能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2023年3月7日火曜日

NHK Eテレ『東京の雪男』全5話・感想



TV Japanにて。日本での放送は2023年2月4日から3月4日まで。全5話。 


山から下りてきて街で暮らしている雪男・山川ユキオ(磯村勇斗)と、千代田区役所の獣害対策課に務める女性・馬場翠(北香那)。その二人が恋に落ちる。異人種間の恋?

ほのぼのとしたファンタジー系ドラマだと思ったら、様々な問題提起のドラマだったようだ。最初からそのつもりで見ていなかったので、その「お題」が全部でいくつあったのかわからないのだけれど、私が気づいたのは…外国人の人権、環境問題(温暖化)、同性カップルの結婚。

最後の方で出てきた同性カップル(または様々なケースでの)結婚について(=ドラマ内では雪男・ユキオと人間・翠の結婚となっていた)の話は、なぜ「法律上の結婚」が当事者たちにとって必要なのか…その具体的な内容(理由)が台詞の中に出てきた。いいことです。こういうことはもっと説明が必要。

ああそうなのか…と回が進むごとに、このドラマが問題提起ドラマだと少しずつ気付いていったのだが、ドラマそのものが全体にスローペースでほのぼのとしていい雰囲気で、キャラクター達もそれぞれかわいかったり微笑ましくそれが楽しかった。演じる役者さん達も皆自然な演技のうまい方々でそれが心地いい。

さてその問題提起の内容は心に残ったのか…どうだろう。私は個人的には、雪男と翠ちゃんを見ていて「この二人はうまくいけばいいねぇ」などとのほほんと見ていたので、最後の回で「結婚」の真面目な話が出てきて少し驚いたほど。

外国人の人権や同性愛者の結婚に関して、それを具体的に外国人や同性愛者の登場するドラマにするのではなく、「雪男」というフィクションの存在を登場させてオブラートに包む表現をしていたのだと思うが、実はそのせいで(私個人的には)焦点が少しぼやけたかなという気もした。

始めはゆるいSF的な(人ではない)雪男と女の子のファンタジーの恋を見ていたつもりだったので、問題提起型のドラマだったと後から気付き、それなら最初からそのつもりで見ていればよかったと少し思った。 まぁそうでもないのかな。全体にいい雰囲気のドラマなのですよね。摩訶不思議で面白かった。

雪男の磯村勇斗さんはお顔は童顔なのに身体ががっちり大きくてかっこいい俳優さん。気負わない自然な演技。いい雰囲気。そして馬場翠の北香那さんは「鎌倉殿の13人」で公暁の母親つつじを演じていらした…彼女の公暁を止めようと説得する様子が印象に残っていた。うまい女優さん。そして周りを固める俳優さん達も皆達者な方々。普通の町の普通の日常の雰囲気がとても自然。ほのぼの。


それにしても雪男とはどういう存在なのだろう。動物と話しができるのはちょっと羨ましいが「息を吹きかけるとうどんが凍る」ということはやっぱり人間ではないのか。彼とちゅーをしたら唇が凍るの?危ない笑。肌も冷たいのかな。寒いね。


2023年3月6日月曜日

NHK 趣味どきっ!『読書の森へ』本の道しるべ・第2回 福岡伸一



NHKの 趣味どきっ!…の『読書の森へ』本の道しるべ シリーズ。去年の12月から今年1月にかけての放送。録画を放送の後すぐに見たのだけれど、とても面白かったのでメモしようと録画を残していた。心に残ったものを記録しておく。


第2回 
生物学者 福岡伸一さん
日本での初回放送日: 2022年12月13日
TV Japanにて


福岡伸一(1959年9月29日 - )
日本の生物学者。青山学院大学教授。ロックフェラー大学客員教授。専攻は分子生物学。農学博士(京都大学、1987年)。京大農学部食品工学科卒。分子生物学を研究し、遺伝子関連で積極的に発言する。著書は、生命の根源を問う『生物と無生物のあいだ』(2006年)のほか、『動的平衡』(2009年)などがある。わかりやすく書いた科学エッセイも多い。


