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2022年1月25日火曜日

BUMP OF CHICKEN - 才悩人応援歌 (2007)



~解放へ



BUMP OF CHICKEN – Sainoujin Ouenka (2007)
たぶん埋め込みのリンクはブロックされると思います
Album: Orbital Period
Released: December 19, 2007
℗ 2007 TOY'S FACTORY / LONGFELLOW



「才悩人応援歌」。この曲は取り上げようかどうしようかと迷った。3日間ぐらい悩んだ。なぜならこの曲を取り上げれば、海亀がどういう人間なのかが一発でわかってしまう。恥ずかしいじゃないですか。 この曲を聴いたのは中途半端な中年…40代半ば。40代半ばでこの曲を聴いて穴に入りたくなった。たぶん泣かなかったと思うけれど、初めて聴いた時はただ心臓をえぐられたようで無口になった。歌を聴いてこんな思いをしたことは他にない。


BUMP OF CHICKENの歌を聴いて、泣いたとはっきり覚えているのは「飴玉の歌」と優しい「beautiful glider」。 BUMP OF CHICKENの藤原基央さんはすごい歌をお書きになる。

「乗車権」のわけのわからない焦燥感には覚えがある。「イノセント」には今でも心震える。「分別奮闘記」のユーモアに笑う 。「ギルド」は中途半端な中年で聴くとこたえる。 その他「メーデー」「スノースマイル」「supernova」「時空かくれんぼ」「魔法の料理 ~君から君へ~」「宇宙飛行士への手紙」…いい曲が沢山。バンドの音もいい。QUEENが時々出てくる。POLICEもある。radiohead、90年代のギターバンドも出てくる。音もすごくいいバンド。


「才悩人応援歌」…40歳を過ぎてこんな歌に出会ってびっくりした。まー的確ですよね。驚いた。やられたなと思った。刺さった。


なぜ40代も半ばを過ぎた人間に刺さったのか。 その頃の私は、既ににいろんな事に決着をつけたと思っていた。「もうだいじょうぶ」だと思っていた。当時は自分の心を文章にすることは無かったけれど、まぁだいたい「私の人生なんてこんなものだろう」と納得しようとしていた。

…18歳で大きすぎる希望を持って上京。大学へ。自分に才能があるんだろうと思い込んだ。それで就職。仕事も結構うまくいった。しかし行き詰まりも感じた。そんな時に旦那Aに出会って海外へ飛んだ。それまで築いた仕事上の経験も信頼も自信も全て捨てた。悔いは無かった。またゼロからやり直し。冒険の再出発。学びなおし。そのまま家族になるとも思っていた。いろいろあって子供を持たないことになった。 …結局30代後半で、仕事もなく、人の親になることもなかった。何も残らなかった。だからユースレスのルーザーでドアマットの役立たずなクリープだと自分を恥じ英国で2年間ノイローゼになった。40を過ぎて東京でなんとか持ち直す。また移住してふらふらして誤魔化して、この地に落ち着いた。安堵した。

もう悩まない。自意識や叶わなかった夢や色んなモノ…全てクリアしたつもりで「こんなもんだよね」とだらだらしていた。そしたらこの歌に出会った。

  得意な事があった事  今じゃもう忘れてるのは
  それを自分より 得意な誰かがいたから

  ずっと前から解ってた  自分のための世界じゃない
  問題無いでしょう  一人くらい 寝てたって

  期待される様な 命じゃない

  問題無いでしょう 一人くらい 消えたって


今NHKの朝ドラ『カムカムエブリバディ』でトランペットを吹くジョー君が悩んでいる。先日は彼のルイちゃんに対するキツイ言葉を聞いて頭にきて文句を書いたのだけれど、考えれば…彼も追いつめられて悩んでいるわけだ。そりゃ辛いだろう。確かに。人に当たるのはよくないけれど。

40代半ばの頃の私も、そのような自分の過去…何かを頑張ってたこと、自分に期待していたこと、出来なかったこと、思ったようにならなかったこと…そんなものを時々振り返って「これでよかったのかな~でもしょうがないよね」などと思いながら、まだその現実を心の中で受け止めきれずにいたのだろう。だからこの歌の歌詞の言葉の一つ一つが刺さった。落ち込むわけではなかったけれどすごい歌だと思った。こんな歌を書く人はどんな人だろう。尊敬した。


あれからほぼ10年ぐらい経った。もう迷いはない。夢?なんですかそれ?いや…嘘じゃない。もう全て終わってる。何もいらない。でも落ち込んでいるわけじゃない。淡々と生きる。自分のことはあまり考えたくない。今でも自分を好きになったとは言いがたいがそんなことはどうでもいい。十分に幸せ。自分は幸せだとわざわざ自分に言い聞かせなくてもいい。

私の夢はなんだったのだろう? きっと私は胸を張って自分を自慢できる人間になりたかったのだろうと思う。得意な事をやって皆に褒められたかった。自分が好きな人間になりたかった。それが出来なかったからずいぶん長い間悩んだ。中ニの秋が40半ば過ぎまで続いていた。結局自分のことしか考えてこなかった人生。実にくだらない人生。面白かったけど。


50代も半ば。60に近づく頃になると、そのような悩みはなくなる。もう全て終わった。これから生きても、今のように脳が動くのはせいぜい20年ぐらい。いやもっと早く衰えるかもしれない。あっという間だ。もうお終いに向かっている。そんな年齢になると達観し始める。過去に何かが出来なかったからと落ち込むこともない。ただ今あるものを感謝して淡々と生きればいい。

紅白でひさしぶりにBUMP OF CHICKENを見た。 たぶん10年ぶりぐらいにこの歌を聴いた。最初はなぜこの歌が刺さったのかも思い出せないくらいだった。何度か聞いているうちにだんだん思い出してきた。

面白いもので、40代半ばで刺さった歌は、今は勝利の歌にも聴こえる。妙な爽快感。不思議。もう悩まなくていい。私は私に関する悩みから解放されている。歌えば間違いなく「自分のための歌」が歌えるようになっている。今は満面の笑みでこの歌が歌えるようになっている。今でもこの歌は心に沁みる。

20代でこの歌を聴けば…どう感じただろう。30代、40代。50代で聴いてもそれぞれに違う角度から心に響く。この歌はそんな歌。すごい歌。