能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2023年3月2日木曜日

NHK 趣味どきっ!『読書の森へ』本の道しるべ・第3回 ヤマザキマリ



NHKの 趣味どきっ!…の『読書の森へ』本の道しるべ シリーズ。去年の12月から今年1月にかけての放送。録画を放送の後すぐに見たのだけれど、とても面白かったのでメモしようと録画を残していた。心に残ったものを記録しておく。


第3回 
漫画家、随筆家、画家 ヤマザキマリさん
日本での初回放送日: 2022年12月20日
TV Japanにて


ヤマザキマリ(1967年4月20日 - )
日本の漫画家、随筆家、画家。東京造形大学客員教授。十代からイタリアに渡り、フィレンツェの国立フィレンツェ・アカデミア美術学院(イタリア語版)で美術史と油絵を学ぶ。その後、2002年以降、シリアのダマスカスや北イタリアにでの暮らしを経てポルトガルのリスボンに移住。米国シカゴを経て2013年よりイタリア在住。2010年に『テルマエ・ロマエ』でマンガ大賞受賞。その他受賞多数。


------ヤマザキさんは十代の頃からイタリアに留学なさって、そのまま欧州+中東+米国で暮らしていらしたそうだ。エネルギーに溢れたお方なのだろうと思います。彼女が「どうやって10代から海外でやってこれたのか。辛く困った時にどうやってその状況を生き抜いてきたのか?」その答えが少し見えた気がした。


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・藤子不二雄 『21エモン』
様々な宇宙人が旅館にやってくる話。

・オラフ・ステープルトン/olaf stapleton
(1886年5月10日 - 1950年9月6日)は、イギリスの小説家、哲学者。
 『スターメイカー/Star Maker』1937年
 『オッド・ジョン/Star Maker』1935年


子供の頃は昆虫図鑑を見て昆虫採集
「虫は意志の疎通ができない。通じ合えない。価値観の共有ができないと一緒にいられないという概念から逸脱する。「海外で緊張しないの?」などと聞かれるが、虫と一緒にいると、自分に苦手な人がいてもそんなものかなと思う。手に負えない状況になってもあまり動じなくなる。昆虫が教えてくれることはいっぱいある」

------面白い。虫との交流を考えたことはなかったけれど。確かに。世の中には全く通じ合えない人というのがいる。それは私も日本を出てから学んだ。人は人、自分は自分、人と自分は違っていてあたりまえ、それでもOK…という考え方になっていく。


子供の頃、絵描きになりたいと思った
母から、画家は食べていくのが大変だからと…

・フランダースの犬
主人公の要領が悪い。行動力がないが故にああいう顛末になった。納得がいかない。

・アラビアンナイト
ずるがしこい。生きるための駆け引き。中東では「ずるい」は美徳。日本は「清く正しく信じること」が美徳。しかし中東では「人を信じて、裏切られても、泣いても、信じて騙されたお前が悪い」。生き延びる上で、疑う気持ちを端折ってはいけない。それは生きる知恵。「アラビアンナイト」にはそんな考え方がある。

------これはそう。よくわかる。「騙されない知恵を自分が持たねばならない、騙した相手を恨むよりも騙されないように自分を訓練しろ」…それを私もロンドンにいた頃に学んだと思う。相手の好意や親切心だけを頼りにしない。安心しすぎない。生きるために必要なこと。どこに行ってもそうだと思う。

・ニルスの不思議な旅
------これも冒険の話ですね。子供の頃に読んだ。


イタリアに留学して

日本の文学で何が好きか?と問われた。絵を描くためには様々なコンテンツが自分の中になければならないと説教された。まず本を読めと。

・安部公房『砂の女』
砂丘に閉じ込められる。「逃げられなかったから、逃げなかった。…おそらくそれだけのことなのだ」「夢も 絶望も 恥も 外聞も その砂に埋もれて 消えてしまった」。

------うわ~これは…そう。そうそう。この本は私は40歳を過ぎてから読んだ。この話は16、17歳ぐらいの高校生ぐらいの頃の私の心の状態だと、当時を振り返りながら読んだ。状況から抜け出せない苦しみ。どうやったら逃げ出せるのか。逃げられるのか。その描写がものすごい。恐ろしい話。だからすごい。


絵を描くしかない。苦しい。本を読むこと。

・安部公房
・ガルシア・マルケス 『百年の孤独』
・三島由紀夫 『豊穣の海』


苦しかったイタリアでの日々。本を読むことで満たされ支えられ、次の持続力になっていった。本は栄養。ガソリン。生き延びるための。ご飯より大事。


コロナ禍で
世界の在り方を感じた本

・エドガール・モラン/Edgar Morin
(1921年7月8日 - )フランス・パリ生まれの哲学者 社会学者
・『祖国地球 - 人類はどこへ向かうのか』
これから私達が学ぶべきなのは、地球と言う惑星の人間として、存在し、生き、分かち、伝え、交感すること。
・『百歳の哲学者が語る人生のこと』
・『自伝: わが雑食的知の冒険』
・『意識ある科学』
・『失われた範列: 人間の自然性』


モランは、世界が西洋文明至上主義な広がりをしていることに反発心を持っている。それに共感した。モランは疑念 疑問 問いかけ それが常に絶え間ない人 それが知性。

今の世の中は知性や教養に対して省エネ。失敗がイヤだ 間違えたらイヤだと 精神性に対して非常に省エネで生きている人が多い。モランは逆。燃費が悪いほどの出力で、様々なことを吸収している。100歳超えてまだ元気。


