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2025年7月31日木曜日

映画『フォー・シーズンズ/The Four Seasons』(1981) :時代が違い過ぎて楽しめない





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『The Four Seasons』(1981)/米/カラー
/1h 47m/監督・脚本:Alan Alda』
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今週旦那Aに休みの日があったので一緒に見た。スティーブ・カレルとティナ・フェイの2025年版を見たばかりなので忘れないうちに見ようと思った。


まず2025年のドラマシリーズと比べよう。
私は2025年版のほうが100倍いいと思った。2025年版は面白かった。時にはゾッとするほどリアルでちょっとドキドキした。キャラ達は皆色々とあるけれど十分理解できる人々。全員それぞれが魅力的だった。1話を30分だけ見るつもりが、一旦見始めたら続けて2時間も見てしまった。コメディとして十分面白かったし考えさせられた。見てよかったです。先日ここに書いた感想では「居心地が悪い」と書いているけれど、実際にはよく笑ったと思う。楽しめた。



しかしこの1981年版の映画
・異様なくらい古臭い
・時代の違いを感じる
・面白くない

その理由をこれから書いていきます。


監督は俳優のアラン・アルダさん(この映画ではジャックを演じる)。この映画は1981年作。今から44年前。当時の私は高校生。当時からアメリカのドラマや映画は見ていたので、あの80年代初期のアメリカの雰囲気には慣れているつもりだったが、まず思った感想は「なんて古いのだろう」。映画が始まってすぐに違和感を感じるほど直ぐに古臭いと感じた。

今の私は英語のニュアンスがわかる。1981年当時は、映画は字幕で見ていたが英語そのもののニュアンスはわからなかった。いま英語がわかるようになって、1981年の映画の台詞が、いかに今のアメリカの言葉と違うのかにまず驚いた。もちろん言葉だけじゃない。演技も違う。人物たちの行動や関係性も全く違う。モラルも違う。ユーモアも全くおかしくない。なによりも、人物達が全く魅力的に見えないのに閉口した。


わかってるのよ。この映画はあの時代の、あの社会的クラスの人々の映画としては何もおかしなことはないのだろう。問題は「面白くない」と感じた私の方にある。

この映画は、東海岸の白人の伝統的プロテスタントの気質を持つ、高学歴アッパーミドルクラスの知的階級の人々のストーリー(東海岸の都会近辺ではそれほど珍しいわけではない)。実は旦那Aはこのソーシャル・グループの出身。旦那Aの家族は1980年初期の時代から暫くニューヨーク界隈に住んでいた。

旦那Aにこの映画がどうかと聞いたら「懐かしい」と楽しんだ様子。私が「まったくリアリティがない。人物達が魅力的に思えない」と言うと「ああそうか」と反応。もう少し聞いてみると「あの時代の雰囲気は覚えてるんだよね、ああいう人達にも会ったことがある。ニックみたいな人もいた。Met opera のシーズンチケット持ってて、いつも綺麗な女の人と一緒にいたかっこいいおじさん。でも彼はずーっと独身だったかな」などと言う。なるほど旦那Aには当時の雰囲気を十分懐かしく感じられる映画だったらしい。

要するに、違う文化圏から来た私には「懐かしい」と感じるほどの思い入れが無いことから、描かれた時代の違和感ばかりが気になって楽しめない。そして私は「アメリカ東海岸アッパーミドルクラスのお堅さ」も苦手。彼らのユーモアもわからない。そんな感じであまり面白くなかった。




★ネタバレ注意




この映画の基本フォーマットは2025版と同じ。6人の友人達の四季それぞれのホリデーの様子を描く。2025年版とは違い彼らはクラスメートではない。人生の道のりで出会った6人。年齢も立場も違う。カップル2組は40代半ばの設定。

(2025年度版ではアフリカ系のゲイの設定だったダニーは)この映画では皆より10歳年上の白人の歯科医となっている。そして彼の奥さんは(少し異文化の)イタリア人アーティストのクラウディア。ジャックは弁護士、奥さんのケイトはビジネス誌のエディター、ニックは保険のセールス、アンは主婦。全員ニューヨーク周りの裕福な上ミドルクラスの人々。

ストーリーも2025年版とほぼ同じ。彼らは6人でいつも共にホリデーを楽しむ友人同士だが、ニックが離婚して若いジニーをホリデーに連れてくることで、全員の関係がギクシャクしてくる。


一番の違いは、奥さんを捨てるニックはこの映画では罰を受けない笑。2025年版のニック(スティーブ・カレル)は徹底的にコテンパンにやっつけられ、ニック本人も多少は後悔していたと思うが、この1981年版のニックは全く悪びれない。まったく罰を受けない。そして周りの友人達もそれをいつしか黙って受け入れている。そして(温厚だが退屈だった)元嫁アンは結局捨てられてストーリーから消えてしまう。そのまま忘れられてしまうのだろう。

ジャックの奥さん…ニューヨークでバリバリ第一線で働く女のケイトは、あの時代の女性解放運動の戦士のようだ。男性と同格に議論し合って口調が非常にキツイ。お堅い。まったく女性らしい柔らかさがない。ユーモアのセンスもない。ジャックとの夫婦らしいケミストリーも無し。チューばかりはしているけれど。

そしてジャックは自己中で「自分を解放できない」ことに悩み(それもあまり印象になかったが)、ケイトから「冷たい」などと言われて最後はブチ切れて騒いで自己を解放(1970年代の映画にはよく見かけるマッチョなシーン)。そして皆に「ごめんね」などと言って許してもらう。よくない。意味不明。あんな人は現実にはいないと思う。

