能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2023年11月29日水曜日

NHK 土曜ドラマ『ガラパゴス』全4話・感想



TV Japanにて。

このドラマは元々2023年2月6日と2月13日にNHK BSプレミアムおよびNHK BS4Kで放送されたもの。11月4日から11月25日まで1回45分×4話に再編集したものがNHK総合「土曜ドラマ」枠にて放送されたものを視聴。




★ネタバレ注意

㊟ 最初に印象だけで書いていた内容が間違っていたので修正しました。



問題提起のドラマ。

● 世界標準から孤立化(ガラパゴス化)する日本産業
→アジアの台頭に日本は取り残された 
→海外での競争力の低下
→企業は国内の市場に向けて独自の製品を開発
→ガラパゴス化
→企業は国の補助金で延命
→企業のコスト削減
→人件費削減
非正規労働者
→人材派遣会社と企業の癒着

ドラマは
● 非正規雇用問題
 劣悪な労働環境 低賃金 長時間労働(ドラマ内)
 与えられた劣悪な住環境 人を物として扱う過酷な現場
その上で…
企業が問題を隠蔽
 不正を告発しようとした者を殺害
→明らかにされた殺人事件も企業から警視庁への圧力で揉み消される
→企業と人材派遣会社はお咎めなし


最初は真剣に見ていなかった。しかし次第に第2話、第3話と引き込まれていった。

このドラマは苦しい。やるせない。本当に苦しくなる。

今の日本のとある場所、ある職場、ある会社…日本のどこかでこのような話が現実にもあるんじゃないかと恐ろしくなる。政治家の方々、企業のトップの方々、それから人材派遣業界…なんとか変わって欲しいと思った。なんとかして欲しい。日本を良くしてほしい。切実に願います。

まずドラマの出来がどうかというよりも、そのことばかりが最後まで頭の中を回っていた。


刑事・田川信一(織田裕二)が、自殺として処理された過去の事件を掘り起こし捜査するうちに、社会の闇を暴き出すストーリー。その闇が酷い酷い。そして最後に全てが握り潰される。不条理に憤りが止まらない。苦しいドラマ。しかしそれがドラマの意図なのだろう。

ひとつだけわかりづらかったのは警部補・鳥居のストーリー内の位置。おそらく4話だけのドラマなので尺が足りなかったのではないかと思った。最後の企業の揉み消しも、もう1話分あってもいい内容。急ぎ足で終わって惜しいと思った。


原作は相場英雄氏による2016年の小説『ガラパゴス』。見ていて苦しかったけれど、これは問題提起のドラマ。その意図に効果的な演出、ストーリー、脚本、そして俳優さん達の熱演。最初から最後まで重苦しい空気の流れるドラマだった。

悪徳企業に消された仲野定文(満島真之介)が悲しい。真面目な「いい人」の青年が消される社会。…しかしこれはフィクションの世界だけの話なのか?現実にも起こりうる話ではないのか。


最後の田川信一の台詞、

普通に仕事して、普通に飯が食えて、普通に家族と過ごす。そんな当たり前が難しくなった世の中なんてどこか狂ってないか

狂ってます。そのとおり。何度も頷いた。

国民の誰もが夢を持てる国。真面目に働く人々が十分に報酬を受けられる国、皆幸せになれる国。それが当り前のはず。 これを見て視聴者が怒ること…それがもしかしたら社会を変えていく力になるかもしれない。


日本の非正規雇用問題が以前から問題になっていることは日本の外に住んでいてもニュースで聞こえてくる。 苦しんでいるのは(もちろん正社員も苦しんでいるのだろうが)派遣労働者。彼らの収入は安定していない。また契約制で働いているので契約が切れれば職を失う。ボーナスもない。福利厚生も少ない。安定して職を続けられないなら「手に職」をつけられず、働いても働いても経験を次に繋げることができない。そして時間だけが過ぎていく。

現代の奴隷制。人を物のように扱うシステム。そしてそのあまりの酷さから日本人が職を離れれば、今度は海外から人を招き入れてその職に就かせようとさえしている(ここでは踏み込まないけれど)。

そのような状況が取り上げられ小説になり、そしてドラマ化された。問題提起。いいことだと思います。


政治家と企業が変わらなければ、この状況は変わらない。

もっともっと社会が…特に権力を持つ者、政治家、官僚、各組織のリーダー、企業のトップ、そのような社会の上にいる人々がこの問題に真剣に取り組まなくては、世の中は変わらない。

私は普段は海外から日本の問題を一方的には批判はしないようにしているのだけれど今日は正直に書いておこう。ニュースを長年追っていくと、政府の決定、政治家と繋がった企業、そして人材派遣会社の中抜き…などなど社会の上の層がどうも悪いことをしているのではないか…と思わずにはいられないニュースが目に付く。時にニュースから聞こえてくる…大企業や組織のトップが労働者に「文句を言うな、もっと働け、怠けるのはお前の選択だ、負けたのはお前の責任だ」などそのようなことを言っているのを見ると、とにかく頭にきて頭にきて頭にきてこのやろうお前らが搾取するせいじゃねーかと怒りが爆発する。


話が飛躍するが、それ以外にも気になることはある。

例えば政治家は…今は岸田総理が増税ばかりしているようだけれど、せめて増税をするのならその理由を聞かせてはもらえないかと思う。様々な新しい決定もなぜ決定されたのかの理由が知りたい。

わかっている。余計なお世話だと言われるだろう。私は日本の外にいて文句を言う資格がないことはわかっているけれど、ただ外から見ていて思わずにはいられないのだ。日本ではせめて市民が政治家に対して例えば「なぜ外国にお金をばらまくのか?」の理由は聞けないのだろうか…と増税のニュースを聞くたびに思う。物価の上昇とともに生活が苦しくなっているのは明らかなのになぜ増税をするのか?なぜ海外にお金を出すのか?政府は説明はしないのだろうか?…民主主義なら国民が納得してこその政治だろうに。

一方では物価高や(上記の)非正規雇用の問題などで人々の生活が楽にならない状況のニュースを見ていながら、また一方では増税のニュースを聞くといったい日本はどうなっているのだろうと思う。


なぜこのようなことが海外にいながら目にとまるのか。おそらくそれは、日本にいなければ雑音が少ないからだろうと思う。日本のTVのCMも広告も、物を売りつけるためだけの最新トレンドの情報も、数えきれないほどの雑誌媒体とその広告も、アイドル云々などなど各種芸能ニュースも…、Yahooのニュース等で自ら掘り起こす以外はほぼ見ることがない。雑音が少ないのだ。だからもっと気になる政治の決定や労働者の労働環境、時給、人材を海外から集めるやりかたや、ブラック企業の話…などなどの情報がよく目に入ってきて心に残るのだろうと思う。

その上でこのドラマを見ると心に突き刺さる。他人事だとは思えない。

私の好きな親戚の皆、友人達、彼らの子供達、孫たちは大丈夫かと心配になる。未だペットショップで売られている犬や猫のことも気になる。温泉の女湯には男が入ってくるのだろうか?日本の心配なことは沢山ある。


政治家の方々、企業のトップの方々、国の力とは、大企業が数字の上で成功して国のGDPが上がればそれでいいということではないと思います。豊かな国とは、全ての国民が、普通に仕事して、普通に飯が食えて、普通に家族と過ごして、子供たちが夢を見れる国、未来はもっと良くなると信じられる国、国民に時間と生活の余裕があって、その余裕をレクリエーションや学びや芸術などに自由に使えて、一人一人の心が豊かになれる国だと思う。このドラマを見てそんなことをあらためて考えさせられた。