本を読むとは

活字でないとトレーニングされない筋肉がある。漫画でも映画でもだめ。活字で精神力の筋力を鍛える。「これはどういう意味だろう」というのを飛ばさないで立ち止まって反芻してみたりするとほぐれてくる。そして楽になる。その後に何が起きたとしても。(後から)ああこれ、これってああいうことじゃん…と解るようになってくる。些末なことで悩まなくてすむ。本をいっぱい読んでいれば。
 


------ヤマザキさんは知的なお方。元々頭のいい方が、若い頃から外国の異文化の中で揉まれて生きてこられた…だからこそ、その長い経験から構築された彼女の生きる哲学は「深い」「現実的」。様々なことを経験なさっているからこその彼女の「考え方」が興味深いと思いながら拝見した。


2023年3月1日水曜日

Gryffin & Elley Duhé – Forever (2022)



永遠を求めて



Gryffin & Elley Duhé - Forever (2022)
Forever (feat. Elley Duhé) - Single
Gryffin
Released: October 28, 2022
℗ 2022 Darkroom/Interscope Records



アメリカのダンスチャートに入っていた曲。ここのところダンスチャートはアメリカの方がいい曲が多い。しばらく英国の曲をメモしていない。

ところでダンスチャートの曲というのは、若者が今どのような歌を聞きたいのかを反映しているのだろうと思うのだけれど、この歌のpre-chorusの歌詞「I run the red lights just to see how it feels/赤信号を突っ走ってどう感じるのか知りたい」に、今の若者の「もっと自由になりたい」という強い思いを感じる。切なく美しい。

その前の「I don't know how to belong out here/ここにどう馴染めばいいのかわからない」や「One day I know that I'll disappear/いつか私は消えるんだし」の歌詞にも今の若者の焦りや戸惑いが見える。そして彼らは刹那的にでも幸せを感じることができるのなら、それが永遠であればいいと求めているのか。

去年取り上げたAfrojack, R3HAB (feat. Au/Ra) - Worlds On Fire (2022)にも同じような雰囲気を感じた。今は世界中の様々な事柄で若者が不安を感じている時代なのかもしれませんね。どちらも若者達の気持ちを捉えた美しい曲。


この曲を聴いていてふと思った…
私達が歌や映画やメディアの中に見る風景というのは美しくて、若い頃の私達は「そんな美しい風景の中に自分も存在したい」と願い、憧れ、それを必死に追い求める。それが「夢」というもの。 しかし(誰にとっても)現実の日々はそれほど美しくもない退屈な日常の連続。若い頃の私達は、そんなあたりまえの日常にいつも少しがっかりしたり焦りを感じたりする。

月日が流れ、そんな(一度は若者だった)者も年を取る。そして自分の若かった頃を振り返り、ある日「あの頃私がいたあの場所は(実は)美しかったのだ」と気付く。「あの頃の私はあの美しい風景の中に生きていたのだ」とあらためて認識する。謎が解けたような気持ちになる。「美しい風景」は幻のように人の心の中に存在する。人生とは不思議なもの。


★Gryffin
Dan Griffithさん。米国カリフォルニア州サンフランシスコ出身のmusician、DJ、songwriter、 record producer。1987年生まれ。幼少時からクラシック・ピアノとギターを学び、南カリフォルニア大学でelectrical engineeringを学ぶ。2014年より活動開始。2016年よりコンスタントにUSダンスチャートに曲を送り続けている。ポップ・スターとのコラボ多数。2019年にデビュー・アルバム『Gravity』、2022年に『Alive』をリリース。MVではギターとキーボードを弾いているお方。

★ Elley Duhé
Elley Frances Duhéさん。米国アラバマ州出身のシンガー。1992年生まれ。2018年にZeddとコラボしたシングル「Happy Now」、また2020年のシングル「Middle of the Night」、2022年にMeduzaとコラボした「Bad Memories」が世界中でヒット。



Forever
Gryffin
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Forever, forever, forever and ever
Forever, forever, forever and ever
永遠に

Yeah, 宇宙/世界は一つの大きな場所
全てのノイズを切り抜けるのは難しく
そして人々は「無難にやったほうがいい」と言う
まるで何の選択肢もないみたいに

ここにどうやって馴染めばいいのかわからない
誰かの特別な人にならなくてもいい
いつか私は消えるんだし
だから私がここに存在する間は

赤信号を突っ走って どんなふうに感じるのか知りたい
手を高く上げて振って ハンドルにさえ触らずに
月の光のもとで飲んで、私の感じる天国は
永遠に永遠に続いていく

赤信号を突っ走って どんなふうに感じるのか知りたい
手を高く上げて振って ハンドルにも触らずに
月の光のもとで飲んで、私の感じる天国は
永遠に永遠に続いていく

Forever, forever, forever and ever
Forever, forever, forever and ever
永遠に


私が海の一滴のしずくだってことも わかってる
でも私は波になって 寄せては返し
どこかに流れつく 私がその一番乗りになりたい
人々が夢見る何かへ

ここにどう馴染めばいいのかわからない
誰かの特別な人にならなくてもいい
いつか私は消えるんだし
だから私がここに存在する間は

赤信号を突っ走って どんなふうに感じるのか知りたい
手を高く上げて振って ハンドルにさえ触らずに
月の光のもとで飲んで、私の感じる天国は
永遠に永遠に続いていく

赤信号を突っ走って どんなふうに感じるのか知りたい
手を高く上げて振って ハンドルにも触らずに
月の光のもとで飲んで、私の感じる天国は
永遠に永遠に続いていく

Forever, forever, forever and ever
Forever, forever, forever and ever
永遠に
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah

