さっきYahooのニュースで知った。
「こんばんは、渋谷陽一です」で始まるサウンドストリートを、中学から大学を卒業するあたりまでず~っと聞いてました。まさに私の青春です。当時の私は音楽と西洋のロックスターの事しか考えていなかった。三度の飯よりも音楽のことを考える生活。中学や高校の私にとって当時の洋楽と洋画は世界に向かって開かれた窓でした。
渋谷さんのNHKのラジオ番組サウンドストリートで、様々なアーティストの新しいアルバムの曲を初めて聴いたと思います。毎週どのアルバムが紹介されるのか楽しみにしてました。David Bowieの『Scary Monsters』で「新聞は書きたてるさぁ~」を聴いてびっくりしたのもサウンドストリート。プリンスの『1999』と『Purple Rain』を聴いたのも この番組ではなかったかと思う。
渋谷さんのラジオは楽しかった。毎週新しいリリースのアルバムを最初に聞けるのが嬉しかった。いつも曲をカセットに録音して繰り返し聴いた。曲がいいと思ったらアルバムをお店に買いに行った。サウンドストリートと rockin' on で私の音楽好きが固められた。
渋谷さんは Led Zeppelin がお好きで、しかし Queen は「仰々しく派手で大げさすぎるから」とお好きではないと聞いてちょっと悲しくなったこと。高校の時に、渋谷さんファンの先輩と Queen のことで大喧嘩をした思い出。 それでも Queen の『The Game』と『Hot Space』に『The Works』を聴いたのは渋谷さんのサウンドストリートではなかったかと思う。そういえば渋谷さんは『The Works』のレビューで「さらっとしていてQueenらしいこだわりがなくなった」と仰っていたような気がする。私も同じように思ったと思う。
たぶん Pet Shop Boys『Please』、Style Council『Café Bleu』、Aztec Camera『High Land, Hard Rain』…「Walk Out to Winter」がとてもいいと仰っていた、Swing Out Sister「Breakout」もこの番組で最初に聴いたと思う。ディスコが廃れた後に出た CHIC の「Soup for One」が流れたのも渋谷さんの番組だった。
雑誌の『rockin'on』も1979年頃から時々買って読んでいた。当時同時に買っていた『Music Life』に比べて rockin'on はまだ薄い雑誌だった。毎月続けて買って順番に本棚に並べると、背表紙が繋がって一つの写真になったと思う。その後1985年を過ぎてから rockin'on はどんどん分厚く豪華になっていった。バブルの頃に仕事が忙しくなってラジオを聴かなくなり新しい音楽が追えなくなっても、習慣のように新しいアーティストの情報を求めて私は rockin'on を買っていた。渋松対談でニヤニヤし、(個性的な翻訳の)アーティストのインタビューを読んでそれだけでOKだと思うようになっていった。それは日本を離れる時まで続いた。
渋谷さんが、デビューした頃の Cheap Trick を推していらしたことを知ったのは、バンドが1988年に大復活して来日した頃の事。メンバーとも親しくなさっていたらしく、たぶん1992年か1994年の来日の時に、ライブの後でどこかの会場のバックステージの出入口に近いところに渋谷さん御本人をお見かけして嬉しくなった。
渋谷さん、ありがとうございました。渋谷さんのおかげで濃い濃い音楽マニア/音楽オタクになれました。今はロックは聴かなくてダンスチャートばかりチェックしていますが、私が未だに「新しい音楽」に執着して日々「新しい音楽」を求めているのは…そしてそれを趣味として楽しめているのは渋谷さんのおかげだと思います。中学、高校、大学の頃は、渋谷さんが音楽の師匠でした。渋谷さんのラジオと rockin'on には大変お世話になりました。ありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。