やっと数回聴けた。日本からCDの初回盤が届くのを待って出遅れ、またきちんと落ち着いて作品を聴こうと思っていたので、なかなか時間がとれないまま暫く聴けなかった。ネット上で大量に出回っているプロのレビューもまだ殆ど読んでいない。
大昔にハードロックを聴き、20年以上前にメタルをほんの少し掠っただけの音楽好きの年寄りが新譜を聴く…年寄りには年寄りのBABYMETALの聴き方もあるだろうと思いまた感想文を書く。『Metal Resistance』に真面目に向き合った記録。
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●全体の印象
ファースト・アルバム『BABYMETAL』にあった面白味、何が出てくるかわからない楽しさは減りました。ユーモアはほとんど感じない。子供がメタルを歌う組み合わせ、おもしろく可愛い歌詞と轟音の組み合わせ、とんでもなく珍妙な曲構成の面白味も減った。全体に遊びが少なくなった。このアルバムはとても真面目です。
●何故こうなった
BABYMETALがこういう風に変わったのは周りの状況によるものでしょう。ファースト『BABYMETAL』が海外で大うけしたことからセカンドへの期待は高まる。さて次作はどうするのか?
道は2つあった…。
1 前作を踏襲して同じタイプのおもしろ可愛いアイドルメタルをやる
2 ガチメタル。もう文句は言わせねえ。メタルヘッド/ヘイター達への挑戦
選んだ道はもちろん「2メタルヘッド、ヘイター達への挑戦」。『BABYMETAL』を聴いて散々「ギミックだフェイクだマニュファクチャード…」と言ったヘイター達に真っ向から挑戦する。今回はガチのメタルをやる…もう文句は言わせねえ!どうだこれならどうだ!
●戦い
この作品はコバさんの戦いなんだろうと思います。彼はヘイター達への挑戦を選んだ。まずその勇気に大きな拍手。そもそも得体の知れない海外のリスナーに戦いを挑むなんて本当にすごいことです。彼は恐れずに挑戦している。
●成長したBABYMETAL
新しく見せてくれた硬派なイメージは決して悪くない。真面目にメタル界に挑戦する超少女達の図。彼女達も成長しましたからね。もう子供じゃない。女の子達も意志を持ってメタルをやっている。今までおふざけ、洒落、冗談だと思っていたBABYMETALストーリー(紙芝居)にも真実味が加わる。内容はガチの力技。決して悪くない。遊びの少ない真面目なアルバムの中から見えてきたのは、女の子達の大きな成長。これがこのアルバムの一番の収穫。ゆいちゃんともあちゃんは力強く、すうさんはより高く君臨する。彼女達の今後の伸びしろは計り知れない。
●それで何を失ったのか
…ガチのメタル道『Metal Resistance』。しかしそのために以前のような遊びはなくなった。もうパパ頂戴よんよん烏賊ゲソ今何時、チョコくれ女は女優よキツネだお…のような歌はなくなった。歌詞も戦いのトーンが多い。全体にとても真面目。
また音がガチなメタルに変わったせいで、普通の音楽ファンには聴きづらい音にもなった。どういうわけか曲の構成は単純なものが多いが、その代わりアレンジと楽器の技は高度になった。プログレ調も導入。ポップな感じは減った。ギミチョコのように万人に面白いと言わせるギミック的な面白味も減った。
●まとめ
ポップで一緒に踊って歌おう系の楽しい曲はなりをひそめ、重く攻撃的でシリアスな曲調が増えた。しかしプログメタルなど、バンド好き、音楽好きには気になる曲も多い。
これでがっかりする層はいると思う。ファーストを単純に面白がってくれた気楽なファンには多少重過ぎるアルバムだろう。しかしネット上をざっと見回してみると、メタル系のメディアには大変高評価らしい。今回はコアなメタルファンもアルバムを評価していくれているのだろうと思う。その前評判も手伝って、このアルバムはアメリカでビルボード総合39位、英国総合チャート15位に上昇。それはコバさんの狙い通りなのだろうと思います。
●私個人は…
・全体に音が重くなったのはいい。
・ただフレーズのリピートの多い単純な構成の曲が増えたのは気になった。
…Karate、Awadama Fever、GJ!、Sis. Angerの4曲はA、Bメロのみの構成で、アレンジで趣を変えているだけ。これが一番気になる。
・あとは濃いスタンダードなベタ曲、Road of Resistance、Amore、No Rain, No Rainbowが3曲。
・面白かったのは
…Tales of the
Destiniesの冒険/実験。
…Tales of the Destinies+The Oneのプログレコンビ。これがとてもいい。
…Meta Taroは変り種。
第一印象は、もう少しポップな遊びが欲しい…ファーストの曲のように構成が面白くキャッチーで、あまり大袈裟にならない可愛いメタルも聴きたかった。そういう意味では予想外。しかし上に書いたように、このアルバムは、はっきりとした目的があって作られたものだと思うので、全体の重さ、真面目さは理解出来る。
見方を変えればBABYMETALのガチメタルへの挑戦はいいことなのかも。このアルバムで思い切った実験/冒険が出来たからこそ今後の可能性も広がった。次回にはまた違う実験/冒険がやりやすくなったと思う。
ここ数回聴いてこの重さにもだんだん馴染んできてます。これは若い世代の方々が制作したロックのアルバム。新譜のロック・アルバムをこれほどじっくり聴いたのも本当に久しぶり。アルバムのそれぞれの曲を、一つ一つ音を確かめながらじっくりと聴くのはとても楽しいことだとあらためて思い出させてくれた。やっぱりバンドの音はいい。天才ボーカルと可愛い女の子達の声、巧みなアレンジ、楽器の超絶技巧、楽曲それぞれの大きな熱量と勢い…それ以上何を望むだろう。こんなに楽しいものはなかなかない。いいアルバムだと思います。ライブでどう成長するかも楽しみ。
明日からは北米ツアー!
