2012年6月12日火曜日

NHK大河ドラマ「平清盛」第23回「叔父を斬る」



今回もよかったと思います。びっくり。重厚歴史大河ドラマ。ほとんど以前とは別物。ものすごく真面目な歴史ドラマになってきた。

これなら清盛マラソン、完走間違いなし。


その前に、まずダメ出しから。

●音楽。今回の音楽はほんとに邪魔。処刑の場面のうるさいピアノなど論外。うるさくってしょがない。これほどメロディーのはっきりした曲だと、歌を歌うようにそっちに気をとられてしまう。人物達は迫真の演技をしているのに台詞も聞き取れない。音楽だけMUTEボタンを押せないものかと思った。ああもったいない。そのちょっと前、由良御前が鬼武者と話す場面からの一連の流れで使われたオーケストラの曲もうるさい。ばらばらな短い場面を一つの曲を流すことでまとめるのはやめたほうがいい。ともかく全体に音楽の使用と選択に繊細さを欠いている。劇的な場面に劇的な音楽を使うのは稚拙な演出。これはセンスの問題で、他に例を挙げてこれがいいと断言が出来ないだけに非常に難しい。

●清盛君、叔父さんの死刑宣告を受けてから落ち込んで出てきた時、なんで階段でずっこけるのかなぁ…また笑っちゃったよ、んもー。

●今回の話でまず事前に心配したのは、親族の罪人の処刑に番組1回分をまるまる使ってお涙頂戴劇にしてしまうのだろうドラマの構成そのものだったのだが、あにはからんや思った以上に良かったので前言撤回。確かに処刑で番組1回分なだけに尺を長く取りすぎた場面もあったが気にはならなかった。なのでこれに関してのダメ出しは無いです。

ともかく処刑がらみで引っ張りながらも、そのまわりの政治的なもの…特に源氏と平氏があれだけ辛い思いをしているのに、天皇を始めとする貴族達が、何事も無かったようにへらへらしているのが対照的で非常に良かった。説得力のある話の展開だったと思う。満足です。



今回、話の流れが良かった。

平忠正叔父さん、源為義パパも、それぞれ本人達は覚悟を決めている。なので苦悩するのは残された者達。

まず平家側。叔父さんが自分の身代わりになったと苦悩する弟・頼盛。自らの甘さゆえに叔父を救えなかったと苦悩する清盛。皆も気持ちは同じだ。義姉・池禅尼も、忠正に言った「いざというときは平家をたのみます。」の言葉がこのような結果になるとは思っていなかっただろう。そもそも忠正は、この義姉を悲しませないために頼盛の身代わりになったようなもの。うわー悲しい。そんな彼は供に死んでいく息子達を前にして「断じて平家一門を怨むではない。怨むならこの父を怨め。」(泣)ああぁ。身支度を整えた忠正と息子達を、一族揃って皆涙を流しながら静かに送り出す場面はとても美しく悲しい。

今回の清盛君も今までと違って別人のよう。叔父の死刑を宣告されると声を落として信西に詰め寄る。今回全編を通して声を抑え非常に男らしく見えた。心を決め叔父を自ら処刑する。すぐに息子達も。その後力尽きてその場に倒れこむ。短い描写で引っ張らなかったのがよかった。

一方の源氏側は、義朝の驚くほど感情的な描写に驚いた。まず父の死刑の宣告をされた時、信西へ取り乱しながら抵抗。帰宅してからいきなり由良御前を「余計な事をした」と張り倒す。その後も呆然として時を過ごす。そこへ父為義が揺れる息子を諭す。「親兄弟の屍の上にも雄雄しく立て。」(泣)

処刑場でもそう。清盛が最後に苦しみながらも自ら処刑を遂行したのに、義朝は出来ずじまい。まさか弟を殺しても平気だったこの人を、こういう風に描写するとは思わなかった。当然これは平家側の清盛と対比させたもの。清盛が心を決めたのに比べて、義朝は出来なかったということなのだろう(父親を殺す方がずっと辛いのだが)。源氏側の処刑は義朝の忠臣正清が行うことになる。初めて弱さを見せた義朝の描写がとてもよかった。