------NHKの番組で時々お見かけした福岡さん。このインタビューで、福岡さんのお好きな分野が私の興味のある分野と重なると思いながら拝見。好きな分野だからお話しも楽しかった。それから先日感想を書いたヤマザキマリさん、鹿島茂さんのインタビューの内容とも少し重なる部分があると思った。面白い。


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原点

・昆虫図鑑
子供の頃から虫が好き。今も自然科学の専門古書店に通う。蝶が専門。
-----虫の好きな少年。ヤマザキマリさんも虫愛ずる少女でしたね

古書店のお宝

・アルシド・ドルビニ
/Alcide Charles Victor Marie Dessalines d'Orbigny 
『万有博物辞典』(1849年)

芸術品のような博物図鑑 全16巻。現在は古書店で120万円するそうだ。

大学の研究室で手に取る本は 思想の基本

・クリフォード・ドーベル/Clifford Dobell 
『レーベンフックの手紙/Antony Van Leeuwenhoek and His Little Animals』天児和暢訳
レーベンフックの(自作の顕微鏡による)細菌を含めた微生物の観察に関する手紙

・石川良輔 『うちのカメ』
カメの日常生活を綴った観察日記。人間と他の生物との理想の関係
-----これは読みたい!

昆虫を調べることで、世界の成り立ちを知ろうとした

・原色図鑑 世界の蝶 中原和郎/黒沢良彦
蝶の原寸の図鑑

本は未知の世界の扉、入口

図書館に行けば、本の背表紙が呼んでくる


少年時代の愛読書

・ヒュー・ロフティング/Hugh John Lofting
『ドリトル先生/Doctor Dolittle』シリーズ 
全12巻 井伏鱒二訳 ←訳者!山椒魚!びっくり!
物語の面白さ、ストーリー・テリングの楽しさを教えてくれた

ドリトル先生の助手になる少年トミー・スタビンズ君に憧れる

ドリトル先生はスタビンズ君を子ども扱いせずに「Mr.スタビンズ」と彼を呼ぶ。先生は他の大人のように命令したり抑圧することはない。スタビンズ君が求めれば答えてくれるし、教えてくれる。スタビンズ君を公平に自分と対等の人間として扱ってくれる。

後に福岡さんは『ドリトル先生航海記』の翻訳をなさった。
楽しかった。翻訳は究極の精読。


とある一節から…
旅から帰ってきた先生の荷物の少なさに驚いたスタビンズ君に先生は答える
「旅に沢山の荷物など本当は必要ない。そんなものはかえって邪魔になるだけだよ。人の一生は短い。荷物なんかに煩わされている暇などない。…いや、実際、人生に荷物など必要ないんだよ、スタビンズ君」
福岡さんが笑う…これだけ(本を)抱えてしまったので身につまされてます。
-----私も同じです笑。プチ・コレクター気質で物を持ちすぎている。反省。


科学の世界と出会った本

・『SF名作シリーズ』(1967年)全26巻 岩波書店
SFの特徴は奇想天外なありえないことを物語として作る時、魔法を使ってはいけない。「科学技術というものをもとに物語を作る」という論理構造がある。そこが私は科学少年であったので、そういうものを使った物語がつくられるということにすごく共感した。
挿絵も豪華 --- 横尾忠則 和田誠 田名網敬一 真鍋博

-----私も。若い頃にSFをよく読んでいた理由は多分そこなのだろうと思った。いかに(その時代の)人間の知恵を使って「嘘」を本物らしく描くのか。その創造性/クリエイティビティにドキドキする。私に科学の知識がなくても「嘘」が本物らしく描かれていれば楽しい。
この岩波のSF名作シリーズは面白そうだ。検索したら全26巻のタイトルも出てきた。あとで調べよう。
…余談だけれど、そういえば私は人と人の関係=事件を扱ったミステリーものにはハマらなかった。学生の頃にアガサ・クリスティをいくつか呼んですぐに飽きた。人と人のゴタゴタにあまり興味がないからだろうと思う。