Forever, forever, forever and ever
Forever, forever, forever and ever

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Songwriters: Daniel Griffith / Elley Frances Duhe / Johan Gustav Lindbrandt / Leah Jacqueline Pringle / Patrick Joseph Martin
Forever lyrics © Sony/ATV Music Publishing LLC, Universal Music Publishing Group



2023年2月28日火曜日

NHK 趣味どきっ!『読書の森へ』本の道しるべ・第7回 鹿島茂


NHKの 趣味どきっ!…の『読書の森へ』本の道しるべ シリーズ。去年の12月から今年1月にかけての放送。録画を放送の後すぐに見たのだけれど、とても面白かったのでメモしようと録画を残していた。心に残ったものを記録しておく。


まずは第7回 
フランス文学者 鹿島茂さん
日本での初回放送日: 2023年1月24日
TV Japanにて


鹿島 茂(かしま しげる、1949年11月30日 - )
日本のフランス文学者・評論家。専門は19世紀フランス文学。元明治大学国際日本学部教授。オノレ・ド・バルザック、エミール・ゾラ、ヴィクトル・ユーゴーらを題材にしたエッセイで知られる。当初はフランス文学の研究翻訳を行っていたが、1990年代に入ると活発な執筆活動を開始し、1991年に『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞受賞、1996年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、2000年『パリ風俗』で読売文学賞をそれぞれ受賞。古書マニア(19世紀フランスの希覯書が主な対象)としても有名。猫好き。映画マニア。2017年7月5日、書評アーカイブWEBサイト”ALL REVIEWS”を開設。(Wikipedia)

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★雑誌マニアである
雑誌は出版された時代を反映している

・La Revue Blanche Editions de la revue Blanche
1889年創刊~1903年 フランスの総合芸術雑誌。当時の有名な作家や芸術家が取り上げられていた。

・Art et decoration (1911)(アール・エ・デコラシオン)
若手アーティスト達の作品を紹介した芸術誌。魚や虫のデザインの壁紙は日本の影響を受けていた。


★苦行としての読書

読書への挑戦①
日本文学全集
中学生時代から、日本文学大全69巻 を5年かけて読破
印象に残っている作家 徳田秋声
全集を配本順に読む。好き嫌いに任せたらまず読まない作家に出会うことが出来た。徳田秋声は自然主義の大家。『仮装人物』は大傑作。いい出会い。様々な作家の本を読んでいくと鑑識眼が養われる。

読者への挑戦②
世界文学全集
自分に強制して読む。それが快感になる。
高校生時代に世界文学全集を読破。

読書への挑戦③
大長編を読む
・マルセル・プルースト『失われた時を求めて』
・平家物語
・ミハイル・ショーロホフ『静かなドン』
ロシア革命に翻弄される人々。数世代に渡る家族の物語。
長編小説(特にその時代を描いた小説)は、その国の様々なことがわかる。小説から得る知識はストーリーの喜びの他にある。退屈な部分も一つの楽しみ。とにかく最後のページまで読む。

修行のような、苦行のような読書。すすめます。本は予測不可能。読んでみないとわからない。


★コレクター人生

●翻訳の仕事からコレクターへ

・ルイ・シュバリエ/Louis Chevalier
『快楽と犯罪のモンマルトル/Montmartre du plaisir et du crime』 河盛好蔵訳

作者が固有名詞に注釈をつけない。翻訳に困る。当時の原資料に当たるしかない。鹿島さんは1984年にパリへ。日本で高額だった古書がフランスなら手に入れやすいことがわかる。

・ルイ・レイボー/Louis Reybaud
『ジェローム・パチュロ社会的地位を求めて/Jérôme Paturot à la recherche d'une position sociale』
(1846)
パリが舞台、青年の人生。

その挿絵はグランヴィル/J. J. Grandville (Jean Ignace Isidore Gerard)(1803 – 1847)
風刺画/動物戯画で知られる。鹿島さんはグランヴィルのコレクターに

Scènes de la vie privée et publique des animaux
『動物の私的・公的生活情景』
2巻
(Scenes of the Private and Public Life of Animals)
a collection of articles, short stories and satirical tales (1841 to 1842)
バルザック/Honoré de Balzacを始めとする作家が寄稿

・タクシル・ドゥロール/Taxile Delord
『もう一つの世界/Un Autre Monde』Paris, Fournier (1844)
ルイス・キャロルや後のシュールレアリズムに影響を与えたと言われる

昔のフランスでは、本は仮綴じの状態で出版社から売られ、それを購入者が装丁屋に持って行って装丁を個人注文する。結果、内容は同じ本でも装丁によって10倍から100倍の値段が違うことも。


★本の未来・未来の本

「(現在は)本が出てもそれが書店に並んでいるのはせいぜい数か月。本は完全に消費財になっている。季節もののモードと同じ。それを過ぎるとほとんど価値がなくなる。(その後)本は出版社の在庫として眠り続ける」


●鹿島さんが作った書評サイト
好きな書評家、読ませる書評

2017年開設。明治以来活字メディアに発表されたすべての書評を閲覧可能にする「書評アーカイブ」の構築を目指すという。好きな書評家、読ませる書評、雑誌や新聞の書評を無料で公開している。検索可。


●本の未来は?

