2-●本文の取り扱い説明書
まず、この文は私がイギリスとアメリカに計14年間住み、西洋で見聞き知ったこと、西洋との実際のかかわりをもとに、今現在の私の個人的な意見として書いている事を断っておきたい。こういう類のことを大学で学んだわけでもないし、真面目に統計を取って調べた結果でもない。今までにかかわってきた様々な人々から受けた印象、欧米のメディア、どこかで読んだ文章、インターネットなどをもとに既存の統計などの情報を集め、私なりに考えをまとめたものだ。
海外在住の一個人の個人的な意見であるため、日本在住の方には不快な内容もあるかもしれない。海外でも他の文化圏や他の地域に住んでいらっしゃる方々とは意見を異にするのではないかとも思う。例えば同じ海外在住と言っても、アジア人の多いアメリカ・カリフォルニア州に住んだ人と、オランダの片田舎に住んだ人とでは意見が全く違うはずだからだ。同じ経験をしても、当然個人によって受け取り方が違うこともあるので、ここに書かれた内容も一般論とは言えないだろう。分かりきったことをぐだぐだと書いている内容を、不快に思われる方もいらっしゃるかもしれない。
私が日本に住んでいた時の西洋の印象と、実際に住んでみた後の西洋の印象はずいぶん違っていた。この文ではそんなあたりも正直に書いている。言葉がきつい部分もあるが、私が事実だと思う事をそのまま書いている。必要もなく美化してもしょうがないからだ。内容の40%は経験から、30%の考察、20%は資料から、それに10%ほどの直感で感じたことをまとめたものだ。
文章内の数字に関してはアメリカのデータだが、おおまかな「アジアVS西洋」の位置関係は、ヨーロッパも同じだと思っていいと思う。イギリスに限って言えば、一般的なアジア人の立場は必ずしもいいとは言えなかったと個人的に感じた事を加えておきたい。
それから、こういった内容に関して必ず言及される「人種差別」の問題には一切触れていないことも断っておきたい。全てを人種差別で一括りにしてしまうと問題の本質が見えなくなってしまうからだ。人種差別の捉えかたも人それぞれだと思うが、私は個人的には「人種差別とは、ある人がその国に生まれ育って教育を受け、全ての条件が他と同じであるにもかかわらず、人種のために差別を受ける状態」だと考えているので、そもそも外国人である日本人には本質的に当てはまらないと思うからだ。異質な者に対する無関心や違和感、面倒臭さ…などは確かに存在する。しかしこのようなものは日本人同士でも起こりうる個々人の感情的・感覚的なものなので人種差別とは種類が違うだろうと思う。むしろここでは歴史的、文化的な、西洋と東洋の間にある目に見えない溝について考えた。
それから本文内で使用している黒人、白人などの人種を示す言葉は、最近の日本では差別的な言葉だと捉えられることもあるようで(黒人に関してはアフリカ系などの言い方が良しとされている)迷ったのだが、現在アメリカの公式文書でもBlack、Whiteなどの言葉が使用されていることから、ここではそれに従って直訳の言葉を使用している。アメリカでも公式に黒人かアフリカ系か、どちらの呼び方にするかを決めかねているらしい。
内容は、基本的には音楽業界でのアジア人の現状と可能性について書いている。ただし本文中「アジア人のショービジネス界での現状」の項では、国内外のアジア人の映画スター達を例に取り上げた。アメリカ社会でのアジア人スターの一般的な認識のされかたを考えるためだ。西洋で勝負しようとするアジア人にとって、役柄(付加価値)次第で大変魅力的になれる映画スターに比べて、一個人やグループとして、スター本人の魅力
そのものが人気の理由の大きな比重を占めるポップスターのほうが、状況は厳しいらしい。ここではそんなあたりも掘り下げて考えた。
この文のきっかけはPerfumeの海外展開への考察からなのだけど、ここに書いていることは、彼女達のこれからの海外展開に直接の関係は全くありません。というよりも彼女達を含めてこれから西洋に売り出していこうとしているJ-POPの方々が、現実にはどのような敵を相手にすることになるのかを文章にしてみようと思ったものです。誰なら西洋にウケるとか、どうすればウケるのかなどの細かい話ではなく、もっと大きな範囲で文化上の「西洋VSアジア」の構図の過去と現在、それに将来(これから)を考えたものです。