その後福岡さんは大学で分子生物学を専攻
大学院を経て1988年に28歳でアメリカへ留学
研究三昧の日々 結果が出ない焦り 人間関係の難しさに苦しんだ

競争に負けることの方が多い。研究も95%ぐらいは思ったようにいかない。失望の中からどうやって希望を見つけてくるかが大事になってくる。その答えを小説に求める。
-----ここ。ここがヤマザキマリさんの「読書を糧に」の話と重なると思ったところ。問題の解決を本に求める


失望の中で導いてくれた本

・松本清張「石の骨」短編集『張り込み』所収
アカデミズムに受け入れられず姿を消す学者を描いた作品。歴史上の大発見をしながらも、認められなかった実在の考古学者をモデルに。

勝者の物語ではなく 敗者の物語。成功の物語はつまらない。負けてしまった者の思いの方にこそ、本当のことがある。そこに開かれた問い。そこから考えることがたくさんある。

敗者の物語から見えてきたことは?

敗者の悲哀を共有するというのは、世界に対して「謙虚」になることであって「謙虚さ」というのは「自己懐疑」でもある。「自分自身がこれでいいのだろうか?自分が言っていることは正しいのだろうか?」でも謙虚さとか自己懐疑ということが、実は「知的」であるということの一番大事なことだと思う。自分を疑えないのは最も知的でない。自分が無謬(むびゅう:理論や判断にまちがいがないこと)であると考えるのは最も知的ではない。そういうことを物語にしてくれている小説家は松本清張。

研究者としてのあり方を小説が気付かせてくれた。

-----Constructive self-criticism/建設的な自己批判でしょうか。このことを私は英国で学んだ。30代の半ばに美大にいきなおそうと大学の予備科/基礎課程(foundation course)に通って学んだ。その時そこの先生達に(物を作るにあたって)Constructive self-criticismを決して忘れるなと何度もうんざりするほど言われた。自分の作品の凡庸さは自分で見つけろということだ。
 そのような「英国式教育」の影響は、その後英国人の気質にも感じた。新聞の歯に衣着せぬ政治家への批判、世情や自国のあり方への批判…「己を信じすぎてはいけない。自信を持ちすぎるな」…それが英国の知性と思慮深さなのだろうと受け取った(個人的意見)。 
ここで福岡さんが仰っている「自分を疑えないのは最も知的でない」…自己の間違いを見つけ、それを正しながら次に進む…ことは人が生きていく上でも大切なことだと思う。


読書の新たな楽しみ方(コロナ禍の日々の中で)

かつて自分が読んで素晴らしいなと思った本を再読すると、より豊かな読書になることに気付いた。

・丸谷才一『笹まくら』
緻密な構造をもって作られた構築的小説。戦中、戦後と時代を行きつ戻りつしながら主人公の人生を描いた。入り組んだ小説。笹まくら年表を作ってみた。作家の創作を追体験しながら読むことができた。面白さ、緻密さを再発見できた。じっくりと読む楽しみ。


これからどんな読書をしていきたいですか?

現代社会では、すごくファストを求められていて、とにかくあらすじを早く知りたい。それがビジネスにも繋がるみたいな風潮がある。私はそれに反対したい。小説、本の面白さっていうのは、あらすじとか結末とか、プロットじゃないわけです。そのひとつひとつのプロセスが大事だし、それをどう書いているかっていう、パズルの一つ一つの結びつきが大事なんですね。だからやはり読書は、ゆっくり読まなきゃいけないし、じっくり味わうべきものだと思う。