「紙の本はなくなる。それを想定してトリアージ(選択)が行われるだろう。自己表現系以外の本は全部なくなる。特に情報系は。時代の必然だろう。活字本はかつての写本のようになっていく。それは避けがたい…」
 
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ネット上で追加した情報と共にメモ

「紙の本がなくなる」…確かにそうなのかも。もうすでにKindleなどで大量の本がデータになって出てますね。情報系はなくなるとのこと。まだ想像できないけれど、確かに。…歴史上のどこかの時代(例えばローマ時代)の地図などは現在、印刷された本が出ていますけど、あれもいずれgoogle mapとか…ああいうものに入力されていくのか。

これは音楽のメディアにも言えますね。録音された音楽を聴くのは、LPレコード。そしてカセット、CDと変わっていった。そのCDが今、日本以外はほぼ商品としては廃れてしまっている。今音楽を聴くならサブスク、それから配信/ダウンロード、それに無料の動画サイト…などなど。音楽を聴くためにCDを購入する習慣はなくなりつつある。

実は先日ここに文を書いたフランツ・リストの曲…ピアニストのジョルジュ・シフラが録音した曲はどのくらいあるのだろうかと思い、手持ちのCDと動画サイトを調べたのだけれど、何と…「シフラのリスト曲の録音はほぼ全曲YouTubeに上げられている」ことに気付いてしまった。シフラが録音したリストの曲は、全て無料で聴けるということです。すごい時代。

ということは今、(日本以外で)レコードやCDを買うという行為は、ノベルティー的なものを求めること(アイドルグッズを買うのと同じようなもの)以外は、ほとんどないということかもしれません。いずれ本もそうなっていくということか。


それにしても19世紀のフランスの本の話がとても面白かった。グランヴィルのことも初めて知ったし、シュバリエの『快楽と犯罪のモンマルトル』も面白そうだ。 ショーロホフ『静かなドン』はロシア革命好きの旦那Aに教えてあげよう。


2023年2月23日木曜日

SG Lewis - Feed The Fire ft. Lucky Daye (2021)



SG Lewisさんをもう1曲



SG Lewis - Feed The Fire ft. Lucky Daye (2021)
Album: Times
SG Lewis
Released: February 19, 2021
An PMR / EMI release; ℗ 2020 Jasmine Music Limited t/a PMR Records,
under exclusive licence to Universal Music Operations Limited



SG Lewisさん の名前は去年初めて聴いたのだけれど、彼は2021年にこの曲の入ったデビュー・アルバム『Times』で英国のダンスアルバム・チャートの1位になっていたのですね。英国のアルバムチャートでも46位だったそうだ。

今その1stアルバム『Times』をYouTubeで聴いているのだけれど、CHICのナイル・ロジャース氏が1曲ギターを弾いていたり、キーボードにジャミロクワイのマット・ジョンソン氏がいたり、ダンス系のシンガーRobynさんが歌っていたりとゲストも豪華。すごくいいDisco、dance-pop、houseのアルバム。アシッド・ジャズそのまんまの曲もある。すごくいいアルバム。これから今年出たアルバムも聴いてみよう。

面白い。1994年に生まれた今20代の青年が英国で2000年より前に流行った音を出している。すごくいいアーティストを見つけたかも。


この曲も去年彼を知った後で動画サイトをつついていて見つけた。一番好きかな。ベースが忙しく音を出してるのがいい。クレジットにベースがないのでたぶんキーボードのベースなのだろう。

ボーカルは米国人のLucky Dayeさん。昨日の「Vibe Like This」のボーカルをなさっていた方。



Feed The Fire
SG Lewis
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[Intro]
One
楽しまなきゃ
Two
行動しなきゃ
Three
俺と一緒にやってよ
Four
ビートが止まったら, baby, もっとロックしよう


[Chorus]
俺たち 何かあるよね 俺はもっと知りたい
馴染みがあるんだ 以前もこんな気持ちになったことがある
そんな目でただ俺を見ないでよ そんなギラギラした目で
流れにまかせて
盛り上がろう

君の汗が滴って 俺の肌に染み入る
君を夢中にさせるから 俺を引き寄せて (pull me in)
俺の上に愛を注いで 欲望に滑り込んで
何が起こっても
炎を燃え立たせて


[Verse 1]
輝いてる
ダイヤモンドみたいに 君はどこに行っても
目をくらませるようだ
ステレオの音を落とさないで
見つけようとしてる
俺は君の迷路で迷ってる
絡み合う
すごくいい気持ち
待って
俺を試して
止めないで
続けて (keep going)
俺をその気にさせて 


[Chorus]
俺たち 何かあるよね 俺はもっと欲しい
馴染みがあるんだ 以前もこんな気持ちになったことがある
そんな目でただ俺を見ないで そんなギラギラした目で
流れにまかせて
盛り上がろう

君の汗が滴って 俺の肌に染み入る
君を開かせるから 俺を引き寄せて (pull me in)
俺の上に愛を注いで 欲望に滑り込んで
何が起こっても
炎を燃え立たせて