歯医者のダニーはコミックリリーフだろうか。年齢も上でおとぼけの変わり者。しかし10歳年上だから皆とは違う視点で物事を見ている。奥さんのクラウディアはほぼ印象がない。


なんというかな…どのキャラクターも全く魅力的ではない。この映画には2025年版のようなチャーミングなおかしみが無い。台詞は奥歯にモノが挟まったよう。基本的には時代が違うからなのだろうが、これは監督/脚本のアラン・アルダさんの言葉からくるものなのか、それともこのドラマの…キャラ達の社会的立場(裕福な上ミドルクラス)からそれらしく創作されたものなのか、台詞も行動も pretentious で全くリアリティを感じない。登場人物達の誰かが冗談を言ったら皆でウケて全員で肩を叩きながら大笑いするのだけれど、私には全くおかしくない。なんだか不自然なリズムの映画だと思う。

不自然…そうだ、この映画の登場人物達は1980年代初期のモダンでインテリで進歩的な人々の設定(中華料理を自分達で作り、次はインド料理などと言っている)なのだけれど…私がこの映画を見ていて受ける印象は、東海岸インテリの上ミドルクラスのお堅い人々が無理してワイルドに振舞って騒いでいるような印象。しかしよく考えてみればにアラン・アルダさんは現在89歳。うちの義父の世代なのだ…お堅い印象なのは無理もないだろう(←義父は優しいジェントルマンでした)。


しかしそれは1981年の東海岸の上ミドルクラスのあり方に、そもそも私があまり親しみを感じないからなのだろうとも思う。結局は、1981年頃のお堅い人々が「彼らのユーモアで、彼らが面白がって、彼らが彼らのために作った映画」が、私には何も響かなかったということだろうと思う。台詞が嘘っぽくて(今の米国人は誰もあのような話し方はしないと思う)、pretentious で、なんだか…うわ~めんどうくさい人々…という感じだ。これは私の個人的経験によるバイアスからくるもので、普遍的なものではないだろう。


2025年版の『フォー・シーズンズ』自虐的なほどにキャラクター全員の不完全さ/vulnerability を描いたことに、私は「今のアメリカは本当に生きやすくなったんだね」と思った。

この退屈な1981年版に比べると、2025年版は全員がチャーミングでかわいくて面白い。全てのキャラが好きになれる。全員に心寄せられる。そして苦笑がちだとはいえ実際にはよく笑った。

それだけ今は時代が変わったということなのだろう。それはいいことです。


2025年7月30日水曜日

Micah McLaurin – Satisfied (Until Dawn Remix) (2025)



また面白い人が出てきた



Micah McLaurin – Satisfied (Until Dawn Remix) (2025)
Satisfied (Until Dawn Remix) – Single
Micah McLaurin
Released: June 4, 2025
℗ 2025 Micah McLaurin
* * * * *
Original
Micah McLaurin – Satisfied (2025)



今週の英国 Commercial Pop Club Chart に入っていた曲。
まずはキャッチーな曲にビジュアルが綺麗ねということで取り上げようと思った。そういえばこのお方は少し前にも「バブバブーン」と歌う歌がダンスチャートに入っていたのを覚えている。チャートは英国のチャートなのですけど、このアーティストは米国のお方でした。

最初はゲイカルチャーの綺麗な人…の枠で軽く取り上げるつもりだったのだけれど、調べてみたらもっと面白いことが出てきた。このお方は米国の保守的なサウスキャロライナ州出身のクラシックのピアニストだった。カーティス音楽院で学び、ジュリアード音楽院に学び…バリバリのエリートのピアニスト。そのお方が(NYのジュリアードにいる間なのだろう)自らのクイアネスに目覚め、最近はポップスターとファッションアイコンとして活躍中。

まぁ~面白いですねぇ。これだけバックグラウンドがお堅い場所から自由なアートとファッションの世界に飛躍。御本人もピアノを習っていた時には自分を押し殺していたと仰っていて、ニューヨークに来てやっと解放されたとのこと。それで今は自由に自己発見と自己開発を進めているのだろう。オフィシャルの YouTube を見ると、今はポップ・アーティストとしての活動の方が多いのかな。

最初は、すごく綺麗な男の子が、とてもナルで、その方向でいい感じにサマになってるアーティストなのだろうと思ったのよ。そうしたらもっともっと色々出てきた。YouTube のリストの下の方には、ピアノのリサイタルの映像なんかも出てくる。ピアノは優しい音。メロ―な印象。

Micah McLaurin - Chopin Nocturne in C sharp Minor, Posth.
 


本当の自分と大好きなことが見つかって本当によかったですね。

それにしても綺麗なことが好きで自分も綺麗でいたい人が、その理想のイメージを実現できる綺麗なルックスで生まれてきて、その上に人並外れたピアノの才能もあって…なんて恵まれた人だろうと思う。いいですねぇ。


チャートに入っていたのは Until Dawn Remix のディスコ調。「Let me keep you, Satisfied- satisfied…」がゲイクラブで鳴っているのが想像できますね。


★Micah McLaurin
米国のピアニスト。1994年生まれの30歳。元々はクラシックのピアニストを目指したが、クイアに目覚め現在は Virtuoso pianist、composer、avant-garde artist としてポップスのシーンでも活動中。