-----このお言葉は、このシリーズ第7回の鹿島茂さんの「大長編を読む」のお言葉にも通じますね。とにかく全部読む。読書はそのストーリー/プロット以外にも楽しみがある。読み進むプロセスが大切だと。
また「じっくりと読む」ということは、ヤマザキマリさんの…本の難しい箇所も「飛ばさないで立ち止まって反芻してみたり」という読み方にもつながると思う。
…読書の楽しみ方を言葉にしてくださることで、私も刺激を受けました。たしかに。たしかにそのとおり。読書の楽しみ…なんとかしなければ。元々本は好きな人間だったのに、ここのところ何年もまともに本を読んでいない。大変な問題。
そういえば動物ものが好きだったのに『ドリトル先生』は読んでいなかった。この番組を見てさっそく『ドリトル先生』をkindleで購入。読み始めた。




2023年3月5日日曜日

春の元気な太平洋写真



海亀は海に行った。海は激しく動いていた。元気がいい。
ザッバーン!ヒェ~ なんだか嬉しいね。元気になる。写真を撮った。

小さな魚もいた

それにしても北斎にはなぜ水飛沫の形が見えたのだろう?


お猫様H:うららかな春の日に



3月4日からちょっとだけ暖かくなった。それまで毎日寒かった。風は強いし雨はよく降るし。家の中でも「寒い寒い」ばかり言っていた。
やっと暖かくなり始めるかな。


そして蘭の葉に5㎝に満たない子ヤモリくんを発見。鉢ごと外に持って行って逃がした。大きくなれ。



2023年3月2日木曜日

NHK 趣味どきっ!『読書の森へ』本の道しるべ・第3回 ヤマザキマリ



NHKの 趣味どきっ!…の『読書の森へ』本の道しるべ シリーズ。去年の12月から今年1月にかけての放送。録画を放送の後すぐに見たのだけれど、とても面白かったのでメモしようと録画を残していた。心に残ったものを記録しておく。


第3回 
漫画家、随筆家、画家 ヤマザキマリさん
日本での初回放送日: 2022年12月20日
TV Japanにて


ヤマザキマリ(1967年4月20日 - )
日本の漫画家、随筆家、画家。東京造形大学客員教授。十代からイタリアに渡り、フィレンツェの国立フィレンツェ・アカデミア美術学院(イタリア語版)で美術史と油絵を学ぶ。その後、2002年以降、シリアのダマスカスや北イタリアにでの暮らしを経てポルトガルのリスボンに移住。米国シカゴを経て2013年よりイタリア在住。2010年に『テルマエ・ロマエ』でマンガ大賞受賞。その他受賞多数。


------ヤマザキさんは十代の頃からイタリアに留学なさって、そのまま欧州+中東+米国で暮らしていらしたそうだ。エネルギーに溢れたお方なのだろうと思います。彼女が「どうやって10代から海外でやってこれたのか。辛く困った時にどうやってその状況を生き抜いてきたのか?」その答えが少し見えた気がした。


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・藤子不二雄 『21エモン』
様々な宇宙人が旅館にやってくる話。

・オラフ・ステープルトン/olaf stapleton
(1886年5月10日 - 1950年9月6日)は、イギリスの小説家、哲学者。
 『スターメイカー/Star Maker』1937年
 『オッド・ジョン/Star Maker』1935年


子供の頃は昆虫図鑑を見て昆虫採集
「虫は意志の疎通ができない。通じ合えない。価値観の共有ができないと一緒にいられないという概念から逸脱する。「海外で緊張しないの?」などと聞かれるが、虫と一緒にいると、自分に苦手な人がいてもそんなものかなと思う。手に負えない状況になってもあまり動じなくなる。昆虫が教えてくれることはいっぱいある」

------面白い。虫との交流を考えたことはなかったけれど。確かに。世の中には全く通じ合えない人というのがいる。それは私も日本を出てから学んだ。人は人、自分は自分、人と自分は違っていてあたりまえ、それでもOK…という考え方になっていく。