[Verse 2]
もっと高く
俺をがっかりさせないで
隠れている
君がコントロールする場所に連れて行って, yeah
見つけようとしてる
俺は君の迷路で迷ってる
絡み合い
驚くほどいい気持ち
待って 
俺を試してみて
止めないで 
続けて (keep going)
俺をその気にさせて 


[Chorus]
俺たち 何かあるよね 俺はもっと欲しい
馴染みがあるんだ 以前もこんな気持ちになったことがある
そんな目でただ俺を見ないでよ そんなギラギラした目で
流れにまかせて
盛り上がろう

君の汗が滴って 俺の肌に染み入る
俺が君を夢中にさせる 俺を引き寄せて (pull me in)
俺に愛を注いで 欲望に滑り込む
何が起こっても
炎を燃え立たせて

[Chorus]
俺たち 何かあるよね 俺はもっと知りたい
馴染みがあるんだ 以前もこんな気持ちになったことがある
そんな目でただ俺を見ないでよ そんなギラギラした目で
流れにまかせて
盛り上がろう

君の汗が滴って 俺の肌に染み入る
君を夢中にさせる 俺を引き寄せてよ (pull me in)
俺に愛を注いで 欲望に滑り込む
何が起こっても
炎を燃え立たせて

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Songwriters: David Brown / Dustin Bowie / Matthew Richard Johnson / Samuel George Lewis
Feed The Fire lyrics © Sony/atv Ballad, These Are Songs Of Pulse, A Man Broke Free Music, Music By Lucky Daye Publishing





2023年2月22日水曜日

SG Lewis, Lucky Daye - Vibe Like This ft. Ty Dolla $ign (2022)



去年の秋にアメリカのダンスチャートに入っていた




SG Lewis, Lucky Daye - Vibe Like This ft. Ty Dolla $ign (2022)
Album: AudioLust & HigherLove
SG Lewis
Released: January 23, 2023
An PMR / EMI release; ℗ 2023 Jasmine Music Limited t/a PMR Records,
 under exclusive licence to Universal Music Operations Limited



前のエントリーでピアノだ生の人間のエネルギーだと言いながらダンスチャートの曲をとりあげる。とは言ってもこれは80年代初期のバンドの音ですね。ビデオもなんだか80年代風ですが。タバコは吹かすし綺麗なお姉ちゃんたちは後ろで踊るし…。楽しそうだな。いい雰囲気。

3人で歌ってますけど、この曲は今年出たSG Lewisさんのアルバムの曲。去年の秋にはアルバムに先行してシングルで出てました。それで米国のダンスチャートに入ってた。曲はLucky Dayeさんとの共作。

このSG Lewisさんは英国人ですが今アメリカ在住なのかな。調べたら作曲で様々なアーティストとコラボしているらしいです。作曲がうまいのでしょう。将来有望。公式でYouTubeに上がっている新アルバムの曲もすごくいい。どれもいい。


★SG Lewis
Samuel George Lewisさん。英国人のシンガーソングライター+DJ+プロデューサー。1994年生まれ。このビデオではキーボードを弾いて首を振っているお方。2014年に活動開始。2015年にデビューEP「Shivers」をリリース。2017年にVirgin EMI Recordsと契約。何曲か曲を提供して2019年に1stシングル「Blue」。いくつかのEPを出した後に2021年にアルバム『Times』をリリース。その他にも様々なアーティストに曲を提供しリミックスも多数。今年1月23日にアルバム『AudioLust & HigherLove』をリリース。

★Lucky Daye
David Debrandon Brownさん。アメリカのシンガーソングライター。1985年生まれ。髪の短いアフリカ系のお方。ベースを弾いている。2005年に米のオーディション番組『American Idol』のシーズン4に19歳で出演。その後ソングライターとして活動開始。様々なスターに曲を提供。2018年にシングル曲「Roll Some Mo」でデビュー。EPを出した後、2019年のデビュー・アルバム『Painted』がグラミー賞のBest R&B Albumにノミネート。その後もEP『Table for Two』が2022年にグラミー賞の Best Progressive R&B Albumを受賞。次作アルバム『Candydrip』も2022年グラミー賞のBest R&B Albumにノミネート。色々とすごいですね。

★Ty Dolla $ign
Tyrone William Griffin Jr.さん。アメリカのシンガーソングライター+プロデューサー。1982年生まれ。髪の長い(コーンロウだっけ?三つ編みの)アフリカ系のお方。ギターを弾いている。このお方はbass gから始めてdrums、guitars、keyboards、MPCと全てマスターしたマルチプレイヤー。2004年から活動開始。

歌詞の途中で出てくるスティーブ・アーウィンって誰だっけ?と調べたら、あのオーストラリアの『クロコダイル・ハンター』のお方でした。


Vibe Like This
Lucky Daye and SG Lewis
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 [Chorus: Lucky Daye]
世界中を回ってきた
こんなvibeを感じたことはない
リスクを冒す価値があるかも
俺が逃した時間を埋めるためなら (time I missed)


 [Verse 1: Ty Dolla $ign]
俺の逃した時間を埋めさせて
世界中を回ってきた 次の旅には君を連れて行くよ
俺が車を止めたら これを滑り込ませる
君のステップを2歩 俺はこうするから
オーデマピゲの時計をしてるなら 今ほど最高のタイミングはない
G5, これほどいけてるものはないだろ
クロコダイルのビキニ スティーブ・アーウィンのためさ
君を取り戻すためならgirl, 俺は努力するから

