能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

この度の能登半島地震で 被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。 一日も早い復興をお祈りいたします。 ★NHK による様々な支援情報 能登半島地震 義援金・支援金の受け付け始まる 窓口まとめ 【随時更新】 https://www.nhk.or.jp/shutoken/ne...

2012年11月4日日曜日

映画『クラウド アトラス/Cloud Atlas』:大作です・一言では言えない

 
 
-------------------------------------------------------------------------------------
『Cloud Atlas(2012年)/独, 米, 香港, シンガポール/カラー
/172分/監督;Tom Tykwer, Andy Wachowski, Lana Wachowski』
-------------------------------------------------------------------------------------
 
 
2回見ました。
 
前情報無しの1回目はとにかく「???」な状態で大変混乱する。172分の大作で時間を追うごとに次第に形は見えてくるのだけど、とにかく最初は訳がわからない。ちょっと眠りそうになった。見終わって「なんだかすごい話…」「なんとなくこんな話かな…」とぼんやりと解ったような解らないような…解っているつもりの内容が正しいのかどうかもあやあふやな状態で(私の英語の聞き取りの問題も大きい)、これはいかん…ともう一度見に行くことにした。旦那Aも一緒に2回目。
 
なんと…いい映画ですよこれ。本当によくまあこんな映画を作ったもんだと思う。分かりづらくしているのは構成のせい。一見繫がりの無いバラバラの時代のバラバラの話が細切れにバラバラにくっつけられて交互に出てくるので大変混乱する。だけど2回目に見るとぜんぶ辻褄があうからすごいです。
 
素晴らしいです。ほんとにほんとにスケールの大きな大きな話で、まずそれだけで感動する。手塚治虫さんの『火の鳥』や、アーサーCクラークさんあたりのSFを思い出した。たぶんSF小説に詳しい人なら同じような話がもっと見つかるのかも。ほんとに大きい話。
 
 
~●~
 
ネタバレ注意(謎解き的な解説です。基本の話を理解すればそれ程複雑ではないです。ただ話の謎解きに0から挑戦してみたい方はこれ以降を読まないで下さい。混乱させられるのも娯楽だと思います)
.
.
.
.
簡単に話の内容をまとめると…。
出てくる時代は6つ。
 1. 1849年の南太平洋、アメリカ人の弁護士と奴隷。
 2. 1936年の英国、作曲家と筆記者/アシスタント(作曲家)。
 3. 1973年のカリフォルニア、ジャーナリスト。
 4. 2012年の英国、編集者でのちの作家。
 6. 2144年の韓国ネオ・ソウル。
 7. その数百年後、世界大戦後のハワイ島~宇宙。
 

もっとネタバレ注意(ここからはもっと踏み込んで内容を書いているので完全にネタバレです)
.
.
.
.
それぞれの時代は一つの例外(ゲイの恋人)を除いて直接の関係は無い。だがそれぞれの時代に生きる人物は、同じ人物の生まれ変わりらしい。その生まれ変わりを解りやすくするため、違う時代の別の人物を同じ俳優が演じている。例えば、19世紀の夫婦は22世紀の韓国で恋人同士になる。また70年代の惹かれあった男女は遠い未来で夫婦になる…といった具合。
 
それにそれぞれの時代の人物達の行動や記録も間接的に繋がっていく19世紀の人物の書いた本を30年代の作曲家が読み、その作曲家の曲を70年代の人物が聴く。2012年の人物の書いた本はいずれ映画になり、その映画を22世紀の女性が見る。その22世紀の女性がその数百年後に神様(偶像崇拝の対象)となる。そんなふうに時代は間接的に繋がっていく。
 
ここではネタバレをして映画の構成を全部解説してしまったが、これさえわかれば基本はそれ程複雑な話ではない。複雑なのは構成。前述したようにバラバラの時代が細切れにされて、それが交互に出てくるので非常に混乱する。
 
 
 