子供の頃、絵描きになりたいと思った
母から、画家は食べていくのが大変だからと…

・フランダースの犬
主人公の要領が悪い。行動力がないが故にああいう顛末になった。納得がいかない。

・アラビアンナイト
ずるがしこい。生きるための駆け引き。中東では「ずるい」は美徳。日本は「清く正しく信じること」が美徳。しかし中東では「人を信じて、裏切られても、泣いても、信じて騙されたお前が悪い」。生き延びる上で、疑う気持ちを端折ってはいけない。それは生きる知恵。「アラビアンナイト」にはそんな考え方がある。

------これはそう。よくわかる。「騙されない知恵を自分が持たねばならない、騙した相手を恨むよりも騙されないように自分を訓練しろ」…それを私もロンドンにいた頃に学んだと思う。相手の好意や親切心だけを頼りにしない。安心しすぎない。生きるために必要なこと。どこに行ってもそうだと思う。

・ニルスの不思議な旅
------これも冒険の話ですね。子供の頃に読んだ。


イタリアに留学して

日本の文学で何が好きか?と問われた。絵を描くためには様々なコンテンツが自分の中になければならないと説教された。まず本を読めと。

・安部公房『砂の女』
砂丘に閉じ込められる。「逃げられなかったから、逃げなかった。…おそらくそれだけのことなのだ」「夢も 絶望も 恥も 外聞も その砂に埋もれて 消えてしまった」。

------うわ~これは…そう。そうそう。この本は私は40歳を過ぎてから読んだ。この話は16、17歳ぐらいの高校生ぐらいの頃の私の心の状態だと、当時を振り返りながら読んだ。状況から抜け出せない苦しみ。どうやったら逃げ出せるのか。逃げられるのか。その描写がものすごい。恐ろしい話。だからすごい。


絵を描くしかない。苦しい。本を読むこと。

・安部公房
・ガルシア・マルケス 『百年の孤独』
・三島由紀夫 『豊穣の海』


苦しかったイタリアでの日々。本を読むことで満たされ支えられ、次の持続力になっていった。本は栄養。ガソリン。生き延びるための。ご飯より大事。


コロナ禍で
世界の在り方を感じた本

・エドガール・モラン/Edgar Morin
(1921年7月8日 - )フランス・パリ生まれの哲学者 社会学者
・『祖国地球 - 人類はどこへ向かうのか』
これから私達が学ぶべきなのは、地球と言う惑星の人間として、存在し、生き、分かち、伝え、交感すること。
・『百歳の哲学者が語る人生のこと』
・『自伝: わが雑食的知の冒険』
・『意識ある科学』
・『失われた範列: 人間の自然性』


モランは、世界が西洋文明至上主義な広がりをしていることに反発心を持っている。それに共感した。モランは疑念 疑問 問いかけ それが常に絶え間ない人 それが知性。

今の世の中は知性や教養に対して省エネ。失敗がイヤだ 間違えたらイヤだと 精神性に対して非常に省エネで生きている人が多い。モランは逆。燃費が悪いほどの出力で、様々なことを吸収している。100歳超えてまだ元気。


本を読むとは

活字でないとトレーニングされない筋肉がある。漫画でも映画でもだめ。活字で精神力の筋力を鍛える。「これはどういう意味だろう」というのを飛ばさないで立ち止まって反芻してみたりするとほぐれてくる。そして楽になる。その後に何が起きたとしても。(後から)ああこれ、これってああいうことじゃん…と解るようになってくる。些末なことで悩まなくてすむ。本をいっぱい読んでいれば。
 


------ヤマザキさんは知的なお方。元々頭のいい方が、若い頃から外国の異文化の中で揉まれて生きてこられた…だからこそ、その長い経験から構築された彼女の生きる哲学は「深い」「現実的」。様々なことを経験なさっているからこその彼女の「考え方」が興味深いと思いながら拝見した。


2023年3月1日水曜日

Gryffin & Elley Duhé – Forever (2022)



永遠を求めて



Gryffin & Elley Duhé - Forever (2022)
Forever (feat. Elley Duhé) - Single
Gryffin
Released: October 28, 2022
℗ 2022 Darkroom/Interscope Records