米国サウスキャロライナ州のチャールストン生まれ。8歳からピアノを習い始める。18歳でペンシルバニア州フィラデルフィアのカーティス音楽院/Curtis Institute of Musicに学び卒業、その後ニューヨークのジュリアード音楽院/Juilliard Schoolに進んだ。2016年には Gilmore Young Artist Award を受賞。その他にもピアノで数々のトップ賞を受賞…それらの賞のリストは Ettlingen International Piano Competition、Thomas and Evon Cooper International Competition、2011年のHilton Head International Piano Competition、Verbier Festival Tabor Prize。2018年にはフィラデルフィア・オーケストラとの共演デビュー。その後も米国各地、各国のオーケストラと共演。2019年には Lincoln Center でリサイタル。2020年にはライブ・アルバムをリリース。2022年にはショパン作品のスタジオ・アルバムをリリース。

ニューヨークに移住してからクイアに目覚めた。現在もクリエイティブな活動を通して自己開発中。アルバム『Diamonds』では思い入れのある歌をカバーし、またファッションデザイナーのZaldyと組んでイメージを構築。またアルバム『Instinct』でも過去のポップソングをカバーし、有名な作曲家やオーケストラともコラボ。またファッション誌やアート誌にも WWD、Paper Magazine、Resident Magazine、Pluton Magazine 等に登場。

★UNTIL DAWN
オランダのDJ/プロデューサー・デュオ。メンバーは Joey van Zanden さんと Lars van Jole さん。コロナ禍の頃から活動開始。現在 drum and bass のシーンで良く知られた存在で、各フェスにも出演。彼らの作品の特徴はハイエナジーのビートのダンス・アンセム。少しの neurofunk に jump-up vibes の元気のいいサウンドで知られる。


Satisfied
Micah McLaurin
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Satisfied- satisfied
私にあなたを満たさせて
Satisfied – satisfied
私に…


彼ら全員とつきあったんでしょ
彼はホットだったのよね
彼はきっと甘かったんでしょうね
誰かは陽の光の中
誰かは暗闇の中で
でもあなた 彼ら全員を手離したのよね
私を手に入れるために

あなたの人生のすべてを私にくれるって言って
死ぬまで私と一緒にいてね
私だけが好きだと言って
そうしたらあなたを満足させてあげる

あなたがどんなに私に必要なのか話してるの
So baby, baby 私にあなたを
Satisfied – satisfied
私が満足させてあげる


Satisfied- satisfied…
私にあなたを満たさせて


ダンスフロアで
車の中で
バーの裏の路地裏で
シャワーの中、
ガラスを蒸気で曇らせて
見てみましょう
あなたがどれくらい長く続けられるのか

あなたの人生のすべてを 私にくれるって言って
死ぬまで私と一緒にいてね
私だけが好きだと言って
そうしたらあなたを満足させてあげる

あなたがどんなに私に必要なのか話してるの
So baby, baby 私にあなたを
Satisfied – satisfied
そして私が満足させてあげる
Satisfied- satisfied…


Satisfied- satisfied
そして私が満足させてあげる…


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Writer: Ramiro Padilla, Fernando Garibay, Micah McLaurin, Daniel Padilla, Simon Wilcox




2025年7月28日月曜日

米ドラマ Netflix『フォー・シーズンズ/The Four Seasons』(2025) シーズン 1:リアルで身につまされる





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『The Four Seasons』(2025) TV Series-Season 1/米/カラー
/1話 約30分・全8話/制作:Tina Fey, Lang Fisher, Tracey Wigfield』
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週末にNetflixのオススメに出てきて見始めたドラマ。週末の2日間で「春夏秋」を見て翌週に「冬」を見終わった。面白かった。面白かったけど色々と考えさせられたドラマ。

最近は世の中の政治関連が忙しいので、なかなか2時間の映画を見る気持ちになれないのだけれど、このドラマは1つのエピソードが30分。気楽に見られるのでよかった。  


元々大学時代の友人だった5人(+1人)=6人のグループの30年後…現在50代半ばの彼らがシーズン毎に集まってホリデーを過ごすフォーマット。シーズンが進む毎に進んでいく物語。ストーリーの要は主人公ニックの中年の危機/Midlife crisis。ニックの想定外の行動により、友人関係のバランスが崩れていく様子をかなりリアルに描いている。


メインのキャストはスティーヴ・カレルとティナ・フェイ。お二人ともよく知られたコメディアンなので、当然作品はコメディ目当ての視聴者を想定したものだろうと思われる。しかし内容は結構シリアス。軽い気分で見始めるとびっくりさせられる。「いったい…これは笑っていい話なのか?」

例えば視聴者が20代~30代であれば「中年がまたおかしなことをやっているははははは」と単純にコメディとして笑えるのだろう。しかし(主人公達の年齢も超えた)実の中年~高年齢の視聴者が見れば印象は違ってくる。このドラマはあまりにリアルで居心地が悪い。リアルな台詞にいちいち「これ、私だわ。これ私達だわ」と笑えなかったりする。ドキドキハラハラしたりゾッとしたり…。なんだか自分の(そして今まで見たことのある誰かの)行動や言動を思い出して恥ずかしくなる。赤くなったり青くなったりする。それは脚本が(シーンの描写が)上手いということなのだろう。

いや~これはどうかな。可笑しくはない。あまり素直に笑えない。ただ身に覚えのある台詞や行動のリアルさに思わず身をよじって苦笑いする。そのようなドラマだ。見てよかったと思う。色々と考えさせられた。旦那Aとも感想をよく喋り合った。

