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2025年2月20日木曜日

映画『ロミオとジュリエット/Romeo and Juliet』(1968):シェークスピアで泣く?傑作です!







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『Romeo and Juliet (1968)/英・伊/カラー
/2h 18m/監督: Franco Zeffirelli』
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少し前にマリア・カラスのことを調べていて、もう一人の20世紀のソプラノ、ジョーン・サザランドの歌を思い出し、数年前に見たグノーのオペラ『ロメオとジュリエット/Roméo et Juliette』のことを思い出し、ここに書いた感想文を読んで思いを巡らせた。

…そういえば映画の『ロミオとジュリエット』ってきちんと見たかな?

見たことはある。いくつかのシーンは絵で覚えている。しかし見たのは私が高校の頃。テレビで日本語の吹き替え版を見た。とりあえず見たことはあるけれど、ずいぶん前の話なのできちんと見たとは言えない。もう1回見たいと思い Amazon Prime を探したら出てきた。レンタル可能。それで週末に見ることにした。


ま~~~素晴らしかったわ。本当に素晴らしい素晴らしい素晴らしい。この映画はティーンの時にティーン映画として見て「面白かったね」とそのまま忘れるだけなのはもったいない映画。芸術的な傑作だと思う。本当に素晴らしい映画です。


この映画は1968年の映画。そんなに古い映画だとは知らなかった。原作はもちろんシェークスピア。古典で時代劇だからなのか、1968年制作にも関わらず全く古びた感じがしない。今見ても本当に美しい映画です。それも驚いた。

私の中では『ロメオとジュリエット』映画でこれを超えるものはないとあらためて確信できた。本当に素晴らしい作品。


イタリア人の監督のフランコ・ゼフィレッリ/Franco Zeffirelli 氏の名前は1980年代まではよく聞こえてきていた。まず私が覚えたのはこの『ロメオとジュリエット (1968)』の監督だということ。そして彼はまた1981年のブルック・シールズの映画『エンドレス・ラブ Endless Love (1981)』の監督でもあった。たぶんそのあたりで彼の名前を覚えていたのだと思う(あの映画は2回シアターで見た)。


ゼフィレッリ氏は、イタリア・フィレンチェでファッション・デザイナーと羊毛とシルクの商人の不倫の末に1923に生まれた。6歳で母親を亡くす。その後イタリアの英国人のコミュニティーの中で育ったため、英語とイタリア語に堪能なバイリンガルとなる。ところで余談だが、彼はレオナルド・ダ・ヴィンチとの血縁関係も証明されたそうだ。

その後、ゼフィレッリ氏とイタリアの映画監督ルキノ・ヴィスコンティ/Luchino Visconti 氏の繋がりを知ったのはヴィスコンティ監督のことを調べていた時。ゼフィレッリ氏はヴィスコンティ監督の元で、舞台の美術を担当したり映画の助監督としても働いた。その経験を経てゼフィレッリ氏が45歳の時に監督したのがこの1968年の『ロメオとジュリエット』。


英語を解するイタリア人のゼフィレッリ氏が、シェークスピアの脚本を使い、出来る限りストーリーが描かれた当時の時代の再現を試みてイタリアで撮影した映画…というのはなかなかない黄金の組み合わせだろう。この脚本がイタリア語での翻訳の書き直しの脚本ではなく、シェークスピアの脚本をほぼそのまま(多少脚色しているそうだ)使ったこともこの映画が英語圏(世界で)成功した理由の一つだろう。この映画は商業的にも大成功を収めた。


元々の『ロメオとジュリエット』のアイデアは中世以前にまで遡るそうだ。時を経てイタリアやフランスで既に出版され演じられていた演劇の脚本からインスパイアされて、シェークスピアが加筆をして描いたのが有名なシェークスピア・バージョン。なんとシェークスピアの脚本は全てオリジナルではなかったのですね。


この映画の配役は、登場人物の実年齢に近づけたキャスティングで、撮影はイタリアで行われた。シェークスピア作の脚本なので、言語は1597年の古典演劇英語。しかし舞台はイタリアのヴェローナ(Verona)。イタリア人の監督が、英語の古典の脚本のまま、イタリアのティーンのロマンティックな悲劇を描いた。