アメリカのダンスチャートに入っていた曲。ここのところダンスチャートはアメリカの方がいい曲が多い。しばらく英国の曲をメモしていない。

ところでダンスチャートの曲というのは、若者が今どのような歌を聞きたいのかを反映しているのだろうと思うのだけれど、この歌のpre-chorusの歌詞「I run the red lights just to see how it feels/赤信号を突っ走ってどう感じるのか知りたい」に、今の若者の「もっと自由になりたい」という強い思いを感じる。切なく美しい。

その前の「I don't know how to belong out here/ここにどう馴染めばいいのかわからない」や「One day I know that I'll disappear/いつか私は消えるんだし」の歌詞にも今の若者の焦りや戸惑いが見える。そして彼らは刹那的にでも幸せを感じることができるのなら、それが永遠であればいいと求めているのか。

去年取り上げたAfrojack, R3HAB (feat. Au/Ra) - Worlds On Fire (2022)にも同じような雰囲気を感じた。今は世界中の様々な事柄で若者が不安を感じている時代なのかもしれませんね。どちらも若者達の気持ちを捉えた美しい曲。


この曲を聴いていてふと思った…
私達が歌や映画やメディアの中に見る風景というのは美しくて、若い頃の私達は「そんな美しい風景の中に自分も存在したい」と願い、憧れ、それを必死に追い求める。それが「夢」というもの。 しかし(誰にとっても)現実の日々はそれほど美しくもない退屈な日常の連続。若い頃の私達は、そんなあたりまえの日常にいつも少しがっかりしたり焦りを感じたりする。

月日が流れ、そんな(一度は若者だった)者も年を取る。そして自分の若かった頃を振り返り、ある日「あの頃私がいたあの場所は(実は)美しかったのだ」と気付く。「あの頃の私はあの美しい風景の中に生きていたのだ」とあらためて認識する。謎が解けたような気持ちになる。「美しい風景」は幻のように人の心の中に存在する。人生とは不思議なもの。


★Gryffin
Dan Griffithさん。米国カリフォルニア州サンフランシスコ出身のmusician、DJ、songwriter、 record producer。1987年生まれ。幼少時からクラシック・ピアノとギターを学び、南カリフォルニア大学でelectrical engineeringを学ぶ。2014年より活動開始。2016年よりコンスタントにUSダンスチャートに曲を送り続けている。ポップ・スターとのコラボ多数。2019年にデビュー・アルバム『Gravity』、2022年に『Alive』をリリース。MVではギターとキーボードを弾いているお方。

★ Elley Duhé
Elley Frances Duhéさん。米国アラバマ州出身のシンガー。1992年生まれ。2018年にZeddとコラボしたシングル「Happy Now」、また2020年のシングル「Middle of the Night」、2022年にMeduzaとコラボした「Bad Memories」が世界中でヒット。



Forever
Gryffin
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Forever, forever, forever and ever
Forever, forever, forever and ever
永遠に