驚くべきは、6時代それぞれの話がかなり高レベルで仕上げられていること。全部編集し直して一時代分ずつまとめて見てもかなりいいんじゃないか。19世紀はいかにも時代劇風だし、2144年のネオ・ソウルは近未来バリバリのSF映画。それぞれが丁寧にお金をかけて作られているので、かなりの見ごたえ。おおまかに時間を計算すれば、ほぼ3時間180分÷6時代として1時代平均30分程の話になる。6本のショートフィルムを見るようなものだ。よくもまーこれほど詰め込んだものです。
 
2回目は話に集中して見れるので、映像の質の高さも俳優さん達のレベルの高さも、全てを良質のエンターテイメントとして楽しめた。実は1回目に、意味もなくバラバラに細分されてツギハギしただけに見えた編集が、2回目に見ると実は全て巧妙に考えられた編集だったというのにも驚いた。違う時代の場面に切り替わるタイミングが絶妙。ほんとうによく考えられている。これだけ手を広げてほんとによくまとめたものだと思う。非常に面白かった。やっぱりトム・ハンクスは凄い役者さんです。
 
 
~●~
 
特筆したいのは近未来韓国ネオ・ソウルの話。たぶん一番の目玉。非常にショッキングだからこそ、全体の話の中で大きな意味を持つ。ところで今までのこういう「近未来+アジア」の設定では、日本が舞台になることが多かったと思うのだけど、今回は韓国が舞台。おそらく今までに「近未来+TOKYO」の設定がありすぎたため(映画、日本のSF漫画、アニメなど多数)マンネリ化を避けるためではないかと思う。それにしてもまたアジアがこういう近未来の設定に使われたというのも興味深い。
 
同じアジア人としてもこの話は他の時代より気になる。なぜ2144年の話がアジアの話なのか。それはあの話が非常にショッキングで悲しいものだからではないかと思う。ああいう話を映像化するのに、顔の知れた西洋人の女優を使うと、欧米の観客にはかなり不快なものになる可能性があること。それに普段から女性の強い西洋ではリアルな感じがしないからではないか。西洋にまだぼんやりと存在する「穏やかでイノセントなアジア人の女性」のステレオタイプは記号として使える。それが理由だろうと思う。準主役とも言えるこのアジア人女性に抜擢されたのは韓国の女優ペ・ドゥナさん。
 
一般的に西洋ウケするアジアの美女と言うよりも、子供っぽい女優さんだなと思った。どちらかと言えば可愛いタイプ。子供のようにイノセント。言葉にもアクセントがあってたどたどしい感じだ(…と思っていたが旦那Aによると殆どアクセントの無い自然な英語だそうだ)。最初はこのキャラクター設定の意味が解らなかった。しかし話が進むにつれて彼女のイノセントさが非常に重要なのだということが解ってくる。子供のように純粋なキャラだからこそショック倍増。本当に悲しい。彼女のような若い女優さんを選んだのも演出上そういう効果を狙ったものなんだろうと思う。(成人女性なのに)あの華奢で幼い感じは西洋の女優さん達には出せないだろうと思う。難しいキャラクターを、英語が母国語ではないこの女優さんは本当によく演じていらっしゃる。彼女の顔が暫く頭から離れない。
 
 
ところで旦那A20世紀初頭の作曲家の話が好きだそうだ。若い筆記者/アシスタントの台詞が非常に上品で美しいらしい。音楽も美しい。
 
 
~●~
 
素晴らしい映画です。面白かった。見ごたえ十分。細切れで謎解きのような構成も面白い。それにしても大きな話。生まれ変わりの話だが、仏教の輪廻転生やカルマの法則のように、前にやった悪いことが後で自分に返ってきたり、前にいいことをしたから後は幸せ…というような話ではない。ただ淡々と、人間は何度も生まれ変わってそれぞれの時代を作っていく。そうやって長い長い時代を人類は紡いでいく…という内容。
 
そんな大きな話を、3時間でまとめるというのも無理難題だったろうが成功している。原作があるそうだが、おそらくこの手の話の重厚さを本の印象のまま映画化するのは無理だろうと思う。映画という時間の限られた表現方法で、よくこれほどの話を紡げたものだと驚いてしまう。
 