 [Pre-Chorus: Lucky Daye]
行きたいところを教えて
嘘でもほんとでもいいから
俺のショーにおいでよ本物だから 俺を感じるなら
エネルギーを満たしてあげる
同時に 君の腕の中にいる間に 時間が止まればいいね 俺にも必要
君だけだよ 試してみたいのは


 [Chorus: Lucky DayeTy Dolla $ign, & Both]
世界中を回ってきた
こんなvibeを感じたことはない (never felt a vibe like this)
リスクを冒す価値があるかも
俺が逃した時間を埋めるためなら (time I missed)
Ooh, yeah, ooh, yeah
世界中を回ってきた
こんなvibeを感じたことはない (never felt a vibe like this, oh, no, no)
リスクを冒す価値があるかも
俺が逃した時間を埋めるためなら(make up for the time I missed)


 [Verse 2: Ty Dolla $ign]
君のpussyが今でも俺のものだって言って 俺のものだって
そして絶対に俺の仲間には許さないって
バリ島に行こう モルディブに行った後で
君がもしそれが本物だと言ったら 僕の家の鍵をあげるよ, yeah

この家を俺たちのホームにしよう
君がダイヤモンドとバラが好きなことはわかってる
君の目標を教えて
君が孤独を知ることがないよう保証するよ, yeah

 [Pre-Chorus: Lucky Daye]
君が行きたいところを教えて
嘘でもほんとでもいいから (hey, yeah, yeah, yeah, yeah)
俺のショーにおいでよ本物だから 俺を感じるなら
エネルギーを満たしてあげる (oh, woah)
同時に 君の腕の中にいる間に 時間が止まればいいね 俺にも必要
ここでは君だけだよ 試してみたいのは


 [Chorus: Lucky DayeTy Dolla $ign, & Both]
世界中を回ってきた (I did)
こんなvibeを感じたことはない (vibe like this, oh, yeah)
リスクを冒す価値があるかも (the risk)
俺が逃した時間を埋めるためなら
 (make up for the time I missed, ooh, woah)

世界中を回ってきた (I did)
こんなvibeを感じたことはない (yeah, ayy)
リスクを冒す価値があるかも (oh, yeah, oh)
俺が逃した時間を埋めるためなら
 (time I missed, I'm missing mine, oh-woah)


 [Outro: Lucky Daye]
Oh, 俺が逃した全ての時間
Oh, ooh-ooh, ooh, ooh
リスクを冒す価値があるかも, ayy-yeah, yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah, ayy

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Songwriters: David Brown / Tyrone Griffin / Samuel Lewis / Conor Quinlan
Vibe Like This lyrics © Songs Of Universal Inc., Dirty Hit Songs, Ducky Laye Music






ピアニスト・亀井聖矢さんを覚えておこう そしてリストはシフラ



この亀井聖矢さんのことを初めて知ったのは今年1月の『あさイチ』。番組ではリストの「ラ・カンパネラ」を弾いていらした。「お、うまいね~」

そして今日TV Japanの『あさイチ』の枠の後に放送された『クラシック倶楽部』。その番組でまた亀井聖矢さんがピアノを弾いていらした。彼の『あさイチ』でのカンパネラを覚えていたので早速拝聴。このライブの撮影は2020年の9月。ということはこの演奏の時の亀井さんは19歳。

亀井さんは2001年12月生まれ。去年の年末に21歳になったばかり。お若いのにもうすでに様々な賞を受賞なさっているそうで、去年2022年には、ロン=ティボー国際コンクールピアノ部門 第1位、評論家賞、聴衆賞を受賞なさったそうだ。すごいですね。

このお方はまだ21歳ならこれから個性が出てくるお方なのかもしれませんね。それでも『あさイチ』の「ラ・カンパネラ/La campanella」と、今日の『クラシック倶楽部』の「鬼火/Feux follets」と「マゼッパ/Mazeppa」はとても気持ちよかった。


「ラ・カンパネラ」はリストのよく知られる曲で、様々なピアニストの方々が弾いているのだけれど、この曲は好き嫌いが出やすい曲かもしれません。私は「ラ・カンパネラ」を始めとするリストの曲はまずジョルジ・シフラ以外のピアニストは聴かない。聴けない。もう30年ぐらい前から私は頑なにリストはシフラと決めていて、なかなか他のリスト弾きには心を開けない。ジョルジ・シフラ(György Cziffra)(1921~1994)とはハンガリー出身のフランスで活躍したピアニスト。リスト弾きで有名。

シフラのリストはいい。絶品。シフラはとにかく好き好き好き。なぜか?ダイナミック。エネルギーが大きいから。

全ての優れた芸術の条件として私が思うところを(私が個人的に心動かされるものを)私はこのブログでは何度か書いてきているのだけれど、とにかくパフォーミング・アート(他のアートも)は人から出るエネルギーが大切。そのエネルギーに心動かされる。エネルギーは大きければ大きいほどいい。そういう派手派手で激しく華やかなものが好き。

だからピアノはシフラ。しかしシフラはリスト以外はいただけない。何故か知らねどシフラの弾くショパンは聴けたものじゃない。癖が強すぎて気持ちが悪い笑(CDに入っていたのを1回聞いたらあまりに気持ち悪くて途中で放り投げたので何が悪いのかも語れない)。しかしリストだけはシフラが世界最高。