がんばれー!応援するわ。
★曲別--------------------------------------------
1 Road of Resistance❤❤❤❤
これは以前公式の音源をダウンロードしたんだけど、改めてCDで聴くと色んな音が聴こえてくる。ギターの音の粒がとても多い。とにかく速い。曲の勢いがとてつもない。曲はもうおなじみですね。最初はメロディがベタであれれと思ったけれど、時間を経てこの曲は本当に素晴らしく成長しました。すっかりBABYMETAL印のアンセムになった。曲の構成は堂々と正攻法。ブリッジの展開もいい。勇ましく元気一杯ないい歌です。とにかく沢山の音が聴こえる。いろんなところでギターがキュルキュル鳴っている。こういうタイプの曲は動画サイトで満足してはいかんのだなと思います。大きな拍手。
2 Karate❤❤❤❤
元気がいい。この曲のレビューは以前書きましたが、このスタジオver.はとてもいい。大音響。この曲は構成が単純でAメロとサビしかないんだけど、アレンジの変化でキャッチーにまとめられている。勢いがあって最後まで止まらずにおしていく。好き。
3 Awadama Fever ❤❤❤❤❤
音一発目から好き。こういうのは好み。ついボリュームを上げてしまう。Prodigyの「Firestarter」を思い出す。いいですね。女の子達の声が可愛いのでバックの音とのギャップがいい。キャッチーです。これも曲の構成としては単純なんですが、アレンジでいい感じに仕上がってます。攻撃的な音の勢いでおしていく曲。元気がいい。…これガムの歌なの?
4 YAVA! ❤❤
これスカだっけ?スカのリズムは苦手(踊れない)で、去年のライブの音源ではうひゃ~と思ったんですけど、このスタジオ版は思ったよりもいい。印象が随分違う。アレンジでずっと魅力的になってる。キャッチーですね。全体の音の雰囲気は好き。ただAメロの歌のメロディが苦手。
5 Amore ❤❤
ベタ曲。こういうのはたぶん私がロックから離れた後に日本で流行ったアレンジなんだろう。メロディは感動系のJ-歌謡なのにリズムが単純でバタバタ速い。音にメリハリが無くてうるさい苦手なアレンジ。しかしメタルアルバムのフォーマットの中ではこういう曲も必要なんでしょう。それでも歌のSU-METALさんは輝いてます。綺麗な声。彼女はこういう曲では本当に輝きますね。おそらくライブでは映える曲だと思う…名曲になるかもしれない。アルバムver.はアレンジでマイナス点。アンプラグドで歌をじっくりと聴いてみたい。
6 Meta Taro❤❤❤
最初はなんだかVangelisの「炎のランナー」かと思ったぜ。おい…変…面白い。最初はこの調子はびっくりしますね。この曲調は予想できない。不思議。「ずっと昔…」からのAメロ(?)はゆいちゃんともあちゃんが交互にリードをとって歌っているの? 1分20秒あたりからの「君に聞こえているか…」の転調Bメロがとてもいい。このBメロで急にいい曲に聴こえ始める。「かっとぉばせー」って言っている…QUEENの「がんばーれタブチ」を思い出すぞ。いやーこれはびっくり曲だ。どこでこんな曲を思いつくんだろう。ちゃんとキャッチーな曲になってますよね。SU-METALさんの声の力でしょう。面白い。
7 シンコペーション(邦盤)❤❤❤❤
J-歌謡メタル。とてもキャッチー。素直なロックバンドの音で聴きやすい。こういう曲があるとほっとします。Aメロのベースもよく聴こえるし、全体のアレンジに音の隙間があるのでメタルファンじゃなくても聴きやすい。しっかりとしたメロディが曲を前に引っ張っていて勢いがありますね。普通に素敵な歌謡メタル。SU-METALさんの声が綺麗だ。かなり好き。これ洋盤に入らなかったのはもったいないかも。
7 From Dusk
Till Dawn(洋盤)❤❤
おお…大人じゃないか…。ほぼインストですかね。これもVangelisとかああいう80年代の音かな…いやこれは90年のEnigmaだな。実験かな。曲の印象は薄い。
