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2023年1月31日火曜日

映画『ドント・ルック・アップ/Don't Look Up』(2021):今の世を憂う・よくできたSatire






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『 Don't Look Up (2021)/米/カラー
/2 hours 18 minutes/監督:Adam McKay』
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恐ろしいほど現実を映したSatire(風刺/皮肉/現状批判)。

今のアメリカのメディアや政治を見ていると、あぁこの映画とほぼ同じことが起こっているよねぇと思わずにはいられない。映画だから全てを現実よりも数倍大げさに描いているとはいえ、今の時代がどういうものなのかはかなりリアルに描かれていると恐ろしくなった。

この映画、ほぼ現実の世の中を模している。
これは今の私達の世の中。
今の世界はこの映画のまんま。

最初はただ悪ふざけなフィクションのブラック・コメディかと笑っていたが、情け容赦なく現実を思い起こさせる描写が次々に出てきて、そのリアルさに次第に背筋が寒くなった。怖い。笑うよりも怖くなる。悲しくなる。

今の私達。この世の中。ちょっとヤバいんじゃないか?大丈夫なのか?
今の世の中って、この映画とそれほど違わない…。


★あらすじ
ミシガン州立大学の天文学博士課程のケイト(ジェニファー・ローレンス)と彼女の師ミンディ博士(レオナルド・ディカプリオ)。この二人が「地球に巨大彗星が衝突し、ほぼ100%の確率で地球が破壊される」ことを発見。「衝突までの時間は約6ヶ月」。もうあまり時間がない。二人はそのことを世間に知らせようとする…政治家、国民に知らせるために二人は必死に駆け回るのだけれど、誰も気にかけない。理解しようともしない。さて地球はどうなるのか?


★ネタバレ注意

問題は、今の世の中には情報が溢れ過ぎていて、人々は迷い、どの情報を信じていいのかもわからず、結果世界中の皆が「一番の重要事項、今何に目を向けるべきなのか」を見定めることが出来なくなっている状態だということ。

「地球に巨大彗星が激突する。全てを燃えつくし生物全てが死ぬ。地球が死ぬ」
科学者のレオナルド・デカプリオとジェニファー・ローレンスが人々に伝えようとしているのはただそれだけ。そのことを彼らは政治家(大統領)に伝え、メディアを通して世界に公表するのに、誰もそれを理解しようとしない。耳を傾けない。


(以下細かくネタバレです)

科学者の二人は、まず米国大統領にその情報を告げに行く。しかし大統領もスタッフも「そんなたわごとよりも、今度の中間選挙の方が大切だから…」と二人の話にとりあわない。

大手の新聞社は、SNS上での読者ウケを重要視し、二人の持ち込んだ重大な事実をウケないからと取り上げない

二人はまたテレビの朝のトークショー番組に出演。国民に地球の危機を伝えようとするが、司会は「そんなことよりもポップスターと元カレのゴシップのニュースを見てみましょう…」と二人の警告を問題にしない。

ようやく「彗星に核ミサイルを当てて地球を救う」計画が実行されることになるが、それでさえも大統領(トランプ氏を思い出す)の宣伝材料の扱い。

そしてその「彗星爆撃計画」も突如中止させられる。ハイテク企業BASHのCEO(テスラ/イーロン・マスクを思い起こさせる)が、その巨大彗星がレアアース資源の宝庫だから資源を採掘したいと言う…結局は金儲けが優先される。 その間にも巨大彗星は地球に近づいてくる…。


デカプリオの博士がテレビで国民に向けてやっと事実を伝える場面…博士が司会者を黙らせ「地球に危機が迫っている」ことをカメラに向かって怒鳴る場面(国民に知らしめる場面)は、映画が始まってから1時間30分過ぎ。その場面まで、彼ら科学者の言う「地球の危機」が世間にまともに受け止められることはない。狂っている。


終末の日は近づいている。科学者の二人も次第に狂った世界に個人のレベルで飲み込まれていく。彼らも判断を迷う場面がある。そこもリアル。

もうどうでもいい。もうどうにもしようがない。そしていつしか「巨大彗星の激突」は、人々の空虚な論争のお題…つまりは「地球壊滅の危機」でさえ個人同士の相手を打ち負かすことだけが目的の低レベルな言い争いのお題になってしまう。SNS上では戦いが繰り広げられる。

(科学者+リベラル側は)「営利企業に抗議するキャンペーン」としてJust Look Up/ただ上を見て(←現実を見ろ)と世間に呼びかけ、ポップ・スターは「最後の地球救済ライブ」でキャンペーン・ソング「Just Look Up/ただ上を見て」を歌う。

一方大統領は「Don’t Look Up /上を見るな」(←現実を見るな)のスローガンと共にキャンペーン活動。サポーター達はそのスローガンの刺繍された野球帽を被り気炎を揚げる。

そして「Don’t Look Up /上を見るな」を信じていた保守の群衆は、次第に大きくなる空の彗星の光を実際に目にして「政府は嘘をついていた!」と暴動を起こす。群衆が暴れ始め街が破壊されていく…。

全てがあまりにも現実を思い起こさせる。


例えばこの映画の巨大彗星を、

現在の地球温暖化や環境問題に置き換えることは簡単だろう。それ以外にも食料問題、アメリカの銃規制…等々の問題と置き換えて考えてみれば、この映画がいかに現実を反映しているのかが見えてくる。

警告 ですね。

しかしながら現実は、
この映画を見たからといってアメリカの現状が変わるはずがない。
だからこそ、この映画のエンディングはああいうことになった。


もう私達には何もできないのではないか。 


映画を見終わったうちの二人は無口になり言葉もなく、それぞれソファーを立ち上がってコーヒーを飲みにいったり他のことを考えたり、猫を触ったりし始めた。二人ともたぶん息苦しくなったのだと思う。

Satire(風刺/皮肉/現状批判)だとわかっていても、あまりにもアメリカの現状をリアルに示していることに驚き、悲しみを感じた。キューブリックの1964年の映画『Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb/博士の異常な愛情』を思い出す。しかしあの映画を私が見たのは1980年代。あの映画には驚いたが、それでも当時は笑っていられた。

しかし今この映画を見て私達は心から笑えるのか?


アメリカではあたりまえの常識が通じなくなくなりつつある。実際にそう感じる。いや世界中、今の世の中はそうなのかもしれぬ。

米国のジャーナリズムはエンタメに変わり人の気を引くためのセンセーショナリズムに汚染され、メディア上の人々は怒鳴っているかのような大声で一方的な主張を繰り返す。ニュースは公平な情報を知らせるというよりも、視聴者が見たい聞きたい/視聴者が要求する一方的な情報をがなり立てるものばかり。そこに公正さや知性は感じられない。

政治家は人気商売。政治家は自分の票稼ぎのことしか考えない。政治家や専門家(と呼ばれる人々)の言葉は本当に信じるに値するのか。

メディアの情報には必ずマーケティングがついてくる。記事もニュースもテレビ番組も人々に何かを売りつけるための宣伝メディアとなってしまった。今の時代の情報は、どれが本物で、どれが宣伝目的ではないのかがわかりずらくなっている。そしてメディアそのものもウケを狙ってコマーシャリズムに身売りしている。

そして皆に与えられた平等な表現の場=ネット上には、知識も知性も常識も無い+思慮深くもない個人個人の声が、プロのジャーナリストの言葉さえ搔き消すように大音量で鳴り響く。そのようなSNS上の雑音は人々を日々惑わす。