制作はティナ・フェイを含む女性3人。なんと…女性が書いた話なんだ。だから身につまされるのか。それに男性に対して情け容赦ない。なるほど…納得したわ。


全体に楽しめたドラマだが、少し無理があるかと思った部分をまず先に書いておこう。

Con 1
まずスティーヴ・カレルはニックを演じるのには年寄りすぎるだろう。制作はこの作品をコメディとして売りたかったのだろうから、カレルとティナ・フェイの2大コメディ・スターを配役したのだろうが、スティーブ・カレルだけ他の俳優達より年齢が上。彼は現在62歳。彼以外の俳優たちは全員55歳。

カレル演じるニックが、6人の中で一番「若さを諦められない」キャラであるのに、カレル御本人が一番高齢というのは無理がある。私が見るスティーヴ・カレルの印象は「面白おかしいユーモラスなお父さん(←だからいい)という感じなので、「まだまだ遊び足りないギラギラした中年の危機の男」のニックのキャラには納得できない。

ニックのキャラには『Mad Men』のジョン・ハムのほうが合っているだろう。彼は54歳で他の俳優達と同じ世代だし、ハンサムでいかにも「まだまだ諦められずにトライアスロンに挑戦してポルシェに乗り若い女の子と遊びそうな男」に見える。彼も実は面白い人なのですけどね。しかしコメディ枠では売りにくいのだろうな。ハンサム過ぎる。

● Con 2
ドラマのコンセプトが、1981年の同名の映画を元にしていて…四季の移り変わりを通してストーリーの流れを追う話…になっているからしょうがないのだけれど、あまりにも事件を詰め込み過ぎではないか。「春」が終わって「夏」以降は全員がニックの行動に振り回される話になってしまっている。そして「冬」。…なかなか急ぎ足だなと思ったが、これはしょうがないのかな。あまりいい結末ではないと思う。




★ネタバレ注意


さてここからは私が個人的に血圧の上がったシーンを書いていこう。誰が誰がと説明はせずに、ただキャラの名前だけを書いていく。だからドラマを見ていなければ全くわからない感想だと思います。

私も中年の女…なので、なによりもこのドラマの二人の中年女性の描写に度々青くなった。あまりにも「ワタシだわこれ」の場面が多い。それを書いておこう。


アン+ニック
ニックが男友達に言う「アンは全て諦めてしまったんだ。彼女は本も読まない。新しいことにも挑戦しない。(釜を作ったのに)陶芸もやらない。iPadで農業ゲームばかりやってる」

ぅわああああああああこれワタシ、ワタシやでこれ。挑戦しなくなった。諦めてしまった。人生イージーモードでいいよね。もう頑張りたくないの。もういいじゃない。楽にいこうよ。それです。それそれ。…そしてニックにあきれられている。

思わず旦那Aを振りむいて「ねえ、あなたもこんな風に思うの?」と聞いてしまった「これワタシだよね笑」 なんか…ぞっとした。居心地が悪い。リアル過ぎてこわい。脚本うまいね。でもドラマになってるということは…よその中年女性も皆こんな感じなのかしら。中年女性アルアルなのかな。だといいな。だって更年期も終わったんだからもういいじゃない。あまり頑張りたくないよね。…いや私の場合は40歳を過ぎてからずっとこういう感じだったけれど。それに更年期とコロナで怠けゴコロが加速しましたね。笑えない。でもこれから頑張るつもりもない。

iPadで農業ゲームにも…ぅぁ…苦しいな。しかしまだ農業ゲームには手を出してない。あれははまりそうだから意図的に避けている。面白そうだと思ったのよ。『Hay Day』だっけ?かわいい広告を見て何度かココロ惹かれた。 さすがにベッドルームにiPadを持ち込むことは無いけれど、旦那Aが寝てしまった後もリビングで『Tile Match 3D』や積み木崩しゲームをやってる。そうそう、ちょっと前に3000面クリアしたとここで報告したやつです。

いろいろと…こわいねこのドラマ。「夏」でアンとサーフィンのインストラクターとの逸話は…もう身もだえするほど恥ずかしい。私はやらない。けど、彼女の気持ちもわからないではない。ぁああ辛い、つらいね。

そして「秋」はニックにとにかく腹を立てる。あのやろう、なんて無神経な。男の傲慢ですね。あれはゆるせない。あいつは自分の理想を皆に押し付けて、皆が無理して彼に合わせてあげているのに「皆打ち解けてるからいいことだねえ」などとニヤニヤしている。もう却下。あいつはいなくなればよろしい。他のメンバー全員が困ってるし、アンには残酷。マジで。そして娘の父親への憎しみにも激しく同意。そしてなによりもジニーに対して酷いと思う。ニックは最悪。 実はあれに近い場面を見たことがある。世の中には馬鹿な男がいる。

そして、そのように感じる私は「もう100%、人の嫁の中年女なのだな」とも自覚した。もう完全に「人の嫁」としての考え方になってしまっている…もう独身の自由な若い女の考え方は出来なくなっているのだろう。ジニーは可哀そうだと思うけれど、なによりもアンの気持ちに寄り添って無茶苦茶腹が立った。ニックはバカです。本当にどうしようもない。

ニックはあのように自分の傲慢を押し通すのならまずグループから抜けるべきでしょう。静かにグループから離れて、彼は「彼の新しい楽しい時間」を勝手に大切にすればいいと思う。変わってしまった今の自分を周りに押し付けるのは傲慢。誰もいい思いはしない。迷惑。

そして「冬」でニックの苦労を知る。ざまぁみろだ。これも私が「もう100%、人の嫁の中年女」である証拠。本当にニックはバカだと思う。バカバカ。可哀そうだなんて一ミリも思わない。しかし展開が急すぎる。あまりうまく消化できなかった。だからプロットに無理があると思った(上記Con 2参照)。