いや…それで亀井さんのリストもうまいなぁと思った。クラシック無知な私の受けた印象だけなのだけれど、彼の名前はここに記録しておこうと思いました。うまい。華やか。ドラマチック。お若いからなのだろうエネルギーが大きい。楽しい。クラシック音楽もエネルギーが大きければピアノでもオーケストラでも踊りたくなる。亀井さんのリストを聴いて踊りたくなった。(今シフラと比べてみたら印象が全く違いましたね。でも亀井さんのも好き)


余談ですけど…前述のシフラのリストはいいですよ。シフラの演奏は、激しいパートは戦車がどどどどっと迫ってくるような重低音。音の壁がすごい。エネルギーがとてつもない。重い爆音。一音一音がクリアで跳ねる時は異様なくらいポンポン跳ねる。キレがよすぎ。激しいパートは激しすぎる。それなのにロマンティックで優雅なパートは涙が出るほど美しい…心が溶ける。様々な音が極端過ぎる。しかしその音のうねりが琴線に振れる。音に惚れる。本当です。

シフラに出会ったのは、親の持っていたクラシックのLPのボックスセットで小学生の時。それから20代にいくつか東京でもCDを買って、その後ロンドンに移り住んでからは(彼が1994年に亡くなったことから)追悼CDのシリーズが出ていたので集めた(彼のショパンが酷いのはそれで知った)。ともかくシフラが好き。シフラは私にとってはロックスターです。かっこよすぎ。LOVE。また聴こう。久しぶりにCDを聴こう。

ピアノは昔から齧る程度…味見する程度には聴いてる。詳しいことは解らないけれど、聴いて感覚だけによる好き嫌いは確かにある。アルゲリッチ(Martha Argerich)のエネルギーは激しい。激しくてダイナミック。ショパンは、さぁ~誰だろう…フランソワ(Samson François)いやアシュケナジー(Vladimir Ashkenazy)か。ショパンは曲によって好き嫌いがあるかも。数年前にベートーベンのソナタはブレンデル(Alfred Brendel)がいいと知った。それから内田光子さんのモーツァルトも近年知った。基本の人々をほんの少し。…知識が昭和で止まっている。

ピアノはとにかく沢山の選択があり過ぎて、中途半端には到底理解できるものではないのだろう。時々思い出したようにピアノ曲を聴くけれど、いつも結局シフラに戻ってきてあまり他に広がらない。あんなに有名なホロヴィッツもほとんど聴いていない。

激しい奴が好き。激しくてゴージャスでロマンティックなやつがいい。元気のいいクラシックを聴くときはポップスやロックを聴くのと気持ちは変わらない。

というわけで若くて元気のいい亀井聖矢さんを記録しておこう。お名前はまさやさんと読むのですね。


今Youtubeで「mazeppa」と検索したらVan Cliburn International Piano CompetitionでのYunchan Limさんの演奏が出てきた。2022年の金賞の方だそうです。なんとダイナミック+ドラマチックで美しい。韓国の方でまだ18歳。最年少の金賞受賞だそうだ。すごいな。この曲は弾く人によって色が変わりますね。

今CDを取り出してきてシフラの「マゼッパ/Mazeppa」を聴いてきた。やっぱり癖が強い。ぽんぽん跳ねてます。跳ねてるのに重厚。うわ~真ん中はドラマチック過ぎ。泣きそう。すご~い。mesmerizing。くらくらする。リストのこれを聴いて19世紀の貴婦人が失神するのがわかる笑。このシフラのピアノをやかましいと言う人がいても私は驚かない。だからいい。



2023年2月21日火曜日

映画『めまい/Vertigo』(1958):画面が芸術的・古い名作は若い時に見るべし






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『Vertigo (1958)/米/カラー
/2 hours 8 minutes/監督:Alfred Hitchcock』
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コロナ禍が始まってまるまる3年。今もまだ映画館で映画を見るまでに至っていない。

コロナ禍以前に映画館に行っていた時は、まず新作の映画の宣伝を見てそれをRotten Tomatoesなどの映画評サイトでチェックし、良さそうなら映画館に行ってみようか…という具合だったのだが、その習慣もすっかりなくなってしまった。
その代わり、今は思いついた時にテレビで昔の映画を録画して見たり、Netflixやアマゾンプライムでドラマや新作を見ている。 それにしても配信サービスの新作なら世間一般で流行っている時に見ることも出来るのに、実際には勝手な時間に勝手なタイミングで見ることの方が多く、そんなわけで全体的に「今が旬の映画作品」を見ることはほとんどなくなってしまった。

去年の年末は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の感想を書くことに時間を取られていて、見た映画の感想も書かずにそのままになってしまっていた。そろそろ書き留めておこう。


ヒッチコックの『めまい』は1958年の作品。出演はジェームズ・ステュアートにキム・ノヴァク。名作だそうだ。そういえばこの映画は今まで見ていなかった。たまたま年末にテレビでやっていたので録画して鑑賞。

昔のハリウッド映画です。ヒッチコック作のサスペンス映画。原作はフランスのミステリーだそうだが、映画の舞台は米国サンフランシスコ。
タイトルは『めまい/Vertigo』。主人公のスコティ(ジェームズ・ステュアート)の高所恐怖症によるめまいの症状から。彼のめまいがストーリーの大きな鍵。


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映画の感想の前にアメリカのニュー・シネマについて書いておこう。