Yeah, 宇宙/世界は一つの大きな場所
全てのノイズを切り抜けるのは難しく
そして人々は「無難にやったほうがいい」と言う
まるで何の選択肢もないみたいに

ここにどうやって馴染めばいいのかわからない
誰かの特別な人にならなくてもいい
いつか私は消えるんだし
だから私がここに存在する間は

赤信号を突っ走って どんなふうに感じるのか知りたい
手を高く上げて振って ハンドルにさえ触らずに
月の光のもとで飲んで、私の感じる天国は
永遠に永遠に続いていく

赤信号を突っ走って どんなふうに感じるのか知りたい
手を高く上げて振って ハンドルにも触らずに
月の光のもとで飲んで、私の感じる天国は
永遠に永遠に続いていく

Forever, forever, forever and ever
Forever, forever, forever and ever
永遠に


私が海の一滴のしずくだってことも わかってる
でも私は波になって 寄せては返し
どこかに流れつく 私がその一番乗りになりたい
人々が夢見る何かへ

ここにどう馴染めばいいのかわからない
誰かの特別な人にならなくてもいい
いつか私は消えるんだし
だから私がここに存在する間は

赤信号を突っ走って どんなふうに感じるのか知りたい
手を高く上げて振って ハンドルにさえ触らずに
月の光のもとで飲んで、私の感じる天国は
永遠に永遠に続いていく

赤信号を突っ走って どんなふうに感じるのか知りたい
手を高く上げて振って ハンドルにも触らずに
月の光のもとで飲んで、私の感じる天国は
永遠に永遠に続いていく

Forever, forever, forever and ever
Forever, forever, forever and ever
永遠に
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah, yeah

Forever, forever, forever and ever
Forever, forever, forever and ever

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Songwriters: Daniel Griffith / Elley Frances Duhe / Johan Gustav Lindbrandt / Leah Jacqueline Pringle / Patrick Joseph Martin
Forever lyrics © Sony/ATV Music Publishing LLC, Universal Music Publishing Group



2023年2月28日火曜日

NHK 趣味どきっ!『読書の森へ』本の道しるべ・第7回 鹿島茂


NHKの 趣味どきっ!…の『読書の森へ』本の道しるべ シリーズ。去年の12月から今年1月にかけての放送。録画を放送の後すぐに見たのだけれど、とても面白かったのでメモしようと録画を残していた。心に残ったものを記録しておく。


まずは第7回 
フランス文学者 鹿島茂さん
日本での初回放送日: 2023年1月24日
TV Japanにて


鹿島 茂(かしま しげる、1949年11月30日 - )
日本のフランス文学者・評論家。専門は19世紀フランス文学。元明治大学国際日本学部教授。オノレ・ド・バルザック、エミール・ゾラ、ヴィクトル・ユーゴーらを題材にしたエッセイで知られる。当初はフランス文学の研究翻訳を行っていたが、1990年代に入ると活発な執筆活動を開始し、1991年に『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞受賞、1996年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、2000年『パリ風俗』で読売文学賞をそれぞれ受賞。古書マニア(19世紀フランスの希覯書が主な対象)としても有名。猫好き。映画マニア。2017年7月5日、書評アーカイブWEBサイト”ALL REVIEWS”を開設。(Wikipedia)

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★雑誌マニアである
雑誌は出版された時代を反映している

・La Revue Blanche Editions de la revue Blanche
1889年創刊~1903年 フランスの総合芸術雑誌。当時の有名な作家や芸術家が取り上げられていた。

・Art et decoration (1911)(アール・エ・デコラシオン)
若手アーティスト達の作品を紹介した芸術誌。魚や虫のデザインの壁紙は日本の影響を受けていた。


★苦行としての読書

読書への挑戦①
日本文学全集
中学生時代から、日本文学大全69巻 を5年かけて読破
印象に残っている作家 徳田秋声
全集を配本順に読む。好き嫌いに任せたらまず読まない作家に出会うことが出来た。徳田秋声は自然主義の大家。『仮装人物』は大傑作。いい出会い。様々な作家の本を読んでいくと鑑識眼が養われる。

読者への挑戦②
世界文学全集
自分に強制して読む。それが快感になる。
高校生時代に世界文学全集を読破。

読書への挑戦③
大長編を読む
・マルセル・プルースト『失われた時を求めて』
・平家物語
・ミハイル・ショーロホフ『静かなドン』
ロシア革命に翻弄される人々。数世代に渡る家族の物語。
長編小説(特にその時代を描いた小説)は、その国の様々なことがわかる。小説から得る知識はストーリーの喜びの他にある。退屈な部分も一つの楽しみ。とにかく最後のページまで読む。