● ケイト+ジャック
ワタシと旦那Aの関係がケイトとジャックにとても似ている。「私がいなきゃあなたやっていけないでしょ」と夫にガミガミ言う。あ、ワタシだ。これもワタシ。ゾッとして青くなる。いや「ワタシ達だ。ね、これワタシ達だよね」と旦那Aを振り返る。ニヤニヤ笑いをする旦那A。かわいそうに。  外から見ると、私も/うちもこんな感じなのだろうね。なかなか外に見せることもないですけどね。似てるわ。本当に身につまされて居心地が悪くなった。

でも「冬」にジャックのヒーロー場面が出てきてよかった。

● ダニーとクロード
彼らはゲイのカップルのせいか、あまりうんうんと頷く場面もなく、ただ微笑ましいと思った。そういえばニックとアン、ジャックとケイトの場面は、苦しくなるほど恥ずかしい場面も沢山あるのに、このゲイの二人の場面はあまり恥ずかしい場面もない。ダニーは最初から最後まで一番かっこいいクールな人だし、クロードはかわいい。

おかしかったのは、「春」にダニーに激怒したクロードが一人で宙に向かってイタリア語で文句を言い始めた時。イタリア語はわからないが、おそらく「もうやってられないわ。いつもこうなんだから」とかなんとか叫んでいたのだろう。これもワタシ、やるやる。旦那Aに猛烈に怒った時は日本語で宙に向かって悪態をつきまくる「冗談じゃないわ、やってられないわこのおとこ!」などとと私も言う。日本語のわからない旦那Aは困って立ち尽くす。クロードの怒り方を見て一人ゲラゲラ笑った。


というわけで、こんな感じです。また自分語りをしましたね。だってあまりにもリアルだもの。だから面白かった。痛いね。やれやれ。


アンのことで「…挑戦しなくなった。頑張らなくなった」とあったけれど、人は「挑戦をしなくなる、自ら戦いの場に上がらなくなる」ことで、やっと人生を俯瞰して見ることができるようになるのも事実なのです。(いい意味で)リラックスして物事に距離を置く姿勢は、年を取ったからこそできるようになることでもある。それは悪いことばかりだとも思えない。


今度、このドラマの元ネタの1981年の映画を見てみようと思います。時代が違うので設定がかなり違う。今の私は主人公達の年齢を超えているけれど、1981年はまだ高校生だった。当時は男女や夫婦の関係も今とは全く違うので、今と比べると面白いだろうと思う。また感想を書こうと思います。


どうやら次のシーズンがあるらしいけれど、あまり期待していない。あれで終わっていいと思う。続きの話を作るには複雑すぎ。どうするつもりだろう。


2025年7月24日木曜日

Oden & Fatzo x m.O.N.R.O.E. feat. Matluck - Only For Tonight (2025)



Disco から House へ



Oden & Fatzo x m.O.N.R.O.E. feat. Matluck - Only For Tonight
Only for Tonight (feat. Matluck) – Single
Oden & Fatzo, Monroe
Released: June20, 2025
℗ 2025 Defected Records Limited



これもUK Commercial Pop Club Chart か UK Upfront Club Chart に入っていた。リリースからチャートに入ってくるのが速かった曲。この曲はフランスのDJトリオの曲らしいですが、いい意味で米国の70年代のディスコを現代の曲に仕上げてます。ディスコの温故知新は本家の米国よりも欧州のほうが上手い。米国は一度ディスコを拒絶したからだろう…ディスコを拒絶した後は米国は Hip Hop に行ってしまった。欧州はディスコを上手く温め続けていますね。

曲としては展開が少ないけれど、気持ちがいいのでよし。冒頭のベースラインがCHICの「Good Times」を思い出すけれど、今聴き直してみたらCHICの「Good Times」はずいぶん曲がゆっくり。今の曲は House のアレンジなのでスピードが速い速い。その速いスピードに私も慣れてしまっている。


★Oden & Fatzo

フランスのパリで結成されたエレクトロニック・グループのトリオ。NASAのロゴ入りユニフォームを着てライブのパフォーマンスをする。メンバーは(ファーストネームのみ)Williamさん、Alexさん、Abelさん。彼らのジャンルは House,、solar minimal、breakbeat electro、UK Garage 等々。funk や jazz、hip hop の影響を受けた。2023年に英国のレーベル Defected Records と契約。世界中でライブを行っている。

★m.O.N.R.O.E.

Jordan Postrelさん。米国人の Producer と DJ。最初はファッション業界にいたが19歳でDJに方向転換。その才能を早い時期に認められ様々なレーベルから曲をリリース。Berlin、Paris、 New York、Ibiza などでレジデントになり、様々なフェスでもライブを行っている。

★Matluck
米国フロリダ州マイアミ出身のシンガー・ソングライター。フロリダ大学在学中から音楽活動開始。 有名DJ(Armin Van Burren、Nicky Romero、Felix Jaehn、Dzeko, Mike Williams、Afrojack, Elephante 等)とのコラボワークも多い。英語とスペイン語のバイリンガル。作曲では他アーティストへも曲を提供している。エミー賞受賞、グラミー賞にもノミネートされた。



Only For Tonight
Oden & Fatzo, Monroe
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[Chorus]
今夜だけ
光に浮かびたい
暫く落ちていくような気がして
ごめんね もし返事をしなかったら
 
今夜だけ (Only for tonight)
ただ光のなかに消えていきたい (Fade into the light)
野生に落ちていくような感覚
あなたが着いたら 私を起こしてね