今の時代は情報が多すぎて、私達が何を信じればいいのかがわからなくなっている。



そんなわけで、あっぱれ。この映画の監督さん、脚本家に制作の方々、よくやった、あっぱれと伝えたい。大きな拍手。よくもこのような恐ろしくリアルな映画ができたものだと驚く。そしてこの脚本がコロナ禍前に書かれたと知ってまた驚いた。

よくできた映画。現状を目の当たりにして苦しくなる映画。もうどうしようもないのかな…。わかりませんね。


主人公たちの最後の晩餐は…実際にあのような事があるのなら、人間はあのような状態に落ち着くのだろうと思う。とても自然に思えた。そこも上手い。

破滅に向かう時間に、時々挟まれる自然の映像が悲しい。動物の映像、ミツバチ、ホッキョクグマ、そして山に降り注ぐ火玉の前で祈りの舞を捧げるネイティブ・アメリカンの場面。…そんな映像がとても悲しい。本当に悲しい。しかし美しい。映像もよくできた映画だと思います。

この映画は心に残りますね。影響を受けて今も考えている。



思い出した映画
博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか/Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb (1964):ブラックコメディ
ソイレント・グリーン/Soylent Green (1973):ディストピアSF映画、環境問題や食糧問題などで度々思い出す
ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ/Wag the Dog (1997):政治風刺、政治家の情報操作



2023年1月26日木曜日

歌舞伎の思い出



自慢話をする。

自慢話は年寄りの困ったところ。しかしここ3年のコロナ禍の巣篭り生活で、私は現在の観劇やライブのことを一切書くことが出来ぬ。先日思ったのだ…去年の年末のクリスマスの頃、私はなぜあんなに落ち込んでいたのだろうと。その答えは…私はここ3年間ライブやオペラや芝居を全く見ていないから。そうだそうだ、そうなのだ。

このブログの「海外色々」のインデックスを見直してみた。2013年から書き始めた観劇やライブの記録は2020年の2月のオペラを最後に止まっている。あれから全く何も見ていない。それ以前は毎年年末が近づけば大抵何本かのライブを予定に入れていた。忙しくしているうちにクリスマスの時期は過ぎる。忙しければ、太平洋のど真ん中で家族と簡単には会えないクリスマスも全く平気だった。あの去年の年末のChristmas Bluesはそんなライブ/観劇無しの3年間で溜まったものが溢れ出たのかもしれぬ。しょうがないね。

そもそも今までの海亀の人生、何に一番情熱を捧げてきたかと問えば…舞台で行われるエンタメ全般(舞台ならなんでもOK)を見ることだと答える。東京でもロンドンでもそう。ハワイに来てもそう。20代は東京で洋楽の外タレをよく見たし、ロンドンではジャズクラブに目覚めミュージカルを楽しみ芝居とオペラを齧った。ハワイではライブに芝居、オペラ、ミュージカル、ジャズクラブとなんでもあり。観劇とライブ…たぶんその趣味に私は今まで一番お金をつぎこんできた。その最愛の趣味をもう3年間もやっていない。煮詰まるのも致し方なし。


ともかく昨日、歌舞伎がテーマのドラマの感想を書いていて色々と昔のことを思い出したので記録しておこうと思った。自分用の記録。

私は歌舞伎は全くの素人。演目もほとんど知らない。決して興味がないわけではないのだけれど、東京にいた20代にはなかなか歌舞伎座に足が向かわなかった。まさか30歳以降に外国暮らしになるとは思わなかったので、いつかもっと大人になってから行けばいいと思っていた。こういうことになるのなら20代にもっと見ておけばよかった。

それでも私は昔二度、すごい歌舞伎を見た経験がある。もう37年も前の話だ。


1回目

その頃の私は、1983年に来日したデビッド・ボウイのライブに感激してボウイ氏の情報をよく調べていた。それで出てきたキーワード「デビッド・ボウイ、山本寛斎、歌舞伎…」。ボウイ氏が歌舞伎を見たのか、それとも寛斎さんが歌舞伎を見てインスパイアされて衣装を作ったのか…今はよく覚えていないが、その情報を見て思ったのは「私も歌舞伎というものが見てみたい。日本の芸術、見なくちゃ」。

その頃大学の同級生にたまたま歌舞伎に詳しい友人がいた。そこでその友人Tちゃんに聞いてみた「ねぇ、わたし歌舞伎が見てみたいんだけど教えてよ。一緒に行こうよ」。そうしたらTちゃんは「いいよ~じゃあチケットとるわ。今いいのがあるよ」。というわけで親切なTちゃんにチケットをお願いすることにした。

チケットが無事取れて、Tちゃんから色々と説明を受けたと思うのだが内容は覚えていない。なぜなら歌舞伎のことを聞いても当時の私にはほぼ理解できなかったからだ。ともかくチケットは取れた。ワクワクしながらその日を待つ。公演日は1985年の3月。

そして当日。歌舞伎座の前で待ち合わせ。歌舞伎座にたどり着いたらTちゃんは派手な着物を来て待っていた。すご~い。まだ大学生なのに着物で歌舞伎を見るTちゃん。彼女は歌舞伎に詳しいお嬢さんだった。



そしてその日の歌舞伎は、


1985年3月20日 午後4:30

桜姫東文章


・片岡孝夫/片岡仁左衛門 (15代目)
 長谷寺の清玄・清玄阿闍梨・釣鐘権助・清玄の亡霊・大友常陸之助頼国
・坂東玉三郎 (5代目)
 相承院の稚児白菊丸・桜姫・風鈴のお姫実は桜姫


何も知らないままに3階の席へ。ワクワクして興奮。そして幕が開いた。舞台に広がる鮮やかな色と光。一瞬でうわ~っと感情が高ぶって急に涙が出た。本当のことです。突然目から涙が出た。

その頃の私は若くお金のない学生で本物の舞台芸術を見た経験も無し。ステージのショーで見たことがあったのはいくつかの外タレのコンサートのみ。ミュージカルも見たことがなかった。現代劇の芝居さえ見ていなかった。そんな風に舞台に関することに全く無知の状態でいきなり(当時)片岡孝夫さんと坂東玉三郎さんの歌舞伎を見ることになった。

これなんだ。これが歌舞伎というものなんだ…。

もう37年も前の話。『桜姫東文章』の全ての内容を覚えているわけではないけれど、とにかく夢中で見入った。華やかだった。綺麗だった。原色の着物。明るい舞台。色鮮やかで本当に綺麗だった。長身の玉三郎さんの立ち姿の美しさ。本当に息を呑むほど綺麗だった。

今ネット上で『桜姫東文章』の内容を読んでみた。少し思い出したかも。そうそうお姫様が身を落として暮らす場面があった。場面場面を切り取った記憶しか残っていないけれど、今も舞台の様子は目に焼き付いている。一場面、舞台の右側に立った玉三郎さんが巻物を落としてそれが裾に広がる場面があったと思う。うわ~っと圧倒された。華やかで綺麗な場面だった(巻物かどうか…違ってるかもしれないけれど)

舞台上に溢れる鮮やかな色彩。そして役者さん達の声。楽器の音。そしてスーパースターのお二人(歌舞伎に無知でも孝夫さんと玉三郎さんのことはもちろん知っていた)。美しい着物。本当に夢のような経験だった。


2回目

そして2回目もTちゃんがチケットを取ってくれた。その公演は
 

1985年6月12日 午後4:30

鳴神


・市川團十郎 (12代目) 鳴神上人
・坂東玉三郎 (5代目) 雲の絶間姫

襲名披露口上

助六由縁江戸桜


・市川團十郎 (12代目) 花川戸助六実は曽我五郎時致
・松本幸四郎 (9代目)/松本白鸚 (2代目) 髭の意休実は伊賀平内左衛門
・尾上菊五郎(7代目) 三浦屋揚巻
・尾上辰之助(初代) くわんぺら門兵衛
・片岡孝夫/片岡仁左衛門 (15代目) 白酒売新兵衛実は曽我十郎祐成
・坂東八十助(5代目)/坂東三津五郎 (10代目) 朝顔仙平
・中村勘九郎(5代目)/中村勘三郎 (18代目) 福山かつぎ富吉