修行のような、苦行のような読書。すすめます。本は予測不可能。読んでみないとわからない。


★コレクター人生

●翻訳の仕事からコレクターへ

・ルイ・シュバリエ/Louis Chevalier
『快楽と犯罪のモンマルトル/Montmartre du plaisir et du crime』 河盛好蔵訳

作者が固有名詞に注釈をつけない。翻訳に困る。当時の原資料に当たるしかない。鹿島さんは1984年にパリへ。日本で高額だった古書がフランスなら手に入れやすいことがわかる。

・ルイ・レイボー/Louis Reybaud
『ジェローム・パチュロ社会的地位を求めて/Jérôme Paturot à la recherche d'une position sociale』
(1846)
パリが舞台、青年の人生。

その挿絵はグランヴィル/J. J. Grandville (Jean Ignace Isidore Gerard)(1803 – 1847)
風刺画/動物戯画で知られる。鹿島さんはグランヴィルのコレクターに

Scènes de la vie privée et publique des animaux
『動物の私的・公的生活情景』
2巻
(Scenes of the Private and Public Life of Animals)
a collection of articles, short stories and satirical tales (1841 to 1842)
バルザック/Honoré de Balzacを始めとする作家が寄稿

・タクシル・ドゥロール/Taxile Delord
『もう一つの世界/Un Autre Monde』Paris, Fournier (1844)
ルイス・キャロルや後のシュールレアリズムに影響を与えたと言われる

昔のフランスでは、本は仮綴じの状態で出版社から売られ、それを購入者が装丁屋に持って行って装丁を個人注文する。結果、内容は同じ本でも装丁によって10倍から100倍の値段が違うことも。


★本の未来・未来の本

「(現在は)本が出てもそれが書店に並んでいるのはせいぜい数か月。本は完全に消費財になっている。季節もののモードと同じ。それを過ぎるとほとんど価値がなくなる。(その後)本は出版社の在庫として眠り続ける」


●鹿島さんが作った書評サイト
好きな書評家、読ませる書評

2017年開設。明治以来活字メディアに発表されたすべての書評を閲覧可能にする「書評アーカイブ」の構築を目指すという。好きな書評家、読ませる書評、雑誌や新聞の書評を無料で公開している。検索可。


●本の未来は?

「紙の本はなくなる。それを想定してトリアージ(選択)が行われるだろう。自己表現系以外の本は全部なくなる。特に情報系は。時代の必然だろう。活字本はかつての写本のようになっていく。それは避けがたい…」
 
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ネット上で追加した情報と共にメモ

「紙の本がなくなる」…確かにそうなのかも。もうすでにKindleなどで大量の本がデータになって出てますね。情報系はなくなるとのこと。まだ想像できないけれど、確かに。…歴史上のどこかの時代(例えばローマ時代)の地図などは現在、印刷された本が出ていますけど、あれもいずれgoogle mapとか…ああいうものに入力されていくのか。

これは音楽のメディアにも言えますね。録音された音楽を聴くのは、LPレコード。そしてカセット、CDと変わっていった。そのCDが今、日本以外はほぼ商品としては廃れてしまっている。今音楽を聴くならサブスク、それから配信/ダウンロード、それに無料の動画サイト…などなど。音楽を聴くためにCDを購入する習慣はなくなりつつある。

実は先日ここに文を書いたフランツ・リストの曲…ピアニストのジョルジュ・シフラが録音した曲はどのくらいあるのだろうかと思い、手持ちのCDと動画サイトを調べたのだけれど、何と…「シフラのリスト曲の録音はほぼ全曲YouTubeに上げられている」ことに気付いてしまった。シフラが録音したリストの曲は、全て無料で聴けるということです。すごい時代。

ということは今、(日本以外で)レコードやCDを買うという行為は、ノベルティー的なものを求めること(アイドルグッズを買うのと同じようなもの)以外は、ほとんどないということかもしれません。いずれ本もそうなっていくということか。


それにしても19世紀のフランスの本の話がとても面白かった。グランヴィルのことも初めて知ったし、シュバリエの『快楽と犯罪のモンマルトル』も面白そうだ。 ショーロホフ『静かなドン』はロシア革命好きの旦那Aに教えてあげよう。