平清盛のレビューをたまに書いているのだが、一般的にこのドラマはどう受け取られているのだろうかとネットをいろいろと覗いてみた。視聴率は苦戦をしているらしいのだが、実際にはいい意味で賛否両論らしい。毎週楽しみにしているファンもいるし、同時に手厳しいアンチ派もたくさんいる。
この清盛と言う人、どうやらいままでの評価も賛否両論の人であるらしいのだ。源頼朝は「いい国作ろう鎌倉幕府」でたいていの人は覚えてるだろうし、義経は悲劇の美少年で有名。過去に何度もドラマや小説、歌舞伎の演目等にもなっている。こういう人たちはキャラクター作りもやり易いのだろうと思うが、この平清盛、源氏の二人に比べるとどうやらよく知られていないらしい。平家物語を読んでいない私もよく知らない。
歴史や古典をを勉強された方なら、この清盛という人のイメージもあるのだろうと思うが、多くの視聴者には初めて学ぶニュートラルなキャラだったりするのだろうと思う。だからこそ、これからの脚本次第でイイ奴にも悪い奴にも料理できるわけだ。今の時点での賛否両論は、彼がまだ子供で人物像がはっきりと見えてこないことにあるのだろうかとも思う。
追記(…と思ったら、近年の大河『義経』で渡哲也 さんが清盛をなさっていたらしい。それは見たい。なんだ結構有名なんですね。)
映画 『ジャンヌ・ダルク』
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『 The Messenger: The Story of Joan of Arc (1999年)/米・仏/カラー/
157分/ 監督; Luc Besson』
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『 The Messenger: The Story of Joan of Arc (1999年)/米・仏/カラー/
157分/ 監督; Luc Besson』
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さて、こんな事を考えていたら、海外の歴史物の映画で、近年賛否両論のキャラクターを思い出した。ジャンヌ・ダルク。普通の日本人ならこの人のイメージは、「中世のフランス、神様の声を聞き、それにしたがってフランス軍を自ら率い、イギリスと戦って勝利し国を救ったのに後で火あぶりにされてしまった若い女の子」程度のものだろう。子供の頃に彼女の話を本で読んだことはあっても、特に強い思い入れを持つ人は少ないだろうと思う。
ところが彼女は西洋では聖女(実際の評価は1920年に全カトリック教会の総本山バチカンが彼女を聖人としてから)。フランスでは国民的英雄。真面目なキリスト教徒の多いアメリカでも聖女。いままでに作られた映画もかなりな数にのぼる。フランス製、ドイツ製、ハリウッド製、アメリカのTV映画などなど、どれも彼女を敬虔なキリスト教徒で神の声を聞いた(神様に選ばれた特別な)若い美しい女性として描いている。
ところが1999年、フランスの映画監督リュック・ベッソンがトンデモ・ジャンヌを作り上げた。主演はミラ・ジョヴォヴィッチ。終始一貫してこのジャンヌ、病的に変な人として描かれる。「神の声」は幻聴、「見えること」は幻覚、幻視。常にカリカリして、奇声を発し、すぐにキレて怒鳴り散らし、がたがた震え、コントロール不可能。彼女を取り囲むフランスの兵士達も「やれやれ、またかよ…まいったな、しょうがないな」的なリアクション。この変ジャンヌに興味を持ったので、ネットで検索してみたら、なんと15世紀当時の彼女に関する証言や裁判記録等をもとにした「ジャンヌダルク=癲癇(てんかん)説」という学説が出てきた。近年そんな学説が実際に存在するらしいのだ。
(個人的にスピリチュアリズムは嫌いではないが)日本人でキリスト教徒でもなければ、通説で言われていた「神の声」も「見えること」もあまり素直に信じられる話ではなく、彼女が歴史上実在の人物ではあっても(キリスト教にはいろいろとミラクルが起こるものだし)その印象は「まあよく分からない過去の人」という感じだった。
…が、このベッソンの映画、それからネットで行き着いた「ジャンヌダルク=癲癇説」で謎が一気に解けた。このジャンヌなら実在の人物として信じられる。私にとっては、あの美しい聖人ジャンヌよりずーっとリアルだ。ちょっと変な神がかり少女が当時中世のフランスの田舎にいたとする。周りがそんな狂信的な彼女を神の子だと持ち上げたのだとしたら…、中世のヨーロッパ人の宗教観を思えば十分納得できることだ。学説によると彼女の行動は典型的な癲癇の症状なのだという。そう思えばリアルな描写なのだろう。これは非常に興味深い。
ところが、1999年当時アメリカの映画データベースサイト(IMDB)で感想を見ていたら、これを気に入らない人が少なからずいることに気づいた。彼らの中でのジャンヌダルクは一点の曇りもない聖人なんですね。あんな変なキャラは到底受け入れられないということらしい。レビュー欄でもかなりな数の人々が怒り狂ってこのトンデモジャンヌを叩きのめしている。実際にはいろんな意見があって、一部にはもちろん面白いと思う人もいて、要は賛否両論なのだが、美しい聖人ジャンヌしか受け入れられない頭の固い人も結構いるというのもよく分かった。こういう現象も面白いなと思う。
歴史上の人物、ある程度知られている人であれば、ドラマでの料理の仕方が冒険的であればあるほど反対意見も多いのだなと思う。視聴者それぞれもある程度の「こんなふうなキャラ設定」というのを期待しているわけで、それから外れるとがっかりさせられたりするわけだ。ただ、どんなに冒険的ではあっても、話の展開がよく出来ていれば、そんな既成概念も書き換えることが出来る。これが脚本家の力の見せ所なのだろうなと思う。
それを思えば、今年の大河の平清盛は900年も前の人。記録に残る彼の人となりもあまり詳しいものではなく、実際の彼がどんな人物だったのか現代の私達には知る由も無い。だからこそ話として非常に面白くなる可能性もある。がんばれ平清盛!