私の2回目の歌舞伎体験。そこで12代目市川團十郎さんの襲名披露を見てしまった。今出演者を調べたのだけど、スーパースターの方ばかり。しかし37年前、当時私の中でお名前とお顔が一致していたのは、團十郎 さんと玉三郎さん、当時の松本幸四郎さん、片岡孝夫さんだけだったのかも。それぐらい歌舞伎の世界に無知だった。全く知らなかった。

しかし團十郎さんの襲名披露なのだから、その日大変貴重な舞台を目撃していることは理解していた。しかしこれほどまでにスターの方々がいらしたとは…。今になって驚いている。

この日の舞台の様子も場面場面で切り取ったように覚えている。特に襲名披露口上は「すごいことを目撃してるのだ」と意識して目に焼き付けようとした。今でもその舞台の様子、そして團十郎さんの独特のお声の響きをよく覚えている。その日も夢のような時間が過ぎた。


幕間にはTちゃんが予約してくれていたお弁当をお食事処(?)のテーブルで食べた。あまり時間がなくて急いで食べたと思う。そしてすぐに席に戻った。そしてまた幕が開き舞台に見入る…ドキドキする。ああ楽しかった。 その2度の歌舞伎の体験は全てが嬉しく楽しくて、当時20そこそこ右も左もわからない子供だった私は、それまで見たことのない芸術を見て興奮し目を大きく開いて舞台を凝視したまま夢のような時を過ごした。本当に楽しかった。

それから日本は数年後にバブルを迎え私も日々忙しくなり、外タレのコンサートは時間をとって度々見に行っていたけれど、その後私がまた歌舞伎座に出かけることはなかった。今とても後悔している。当時はその数年後に日本を離れるなんて思っていなかった。

その後歌舞伎座に出かけたのは、(ロンドンに移住した後)1998年7月に旦那Aと叔母と共に日本に帰った際、ある日の午後に1幕だけを3階席で見たのが1回だけ。米国人の二人は英語のガイドをイヤホンで聴きながら芝居を見ていた。1998年7月の公演で今調べたら『義経千本桜』と出てきた。当時の三代目 市川猿之助さん/二代目 市川猿翁さんが出ていらしたそうだ。


昨日のドラマで歌舞伎のことを思い出して記録しておこうと思った。当時は無知なために、その公演がいかに貴重なものであったのかもよく理解していなかった。今になって驚いている。 今はネットで日本の芸能関係の記事を見ていれば、様々な歌舞伎役者の方々の記事を目にする事も多い。また歌舞伎役者の方々もよくテレビに出ていらっしゃるようだ。役者さんに関する知識も増える。もし今日本で歌舞伎を見ることができればもっと役者さんのことがわかるだろう。役者さんの事がわかればお芝居ももっと楽しいだろうと思う。


歌舞伎はおそらく西洋のオペラと同じで、演目で何をやるかが既に決まっているものを、その時々の公演の役者さんたちがいかに(同じ演目を)再現するのかを楽しむものなのだろう。歌舞伎も一旦ハマれば延々と楽しめる大人の遊びなのだろうと思う。

思い出話。色々と調べてみたら面白かった。大変貴重な公演を見たのだと再確認出来てよかった。その公演に連れて行ってくれた友人Tちゃんには大変感謝している。彼女とはその後連絡をとらなくなってしまったけれど、彼女はきっと東京のマダムになって今も歌舞伎を楽しんでいるのだろうと思う。2021年の『桜姫東文章』も見たに違いない。ちょっとうらやましい。

この先、いつかまた歌舞伎座で歌舞伎が見てみたいものだと思う。そして幕間でお弁当を食べたりして数時間どっぷり歌舞伎に浸りたい。いつの日か。


2023年1月25日水曜日

NHK BSプレミアム 「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段」






贅沢なドラマ。ものすごく丁寧に作られた作品。今の歌舞伎役者の方が江戸時代の歌舞伎役者を演じるという贅沢さ。そして脇を固めるベテランの上手い役者さんの方々。出演なさっている俳優さん達が皆うまい!!!!セットも豪華。素晴らしい素晴らしい。

あまりに面白かったから1回目を見終わってすぐに2回目を見直し始めた。1回目の最初にぼんやりと見ていた場面も、ストーリーが解ってから見るともっと面白い。本当によくできた質の高いドラマだと思います。


このドラマは第77回文化庁芸術祭大賞(2022年) を受賞したそうです。


日本では元々…2021年12月4日と11日にNHK BSプレミアム・NHK BS4Kで放送されたテレビドラマ。それを2022年12月10日と12月17日に、1話38分×5話に再構成したものが地上波の総合テレビで放送された。私が見たのはその2022年12月ver.。TV Japanで年末に放送された。


主人公は実在の江戸時代の歌舞伎役者中村仲蔵(初代)
元文元年〈1736年〉 - 寛政2年4月23日〈1790年6月5日〉。江戸時代中期の伝説の歌舞伎役者。「名人仲蔵」とよばれた名優。
…このドラマは、裸一貫から這い上がりスターの座を掴み取った歌舞伎役者の初代 中村仲蔵の出世物語を歌舞伎演目『仮名手本忠臣蔵』を軸にドラマ化したもの。脚本・演出は源孝志さん、主演は六代目 中村勘九郎さん。

実在の人物だったのですね。ドラマを見終わってから調べて知った。


六代目 中村勘九郎さんが江戸時代の歌舞伎役者をなさる。その様子がとにかくかっこよくて見惚れた。あ~やっぱり歌舞伎のお方は歌舞伎をなさるプロ(あたりまえだけれども)…しかしまぁなんとかっこいいのだろうと。ほれぼれ。は~やっぱりすごいんだねぇ。今の歌舞伎役者のお方が江戸時代の歌舞伎役者をなさる説得力。そのことにまず感動した。だって勘九郎さんが腕を構えて見得を切る様子が本当に決まっている…ぁあこれが東洲斎写楽の役者絵のリアルな再現…江戸時代の歌舞伎の再現なのだわ…ととても感心して見入りました。

そんな写楽の時代の歌舞伎の世界の再現が楽しい楽しい。そして役者さん達は皆さんプロ。プロ中のプロの方ばかり。これはすごいドラマだと思いますよ。ほんとほんと。贅沢。


私は日本のテレビを見る機会が(日本に住む場合に比べて)少ないので、中村勘九郎さんと言えば唯一大河ドラマの『いだてん』しか知らなかった。で、その『いだてん』での勘九郎さんはとにかく素っ頓狂で…こんな人、現実にはいないだろう…だって水を被って「ひゃ~っ」と奇声を上げる人なんていませんよねぇ笑。これはお笑いメインのコメディなのかそれとも真面目な大河なのかわからんっ!…という印象だったのですが、


中村仲蔵の中村勘九郎さんは

プロ!役者!


