能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2021年9月28日火曜日

テレビ朝日 木曜ドラマ『緊急取調室』Season4 全9話・感想



TV Japanにて。日本での放送は2021年7月8日から9月16日。全9話。

刑事ドラマシリーズ。刑事・真壁有希子が、左遷先の「警視庁捜査一課 緊急事案対応取調班」(通称・キントリ)で一癖も二癖もある犯人たちと対決する刑事ドラマ・シリーズ。シーズン4。

シリーズもの。毎回お題があってお馴染みのメンバーが事件を解決していく。
シーズン4では、大きなテーマを1話と2話で前編…最終の9話を後編として描く。その間の2話から8話までは個別の事件を扱う。

このドラマも先日感想を書いた『イチケイのカラス』のように、それぞれの回が読み切りの小説のよう。毎回なるほどなるほど…と面白かった。キャラクター達はそれぞれ魅力的だが、ストーリーはほぼ真壁有希子を中心に進む。これは天海祐希さんの魅力を堪能するドラマ。一に天海、二に天海、三に天海。

キントリの俳優さん達が皆ベテランのオジサマ方で雰囲気は真面目。キントリのメンバーはでんでんさん、小日向文世さん、田中哲司さん。その周りにも魅力的な男性達が並ぶ。それ以外の女性メンバーは一切出てこない。 彼らは時にほのぼのと仲がいいのだけれど、『イチケイのカラス』のようなコメディ感は無い。非常に男性的なドラマ。実力派のオジサン俳優さん達の中で紅一点の天海祐希さんが輝く。彼女は勇ましい。キャラ設定はほぼ男性。しかしだからかっこいい。すかっと気持ちがいい。

驚いたのは国土交通副大臣・宮越の大谷亮平さん。以前『逃げるは恥だが役に立つ』ではいい人を演じていたのに意外。悪役が似合う。とても悪そうだ。


またこのドラマは特に(取調べを受ける)ゲストの俳優さん達が素晴らしかった。

 1話/2話 桃井かおり
 3話 岡山天音
 4話 高橋メアリージュン
 5話 小池徹平
 6話 瀧内公美
 7話 板谷由夏
 8話 宮澤エマ

彼らの演技に度々引き込まれた。


このドラマと『イチケイのカラス』は同時期に放送されていて、比べてしまった。特にイチケイの主人公の竹野内豊さんとキントリの天海祐希さんの役のキャラクター設定。

『イチケイのカラス』の感想では、主人公の入間みちおが「もしかしたら現代の日本女性の理想の男性像なのではないか」と書いたのだけれど、それでは『キントリ』の真壁有希子はどうだろう?

私はこのドラマを見ていて、真壁有希子とは「日本の女性がなかなか実現できないスーパーウーマンの姿」なのではないか…と思ってしまった。このキャラクターもまたある意味日本の女性達が夢見る理想の女性像なのでは。


しかしながら実際には、真壁有希子のことを「現代の日本女性の完璧な理想の女性像」だと言いきれないそこが面白いところ。入間みちおが多くの日本の女性にとっての理想の男性像であることとは少し違う。

というのも、日本の女性達は…仕事の場では真壁有希子のように、男性社会の中でも偏見を跳ね飛ばしバリバリと働いて颯爽とかっこよく、また大変優秀で男以上に勇敢で大胆。また周りの実力派の男性達にも同格の仲間として認められ、大変尊敬される…ことを求めている/夢見ている。…しかしそれにもかかわらず、

同時に、日本の女性は一個人としては、今でもやっぱり心の40%ぐらいは「女らしい」とか「上品」とか「かわいい」「セクシーで魅力的」などと…男性からも、女性からも見られたい。…そこはなかなか捨てられない。捨てきれない。捨てる事を許されていない。

日本の女性達は…、
 ●真壁有希子のように有能で勇ましくかっこいい女性像と、
 ●女性らしく可愛らしい女性像の二つの間で

揺れているのではないか? 迷うからこそ真壁有希子のようなキャラは「並の理想を飛び越えるほど極端に勇ましいスーパーウーマン」…一方の側のひとつの理想として人気なのかもしれない。


今そういうキャラは結構あるのかも。私はきちんとドラマを見ていないのだけれど「私失敗しないので」の米倉涼子さんの印象も似ている。

私は少し前から、近年の日本のドラマは、なぜ彼女達のように気が強くて有能な…(一般的な日本の男性の好みとは違いそうな)あまり女性らしいとは言えないキャラを描くのだろうと疑問に思っていた。その答えは、日本の社会での女性の立ち位置にあるのかも。

真壁有希子とは…、まだまだ完全な男女平等が難しい日本で「女性だから…」と不自由さを感じている日本の女性達の夢。全てのしがらみや、世間の目、評判…などを全て跳ね飛ばし、自由にのびのびと勇ましく優秀で、同じく優秀な男性達にも尊敬されていて、バリバリと事件を解決するかっこいい真壁有希子。そんな型破りの彼女に日本の女性達は「ああいうふうになれればいいのにね」と元気付けられているのかもしれない。


ところで西洋には「女性らしさを感じさせないスーパーウーマン・タイプ」が存在した。英国の首相サッチャーさんは日本で言うところの「女らしさ」をほとんど感じさせなかった。アメリカのヒラリーさんもそうだろう。彼女達は早く結婚をして母親になり、その後は豪腕の政治家/リーダーとして活躍した。彼女達は西洋の70年代のウーマンズリブの時代が育んだ非常に男性的な女性達だった。

今現在の西洋の女性政治家達のことはよく知らないのだが、今はまた違うと思う。今の米国副大統領カマラ・ハリスさんは必要以上に女性らしいと私は感じる。彼女もまた今の時代が生み出した女性政治家なのだろう。


興味深いのですよ。ドラマは世の中を反映する。真壁有希子のような強い女性キャラは、(私の記憶では)30年前の日本のドラマにはほぼ存在していなかった。時代が変わって、日本の女性達が夢見る理想の女性像も変わったということなのだろう。