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『Edmond(2018年)/仏/カラー
/110分/監督:Alexis Michalik』
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面白い。傑作の部類だと思う。監督とプロダクション全体が全力でいい映画を撮ろうとした力技。沢山のユーモア。笑い。映画芸術への愛。舞台芸術への愛。夢。映像の美しさ。過去の時代を美しく描いたファンタジー。本当にいい映画です。映画の魔法も沢山。
これはフランス語の映画だからハリウッドには受け入れられにくいのかもしれぬ。だからアカデミー賞ノミネートもないのだろう。しかしこの映画は近年アメリカで作られたどの映画よりもずーっといいと思います。凝ってます。頭がいい。情報量が多い。面白い。
Rottn Tomatoesでの(現在の)27人の米のプロの批評家による平均スコアは85点(←悪くはない)。世界各地の映画ファンによるスコアIMDb/Internet Movie Databaseでは平均7.4/10点…その内訳はUS Users(64人)=6.5点、Non-US
Users(701人)=7.5点…おおぅアメリカ人にはまだこの映画のよさは広まっていないらしい。面白いのになぁ。
フランス映画さまよくぞやってくれました。これこれ。おフランス映画にはこういうのを期待したい。楽しくて結構。おかしくて結構。ハッピーで結構。映画は所詮娯楽なのだ。何も難しい顔をしてうんうん唸るばかりがいい映画でもないだろう。薄っぺらのコメディも本気でやれば名作です。あ~楽しい楽しい。最初から最後までハッピーな心躍る2時間。映画の魔法。大きな拍手。
★あらすじ
1897年フランスのパリ。売れない脚本家エドモン・ロスタン/Edmond Rostandが『シラノ・ド・ベルジュラック/Cyrano
de Bergerac』を書き上げるまでのドタバタを描く。エドモンは名優コンスタン・コクラン/Constant Coquelinに「コミカルな英雄の話」の新作(戯曲)をオファーするのだが、実はまだ全く書いていない。口うるさい女優、製作からの要望、奥さんの嫉妬、下手な役者、友人の恋の手助けなどなど…そして周りにはあまり期待されていないにもかかわらず、エドモンは傑作を書き上げねばならない。
★ネタバレ注意
沢山のサイドストーリーが詰め込まれているにもかかわらず綺麗にまとまっているのは見事。様々なキャラクターがうるさく自己主張をしながらストーリーは進む。台詞も早いし、ストーリーもどんどん進む。ほぼ2時間の映画で中だるみは一切ない。最初から最後までエネルギーに溢れていて、字幕を追いながらついていくのに必死。それなのに映画の魔法が何度も出てきて圧倒される。ちょっと驚き。ものすごく贅沢な映画だと思う。
私の『シラノ・ド・ベルジュラック/Cyrano de Bergerac』の知識は、1990年の同タイトルのフランス映画。主演はジェラール・ドパルデュー。それからアメリカ映画の『愛しのロクサーヌ/Roxanne』も見ていたので、おおまかな筋は知っている。
まず売れない脚本家エドモンが、俳優コンスタン・コクランに新作のオファーをする場面。新作とは言っても実はまだアイデアさえも無い。そのためエドモンはコクランの前で身の回りの物を見ながらアドリブでアイデアを語り始める。映画『ユージュアル・サスペクツ/The
Usual Suspects (1995)』のように。
『シラノ・ド・ベルジュラック』は、鼻が大きく醜いシラノが、美しい言葉で美男クリスチャンの恋文を代筆し、美女ロクサーヌとクリスチャンの恋を助ける…というのがストーリーの要。この映画でエドモンが書く「脚本の中のシラノの手紙」の文章は、現実でエドモンが彼の友人レオの恋文を代筆したもの…ああなるほどなるほどと思わされる。
それから様々な状況を経て公演日を迎えるのだけれど、色々な事柄が休む間もなく次々と起こり、情報がとても多く全て思い出せない、思い出すのは映画の魔法。沢山の笑、ドタバタ気味のユーモアも楽しい、俳優さんたちのそれぞれの魅力、舞台芸術への愛、溢れる映画への愛、美しい映像、ああ…映画っていいですねぇ…と幸せになる。
崖っぷちのエドモン、カリスマに溢れた(コミカルな)コンスタン・コクラン(大親分)、わがままな女優マリア、ハンサムな俳優の友人レオ+美人のジャンヌ、大女優サラ・ベルナール、芝居の下手なコクランの息子ジャン、みんなを盛り上げるアフリカ系カフェのオーナ等等、キャラクターも皆面白い。
ああ…感想を書くのがむずかしい。面白い映画は感想が書きにくい。もう一回見たほうがいいんだろうな。時間がとれるかな。また見にいけるか。
19世紀のムーランルージュの中の様子もいい。今のように大きなステージではなくて、カフェのテーブルのような客席のフロアで、踊り子達が目の前の床で踊る。それからジャンが連れて行かれる売春宿も華やかでいい。チェーホフがいて挨拶をする。ジャン君が大人になって急に堂々といい俳優さんになるシーンにも大きな拍手(笑)映画の魔法。フランスのユーモアはいい。
最後にこの映画でコンスタン・コクラン=シラノを演じた俳優さんオリヴィエ・グルメ/Olivier Gourmetさんのことを書いておこう。 実はこの映画を見ようと思ったのは、映画のトレイラーにこのお方が出ていたのを見たから。この俳優さんのお顔は見たら二度と忘れない。
このお方を最初に見たのは2017年のフランス映画『ルージュの手紙/Sage femme/The Midwife』。主人公の中年女性のもっさりとしたトラック・ドライバーのボーイフレンド…その映画でこの俳優さんの事がとても気になった。その映画の脚本がこのちょっと妙なルックスの俳優さんを魅力的に書いているから気になったのかなと思ったのだけれど…。その後私は、このブログでフランスの俳優の妙なルックスと色気について、大変真面目に考えて文章まで書いてしまった。う~ん。
フランスの俳優の色気について考える
フランスの俳優の色気について考える
今見ても素敵だとは言えない。変だなぁと思う。それなのにこの俳優さんから目が離せない。面白い。この映画のグルメさんの役は、大柄な大物俳優で声も大きく…堂々として大きいお方なのですけど、面白いんですよ。やっぱり彼は大スターなのかも。
…びっくりしたの。前見た映画の穏やかなトラック・ドライバーと全然イメージが違う。役で変わるお方ですね。うまいお方なんだろうな。いやー目が引き付けられるわ~不思議。この映画を見た日の晩ご飯の食卓でも旦那Aに向って「あの俳優さんはなんであんなに妙なのにカリスマがあるのかしら(←大変失礼)」と興奮して延々と喋ったらうんざりされた。なんだかグルメさんを見ると人の魅力/男の魅力について語りたくなる。不思議。これだけ目が惹きつけられるということは、やっぱり大スターなんだろうなと思います。
声だな。グルメさんが素敵に見えてしまうのは、声がいいんだろうな。たぶん
あ~面白かった。ゲラゲラ笑った。ユーモアの質がいい。好き。また見たい。フランス語がわかったらもっと面白いんだろうなと思います。おそらく英語の字幕に入らなかったフランス語での冗談が沢山あるのだろうと思います。フランス語がわかる人が羨ましい。