すっごくかっこいい…💕

このドラマの中村仲蔵のキャラクターが信じられる。こういう人がいたんだろうなと思う。子供のように純粋で真面目。芝居が大好きで実力もあるのに、運で一旦は役者を廃業。しかしそこからまた努力して歌舞伎のスーパースターになるお話。それをコミカルなタッチでドラマ化。 

中村勘九郎さん最高でした。ほんと。仲蔵はかわいいし仲蔵が笑えば嬉しくなる。仲蔵が呉服屋の旦那に言い寄られれば大笑い、そして「稲荷町」から再スタートで虐められれば共に泣く。 中村中蔵の名前を持つことの意思表示には勘九郎さん御本人の本気を感じた。『忠臣蔵』の初演の後でお風呂で水を被りながら泣く様子がリアル…ぁあ悲しい。そして認められて堂々と舞台に登場して見得を切る…かっこいい~!!!拍手。

勘九郎さんのお顔と表情は普段はどこかかわいい感じなのに、歌舞伎の化粧をなさると別人のように男臭くごつい大男に見える不思議。すごく華やか。御本人から出るエネルギーも変わる。歌舞伎の魔法なのだろう。すごいです。 勘九郎さんの表情豊かな芝居に説得力…仲蔵は一所懸命。応援したくなる。勘九郎さんが仲蔵のキャラクターにぴったりはまっていて、私もドラマにはまった。

仲蔵の頑張りと成長と成功を見ていい気持ちになった。面白かった。いい話です。それにしても歌舞伎役者さんの見得をアート寄りのカメラワークで撮ると本当にかっこいい。絵のようだ。素敵。見惚れる。


そして他の役者さん達も素晴らしい。仲蔵の奥さん・お岸の上白石萌音さん。なんと芸達者な。彼女は三味線を弾いて長唄を歌う。ものすごくうまい。かわいらしくて魅力的でユーモラス。彼女にも説得力。唸りましたよ。あまりの巧みさに。彼女はやっぱり歌が上手い。いい声。

そして蕎麦屋「十六屋」に間借りするかわら版屋・鵜蔵に吉田鋼太郎さん。この鵜蔵が我ら観客を江戸の歌舞伎へ導いてくれる。江戸の歌舞伎の世界には厳しい階級があることや、芝居小屋の舞台裏の様子を教えてくれる。それが楽しい。どんどん江戸の歌舞伎の世界に引き込まれる。吉田鋼太郎さんの口調も滑らかでノリノリで、鋼太郎さんがこの役を楽しんでいらっしゃるのが伝わってくる。鵜蔵を見るのも毎回楽しかった。

上品な初代市川染五郎の二代目 中村七之助さん。仲蔵との友情がいい。七之助さんと勘九郎さんは御兄弟なのですよね。それがまた贅沢。本物の歌舞伎役者さんの身のこなしが…またすご~いとため息。もっと見たい。 大きなお父さんのような四代目 市川團十郎の市村正親さん。威厳があってかっこいい。 狂言作者の金井三笑の段田安則さんは怖いのになぜかコミカル。 仲蔵の師匠・二代目 中村傳九郎の高嶋政宏さんの4話の本当の涙。 呉服屋の旦那・吉川仁左衛門の谷原章介さんはエロな役がよく似合う笑。 ユーモラスな芝居の神様コン太夫の石橋蓮司さん。 またまたコミカルな中村直團次の笹野高史さん。「稲荷町」のいじわるな中村任三郎の山西惇さんが怖い。 仲蔵の義母の志賀山お俊 若村麻由美さんがかっこいい。 おっと蕎麦屋の女将は名取裕子さんじゃないかお綺麗だ。 そしてかっこいいのにコミカルな謎の侍 藤原竜也さん。 そして初代 尾上菊五郎には二代目 尾上松也さんがいるではないか~後鳥羽上皇! 本当にビッグネームばかり。


そして私が何よりも魅せられたのはあの江戸の芝居小屋、劇場・中村座の建物。あの建物がそれはもう素敵。あんなに小さな場所で歌舞伎が見られたらどんなにいいだろうと想像する。あの時代の芝居小屋はああいう感じだったのでしょうね。いいなぁ。役者さんが近い近い。手を伸ばせば触れそう。そして上の階の楽屋。それから地階の奈落のからくり。面白いですね。見に行きたい。なんて魅力的な場所。ああいうところで江戸時代に逆戻りして歌舞伎を見る…な~んて浪漫。楽しいだろうなぁ。見たいですね。

NHKのネット上のページを見ると美術さんが「映る映らないにかかわらず、濃密に飾りこむ事にこだわりました。演技者のみなさんに本当の江戸時代の中村座にいるような感じでお芝居していただきたかった」とおっしゃっていて…ああすごいな。また録画を見直そうと思う。本当に素晴らしい。


ところでこのドラマは、日本の芝居文化…江戸時代の歌舞伎の世界の再現ですが、もしこのドラマが、シェークスピアを愛するイギリスで(字幕入りで)公開されたら英国の芝居ファンにはどう受け止められるだろうかと思った。あの浮世絵の役者絵の再現…だと面白がってはくれないだろうか。
彼らも16世紀の劇場を再現した「シェイクスピアズ・グローブ」で今も芝居をやっているのですよね。あそこはキャパが1,570人らしいけれど採算は取れているのかな?


このドラマの演出と脚本をなさっているのは源孝志さん。このお方はのドラマは以前2作品見てます。2016年の『スーパープレミアム 漱石悶々 夏目漱石最後の恋 京都祇園の二十九日間』と、2021年の『正月時代劇 ライジング若冲 天才 かく覚醒せり』。両作品ともここで少し感想を書いてますが特に『漱石悶々』は面白かった。宮沢りえさんを前にしてドキドキする豊川悦司さんがおかしかった。そういえばあの劇中の効果音の使い方はこの『忠臣蔵狂詩曲』のものと似ている。コンコン トロロン…と間を埋める和楽器の効果音がすごくおかしい。


なんだか色んな意味ですごく濃くリッチで贅沢なドラマでした。また録画を何度も見直して江戸の歌舞伎役者の様子を堪能したい。

歌舞伎いいなぁ。もし今歌舞伎を見たらきっと面白いだろう。中村勘九郎さんや七之助さん 尾上松也さんに、『鎌倉殿』で見た坂東彌十郎さん、八代目 市川染五郎さんも舞台で見てみたい。テレビで見る方々を舞台で見たらきっと楽しいだろう。東京に住んでいたらはまったかも。前述の『ライジング若冲』の感想(ぼやき)でも書いてましたが、島暮らしはリタイア暮らしなので日本の文化が遠くて悲しいわ。シクシク



2023年1月23日月曜日

JVKE - golden hour (2022)



美しい



JVKE - golden hour (2022)
golden hour – Single
JVKE
Released: July 15, 2022
℗ 2022 JVKE MUSIC LLC under exclusive license to AWAL Recordings America, Inc.



ま~なんと美しい曲でしょう。男の子が「彼女が輝いてる…」と歌う歌ですがま~美しいわ。いい曲に理屈はいらない。ただただ美しい曲。若い時の美しい瞬間を歌に閉じ込める。いい歌だ。

普段は英国のシングルチャートをチェックすることはないのですが、今日はたまたま思いついてチャートを上がっている曲を調べて見ることにした。それで出てきた曲。UK Official single chartで今週19位。


★JVKE
Jacob Lawsonさんは米国ロードアイランド州プロビデンス市のシンガーソングライター、。2001年3月3日生まれの21歳。コロナ禍のロックダウン中にTikTokでオリジナルの曲「Upside Down 」を発表…それが2021年にネット上で流行った。そして2022年11月に出したデビュー・アルバム『This Is What ____ Feels Like (Vol. 1–4)』はビルボードのTOP 200アルバムチャートで56位に。


だから現行のチャートチェックは大切ですね。この曲はリミックスがUKダンスチャートにも入っているのだけれど全くいいと思わなかった。このような曲はダンスチャートを漁っているだけでは見つからないのだろうと思う。

