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『My Week with Marilyn(2011年)/英・米/カラー
/99分/監督:Simon Curtis』
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特に興味を持ったのはミシェル・ウィリアムスさん。彼女について書きたいのだけれど、彼女はどうもつかみどころがない。売れている女優さんなのに、その演技からは彼女のプライベートやお人柄がほとんど見えてこない。ちょっと不思議。女優さんとしてうまいのはよくわかる。しかし彼女ってどんな人? というわけで『Fosse/Verdon』の感想を書く前にちょっとミシェルさんのことを知りたくなった。そこでNetflixにあった『マリリン 7日間の恋/My Week with Marilyn』を見てみた。以前から見ようと思っていたから丁度いい機会。
この映画で、ミシェルさんがマリリンちゃんに造形的に似ているかどうかは、あまり重要ではない。あまり似ていないのだろうと思う。マリリンちゃんはもっと左右の目が離れていて顔の真ん中が空いているのに比べて、ミシェルさんは左右の目が詰まっている。お二人とも女性的な可愛いお顔なのだけれど質が違う。ミシェルさんはちょっとキツイお顔。しかし重要なのはそこではない。
この映画のミシェルさんは、最高レベルの物真似と演技の技でマリリンちゃんを演じている。この女優さんはこのマリリンちゃんを演じる為にどれだけのマリリンちゃんの映像を研究したのだろうかと思う。うまいですよ。本当にうまい。技術がうまい。流石やわ。やっぱりすごいねミシェルさん。
一般にマリリン・モンローの印象は
(雑ですけど)こういう感じ。
曲がった眉毛に半開きの目と口。眠そうな表情がセクシーだと言われる。マリリンさん御本人もこのセクシーな表情の効果をよーくわかっていたらしく、googleの画像検索で「Marilyn Monroe」とタイプすれば、出てくるのはこういう表情の写真ばかり。御本人がカメラを向けられるたびにこういう顔でポーズしていたのだろうと思います。
しかしながら、マリリンちゃんのファンの方ならおわかりだろう…彼女が実際に映画で見せる表情はこちらのほうがずーっと多い。
私が彼女の映画から受ける彼女の印象はこちらの方。綺麗な輪郭に丸くすぼめた唇。曲がった眉毛でちょっと困ったような表情。しかし目はいつもキラキラ笑っている。時々目をまんまるにするびっくり顔も可愛い。映画で動くマリリンちゃんはセクシーというよりも、とにかく可愛いカワイイかわいい…。砂糖菓子のように本当に可愛い。おでこが出ていてちょっとキューピーちゃんに似ている。攻撃的な肉食系のセクシーさはなくて、とにかくひょうきんでちょっとおバカでいつもけらけら笑っているかわいい女の子という感じ。(私は彼女の全ての映画を見ていないから間違っているかもしれないけれど)
おそらく御本人のお人柄もそっちのほうだったのではないかと思う。お人柄に攻撃的なところなど全然なくて、いつも不安で落ち込みやすく自信がなくて傷つきやすい優しい女の子…そんな印象。
そんなイメージのマリリンちゃんを、この映画のミシェルさんは大変うまく演じているんですよ。本当にうまいと思う。その演技力に特に驚く理由は…私ミシェルさん御本人はかなりキツイタイプのお方ではないかと思うから。インタビューの動画を見る限り、ミシェルさんはご自分をしっかり持った非常に頭のいい方…という感じがする。まさにマリリンちゃんとは正反対。
役を技術的に作っているのだろうと思います。うまい。しかしたぶんご本人から滲み出てくるものは違う。その違いがちょっと見える…。でもうまい。なんの問題もない。大変うまい。これは女優さんの力技。それが面白いなと思った。
時々不安そうに上を見る青い目、白い肌は、あ~…マリリンちゃんがいるようだ。すごいと思います。全然似てないはずなのに似ている。
…とミシェル・ウィリアムさんのことばかり書きましたが、この映画の主人公は、マリリンちゃんに恋をするコリン・クラーク/Colin Clarkさんです。これは彼の映画。マリリンちゃんの映画だと思って見たら、
彼女に憧れる男の子の話だった。見所は彼のほうです。
彼女に憧れる男の子の話だった。見所は彼のほうです。
確かにミシェルさんはうまい。しかしこの映画のマリリンちゃんは、コリン君があこがれて恋して本気で好きになってしまう…ハリウッドのスーパースター/偶像。この映画ならマリリンちゃんはイメージだけでもOK。彼女の人となりを掘り下げる映画ではなかったのですね。
ミシェルさんはとてもうまいけれど、必ずしも似ている必要もないのかもしれぬ。映画の主題はコリン君の心模様だから。
この話は、手の届かない雲の上にいると思っていた憧れのスターが、現実の人になってファンの前に現れた…というおとぎ話のようなもの。それはそれは幸せな映画なのです。この映画のマリリンちゃんは、コリン君のあこがれる完璧な女性。彼女が実際にはどんなにわがままで気難しく、回りに迷惑をかけていても、そんなことは彼にとってはどうでもいい。マリリンちゃんが好きで好きで一緒にいられて幸せ…。あの…あの…マリリンが僕の目の前にいて、僕に話しかけて、僕に…、僕に…わあああああ…というお話。なんと微笑ましい。かわいいです。
育ちのいいぼんぼんのウブなコリン君を演じたのは、エディ・レッドメイン/Eddie Redmayneさんという俳優さんだそうだ。本当に彼はかわいい。キラキラ光るマリリンちゃんを目の前にして、いつもまぶしそうな表情が何とも言えない。本当に心を奪われたようにぽーっとしてる。彼もうまい。
誰かに恋焦がれる若者の姿というのはいいものです。いや…若者だけじゃないですよね。誰かが誰かを好きになる様子というのは素敵なもの。恋する人の夢がかなう様子というのはいいものだ。見ていてこちらも幸せになれる。
コリン君は育ちのいいボンボンらしく、憧れの女性の前で、理性で色んなものを抑えて最後まで可愛らしい若い紳士を貫くんですよ。それがまたかわいい。若いっていいな。瑞々しくて素晴らしい。
最初はマリリンちゃんの話だと思ったのに、スターに恋する純粋な青年の話だった。すごくかわいかった。本当にいい映画。本当の話なんでしょうかね。おとぎ話のようだ。なんと幸せな。コリン君よかったねぇ…こちらも幸せになりました。
怒ってばかりいるローレンス・オリビエを演じるケネス・ブラナーさんもおかしい。彼が怒るたびに笑わされる。
全体にかわいい微笑ましい映画。かわいらしいエンタメFeel Good映画なのに、大物の役者さん達が多く出ていて、役者さん達はそれぞれかなりうまいのも見所。いい映画です。