たまにはお金を大量に使った大掛かりな映画もいい。日常の生活の中での普通の人の心理劇もいいけど、たまにはこんな映画らしい映画というのも嬉しい。「うわ~っすごいなー」と思えることは素晴らしい娯楽。だから決して大作映画を切り捨てようとは思わない。近年大掛かりな映画というと、アクションとこけおどしばかりで中身の無いものが多いように思うが、この映画にはそれなりの思想やメッセージがある。これだけの娯楽大作でありながら真摯に話のテーマを貫ぬこうとした姿勢は素晴らしいと思う。
 
 
…ところで、またアジアの女性がああいう風に扱われたとか、アジアの都市だからって俳優全員を単純に特殊メークで小さい目にしてアジア人にするというのも強引だとか、多少違和感のある場面もあるけれど…この映画全体の完成度を考えれば、まあこういうことに文句を言ってもあまり意味は無いだろうと思う。
 
…一般の様々な感想を読んでみると、かなり激しく好き嫌いが分かれる模様。もちろんこんな映画を子供に見せてはいけない。トラウマになる。この映画を嫌う気持ちもよく理解できる。物議をかもしやすい映画であることは間違いないのだろう。
 
 
~●~
 
クレジットでドイツ人の名前を多く見かけたのだがドイツの制作なんですね。原作は2004年の英国の作家の作品。丁寧に丁寧に作られた見ごたえのある映画。俳優さん達も素晴らしい謎が多いのもまたいい。映画の魔法ももちろんあります。音楽も素晴らしい。大変満足。拍手喝采。
 
 
こういう映画がお好きなら2回見るのをお勧めしたい。2回目は本当によく解るから。
 
 
 
 

NHK ドラマ10『シングルマザーズ』第1回、第2回


録画していた第1回と第2回を一気に視聴。

沢口さんがすごい。見ていて苦しくなるほど。あの追い詰められた表情は演技とは思えない。彼女が他人の優しさに触れて、目に涙がたまってくる表情を見て思わずもらい泣きした。表情の変化がすごい。脚本も巧みなんだろうと思う。子役もすごく上手い。なんとかしてあげたくなる。この二人を心から100%応援したい。

田中哲司さんの旦那さんが怖い。この俳優さんは今までテレビで3回お見かけしたが、すごく気になる。ほんとに気になる。1回目は「龍馬伝」の眉無しの徳川将軍慶喜(写真に全然似ていない)。2回目は保険殺人のドラマ。優しい人だったと思う。3回目はこれ。怖いです。どうしてなのか判らないけど、この俳優さんにはとても興味が湧いてしまう。コメディもいけると思う。何でもいけそうだ…なんとなく勘。すごく気になる俳優さん。

シングルマザー友の酒井若菜さんに北斗晶さん、優しいカレー屋の田島令子さんもいい。周りの女性達に沢口さんが励まされながら話が進むんだろうな。特に北斗さんがいい。ああいうハートの大きな女性に憧れる。

それから高橋淳子さん。彼女の暖かさが素晴らしい。ほんとに素晴らしい。沢口さんに気持ちを入れてドラマを見てしまうので、高橋さんの暖かい大きな笑顔を見てこっちも泣きそうになる。その時の沢口さんの表情がほんとにすごい。

新しい状況にとまどって苦しんでいる沢口さんが、強く生きる周りの女性達に助けられ励まされながら進むストーリはそれだけで心を動かされる。

それにしても最後の旦那は怖かった。

 

2012年11月1日木曜日

The Power Station – Communication (1985)

 
 
ロックですけど。
 
 
 
The Power Station – Communication (1985)爆音注意

Album:  The Power Station
Released: Mar 1985
℗ 2014 Parlophone Records Ltd, a Warner Music Group Company
 

 
Duranつながりでこれも…。これは臨時のバンドです(と思ったら96年にセカンドアルバムも出していた)。前述のDuran Duranのジョン・テイラーさん(Bass)、アンディ・テイラーさん(ギター)、それになんと70年代DISCOの勇CHICのトニー・トンプソンさん(Drums)、そこに白人ソウルシンガーのロバート・パーマーさん(渋い)をボーカルに迎えて出来たスーパーグループ(ほんとに当時そう呼ばれてました)パワー・ステーション。おまけにCHICのベースのバーナード・エドワーズさんがバンドをプロデュースという夢のようなお話。なんだかよく判らないけど並んだ名前だけで凄そうなバンド。
 
実は売れに売れていたDuran Duranの、ちと軟派気味な音があまり好きではなかったのだけど、そのベースとギターがもっと激しい音楽をやるというんで早速飛びついた。それにCHICのリズム隊が全面バックアップ。これで悪いわけがない!
 