[Post-Chorus]
私のこの日
決して終わらなければいい
時間を巻き戻して
私をまた連れ戻して
私のこの日
決して終わらなければいい
時間を巻き戻して
私をまた連れ帰って


[Instrumental Break]


[Chorus]
今夜だけ
光に浮かびたい
暫く落ちていくような気がして
ごめんね もし返事をしなかったら
 
今夜だけ
ただ光のなかに消えていきたい
野生に落ちていくような感覚
あなたが着いたら 私を起こしてね


今夜だけ
光に浮かびたい
暫く落ちていくような気がして
ごめんね もし返事をしなかったら
 
今夜だけ (Only for tonight)
ただ光のなかに消えていきたい (Fade into the light)
野生に落ちていくような感覚
あなたが着いたら 私を起こしてね


[Post-Chorus]
私のこの日
決して終わらなければいい
時間を巻き戻して
私をまた連れ戻して
私のこの日
決して終わらなければいい
時間を巻き戻して
私をまた連れ帰って

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Songwriters:


2025年7月23日水曜日

Tiwa Savage – You4Me (2025)



いいリズム



Tiwa Savage – You4Me (2025)
Lyrics
You4Me – Single
Tiwa Savage
Released: April 22, 2025
℗ 2025 Everything Savage / EMPIRE



数週間前に英国のCommercial Pop Club Chartに入っていた曲。この曲もナイジェリアのアーティストの曲。Tiwa Savage さんはナイジェリアで生まれ、ティーンから英国ですごし、米国ボストンの名門・バークリー音楽大学で学んだ後にナイジェリアに帰国している。ナイジェリアは音楽シーンが盛んなのですね。ナイジェリアから発信した曲が英国のダンスチャートに入ってくる。すごくお洒落な曲。音も凝ってます。後ろでプログレ風シンセギターも鳴ってる。ダンスのリズムのとり方もかっこいい。


★Tiwa Savage
Tiwatope Omolara Savageさん。ナイジェリアのシンガー・ソングライターと女優。1980年生まれ。彼女は英語とナイジェリア・ピジン語とユルバ語で歌い、音楽的には afrobeats、R&B、afropop、pop、hip-hopの混合スタイル。11歳の時に英国に移住。ティーンの頃からGeorge MichaelやMary J. Blige等のバックコーラスを務めた。オーディション番組『The X Factor』の英国版に出演した後、米国ボストンのBerklee College of Musicで学んだ。ナイジェリアでの音楽シーンの盛んな様子を見てナイジェリアに帰国し、2012年にナイジェリアのMavin Recordsと契約。2013年リリースのデビュー・アルバム『Once Upon a Time』がNigeria Entertainment AwardsでBest Album of the Yearにノミネートされた。ナイジェリアの国内のみならず、英国と米国のアフロチャートの常連。今までにアルバムを3枚リリース。それから現在もコンスタントにシングルをリリースし続け、欧米各国でツアーを行っている。


㊟Slangなどの意味
I know you're fiending for my bigger back, ooh
fiending=In slang, "fiending" (also spelled "feening" or "feenin'") refers to an intense and urgent craving or desire for something/強烈で切迫した渇望や願望
bigger back=ワタクシは大きなお尻だと思ったのよ。旦那Aに聞いたら大きな背中=大きな身体ではないかとのこと ナンダナンダナンダ…というわけで書き直した。

All in your face, all in your face
「In your face」は、挑発的または挑戦的、大胆、断定的、または対立的な何かまたは誰かを表すときに使用される俗語表現

● I can′t hack it
someone is unable to cope with or handle a difficult situation or task
困難な状況や課題に対処したり処理したりすることができない

● Ọmọ to ba re'di, lo ma gba dollar
ナイジェリアのヨルバ語。
意味は:A child that is properly trained will earn dollars
    いい子に育てられた子はドルを稼ぐ



You4Me
Tiwa Savage
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[Intro: Tamia]
1,2,3,
私 とても好き
あなたが 私にしてくれたことが
説明できないの
あなたに夢中


[verse: Tiwa Savage]
あなたは準備 OK だと言ってる 対処出来る?
たぶん私達 解決できるかも
私の大きな身体が欲しいんでしょ, ooh ●
挑発的な顔をして ●

あなたがやりたいこと やってもいいわ
シャンパンとちょっとした楽しみ, yeah
本当に欲しいものを教えて
あなたほど上手く出来る人はいない


[pre-chorus: Tiwa Savage]
私の反動を見て
魔法みたい
私をおかしくする 
オートマティック
電気が通ったよう (electric)
ロボットみたい (roboto)
Oh, あなたがくれる
とても大切なもの
私耐えられない ●
とてもスピリチュアル 
とても新しいこと
oh-oh
包帯のようにあなたに巻きついて
あなたは私だけのもの


[chorus :Tiwa Savage & Tamia]
(I really like) あなたは私の
(I really like) あなたは私の
(I really like) oh, あなたに夢中 (I really like)
(I really like) あなたは私の
(I really like) 私に全てをちょうだい
(I really like) mm, 誰とも比べられない (I really like)


[hook]
Ọmọ to ba re′di, lo ma gba dollar ●
Gba dollar, gba dollar


[verse: Tiwa Savage]
Mm, あなたは私が欲しい物をすでに与えてくれてる (eh-eh)
誰もあなたほどは合わない、誰も 決して
シーザー、私のシーザーと呼ぶわ
私は今もディーバだけど でも私は手離せない女よ

あなたの安定した能力
私を捉え続ける方法ね
Oh, 私、好き
私が本物だってわかってるでしょ


[pre-chorus: Tiwa Savage]

