(西洋)の時代だった
もう1つの理由に、アジアと(アメリカを含む)西洋の歴史上の位置関係がある。
18、19世紀に産業革命がヨーロッパで起こってから(それ以前の啓蒙思想の台頭からと言ってもいい)、西洋は他の地域を大きく引き離し急速に進歩していった。当時の西洋人にとってアジア人とは、キリスト教の教えも知らない野蛮人であり異世界の存在であった。彼らにとって、異人種の住む外国とは、出かけていって植民地にし搾取する場所であったのだろう。西洋の圧倒的な技術力と財力、軍事力に、西洋以外の地域はなすすべもなかったのだ。
唯一それに学び抵抗した日本人。…が第二次世界大戦で敗戦。その後、アジアの国々は政治的な混乱期に突入し停滞を余儀なくされる。その頃から世界をリードしたのはアメリカだった。日本は西洋を教師と崇め衣食住全てのことを学び、技術のみならず文化も積極的に吸収していく。そんな状態で20世紀のほとんどが過ぎていく。西洋から見たアジアは常に下の位置にいた。
大げさなようだが、そんな位置関係がいまだに尾を引いているのだと私は思っている。現在、アジアと西洋の位置関係が少しずつ変わりつつあるのはもちろん分かっている。だが現在の私達も、19世紀から20世紀へと流れてきた歴史の延長線上にいることも事実なのだ。そんな昔の感覚を、アジア人の私達も西洋人も未だに無意識に引きずっているとしても不思議ではない。
無理もないのだ。彼等西洋人には、アジアに興味を持つだけのきっかけも理由もこれまでに一切無かったのだから。知らないから想像するだけ。行ったこともないし、興味も無いアジアの国々。SUSHIを食べても、Wiiで遊んでもそこに日本人の顔は見えない。見る必要がないからだ。
日本は20年以上も前から、車も精密機械技術も学力も日常の便利さも、いろんなところで西洋を追い抜いてきたのに、西洋の一般人がそんな事を知ることはなかった。新聞や雑誌の記事で理解はしても、現在の日本がどれだけ様々な分野で進歩しつくしてしまっているのか、実感が出来ないのだ。
西洋に住む彼らの多くは、現在の中国の上海が近代的な大都市に変わっていることを知らない。ソウル、クアラルンプール、香港、シンガポール、バンコク、ホーチミン市…、そんな様々なアジアの都市で、最新のファッションに身を包んだ綺麗な女の子達がハイヒールで街を闊歩している事を彼らは知らない。知るはずも無い。興味が無いからだ。だからそんな西洋人の(彼らが長い間思い込んできた)アジア人に対する見方を変えることは非常に難しい。
そう考えれば、そんな状況で西洋人にアジア人を憧れの存在として、人気商品(ポップスター)として売ろうとしても、それがいかに難しいかが解ってくると思う。