出来上がった音はまぁー重いです。ドッカンドッカンいう音。アルバム全部爆音。うるさいです。特にドラムが大きいんだけどDuran Duranの二人もこれでもかと言わんばかりに鬼のように弾きまくってます。たぶんDuran Duranでやれなかったことを全部やってる。音は全然CHICっぽくなくてずーっと重かった。それにロバートさんの粘りのある渋いボーカルもすごく大人。今聴くとどうもこの音のでかさだけで有難がってたような気もする。

ドラムが若干遅れ気味…わざとタメのある叩き方をしているように聴こえる。このタメのせいで音がファンキーで重厚。汗を飛ばしながら叩いたドラムの音という感じ。これがかっこいい。思わずエアドラムをしてしまう。今の一切タメの無い打ち込みドラムとはまた違った趣。昔はこんなリズムで踊ってたんですね。

元歌の3倍くらいやかましいT-REXのカバー「Get It On」や、オリジナルの「Some Like It Hot」もよく売れました。当時結構な人気で、伝説のライブエイドにも出たんだけど、ボーカルのロバートさんが他の人(マイケル・デ・バレス)になっててびっくりした。
 
もう1曲。これも爆音。この曲はアイズレー・ブラザーズの「Harvest for the World」のカバー。細かく小節ごとに歌う人が違うっぽい。元気いっぱい。
 
 
The Power Station - Harvest For The World (1985)(爆音注意

2012年10月31日水曜日

Kajagoogoo - Turn Your Back on Me (1984)



リマールがいなくなった…。



Kajagoogoo - Turn Your Back on Me (1984)

Album:  Islands
Released:  Dec 31, 1983
℗ 2004 Parlophone Records Ltd, a Warner Music Group Company

またまたカジャグーグー。さて、最初のシングル「君はTOO SHY」が大ヒットして、彼らがすっかりアイドルバンドとして認知された後、バンドは他の方向を探し始める。どうやらボーカルのリマールさんがアイドルバンドでいきたかったのに対し、ほかのメンバーはもっと硬派なテクニック重視のバンドになりたかった模様。結局軟派なリマールさんは首になってしまった。(…と思っていたんだけど、どうやら金銭問題だったらしいと 日本のWikiには書いてある。)

そこで出されたのが、2ndアルバム「Islands」。この曲はそのアルバムからのシングル。ボーカルはBass のニックさん。最初に聞いたときは、あまりにゴリゴリのファンク/フュージョンバンド風でびっくりした。

もともとリマールさんは後から入ったメンバーで、他のメンバーはもっと通受けのする硬派な音楽をやりたかったらしい。それなのに「君はTOO SHY」でアイドルバンドとして売れてしまった皮肉。

当時の私は彼らを特にアイドルとして好きではなかったので、この変化はむしろ喜んだ。それにタンポポ頭の大男ニックさんのほうがいい男。Bassが上手い。「Islands」はなかなかいいアルバム。ずいぶんファンキーな音。女子中高生よりも男の子に受けそうな気もする。

ところがそれが問題だった。あまりに上手すぎて硬派になったせいで、若い女の子のファンが離れてしまった。もともと優しいルックスのリマールさんは欧米の女子小中高生にウケていたらしいのだ。アイドルバンドの2ndアルバムを期待していた女の子達には、このアルバムの音はウケなかったらしい。結局このアルバムは英国のチャートでも35位にどとまり、その後このバンドのこともいつの間にか聞かなくなってしまった。