私の反動を見て
魔法みたい
私をlocoにする
オートマティック
電気が通ったよう (electric)
ロボットみたい (roboto)
Oh, あなたがくれる
とても大切なもの
私耐えられない
とてもスピリチュアル
とても新しいこと
oh-oh
包帯のようにあなたに巻きついて
あなたは私だけのもの


[chorus: Tiwa Savage & Tamia]
(I really like) あなたは私の
(I really like) あなたは私の
(I really like) oh, あなたに夢中 (I really like)
(I really like) あなたは私の
(I really like) すべてをちょうだい
(I really like) mm, 誰とも比べられない (I really like)


[hook]
Ọmọ to ba re′di, lo ma gba dollar
Gba dollar, gba dollar



[outro]
I really like…

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Writer(s): Tamia Washington, Lionel Richie, Tim Kelley, Ronald C. (sr) La Pread, Donel Mangena, Bob Robinson, Josiah Bassey, Tiwatope Omolara Savage, Taiwo Sotonwa, Segun Michael Ajayi, Kareem Olasunkanmi Temitayo, Anyanwu Obiora Uzoamaka

2025年7月22日火曜日

Aztec Camera - Walk Out to Winter (1983)



いい歌です



Aztec Camera - Walk Out to Winter (1983)
オフィシャルではないので消えるかも
Album: High Land, Hard Rain
Aztec Camera
Released: April 19, 1983
℗ 1983 Warner Music UK Ltd



昨日の文を書いていて思い出した曲。渋谷陽一さんが彼のラジオ番組サウンドストリートで「とてもいい曲」だと仰っていたのをよく覚えている。1983年にリリースされたばかりのアルバム『High Land, Hard Rain』から、この曲と「Oblivious」が流れたのを録音して繰り返し聴いた。

私もこの「Walk Out to Winter」が好きだった。爽やかなギターの音が気持ちよかった。ギターが上手いバンドだと思った。当時は英語なんて全くわからなかったので、歌詞の意味も全く知らなかった。



バンド Aztec Camera はスコットランドのバンド。アルバムのタイトルの『High Land, Hard Rain』とは、スコットランドのハイランドと激しく降る雨の意味だったのだなと今知った。

この曲を書いたシンガーソングライターのRoddy Frameさんは1964年の1月生まれ。なんと私とあまり変わらない世代だった。知らなかった。彼がこの曲を書いたのは1983年より前だから、彼はまだティーンだったわけだ。


歌詞を初めて見てみた。この歌は若者が「ティーンの初期の頃の頭でっかちな夢や理想論を捨て、現実を見て、前を向いて冬の厳しさに踏み出していこう」という歌だろうと受け取った。

1964年生まれのスコットランドの少年は、ティーンの初期にパンクに出会った。15歳の時に Clashの『London Calling (1979)』等を聴いてクラスメートとよく議論をして拳を振り上げていたのかも。しかし19歳になった今は、中学の頃に憧れた Clash のギタリスト Joe Strummer のポスターも壁から剥がれ落ちてそのままになってる。その後その場所に貼るポスターも見つからなかった(憧れる人もいなくなった)。周りを見ると、少し年上の青年達/大人たちはパンの配給や失業手当の列に並んでいる。それを見てイライラして憤る。彼らのようにはなりたくない。未来には壁が立ちはだかっているように見える。夢を語るばかりではなく、現実を見て冬の厳しい寒さにも踏み出そう。チャンスはきっと白い雪の下に隠れているのだから。


歌詞の「You burn in the breadline and ribbons and all」の
リボンの意味をAIに問うと、このような文が出てきた…

During the 1980s in the UK, a symbol of unemployment emerged in the form of unemployment ribbons. These ribbons, often worn by individuals who were unemployed and claiming government benefits (also known as "on the dole"), symbolized solidarity and the difficult economic conditions of the time.
英国1980年代、リボンが失業者のシンボルとなった…このリボンは「on the dole」と呼ばれる失業中で政府の給付金を受給している人が身につけていた。このリボンは連帯感と当時の厳しい経済状況を象徴していた。


歌で知る英国の歴史。この歌は1980年代初期にティーンだった若者が、前を向いて一歩踏み出す志を歌った歌だった。懐かしくなってこの歌を改めて聴いたらとてもいい曲だったので取り上げたい。


余談
中学から大学を卒業するまで、渋谷さんのサウンドストリートをよく聞いた。そして週の他の日も毎日サウンドストリートを聴いていた。佐野元春さん。坂本龍一さん、甲斐よしひろさん、山下達郎さん。どのDJがどの曲をかけていたのか全ては覚えていないのだけれど、基本的に洋楽は渋谷さん、そして英国のニューウェーブ系のJapanやデビッド・シルビアン等は坂本教授だったか。坂本教授の番組に来日中のデビッド・ボウイが出たカセットテープはまだうちにある。通訳はピ―タ・バラカン氏だった。

その後、夜の11時になったら「クロスオーバーイレブン」。この番組は曲を最初から最後まで遮らずに通しでかけてくれたので、曲を録音したカセットテープが沢山溜まった。中高生ならともかく、女子大生になってもまだラジオの前で毎晩エアチェックをしてカセットを作っていた私には当然ボーイフレンドも出来なかった。でも楽しかった。


Walk out to winter, swear I'll be there
冬に向かって歩こう 僕はきっとそこに行くと誓うよ
…はくどいので、「僕はきっとそうするよ」とした
And breathless we talked, it was tongues
=熱のこもった議論/主張の様子だそうだ