8 GJ! ❤❤❤
高校野球。おッ最初のうねうねギターがいいねぇ。ぅぅううわぁ…みみみみ…うだうだ…もっともっとほらもっともっとほらもっともっと…ノリがいいな。ヘビーなうねうねギターの上でうだうだ言うのがいい。歌部分はベタなメロディーがちと残念。アレンジだけで成り立ったような曲。でも女の子達の声は面白い。これもBABYMETAL印なんだよなぁ。いろんな顔がありますよね。
9 Sis. Anger
―
うひゃ~これは大変だ。これは無理ムリ…全然ムリ。
(^_^;)\ うるせーっうるさすぎ。女の子の声は可愛いけどこれは私は聴けないや(笑)これ音楽じゃないもの。叱られっぱなしも辛い。しょうがないですよこれは。コアなメタラーへ向けたものなんでしょうね。そういう意味での実験作ならあってもいいと思います。しかし耳が疲れる。
10 No Rain,
No Rainbow❤❤❤❤❤
よし。これは語りたいことがある。これはQUEENなんだろうね。こういう情緒的な曲というのは、歌の下手な人(癖の強い人)が歌うともう5秒で聴けなくなるんですよ。30年前ぐらいまではこういうのを有り難がって聴いていたのに、今の時代にはこういうセンチメンタルな曲をあまり聴きたいと思わない。 …それにもかかわらずSU-METALさんが歌えば素晴らしいのね。別格なんですよ。彼女の透き通った声がとても綺麗だ。こんなにベタなメロディーなのに、曲を最後まで聴き続けられるばかりではない…彼女の歌声に感動さえしてしまう。彼女は本当にすごいボーカリスト。フレディ・マーキュリーがそういう人でしたね。彼が歌うとどんなベタ曲にも感動させられてしまう…。この曲はQUEENへのオマージュでしょう。2分頃からレッドスペシャルも泣いてるじゃないか…まんまQUEENのようだ。とても懐かしい。…余談だけれどこの曲は昔80年代にEXTREMEがやったQUEENへのオマージュ曲よりも数倍いい。EXTREMEとの違いはボーカル。SU-METALさんの声が本当に素晴らしい。彼女の声を聴いているとフレディを思い出す。この曲は彼女が歌うからこそ名曲になる。いいボーカルは大切です。SU-METALさんは宝物。本当にそう思う。
11 Tales of
the Destinies❤❤❤❤
あっこれは
UKだ
…ELPだ…プログレだ。\(^o^)/ワーイ …まーよくこんな曲を入れたもんだね。これほんとにUKだ。へぇー…うひゃーうわああこれはなんだかケオスすげぇ…。これは誰に向けた曲なんだろう? このキーボードもUKだ、エディ・ジョブソンをつれてこい。あっ突然キング・クリムゾン。Jeff Beckもいるぞ。いろんな音が聴こえる、よくわからんけど色んな音の記憶が蘇る…
面白い。女の子の声でこういうものをやるアイデアは大変素晴らしい。「BABYMETALはポップなだけじゃないんだよ」という強い意志が見えます。大きな拍手。…曲としてあまりまとまっていないしまったく踊れないけれど、それでも癖になって何度もリピートしてしまう。面白い。謎解きのように音の部品が誰に似ているのかを解明したい。キミタチサイコダヨ。
12 The One ❤❤❤❤❤
…11からの流れがとてもいい。英語ver.がまた意外にいい、いやとてもいい。SU-METALさんは別次元。本当にいい声。この曲もCD/アルバムで聴くのと、公式動画サイトで聴いた印象とはまったく違いますね。アルバム全体の流れの行き着く終点として聴くと本当に素晴らしい。これはアルバムの構成の勝利。感無量だ。11
Tales of the Destinies と全く違う曲調なのもいい。SU-METALさんの高音が本当に気持ちいい。圧倒されます。この曲もSU-METALさんがいてこその曲でしょう。
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