JVKEさんはまだ21歳。若い才能のあるお方を見つけることはなによりも楽しい。



ところでこの動画、今みつけた
若い人々の遊び…

"GOLDEN HOUR" by JVKE | Duet Verse Challenge

"GOLDEN HOUR" by JVKE | Duet Verse Challengeだそうですが、JVKEさんの曲のバースに素人さん(たぶん)がオリジナルの歌詞にメロディをつけて歌うという企画らしいです。それをTikTokでやったらしいのですけど、この素人さん達の歌のうまさ、曲の良さにおどろいた。なんだなんだなんだなんだ~もうアメリカ中、世界中に若い才能があふれているではないか…驚いたわ。みんなうまいね。JVKEくんもかわいい。

 


golden hour
JVKE
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ただの恋人同士の二人
車の中に座って「Blonde」を聴きながら
お互い 恋に落ちてた
ピンクとオレンジの空 すごく子供っぽく感じるね
Donald Gloverじゃない
母からの電話には出てない
「今夜どこにいるの」みたいな アリバイはない

僕の最愛の人と二人っきりで一緒にいた
彼女の肌は輝いてた
夜に僕の放つビーム
君の輝きを見るのに灯りはいらない

君の輝き
君の輝く黄金の時 (oh)
君は時間をゆっくりにする
君の光り輝く時間 (oh)


僕らはただの恋人達
ダッシュボードに足を上げて 行方も知らず車を飛ばす
夏を燃やしながら
ラジオを爆音で鳴らして この時が長く続くように
彼女にはソーラーパワー
数分が数時間のように感じる
彼女は自分が最高の女だってわかってる 想像できる?
僕が恋に落ちたみたいに

最愛の人
彼女の顔は光輝く
彼女の目には美しい輝き
僕の光のエンジェル

僕の最愛の人と二人っきりで一緒にいた
彼女の肌は輝いてた
夜に僕の放つビーム
君を見るのに灯りはいらない

君の輝きを
君の輝く黄金の時
君は時間をゆっくりにする
君の光り輝く時間

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Songwriters: Jake Lawson / Zac Lawson
golden hour lyrics © Kobalt Music Publishing Ltd.



2023年1月17日火曜日

RAYE, 070 Shake – Escapism (2022)



レイちゃんの本気



RAYE, 070 Shake – Escapism (2022)
LIVE (Later with Jools Holland) これが生なライブ音
まずこれでびっくりした
そして公式に上がっている スタジオでのライブ
オリジナル スタジオver. ビデオはオススメしない
Escapism. / The Thrill Is Gone. - Single
Raye
Released: October 14, 2022
℗ 2022 RAYE under exclusive license to Human Re Sources



売れましたね。レイちゃん。

この曲は、去年末から英国のシングル・チャートを上がって、今年1月6日に英国で1位になったそうです。米国は今チャートを上がっているのかな。1月17日にUS Billboard Hot 100で28位だそう。その他の英語圏とヨーロッパでも売れてますね。今後、アメリカでもっと売れればまだまだ波は広がるかも。

レイさんは今までにも大手レーベルPolydor Recordsに在籍中、様々なDJとコラボして何曲かダンスチャートでヒット曲を出してます(英国では新人のシンガー・ソングライターをDJ と組ませて売るケースが多い)。しかし彼女は2021年7月、その大手レーベルを辞めて独立。どうやらそのレーベルが、彼女がティーンのころから30曲以上もシングルを出しているのにもかかわらず彼女にアルバムを出すことを許さず、また彼女が試したい音楽上の冒険も許さなかったらしく、不自由を感じたことが理由だそう。


私が最初に彼女のことを知ったのは、ダンスチャートのヒット曲。まず彼女は歌が上手い。特にリズムの取り方が巧み。かっこいい言葉のリズムセンス。作曲もうまい…もう既にビヨンセを含む沢山のアーティスト達に何曲も曲を書いてヒットさせている、DJとのコラボも多数…等々、いろいろと彼女のことを掘り下げていくうちに、彼女の才能に魅せられファンになってしまった。それで(気になるアーティストにはいつもそうするように)彼女のことも度々動画サイトでチェックするようになっていた。

そんなわけで、彼女がPolydorを出て独立したことも今年の夏頃にたまたまチェックした動画で知った。ソロになってからの最初のシングルは「Hard Out Here」。内容は、彼女がいかに大手レーベルで酷い目にあったかと生々しい内容の文句を言っているもの(たぶん)。…その歌に実は私はちょっとひいた。その曲のヘビーさに、ちょっとまって…と思った。重すぎる。結局私も彼女の歌うダンスチャート上の陽気なポップスが好きだったから。

それからまた去年8月にリリースした「Black Mascara」。これも重い。深刻な、傷ついた女性の歌。…明らかに彼女は変わったんだな…と思った。そしてこの「Escapism 」が出たのが10月。この歌もシリアス。彼女は着々と今年2月にリリースされる新アルバムの新曲を出してきている。しかし私はどうかなぁ…もう彼女は陽気なポップスはやらないのかな…などと思っていた。


音楽に理屈はいらない。どんなジャンルでもどんなスタイルでも、どんなイメージの曲でもいいものはいい。アーティストは自分の歌いたい曲を歌う。そうやってアーティストから生み出された曲を、気持ちよく受け止められるかどうかは、あくまでも聴き手の問題。受け取る側の問題。

私はレイさんの本気を受け止めるまでにしばらく時間がかかった。数日前にこの曲のライブの動画を見るまで正直「どうかな…私これ、好きかな」などと彼女の新作に戸惑っていた。しかしこの曲、ライブがものすごい。彼女のパフォーマンスのエネルギーがすごい。ものすごいカリスマ。バンドも無茶苦茶かっこいい。彼女はEDMなんかではおさまりきれない人。

そうか…レイちゃんは、こんなのがやりたかったんだ。

シリアスで生な感情が直接訴えかけてくる。ちょっと怖いような歌。日本なら演歌。女の情念を生々しく歌うような…。

とにかくこのライブの映像を見れば、彼女がいかにすごいパフォーマーなのかがよくわかる。そのことに世の中が気付いたから、今曲がチャートを上がってるんでしょう。すごいな。よかったですね。

レイ/Rachel Agatha Keenさんは1997年生まれの25歳。まだ25歳!!!!
ひゃ~ スゲ~ これからも彼女を追いましょう。


★070 Shake
Danielle Balbuenaさん。米国ニュージャージー出身、女性シンガーソングライター。1997年生まれの25歳。2015年に活動開始。SoundCloudに上げたオリジナルが沢山のヒットを記録。そこからプロとして活動。この曲は作曲で参加。


歌のタイトルは「Escapism現実逃避」。前日に振られた女の子が、悲しみからすぐに男を見つけて飲んだくれてわけもわからずすぐに寝て…という話。悲しい歌。

●追記
2月15日、レイちゃんがアメリカのトークショー『The Late Show with Stephen Colbert』に出演して歌ってました!おめでと~!この歌はその後1月25日に US Billboard Hot 100で22位まで上がったそうだ。欧州各国でもよく売れたみたいです。おめでと~!