Walk Out to Winter
Aztec Camera
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冬に向かって歩こう 
誓うよ 僕はきっとそうする 
寒さは君の目を覚まさせる 
何もない状態で
君はなぜだろうと考えるだろう


僕らは夏に出会って 秋まで歩いた
息が切れるまで喋った 熱を持ったように
世間が言うのとは違って
それは若さではなかった
僕らは本質を突いていたんだ

ジョー・ストラマーの顔写真が 部屋の壁から外れて
その壁の場所にはもう何もない
甘く、苦く 
それが僕らの見つけたもの
だからそれらを飲み干して


冬に向かって歩き出そう 
誓うよ 僕はきっとそうする
寒さが君の目を覚まさせる
何もない状態で
君はなぜだろうと考えるだろう
冬に向かって歩いていこう 
誓う 僕はきっとそうする
チャンスは埋められている 
眩い雪の直ぐ下に


君は燃え尽きてる
パンの配給やリボンや色々なもの全てに 
だから冬に向かって歩いていこう
君が遅れることはないよ 
君はいつも待っている

この世代は
壁に向かって歩いている
でも僕は怒っていない
さあ荷物をまとめて
ここから抜け出そう


冬に向かって歩いていこう 
僕はきっとそうすると誓うよ
寒さは君の目を覚まさせる 
何もない状態で
君はなぜだろうと考えるだろう
冬に向かって歩いていこう 
誓うよ 僕はきっとそうする
チャンスは埋められている 
眩い雪のすぐ下に

冬に向かって歩こう 
僕はきっとそうすると誓うよ
寒さは君の目を覚まさせる 
何もない状態で
君はどうしてだろうと考える
冬に向かって歩いていこう 
誓うよ 僕はきっとそうする
君はきっと見つけるだろう
雪に目が眩みながら
これが人生
これが人生

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Songwriters: Roddy Frame

2025年7月21日月曜日

渋谷陽一さん ありがとうございました



さっきYahooのニュースで知った。

「こんばんは、渋谷陽一です」で始まるサウンドストリートを、中学から大学を卒業するあたりまでず~っと聞いてました。まさに私の青春です。当時の私は音楽と西洋のロックスターの事しか考えていなかった。三度の飯よりも音楽のことを考える生活。中学や高校の私にとって当時の洋楽と洋画は世界に向かって開かれた窓でした。

渋谷さんのNHKのラジオ番組サウンドストリートで、様々なアーティストの新しいアルバムの曲を初めて聴いたと思います。毎週どのアルバムが紹介されるのか楽しみにしてました。David Bowieの『Scary Monsters』で「新聞は書きたてるさぁ~」を聴いてびっくりしたのもサウンドストリート。プリンスの『1999』と『Purple Rain』を聴いたのも この番組ではなかったかと思う。

渋谷さんのラジオは楽しかった。毎週新しいリリースのアルバムを最初に聞けるのが嬉しかった。いつも曲をカセットに録音して繰り返し聴いた。曲がいいと思ったらアルバムをお店に買いに行った。サウンドストリートと rockin' on で私の音楽好きが固められた。


渋谷さんは Led Zeppelin がお好きで、しかし Queen は「仰々しく派手で大げさすぎるから」とお好きではないと聞いてちょっと悲しくなったこと。高校の時に、渋谷さんファンの先輩と Queen のことで大喧嘩をした思い出。 それでも Queen の『The Game』と『Hot Space』に『The Works』を聴いたのは渋谷さんのサウンドストリートではなかったかと思う。そういえば渋谷さんは『The Works』のレビューで「さらっとしていてQueenらしいこだわりがなくなった」と仰っていたような気がする。私も同じように思ったと思う。

たぶん Pet Shop Boys『Please』、Style Council『Café Bleu』、Aztec Camera『High Land, Hard Rain』…「Walk Out to Winter」がとてもいい曲だと仰っていた、Swing Out Sister「Breakout」もこの番組で最初に聴いたと思う。ディスコが廃れた後に出た CHIC の「Soup for One」が流れたのも渋谷さんの番組だっただろうか。


雑誌の『rockin'on』も1979年頃から時々買って読んでいた。当時同時に買っていた『Music Life』に比べて rockin'on はまだ薄い雑誌だった。毎月続けて買って順番に本棚に並べると、背表紙が繋がって一つの写真になったと思う。その後1985年を過ぎてから rockin'on はどんどん分厚く豪華になっていった。バブルの頃に仕事が忙しくなってラジオを聴かなくなり新しい音楽が追えなくなっても、習慣のように新しいアーティストの情報を求めて私は rockin'on を買っていた。渋松対談でニヤニヤし、(個性的な翻訳の)アーティストのインタビューを読んでそれだけでOKだと思うようになっていった。それは日本を離れる時まで続いた。


渋谷さんが、デビューした頃の Cheap Trick を推していらしたことを知ったのは、バンドが1988年に大復活して来日した頃の事。メンバーとも親しくなさっていたらしく、たぶん1992年か1994年の来日の時に、ライブの後でどこかの会場のバックステージの出入口に近いところに渋谷さん御本人をお見かけして嬉しくなった。


渋谷さん、ありがとうございました。渋谷さんのおかげで濃い濃い音楽マニア/音楽オタクになれました。今はロックは聴かなくてダンスチャートばかりチェックしていますが、私が未だに「新しい音楽」に執着して日々「新しい音楽」を求めているのは…そしてそれを趣味として楽しめているのは渋谷さんのおかげだと思います。中学、高校、大学の頃は、渋谷さんが音楽の師匠でした。渋谷さんのラジオと rockin'on には大変お世話になりました。ありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。