私は詩がまったくダメな人間。言葉を読んで努力をしないと意味が頭に入ってこない。詩を味わう以前に詩を味わうために考えこむ時間がもったいなくてまず興味が湧かない。即物的な人間なんだろうかと思う。情も薄い。
自分から詩を書こうなんて考えたこともない。詩を書くために頭の中で回る自分の自意識が気持ち悪くて自分で全部否定してしまう。詩なんてゼッタイに書けない。恥ずかしい。
そんな風だからたぶん詩も信じていない。詩人もたぶん信頼していない。どんな人達なんだろうと思う。自分の言葉に酔っちゃったりするんだろうか?それだけでうひゃ~…なのだ。
だからこそ詩人とはどんな人なのか興味津々。
録画していた谷川俊太郎さんのこのトークは本当に面白かったです。人生の大先輩を「面白い」なんて失礼な言い方なんだろうけど他の言葉が見つからない。「興味深い」とは違うと思う。本当に面白い…楽しいお方。
たぶん谷川さんのお話を聞くのは初めて。詩人・谷川さんのことはもちろん存じ上げておりますが、そもそも詩に対して距離があるので、谷川さんがどんなお方なのか全く知らなかった。
このお方はやっぱり言葉の達人。おっしゃる事がものすごくわかりやすい。ものすごくクリア。
一般に人間の話し言葉というものは、その場の状況や感情に流されて(自意識=照れや恥などの)色んな付属品やゴミがついていて、本当は何が言いたいのか判らないことも多いものなんだけど、谷川さんのお言葉は、
明確。
ものすごくクリア。はっきりとしてわかりやすい。質問に対する答えの言葉がこんなに明確にわかりやすいインタビューはめったにないかも。それが本当にすごいと思った。
言葉によどみが無い。ノリだけ雰囲気だけの言葉が無い。物事の説明が的確。会話の相手の言葉に対しても冷静。
詩そのものに対しても冷静。言葉での表現についての現実的な考え方にも大変驚いた。
詩そのものに対しても冷静。言葉での表現についての現実的な考え方にも大変驚いた。
インタビューの内容も面白い。谷川さんご本人が面白い。宇宙人。一人っ子。お一人がお好き。(詩人なのに)言葉があまり好きじゃない、人は木の年輪みたいに年を取る。電気関連が好き。クラシック音楽好き。オーディオマニア。本と電子メディアについて…電子メディアの件は同感です。ほんとにそう。
このお方ちょっと好きだ❤素敵。
それにしても人生の大先輩の方々のお言葉は淡々として明確なことが多いのが面白い。以前TVで見た高倉健さん、瀬戸内寂聴さん…お二人とも飾らないお言葉がとても印象的だった。年齢を重ねると妙な自意識や感情に流されることなく、思った言葉が一直線に出てくるようになるんだろうか?真っ直ぐな言葉はかっこいいと思う。
以下トークから谷川さんのお言葉。時々また思い出して読みたいので書きとめておこう。
-----------------------------------------------・僕、言葉あまり好きじゃない。出来るだけ言葉を使いたくない。
・宇宙人と言われている。宇宙人に常識なんかないですよね。詩に出ているそうだ。
・若い頃は自分のポジションが気になる。僕は一人っ子で兄弟喧嘩もしてないし、親ともうまくいったから…自分の場所を宇宙の中の1点と思った。…地球上の人間関係が無いんですよ。だから宇宙の中の生き物みたいに思った。
・「無常識」に見えてもしょうがないかな。でも生活は大事にする人間なんですよ。…僕はまず生活。まず金をちゃんと稼いで妻子を養うって基本的にずーっと変わってない。
・(奥さんと)喧嘩したことない。相手の主張に反省することが多い。日々反省。
・(情が無いことについて)…どうもそうらしいですね。でもだんだん情が出てきますね。年取ると。例えばね、年とってくると同世代の友達がいなくなる。友達を大事にしようというふうになる。僕友達いらない人だったから。一人がいいって人。今も基本的にそうだけど、友達も大事。
・(情から詩を書くのではなく)僕は離れて書く。人間にしろ書く対象にしろ、ひいて書かないと書けない。
・(『子供達の遺言』のアイデアは)…子供に遺言なんてえらそうで出来ないから、子供に遺言された方がいい。
・(赤ちゃんの気持ちはどう書くのか)…気持ちって言うより認識っていうもの。感情ではなくて理詰めで赤ん坊の立場に立ってる。自分の中に赤ん坊も幼児も少年もいると思っている。人間は同心円的に…年輪みたいに年をとっていくと思っている。中心にはいつも生まれたばかりの自分がいる。だから幼児の気持ちも赤ん坊の気持ちも、ある程度想像ができる、自分の中から。
・若い頃、詩を書くのそんなに好きじゃなかった。言葉とか詩とか、あんまり好きじゃない。だっていいかげんじゃない言葉って…すごく。だからこそ詩をかかなきゃって思う。言葉を超えたいと思って詩を書く。言葉ってどうしようもない。言葉って困ったもんだって気がするの。
・基本的に言葉っていうものに疑いを持ちながら書いてる。人間関係もそう。本当の言葉って無いんですよ。意味が無いの。だからもともと不可能なことをやるのが詩っていうもんなんだろうねって思うんですけどね。
・絵を見ながら言葉が生まれてくるのを待ってる時間の方が長いですね。なんかぽこっと出てくる。それから直していく。
・この頃詩を書くのが面白くなってきた。他の欲望が無くなって来たんですね。
・(本について)…一種の工芸品みたいな…それが詩集としては必要なんだなと思いました。ただ文字データがあればいいだけじゃないんですよ。だから…電子メディアで読むのと本になったのを読むのと全然違いますね。
・(電子メディアは)味気ない。意味しか通じない。詩は意味以外のものがいっぱいあるわけなんですよ。言葉の音とかね。そこから湧いてくるイメージとか。ディスプレイで読むと他の情報と全く同じように詩が見えてしまう。詩が立ってこない。
・本になるとその本の個性みたいなものが詩を応援してくれてるというのかな…そういう感じがすごくいい。
・実はね僕ね、詩が好きで詩が必要で詩人になったわけじゃないんですよ。音楽のほうずっと大切だった人間なの。音楽がなかったら生きていけないけど、詩はなくても生きていける。
・(音楽を)聴いたあとに言葉が出てくる。
・(詩は)自由に解釈してください。解釈はいっぱいあっていい。多少間違った解釈でも、その読んでくれた人が感じたとおりに感じてもらえれば一番嬉しい。自分でも思いつかない解釈があると嬉しい。
・詩を書くことで安心する。安定するのが嬉しくて詩を書いてるってとこもある。
・(詩はどのように生まれるか)…下のほうから足を通って湧いてくる。待っていると思いがけない言葉がふっと湧いてくる。日本語っていうすごい豊かな土壌に自分が根を下ろしていて、その土壌から吸い上げてくるみたいな感覚なんですね。
・リズムで書いた詩って全然面白くない。(後で推敲するけど)最初はぽこっと出てくるほうがいい。
・(幸せなとき)眠ってる時。
・(詩は)嘘。基本的に嘘。言葉の上だけのことですね。美しい日本語を書く事を一所懸命やってるから、美しい日本語は嘘だろうが本当だろうが美しくて、人を感動させるんじゃないでしょうか。
・(現代の言葉について)どんな日本語でもOK、活き活きしていれば。活き活きしてるのが一番大切。