Escapism
070 Shake and Raye
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だらしなく乱れ 焦らして 私は彼の上に座ってる
私のダイヤモンドは全て彼に滴っている
彼とはバーで出会った、12時かそれくらい
ワインをもう2つオーダーした だって今夜 彼が欲しかったから

ちょっとしたことよ もしあなたが聞きたいのなら
私 ヤバい場所にいる
昨夜 私を座らせて話をした男
彼は もうお終いだと言った バカな判断ね
そして私は 自分の心が裂けるのを感じたくない
実際、何も感じたくない だから飲み続けてる
そして私は シンプルな決心で街に出た
私のリトルブラックドレスは、私にぴったりと馴染んで

失恋したビッチ 6インチのハイヒール
ナイトクラブの後ろで シャンペンを啜ってる
一緒にいるビッチ達のことなんて 私は信じていない
タクシーの後ろで コカインを吸って
酔っ払って電話 酔ったテキスト 酔った涙 酔ったセックス
私はわかり合える男が欲しかっただけ
今 またイントロに戻った バーに戻ってきた
ベントレーに ホテルに 私の昔のやり方に帰ってきた


だって 私が昨夜何をしたかなんて 考えたくないから
昨夜どうしたかなんて 感じたくない
ドクタードクター なんでもいいから プリーズ
ドクタードクター 私に哀れみかけて この痛みを取り除いて
私に症状を聞いているのね ドクター 私は何も感じたくない


このジョイントを吸い込んで 私は蒸気を吹かす
まるで2019年の私に逆戻り
元カレが私達の関係を終わりにしてから まだ24時間も経ってない
新しい男が私の上にいる これから汗ばもうとしてる
昨日の夜は、「ケーキの上のチェリーみたいな」最高の締めくくり
しばらく暗い日々を送っていたし 私も不自由だと思ってた
私の状態 ごめんね 今あなたの「希望」くらい私もハイになってる
私のベッドにたどり着いて 私を熱く焼きつかせるみたいな
もし一歩下がって いいことを見ようとするのなら
ふらふらしていても せめてプラダのツーピースを着てる
そして私はすでに傲慢に振舞ってる どういう意味かわかるでしょ?
だからあなたも同じにしたほうがいいわ

失恋したビッチ 6インチのハイヒール
ナイトクラブの後ろで シャンペンを啜ってる
一緒にいるこんなビッチ達のことなんて 信じていない
タクシーの後ろで コカインを吸って
酔ったままの電話 酔ったテキスト 酔った涙 酔ったセックス
私は同レベルでわかり合える男が欲しかっただけ
今 またイントロに戻った バーに戻ってきた
ベントレーに ホテルに 私の昔のやり方に帰ってきた


だって 私が昨夜何をしたかなんて 考えたくないから
昨夜どうしたかなんて 考えたくない
ドクタードクター なんでもいいから プリーズ
ドクタードクター 私に哀れみかけて この痛みを取り除いて
私に症状を聞いているのね ドクター 私は何も感じたくない (what?)


だって 私が昨夜感じたみたいに 感じたくないから
昨夜感じたみたいに 感じたくない
変えられないものは平和に受け入れて (last night)
  私は去る時も そして来るときも 裸のまま, yeah

  届かない 触ることもできない 麻痺してる 私は何も感じない
  乾杯?なんのため?ストリートスモール でもどちらにも繋がる
  だから走って逃げるけれど, yeah, でも逃れられない
  迷路の中のサンセット
私に症状を聞いているのね ドクター 私は何も感じたくないの

昨夜何をしたかなんて 感じたくない
昨夜どうしたかなんて 考えたくない
ドクタードクター なんでもいいから プリーズ
ドクタードクター 私に哀れみかけて この痛みを取り除いて
私に症状を聞いているのね ドクター 私は何も感じたくない


昨夜どうしたかなんて 考えたくない
昨夜どうやったかなんて 感じたくない
昨夜何をしたかなんて 感じたくない


Mm, 口紅がモダンアートみたいに擦れて汚れて
自分がどこにいるのかわからない 誰が車を運転してるかもわからない
ハイウェイを流して 飲みながら
お酒と薬を混ぜて飲んで だって こんな感情なんか知るもんか
愛する人達からのテキストに 返事も返さずにそのままにして (uh-huh)
私はベッドの中の見知らぬ人に 秘密を打ち明ける (uh-huh)
なにも覚えてない だからなにも後悔しない (uh-huh)
この4/4 キックドラムが 私の頭を打ちのめす以外は

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Songwriters: Rachel Agatha Keen / Danielle Balbuena / Michael Harris Sabath


★『My 21st Century Blues』和訳プロジェクト
2・RAYE - Oscar Winning Tears. (2023)(Live at the Royal Albert Hall)




Chris Lake (ft. Aatig) - In The Yuma (2022)



音もの



Chris Lake (ft. Aatig) - In The Yuma (2022)
In The Yuma – Single
Released: November 11, 2022
Black Book Records/Astralwerks; ℗ 2022 Black Book Records, LLC, 
under exclusive license to UMG Recordings, Inc.



今英米のダンスチャートをあがっている曲。記録。
完全に音ものですが、音が気持ちいい。突然ダッと入るピアノが良し。音が耳に残るので売れているのかな?この曲の原型は2019年ごろからフロアで流されていたそう。パンデミックの期間に煮詰められて完成。去年から既にフロアではヒットしているそうだ。

歌詞は大雑把に「ああ~すごくいい気持ち、盛り下げないで 水をささないで(邪魔しないでよ)」とかそんな感じをリピート  


★Chris Lake
英国の electronic music producer and DJ。1982年生まれ。2006年に出した「Changes」がヒット。2012にはdeadmau5とのコラボでグラミー賞にノミネート。英国はダンス系で色んな音が流れてくるので面白いです。

★ Aatig
ボーカルの方でしょうか。情報が見つからなかった。


お猫様H:あるきねこ



さっきまで窓の下の棚の中で寝ていた猫さんが目の前にやってきて「一緒にきてよ」と催促する。お腹がすいたかな。

はいはいと人間が立ち上がればすぐに猫さんは歩きはじめる
行きましょう行きましょう
お水ですか
この写真はどうしてこんなにボケたのだろう
なんだかシュール



2023年1月14日土曜日

Jeff Beck - El Becko (1980)



えるべっこ



Jeff Beck - El Becko (1980)
Album: There and Back
Released: June 1, 1980
℗ 1980 Sony Music Entertainment Inc.



数日前はこの曲の事を書くつもりでいた。
このアルバム『There and Back』はたぶん『Wired』と共に背伸びして買ったアルバム。曲はまずラジオで聴いた。そしてアルバムを街に買いに行く。でも当時は高校生でまだフュージョンは難しかった。フュージョンが少しわかるようになったのはこの頃から10年後くらいか。

それでもこの曲はノリノリでかっこよかった。今聴いても思わずエアドラムをする。必ずエアドラム。イントロが終わったら100%間違いなくエアドラム。当時もそうだった。ものすごく元気が出る曲。

音楽は永遠です。
あの頃の私たちの世代にとって音楽と映画は世界へ通じる扉だった。
音は夢を乗せて。


Yukihiro Takahashi – Drip Dry Eyes (1981)



Thank you



Yukihiro Takahashi – Drip Dry Eyes (1981)
Album: Neuromantic
Released: May 24, 1981 (original)
Released: January 1. 2001
℗ 2001 ALFA MUSIC, INC.