なかなか音楽が売れる理由と言うのも難しい。私もこの曲が出た当時は2ndアルバムのほうがいいと思っていたけど、あらためて聞き直してみるとポップソングとしては1stアルバムの方がいいのかも。結局リマールさんの声に艶があってアルバム全体としても良質のポップスに聞こえてしまう。おそらく1stアルバムの「君はTOO SHY」や「ハングオンナウ」のほうが曲として記憶に残る。音楽は上手いだけではダメなんでしょう。

ところでこのバンドは結局1986年に解散したんだけど、2008年辺りからオリジナルメンバー5人で再結成をしたらしい。そりゃ目出度い。オフィシャルのサイトにいくと皆びっくりするほどおっさんだぞ。でも見たいな。
 

2012年10月30日火曜日

Kajagoogoo - Ooh To Be Ah (1983)



Duran Duranを出したらこの人達も出したい。



 Kajagoogoo - Ooh To Be Ah (1983)

Album:  White Feathers  
Release:  Dec 31, 1981
℗ 2004 Parlophone Records Ltd, a Warner Music Group Company


Kajagoogooは確かDuran Duranの弟バンドみたいな感じで出たんじゃなかったかな。よく覚えてない。このバンドも顔のいいメンバーが多かった。Duran Duranの弟なんて言われていたけど、今調べたらメンバーの年齢はDuran Duranとそれほど変わらない。デビューアルバムの83年の時点でボーカルのリマールさん25歳。ベースのニックさん22歳。他のメンバーも25歳前後。

Duran Duranと同じく彼らも暫くはアイドルバンドの扱いだったと思う。だけど実はかなり実力派のバンドだったと思う。良曲「君はTOO SHY」が世界中で大ヒットしました。リマールさんの声が良かったんでしょう。とりあえずここではデビューアルバム「White Feathers」から、もう少し踊りやすい「Ooh to Be Ah」にしよう。この曲のオフィシャルPVがあるとは知らなかった

この人達が出てきた頃は、英国の面白いバンドがごまんと出てきた頃で、あまりにその数が多くて一つのバンドに入れ込むこともなかったけど、このバンドは良かった。今聴いてもいい曲が多い。音はDuran Duranよりも好き。初期のアルバム2枚は買ったけど、もっとしっかりファンになっとけばよかった。


これおまけ。たぶんリードボーカル以外はカラオケ。


Kajagoogoo - Kajagoogoo (1983)



 

2012年10月29日月曜日

映画『ウォールフラワー/The Perks of Being a Wallflower』:詰め込みすぎたか


------------------------------------------------------------------------------------------------
The Perks of Being a Wallflower2012年)/米/カラー
103分/監督;Stephen Chbosky
------------------------------------------------------------------------------------------------
 
 
これは評価をするのがむずかしい映画。

まずいいところから始めよう。

役者がいい。エマ・ワトソンさんはハーマイオニーを無事卒業できた様子。まだ将来彼女が七変化の出来る大女優になるかどうかは判らないけど、この映画のちょっとひねたきつい感じの高校生サム役は似合っていた。子供の頃に比べて絶世の美女になったとは思わないけど、ずいぶん大人っぽくなったもんです。もしかしたら癖のあるいい性格女優になれる可能性もあるかも。

それから主人公チャーリーを演じたLogan Lerman(ローガン・ラーマン)君は非常に上手い。痛々しいほどに傷ついた若い男の子を好演。普通の人物を普通に演じるのに説得力があっていい。印象に残らない地味な感じなのは演じているのか。実年齢20歳で15歳を演じている。若いのにいい役者さん。

強烈だったのは、主人公の友人パトリックを演じたEzra Miller(エズラ・ミラー)19歳。たぶん演じてた時は18歳なのかな。げげっ若いな。ルックスはアラン・リックマンを若くしたような顔。ちょっと前のロックスター風かと思えばアートな詩人風?…とにかくものすごく癖のある顔。いい男。とてつもない色気。この人はくるね。売れるんじゃないかな。西洋の時代劇でも60年代のドラッグ中毒でも70年代のジゴロでもなんでも似合いそうだ。まーそれにしても19歳とはまいったな。高い鼻から上唇にかけてが超エロい顔。

全員の演技がいい。そもそも悩めるティーンの話なのでこの3人の役者さん達も192022歳と非常に若い。普段あまりティーンの映画には興味がないのだけど、この映画は見ごたえがあった。みんな若いのに上手い。