まずタイトル画面に William Shakespeare’s Romeo and Juliet と出たので「これは古典英語か」と察した。続いて見続けるがなんとも難しい英語。わかったようなわからないような…。すると旦那Aが「これわかんないでしょ、字幕付けたほうがいいよ」と言うので「確かに、わからん」というわけで字幕を出したがそれでも…はて全体的に見て80%も聞き取れたかは疑問。映画は一度見ているし話もわかっているので問題なく楽しめたけれど、後から旦那Aと話していて、どうやら聞き取れなかった情報も沢山あったらしいことに気づいた。16世紀のシェークスピア英語はやっぱり難しかった。

しかしだからこそまた驚いた。この映画のロミオとジュリエットの役者さん達はお若い。撮影時に17歳と16歳なのにシェークスピア英語の芝居を納得できる演技で演じている。それに舌を巻く。

シェークスピア英語は舞台劇の英語なので、多少芝居がかるのは納得。それでもこの映画の若者達がしっかりと演技をしていることにとても感心した。...Convincing enough。すごいな~と思った。みんな上手なのね。


それからこの映画に出てくる若者達が皆全て美男ばかり。…まぁ私の偏見なのだろうけれど、ゼフィレッリ監督はゲイの方で、ましてやヴィスコンティ氏の元で仕事をしていた方で…だから美的感覚も相当なものだろうと。それでキャスティングも「芝居が上手くてルックスもいい役者」…そのようなこともかなり考えての配役だったのではないか。

主役のオリヴィア・ハッセーさんもレナード・ホワイティングさんも本当に綺麗です。イノセントで…しかし純粋過ぎるからこそ一途。あまりにも一途過ぎる若者の恋が信じられる。感動します。シェークスピアで泣けるってなかなかない。芝居が上手いからでしょう。年寄りは若者の瑞々しい恋を見るだけでも泣けるのよ。

この映画は目の保養。(撮影時の) 1967年のイタリアで、まだ古い建物や荒れた街並みが残っていた時代に、中世を再現して、英国から集めた美しく若い俳優さん達を使い、しっかりと演技指導をし、シェークスピア英語を巧みに喋らせて、耽美派のイタリア人の監督が、本格シェークスピア映画を撮る…そのようなドリーム・プロジェクトに私には見えてしまった。もうこのような設定でこのテーマの映画が撮られることはないだろうとさえ思った。傑作だと思う。

見て本当によかったです。あらためて昔日本で見た時の吹き替え版のティーン向け青春悲劇映画とは全く違う印象で少なからず驚きました。芸術作品。これは本当に見てよかった。


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少し面白いのでシェークスピア英語と現代英語を比べてみよう

第三幕・第5場
ロミオの台詞から
二人が共に夜を過ごして、朝立ち去るつもりのロミオがジュリエットに話す台詞。太字はシェークスピア。その下に現代の英語と訳。

* * * * * * * * * *

Let me be ta'en, let me be put to death;
   Take me away, put me to death;
   僕を連れていけ 死を我に

I am content, so thou wilt have it so
   I accept it if that's what you want.
   君が望むのなら 僕はそれを受け入れよう

I'll say yon grey is not the morning's eye,
   That gray light is not the dawn;
   あの灰色の空は夜明けではない

'Tis but the pale reflex of Cynthia's brow;
   it’s just the faint reflection of the moon's face.
   ただ月の女神(シンシア)の顔がかすかに反射しているだけ

Nor that is not the lark, whose notes do beat,
The vaulty heaven so high above our heads:

   And that’s not the lark, whose song fills the vast sky above us.
   あれはヒバリじゃないよ、
   僕たちの頭上高く大きな空に響くあの声は

I have more care to stay than will to go:
   I’d rather stay here than leave.
   僕は立ち去るよりもここにいたいんだ

Come, death, and welcome! Juliet wills it so.
   Come, death, I welcome you! Juliet wants it this way.
   来るがいい 死よ 僕は歓迎する ジュリエットが望んでいるんだ

How is't, my soul? let's talk; it is not day.
   How are you, my love? Let’s speak; it’s still not day.
   どう 僕の愛しい人? 話そうよ まだ日は明けない

* * * * * * * * * *

字幕を見れば何とか雰囲気はわかるけれど聞くだけではまずわからないですね。無理だこれは。現代英語とは言葉のリズムが違っていて意味がわからなくなる。旦那Aは聞くだけでもわかるのだそうだ。日本人が歌舞伎の台詞がなんとなくわかるのと同じようなものか。16歳の若い役者さん達がこの台詞で上手い芝居をしているのがすごいねと思う。ところでシンシアとはギリシャ神話の月の女神だそうだ。