「秀吉」と近年の大河ドラマを比べて見えてくる時代性
1.俳優の顔
さてこの大河、まあ男臭い画面だ。汚いし、荒々しいし、それはもう大変なものだ。1996年当時の製作者の歴史リアリズムなのだろうなと思う。たった16年前なのに俳優達の顔が今と全然違う。まず武将達がでかいし、毛深いし、黒いし、脂ぎってるし、いつも汗をかいて全員ギラギラしている。見た目からして怖いのだ。全員人を簡単に斬ってしまうんだろうなという感じだ。可愛いとか綺麗などという武将が一人もいない。だからいい。戦国武将は怖いくらい迫力があったほうがいい。武将とはあくまでも実戦での戦士なのだ。頭脳も大切だが、まず体力と力、それに強靭な意志と豪胆な性格が武将たるものの要だろうと思う。このドラマの俳優達は皆そんなオーラを放っている。彼らの後ろに立つエキストラ達もむさ苦しい。鎧を着て群集でいるとかなりな迫力だ。そんな男おとこした群集が、野太い声で吼えるように話す。この武将たちを見ていると戦国時代もこんなふうだったのかなと思えてくる。
武将達を演じた俳優達を挙げてみよう。竹中直人、高嶋政伸 、古谷一行 、渡辺徹、大仁田厚 、伊武雅刀、中条きよし、中尾彬 、篠田三郎 、村上弘明、上條恒彦、大杉漣。顔が思い浮かぶだけでも錚々たる面構えではないか。当時この俳優さん達は、30代から50代前半ぐらいまで。16年前の当時、団塊の世代の方々は40代だった。今の40代の俳優さん達は1962年生まれから1972年生まれだが、もっと上品な顔立ちの優男が多いように思う。もしかしたら近年こういう団塊の世代以前のような男らしいあくの強い顔の俳優さん達は減っているのかもしれない。これも時代の変化なのだろう。