内容は、一言では語れない。非常に難しいテーマ。一見中二病風サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」的な映画に見えるのだが(宣伝もそれっぽくやっている)、実は全く違う話。肩透かしと言うよりも、うんうん唸らせられてしまうような内容。ところで「ライ麦畑…」は私も18歳の頃に読んで、それはそれはもう感化されたものだが、どういうわけか現在内容を一切覚えていない。どうしてだろう…。

ともかく役者さん達がいい感じ。若い役者さんの魅力で惹き込まれる映画になっている。

それにしても、アメリカの高校生はませている。お酒もマリワナも車の運転もやる。日本の大学生よりも大人なんじゃないか。
 
-----------------
簡単に内容の解説をしたい。基本はティーン映画。高校でぱっとしない新入生の主人公が、なぜかロックスターまがいのカッコイイ先輩とお友達になって、カッコイイグループの仲間に迎えられるというもの。普通の高校生には夢のような設定。こういうフォーマットはどこかで見たことがある…と思ったら「トワイライト」の女の子もそんな感じだったかも。こういうふうな右も左も判らぬ主人公がステキなグループに受け入れられるという設定は他にも見た事があるぞ…。ティーンものの定番設定なんだろうか…。
 
-----------------

ネタバレ注意
さて、ここからは辛口の批評を。

「真面目にティーンの問題を扱った、一見中二病風サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」的な映画に見えるのだが、実は全く違う話だ」と書いた。そう、全然違うんです。

とにかくありとあらゆるあり得ない設定を重ねたキャラクター達。主人公のチャーリー君も、エマ・ワトソンのサムさんも、エロ顔のパトリック君もみ~んな問題を抱えている。それも半端無い問題。大変重い。

なので、映画の印象は「真面目に作られたいい映画」なのだが、よくよく考えてみると正直詰め込みすぎ。いろんなサブプロットがありすぎ。あまりにも色んな事を内包した設定なので、結果的に欲張りすぎた印象は否めない。なのであまり話を広げすぎたために、最終的に不器用にまとめられた印象が残ってしまった。実際にいろんなところで辻褄が合わなかったりもする。

それぞれのキャラの問題を追及するだけで、あと3つくらい別の映画が撮れてしまいそうだ。むしろそのほうが映画として良かったんじゃないかと思う。

いろんな問題を抱えたティーンの話で、それぞれの問題が超弩級レベルの深刻な話なので、そんなテーマの映画を貶すのは倫理的にいけない気がする。まずこういう話は、いい映画だとの前提で見るものだ。しかし冷静に考えてみると、深刻な話だからいい映画だというのは全くもって間違い。映画として素材も、俳優の演技も素晴らしいが、いかんせん問題を詰め込みすぎた。それに、ひねくれもののアウトサイダー達がクラスで一番かっこいいという設定もちと現実味が無いかも。

ところで私は彼らの親とも言えるような年齢なので、いろいろとアラが見えてしまったのだが、実際に高校生ぐらいの年齢の人が見たら、本当に素晴らしい映画なのだろうか。アメリカの映画データベースサイトでのこの映画の評価は非常に高い。しかし全体の雰囲気と、内容の重さ、俳優の演技だけで、高く評価されてしまったような気もする。

そういったところが「評価をするのがむずかしい映画」だと言った理由。決して悪くはない映画。いやかなりいい映画。ただ内容は、え~~!?な事も結構あると思う。

 
 

2012年10月28日日曜日

PerfumeファンクラブP.T.A.海外仕様の発足について


きたな…という感じですね。Perfume陣営、海外進出に本腰を入れたかなと思う。またまた勝手にPerfumeが海外でこれからどうなるのかを予想したい。

●まずは曲を世界で配信(アジアではCD発売)(済)。
●アジアでテスト飛行ライブ(←今ここ)。
●それから全世界に向けてファンクラブを発足(もうじき開始)。
●各国のファンクラブメンバー数を考慮して、アジア圏外の「ファンクラブツアー(またはそれに準じる規模の海外ライブ)も地道に始める。まさに「みんなに会いに来たよーありがとうツアー海外版」。どこの国に行くのかは、ファンクラブの状況次第だろうけど、まずアメリカはかたいでしょう。ロスとニューヨークあたりでしょうか。
●それと同時にアジア各国でのもう少し大きな規模のライブも継続して開催。アジア圏での人気も温存していく。