アメリカの映画は1970年以前と以降ではまったく別のものに変わる。

(今調べたのだけれど)1968年以前、アメリカの映画界にはヘイズ・コード/Hays Codeというものがあり、それにより様々な表現の規制があったのだが1968年以降にその規制がなくなった。また同時期には欧州を中心に「ニューシネマ運動」が世界中で起こっていて、映画の表現方法が若い世代により実験、開拓されていた。

…だから私が子供時代から見ていた70年代以降のアメリカの映画は暴力的でリアルでセクシーで生々しいものだったのか…

『イージーライダー』『真夜中のカーボーイ』『明日に向かって撃て!』『キャバレー』『チャイナタウン』『カッコーの巣の上で』『大統領の陰謀』 それらの60年代後半~70年代に名作と言われるリアルで荒々しい表現の映画は、それ以前のキラキラしたハリウッド映画とは全く別もの。1960年代半ば生まれの私は、そのような70年代の名作映画を見て「映画とは生々しくリアルであればあるほど良い、リアルで生々しい表現こそが映画の醍醐味である」と信じて育った。それらの映画は日本では「アメリカン・ニュー・シネマ」などと呼ばれ、また英語圏では「New Hollywood」「The Hollywood Renaissance」「American New Wave」などと呼ばれている。
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このヒッチコックの映画は、その「New Hollywood」以前に制作された映画。

いかにも作られたフィクション。おとぎ話。人が亡くなる事件を扱ったサスペンスなのに、画面はキラキラと美しい。ミステリアスな女「マデリン」を演じる女優さんは(英国人ヒッチコックの好みなのだろう)骨太大柄ギリシャの彫刻のような男顔美女キム・ノヴァク…彫刻のように美しいが頑丈な印象の女優さん。そしてフリーの探偵「スコッティ」を演じるジェームズ・ステュアートはスタイリッシュでお洒落。美男美女が出てくるマーダー・ミステリー。あまりリアリティはない。

この映画に1970年以降のリアリズムを求めて文句を言うのは意味がない。最初からリアリティなどは無い前提で作られている映画。事件があって展開があって捻りがあって、終わったかと思ったらまた先があって…としっかりフィクションとして書かれた脚本はまるでミステリー小説/本を読んでいるかのよう。この映画の人物達に繊細な感情の動きなどを求めてはいけない。俳優さん達は台詞を喋って、行動して、それにより何かが起こって…と、まるで舞台劇のようにストーリーは進む。

ひとつひとつの場面は絵画のように美しい。画面上のレイアウトや演出、カメラワークは冒険的。色彩も鮮やか。画面の中の色の配置がいちいちデザインされている。しかしそれがますます「嘘っぽさ」を強調しているようにも思える。

 
★ネタバレ注意
(ネタがなんぼの話なので未見の方はお読みになりませぬよう)



そしてストーリー。

ミステリー小説をそのまま映像化した…というのか舞台劇風というのか、ストーリーもいかにもフィクション。それでも女主人公マデリンがスコッティを騙そうと仕掛ける様々なトリックがいかにも嘘っぽいとわかっているのに、観客もいつのまにかそれを信じ始めてスコッティと共に騙されそうになるのが面白い。ふむふむと頷きながら見る。

そして一旦ストーリーは落ち着いて次のパート…マデリンにそっくりなジュディが出てきた時からまたまた嘘っぽさが増加。マデリンとジュディは明らかに同じ女性なのにスコッティがいつまでも騙されるわけがなかろう笑。スコッティさん騙されすぎ。

その嘘っぽさがいかにも昔のハリウッド映画で、それはそれで楽しめばいいのだけれど、どうしても「なんだよそれ~」と笑いが漏れるのはしょうがない。

そして最後はああそうか…そうなっちまったか…とふむふむ、そうかそうかと頷いて見終わる。そうですかそうですか。

やっぱりこういう嘘クサい話というのはどうものめりこめない。たぶん世代的なものもありますね。ワタクシは映画を沢山見過ぎた年寄りなのでこういう「いかにもな作り話」を素直に楽しむことはできなくなっているのかもしれぬ。この映画も18歳ぐらいの時に見たら間違いなく感動していたと思います。名作は若い時に見るべし。


見てよかったか?よかった。なぜ?あのヒッチコックの『めまい』だから。一度見ておいて損はない。じゃあ映画として面白かったか?うん。しかし感動はしない。ああそうか…とオチにもあまり心動かされず淡々と見終わった。結構尺が長い。何が良かったか?画面が絵みたいに綺麗。画面が美しくデザインされている。演出、カメラワークも冒険的で面白い。芸術的な価値があると思う。昔の観客にはかなりショッキングな映画だったのだろうと思う。衣装が綺麗。キム・ノヴァクはギリシャ彫刻のようだ。ごついけど。英国人の男には一定数ああいう彫刻のような大柄な女性を好む男がいますね。いるいる。

それにしても、あのスコッティがマデリンにそっくりなジュディを見つけた後「面倒をみてやる」と言いながらジュディにマデリンの髪型をしろだの、マデリンと同じ服を着ろだの、ジュディ本人を全く見ることなく、マデリンのコピーを作ろうとしているところには腹が立ちましたねぇ。最低の男でしょう笑。最悪だな。そんな男は殴ってさっさと逃げ出しなさいよジュディちゃん。

というわけでヒッチコックの名作は一度見ておいて損はない。古い名作はイノセントな若い時に見るべし