義朝の苦悩をめぐる家族の描写も素晴らしい。夫に張り倒された由良御前、まだ小さい鬼武者に、お祖父さんがパパに殺されるので見て来いと言い聞かせる(これはすごい台詞)。全てを見届けた鬼武者は、その後義朝に向かい元服したいと名乗り出る。鬼武者はこんなに小さいのに、初めて弱さを見せた父・義朝を見て、自分がしっかりしなくてはと思ったのだろうか。将来の源氏の棟梁の姿が見える。源頼朝元服。この流れはすばらしかった。その後、由良御前は頼朝を強い武士に育てると言う。立派。



それから後白河天皇に呼ばれて戦勝の祝宴。今までなら清盛君は「いやだいやだ」とわめくところだが、今回は黙って耐える。武士がこれだけ辛い思いをしているのに、呼ばれて行った御所では貴族達が何事も無かったように華やいでいる。得子さんもとても綺麗。清盛君は憤懣やるかたない様子だが黙って耐えている。清盛君にとっては辛い場面だ。これも良かった。これで視聴者も清盛君の気持ちに添うことが出来る。

極めつけはオレ様後白河天皇。ほんとにいつものことだけどこの人のオレ様ぶりは最高。あの自信満々な顔が画面に出てくるだけでまさにゾクゾクする。こんなトンデモ親分が権力を握っている限り、平家も源氏も犬のまま。この対比は最高に素晴らしい。

清盛君がこの華やかな場でいつものように、いつ反抗期の子供のような事を言い始めるのかとひやひやしたが、なんと今回黙って耐えている。立派。大人になりました。大変結構。そうです、そうやって耐えて耐えて耐え抜いた後にドッカーンと爆発すればよろしい。非常に楽しみになってきた。ほんとに今回は清盛君が立派。あとはもう少し声を落として腹から声を出すようにすればもっといい。今回は信西との対決で声が裏返ってたけど、全体には声も抑えて確実に良くなっている。最後に一族を集めての「一蓮托生(事の善悪にかかわらず仲間として行動や 運命をともにすること)」宣言もいい。いいぞがんばれ。

それから深キョン。殆ど出番が無かったけど、この人が深刻な表情で静かに苦悩しているのはとてもいい。裏返った声でおかしなことをしゃべるよりも、黙ってしんみりしてたほうがずーといいです。非常に美しい。それに最後、滋子に向かってつとめに出るよう命じた声も非常に落ち着いていてよかった。この女優さんは立派に大人が演じられるんだと初めて思った。女優さんも俳優さんも脚本と演出次第。どうかこれからも今回のように大人の時子を演じて欲しい。(清盛君もそうなのだが)声の響きは非常に大切です。


またまた人物の評価で終わってしまったけど、良かったです。極限の状況だからこそ登場人物全員が真剣なのが素晴らしかった。特に清盛君の変貌ぶりにはびっくり。反対に義朝は弱さを見せたところがまたいい。見所もたくさんあった。豊原さん=忠正叔父さんの堂々たる男振り。最後まで息子を気遣う優しい小日向さん=為義パパ。素晴らしかったです。このお二人がいなくなるのは本当につらい。

最後にもう一つ。処刑の場面で一切の血を見せなかったNHKさんの英断には拍手を送りたい。為義パパの首らしいものが一瞬落ちたのが見えただけでそれ以外は全て暗転や画面の外。斬首という処刑そのものが非常に残酷なものなので一切の血を見せなくても陰惨さは十分に伝わってきた。特に小さな鬼武者を画面内に入れた源氏側の描写は非常に陰鬱。映像での残酷さを娯楽にしがちな昨今、よくあそこまで抑えてくださったと心から感謝したい。(地面に広がった血だまりぐらいはあってもよかったかも)



最後に清盛紀行で、義朝が自ら父を処刑したと言っていたのに驚いた。清盛と義朝が親族を自ら処刑したのは、このドラマを劇的にさせるための脚色だとばかり思っていたのだが、実際にそういうことだったそうだ(清盛のことは不明)。辛かったろうと思う。ほんとうの義朝とはどういう人だったのだろう。

それから、いまさら言うのもなんだが清盛の持っている宋剣に非常に違和感があるのだけれど、あれは史実なのだろうか。(痛すぎると思います) 以前、刀鍛冶の方のインタビューで、日本の刀作りは鎌倉時代が最高で、現在でも再現が難しいぐらい高い技術が当時既に完成されていたと聞いたのだが、このドラマのちょっと後の時代にそれほど高度な技術があったのだとしたら、この時代も日本刀を持っているのが自然じゃないだろうか。それともこの宋剣の記録が残っているのだろうか…。