Perfumeの海外への進出はまだ始まったばかり。まずiTunesでは、今年の3月から世界に向けて現在進行形のシングル曲のリリースを開始。それから今夏から「LOVE THE WORLD」で、過去の楽曲も世界に配信されるようになった。とりあえず準備は整った。これからやりたいのは、ただ闇雲に当たるも八卦…的な海外戦略ではなく、地にしっかりと足を着けた海外進出。そこで考えられたのがファンクラブをベースにした確実性のある海外進出ということなのでしょう。

呼ばれて出かけていくAnime Expo.や海外フェスのような受身の進出よりも(1回見て直ぐに忘れられる可能性も大きい)、小規模とはいいながらも自分達で状況をコントロールできるファンクラブツアーのほうが、成功率もファンの満足度も高いだろうし、次の活動に繋げられる可能性も非常に大きい。無駄が無い。ファンクラブツアーの枠内で(Perfumeにとっても)安全に確実に客を楽しませ、それで様子を見ながら大きくしていったほうが無駄を極力抑えられる。とにかく、そもそも危険度の大きい(商売としては特にやる必要も無い)海外遠征なら、これぐらい慎重になるのも必要。そう考えれば非常に正しい選択だろうと思う。


以前のエントリー「Perfumeを海外へ」の16ページ目で、Perfumeの海外進出の段階を考えたのだけど、それをもう一度ここにあげたい。


今回のアジアツアーでは、この文の項目の2番と3番まで進んだ感じでしょうか。このエントリーの最大の間違いは、私が「Perfumeは欧州でうけてアメリカでは当たらないだろう」と思っていたこと。実はPerfumeはアメリカで売れてるんです。その事を書いたエントリーはこちら。
 
Perfumeはどこで売れているのか=西洋iTunes配信での動向を探る

iTunesでの曲の配信直後の反応を見ても、そもそも各国のiTunesでの売り方を見ても(欧州ではPefumeの楽曲の配信の仕方がまとまりに欠ける感じ=解りづらい)、アメリカのほうがいい結果が出ている。なので、アジア圏外のライブはまずアメリカのファンクラブ(または同じような小規模の)公演だろうと思う。売れているのかどうかも判らない欧州でのライブはあるのかどうか、今は判らないです。これもファンクラブでの状況次第でしょう。


もしPerfumeの海外進出が、最終的に上記の「レベル別海外進出」エントリーの、2番と3番で落ち着いたとしてもそれはそれで十分に納得できるもの。海外のファンを確実に喜ばせ、尚且つPerfume本人達も満足するような海外進出の方法を考えるのなら、これが正しい道でしょう。闇雲な海外進出は危険なんです。確実性を考えないとPerfume本人達を無駄に消耗させることにもなりかねない。ビジネス的にもまずこれが安全でしょう。1回目に成功してその後継続してやれるのならもっともっと素晴らしい。

とにかく面白いことになってきました。現地の状況も判らぬ海外の市場に、売る側が上から目線で、ただ闇雲に当たって砕けろ式の戦略ではなく、海外のコアなファンの気持ちを考えた「(Perfumeが)会いたかったよー会いに来たよーありがとう公演」というのは、間違いなく正しい正しい正しい。これがいかに正しいのかは(そもそも規模的にファンクラブ公演のような)今回の台湾ライブハウス公演の成功でも証明されたようなもの。海外での(比較的)小さな市場をむしろ利点であると考えて、現地のファンと一緒に作っていく温かいライブは、ファンみんなの心に残る素晴らしいものになるだろうと思う。

Perfume陣営には頭脳がいる。間違いないと思う。

おっとまた妄想してしまった…まずはファンクラブの結果次第ですね。ともかくPerfumeについていろいろと考えをめぐらすのは面白い…。さあどうなるか…。