今朝起きてYahoo のニュースで知った。

悲しいな~

YMOからyukihiroさんを知りましたが、ソロの曲も好きだった。yukihiroさんの声は優しい。「Diposable Love」「Something In The Air」「Sayonara」。当時NHKのFMで彼のライブが流れて、それをラジカセに録ってよく聴いていた。

あの頃のyukihiroさんの周りの世界は西洋の香り。お洒落。お歌も英語。田舎の芋高校生(私です)が想像もできないかっこいい都会のお兄さんお姉さん方の世界。永遠に手の届かない大人の世界の方々。

yukihiroさんのドラムもかっこよかったな。
曲を聴くと思い出が蘇る。


2023年1月13日金曜日

★「鎌倉殿の13人」仲良きことは美しき哉



まだまだいくぞ鎌倉殿。いやこれが最後です。実は総集編を録画していたのに、前半(2時間)を見ないまま間違って削除してしまった。後半2時間しか録画がない。涙涙涙涙。

というわけで名残惜しい鎌倉殿。

このドラマは鎌倉の御家人達の中で頂点に登り詰めた北条家の話。武将達の闘争の物語ですから沢山の血が流れる。血なまぐさいドラマなのですが、そんな時代の中でも愛は生まれる。厳しい時代だからこそ愛の場面が印象に残ります。そんな場面を記録していたものを集めた。

主役の北条義時と八重さん、比奈さんの場面は描いていなかったですね。それから源頼朝と政子さんのほのぼの場面も描いていなかった。時政とりくさんの場面はあるのだけれど、どうもりくさんが時政さんの方向を向いていないような感じなので却下 笑。

というわけで鎌倉殿のほのぼのシーンを。


八重+江間次郎
わかってる。確かに愛し合った夫婦ではない。お姫様と家臣の立場は最後まで変わらなかった。しかしこのシーン、江間さんが最後に八重さんを逃がそうとした場面で、八重さんが彼に「一緒に行こう」と言う。それを聞いた江間さんは嬉しかったと思う。録画がないので確認できないのだけれど、一瞬二人の心が通い合った場面だったと印象に残ってます。


実衣+阿野全成
この二人は微笑ましかった。二人は途中で少し心が離れていたのかな。実衣さんが他の男性に惹かれたりしてましたね。しかし最後、全成が謀反の疑いで遠方へ配流される前に、二人が別れを惜しんだ場面は印象に残ってます。全成が「誰も恨んではいけないよ」と話せば、実衣が子供のように全成を見上げてうん、うんうんと小刻みに頷く。目には涙。その場面の実衣さんは本当にかわいかった。全成さんは本当に優しい人だった。


大姫+木曽義高
かわいい二人。大姫が義高にあってすぐに一目ぼれ。小さな女の子が綺麗な若者に心をときめかせている様子が本当にかわいかった。あのまま一緒に成長してほしかった。


千世+源実朝
初めて実朝が千世に本当のことを打ち明ける。実朝は本当のことが千世に話せずに彼女を避けていた。ある夜、千世が実朝になぜ避けているのかと尋ねる。そこで実朝が打ち明ける「…あなたのせいではない」。そして千世「ずっとお一人で悩んでいらっしゃったのですね、話してくださり、うれしゅうございました」。彼女はなんと優しい人だろう。実朝の涙と千世さんの涙。二人がわかりあえた美しい場面に泣いた。(新イラスト追加)


初+北条泰時
若い夫婦。ほのぼのカップルというよりも、初さんがしっかり者で泰時はいつも叱られてばかり。それでも泰時は初さんが好きなのね。時々彼女にほめられたと喜ぶ。お姉さんと弟のような夫婦。結局仲がいい。ほほえましかった。


巴+和田義盛

二人は男女として惹かれあいながらお互いを認め信頼し合っている。現代的な夫婦でしょうか。義盛も喧嘩が強いが巴さんはもっと強いのかも。彼女はいざとなったら槍を持って戦士として男と互角に戦える人。義盛が彼女に惚れたのは、巴さんがウサギのようにおとなしい女性ではなかったから。そして義盛に愛されて彼女は綺麗な女性になった。幸せになったのね。いい夫婦。



これで鎌倉殿の感想文もおしまい。鎌倉殿面白かった。名残惜しい。



2023年1月11日水曜日

★「鎌倉殿の13人」好きだった人々4

三浦義村 和田義盛 巴御前 
畠山重忠 上総広常 梶原景時
後鳥羽上皇 安達盛長 三善康信 運慶 善児


三浦義村
頭が良く計算高く要領もいいが、たぶんどこかが抜けている。彼が義時の上に立てなかったのにはきっと何か理由がある。御本人は真面目にやっているのになぜかユーモラスで笑いを誘うキャラ。突然脱いで筋肉を見せたがる笑。 最後の頃に度々義時を裏切るが、その理由は義時の成功に嫉妬していたことによるものだった。最後に本音が出た。急に親しみがわいた。義時のライバルとして最初から最後までいた重要人物。


和田義盛
豪快。脳筋。単細胞。でも心はゴールド。いい人。裏表がない。暖かい。こういう人がいいですよ。すごく好き。繊細な実朝が悩んでいれば自宅に招いて鍋パーティー。占い師の元にも連れていく。面倒見がよく思いやりのある人。子だくさん。その上に喧嘩も強い。最高ですね。最初はユーモラスなキャラで面白がってましたが、最後の頃にはファンになっていた。


巴御前
このドラマで一番かっこいい女性。現代的。自立していて御本人がとにかく強い。男以上に強いから皆に一目置かれる。そんな彼女が、和田義盛の優しさに触れて女性らしさを取り戻す。眉を剃り髪を整えて綺麗な女性に生まれ変わる。和田さんの前では女の子のような可憐な笑顔。すごくかわいかった。


畠山重忠
かっこいい武将。華やかな武将。素敵でしたね。中川さんはお若いのにベテランの俳優さん達と肩を並べて堂々とこの有名な怪力の武将を演じていらした。義時と殴りあったときは、そのまま義時をやっちまえと思った笑。


上総広常
豪快な人。彼もかっこよかったな。佐藤さん御本人は寡黙で知的な印象のお方なのだけれど、この上総介は大軍を率いて男気溢れる豪儀なお方。北の佐竹義政に「お前老けたなぁ」と言われて一瞬でバッサリと斬ってしまう笑。気が短いのね。すごくいい人だったのにパラノイアの頼朝に誅殺されてしまう。酷い酷い酷い。


梶原景時
苦悩の人。義経の天才的な戦略を間近に見て圧倒され、自分と比べて苦悩していた。最初に頼朝を見逃した時も理屈で判断していたようで、彼は常に直感よりも理屈で物事を考える優等生だったのだろう。努力する秀才か。お堅くて真面目過ぎるせいか肉体派の御家人たちにあまり人気がなく、皆から景時糾弾の連判状が作成され鎌倉を追われ討ち取られる。


後鳥羽上皇
やんごとなきお方。ただそこにいるだけでユーモラス。似顔絵がうまい。


安達盛長
安達さんはおだやかな頼朝の忠臣。いつも頼朝の突飛な行動に驚かされて目を丸くして困っていた。それがコミカル。このお方の最後は穏やかでよかったです。


三善康信
三善さんもいい人。控え目で欲がなく真面目でおだやかな人。いい人。このお方もNOを言えないお方かな。最後までチャーミングでした。


運慶
本物の天才。世界に誇れる天才。13世紀の大昔にあれだけパワフルでリアルな彫刻をなさったお方。特殊能力。このドラマの運慶さんは、権力者に媚びないかっこいい芸術家。芸術家はこうあるべし。かっこよかったなぁ。最後の義時の像はトラウマになるほど怖いが、あれは弟子に彫らせたのだろう。


善児
彼を忘れられるはずがない。怖い怖い怖すぎる善児。彼の名前が出るたびに皆恐怖に震える。強烈な印象。とにかく強い人。




…三谷さんのドラマはとにかくキャラひとりひとりが皆スポットライトを浴びるので、印象に残っている人…と思えばまだまだいくらでも出てくるのです。
北条長男言い出しっぺ宗時、伊東のじさま伊東祐親、マツケン平清盛、ホーオー様後白河法皇、男臭くかっこいい木曽義仲、綺麗な若者義高、戦は強いがおだやかな土肥実平、いつも笑顔の仁田忠常、いい人過ぎる江間次郎、奥さんと仲がいい/北条に騙された比企能員、一番の悪人大江広元、湯気出る筋肉土木課八田知家、京いけず源仲章、早口言葉慈円、神出鬼没文覚、中二病がんばれ北条朝時、頑張り屋さんの鶴丸/平盛綱、息子がよにん佐々木秀義爺、そして沢山の女性達。ひとりひとりキャッチフレーズが皆書けるほど。このドラマの俳優さん達は、たった1話限りの出演でも皆記憶に残ってます。
皆さまおつかれさまでした。

★「鎌倉殿の13人」好きだった人々3

源義経 源範頼 北条泰時 北条時房 源頼家 源実朝 千世 公暁


源義経
戦の天才。走り出したら止まらない。一番効果的な戦略をぱっと思いついてすぐに実行する。誰も思いつかないやり方で最短で結果を出す。だから天才。しかし行動が型破り過ぎるせいで人望がない。そして心は脆い。子供のように無邪気。政子さんに母を求めて甘えていましたね。その後、頼朝に拒絶されてどうすればいいのかわからずに子供のように迷い悲しむ。惜しい人。もったいない人。この義経はかわいかった。魅力的だった。


源範頼
上品な優等生。このお方も人が良すぎて人間不信な兄・頼朝に逆らうことができなかった。謀反を疑われて弁明もせず引き下がるのが悲しい。そして暗殺された。迫田さんが素敵。


北条泰時
彼が北条家の希望。真面目。純粋だが理性的。最初は頼家に仕え、その後実朝に仕える。少しずつ父・義時の元で政治に関わるようになり成長する。父の影のサイドを見て反発する。史実でもこのお方は優等生なのだそうです。それが色白で綺麗な坂口さんのイメージに合っていた。また坂口さんで泰時のその後のドラマをやってほしい。


北条時房
童顔のかわいい若者のイメージかと思ったら、冷静で落ち着いている人物だった。複雑な政治的状況でも敵を作らず誰に対しても穏やかな笑顔。バランス感覚の優れた知的な人物だと見た。


源頼家
頼朝が亡くなってすぐ将軍になった頼家。子供だからとバカにされないようにイキり過ぎたせいで御家人達からの信頼を失う。すぐに有力御家人達13人による合議制が決められ、頼家はますます隅に追いやられ拗ねて反抗する。本人もちょっと問題児だったけれど、北条と比企の間で板挟み、結局北条の野心に消されてしまう。かわいそうだった。必死で突っ張ってたのにね。義時との夜の会話で流した大粒の涙が忘れられない。


源実朝
繊細な人。若くて将軍になったのでそのことで悩んでいるのかと思ったら本当の悩みは別のところにあった。泰時に恋をして想いはかなわず。その繊細な表情がうまい。歌を詠む歌人。芸術を理解する人。悲しみの表情が多かった実朝。将軍になどにならずに引退して歌を詠む人生を送れば幸せだっただろう。せめて船が海に浮かべば喜んだだろうに。最後に公暁の顔を見つめて頷いた実朝は何を思ったか。


千世
かわいかった。普通の結婚ではなかったのに文句も言わず彼女は常に微笑んでいた。実朝と一緒の時はいつも嬉しそうだった。彼女の嬉しそうな笑顔が見れてよかった。幸せになってほしかった。


公暁
彼を忘れてはいけない。幼い頃、比企尼に「北条を許すな」と吹き込まれる。京で修行をして鎌倉に帰ってきた頃、叔父実朝は「もう争いごとは沢山だ」と(御家人たちが争わないように)京・朝廷から新しく鎌倉殿を迎えようとしていた。蔑ろにされたと傷つく公暁。乳母夫の三浦義村からは父・頼家の最後を知らされる。北条に恨みを募らせる公暁。しかし彼の計画は甘かった。計画が失敗したと知ってその場で狼狽える様子がリアル。鎌倉幕府初代征夷大将軍の孫に生まれながら「私に武士の名はありませんでした。私の名を知らしめたかった」と泣くのがかわいそうだった。






★「鎌倉殿の13人」好きだった人々2

北条政子 源頼朝 北条時政 りく 実衣 阿野全成 


北条政子 
最初に頼朝に会ったばかりの頃は元気いっぱいでユーモラスなかわいい女性。それなのに頼朝が亡くなった後、息子や娘たちが命を落とす頃から、彼女はあまり感情を表さなくなってしまった。大姫が病で命を落とし、頼家、一幡がいなくなり(彼女は彼らが弟・義時に討たれたことを知らなかった)、次男の実朝も孫の公暁に討たれる。そして公暁も討たれる。子や孫を亡くした母親として耐えられないほどの悲しみと苦しみだろうに、彼女は全てを静かに受け入れているように見えた。泣き叫ぶことも、憤ることも、病むこともなく、彼女は尼御台の座に座って全てを見守っていた。もしかしたら、あまりの悲しみに感情が麻痺してしまったのではないかと思うほど。心を閉じてしまったのかもしれませんね。三谷さんの描く新しい政子さんは静かな女性。静かにしていてもものすごいカリスマなのに印象は穏やか。ちょっと不思議なキャラだった。


源頼朝 
前半の主役。女好きで(たぶん)人たらし。ひょうきんでユーモアに溢れているのに、権力の階段を上りつめたとたんに人間不信になって全方向を警戒し始める。そして自分に一番近い存在の弟二人を殺害。ひょうきんさとユーモア、威厳とカリスマ、しかし心は空虚で人を信じられずにいる。自ら弟・義経を拒絶し殺害しておきながら、討ち取った後には首桶を抱えて泣きくずれる。一人の中に様々な相反する感情が存在する複雑な人物。しかし大泉さんの多面的な演技でその全てが信じられた。


北条時政 
陽気な下町のお父ちゃん。喧嘩が強い。短気。表裏のないわかりやすい人。実は子煩悩の家族思いの優しいお父さん。憎めない人。しかし途中から美人妻のりくさんの言いなりになって周りの御家人たちを攻撃し始め、それが北条家の進む方向を決めた。後に息子・義時が苦しむのも元はと言えば時政とりくの野心のせい。最後はのんびりとリタイアできてよかったですね。お父さんキャラは好きでした。


りく 
宮沢りえさんの力技。魅力的な悪女。生々しく野心に溢れる悪い女なのに憎めない。りくさんは悪くなればなるほど艶々イキイキと光輝く。色香で夫を操り…出会う全ての男を惑わせ自分の思い通りに操ろうとする。悪い女なのに見ていると楽しくなってくる。そんなりくさんが好きでした。宮沢さんの華がキラキラ艶々して輝いていて楽しかった。うまい女優さん。


実衣 
実衣さんはムーミンのミイだそうだ。最初の頃は何か情報を仕入れるとそれを人に言わずにはいられない。「黙っていろ」と言われたら必ず誰かに話して物事を大きくする。コミカルなキャラクターだった。夫・阿野全成の前では小さな女の子のよう。かわいかった。ところが全成が討たれる。その泣きの演技の力技に思わずもらい泣き。あの場面は「鎌倉殿」全体の中でも記憶に残る名演技だと思う。その後は仏を信じられないと出家せず、実朝を育てたことから政治にも野心を持ち始める。次第にエゴと政子への嫉妬が顔を出す。徐々に性格が変わっていく様子が見事。
 

阿野全成 
ちょっといいかげんで頼りにならないが、とことん優しい人。実衣さんには優しい旦那様。優しい表情に優しい声。こういう人と結婚したらきっと幸せ。人が良すぎて頼まれればNOを言えず、それが自らの命を縮める理由となった。彼が討たれて悲しかった。