--西洋におけるアジア人の芸能活動への考察
アジア人のショービジネス界での現状 -4
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6-●西洋世界でのアジア人の音楽業界での人気スター=ポップスター、アイドル、ロックスター
映画業界以上に、アジア人が苦戦しているのが音楽業界だ。テクニカルなタイプのミュージシャンではない音楽業界のスーパースター(マドンナ、ビヨンセ等のクラス)は現在皆無と言ってもいいだろう。まずJ-POPやK-POPなどと言う以前に、アメリカ育ちでアメリカ国籍のアジア人ポップスターやシンガー達はどこにいるのだろう?
黒人は音楽業界の中心にいると言ってもいいし、プエルトリコ系にはジェニファー・ロペスがいる。アジア人でなければ外国籍のスターもいる。シャキーラはコロンビア人、ちょっと前のグロリア・エステファンはキューバ人(南米ラテン系のスターにはチャンスがあるらしい)。
それなのにアジア人のポップスターは少ない。マイケルジャクソンのお葬式で歌った女性シンガーのジュディス・ヒルは(アジア系と黒人の混血)、あんな大役を堂々とこなし実力派のシンガーとして成功者と言えるだろうが、彼女はスターではない。殆どの人は彼女の名前さえ知らないだろう。前エントリーで紹介したCassieはフィリピン系の混血だが、ルックスもイメージも黒人系のR&B枠で売り出している。アジア人としては売っていない。Steve Aoki、James Iha、Mike Shinodaなど、日本の名前を持つミュージシャン達も、ファンや業界にはよく知られていても、国中の老若男女全ての人に知られたスーパースターではない。テクニカルなスペシャリストタイプのミュージシャンと言えるだろう。
大まかな見方ではあると思うが、アメリカには名前を知られたアジア人の(クラシック以外の)シンガー、ミュージシャンが少ない。スーパースターレベルのアジア人ポップスターにいたっては皆無と言っていい。せめてビルボードチャートの70位ぐらいに常に入るようなアジア人シンガーさえいない。セレブリティーと呼ばれるスターなどいるわけがない。
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★追記:…おっとブルーノ・マーズがいましたね。スーパー・スターがいました。彼はハワイ出身のフィリピン系。お母さんがフィリピン人で、お父さんがプエルトリコ系。しかしこのお方もアジア人というより、プエルトリコ~黒人系のイメージでR&B色の濃いポップスターの売り方をしています。アジア人という印象はほとんど無い。
これで、少し見えてこないだろうか。アメリカでのアジア人の人気商売は、アメリカ国籍を持っていてさえ難しいことが。
ところでこれを書いている間に、ネット上で面白いケースを一人見つけた。フィリピン出身のシャリースという若いシンガー。1992年生まれの現在20歳。2007年頃からYoutubeで人気となり2008年にアメリカの人気トーク番組に出演。その後天才少女として米国のメディアに何度もとりあげられる。2010年に出したファーストアルバムがBillboard 200のアルバムチャートで8位になる。アジア人で過去最高位だそうだ。歌がとんでもなく上手い。しかしデビューアルバムが売れたのは「あのTVで見た天才少女」という特殊な売れ方だったのではないかと私は思う。セカンドアルバムは米国ではまだ未発売だそうで、これから彼女がホイットニー・ヒューストン並の大スターになるかどうかはまだわからない。フィリピン人なら英語が話せるだろうし、この先トークも出来るようになれば成功の可能性もあるのではないか。もしかしたらアジア人初の大スターになるのかもしれない。
余談だが、実は英語以外の言語で歌ったヨーロッパ人の大スターもほとんどいない。フランス人、イタリア人、スペイン、ドイツ…。ヨーロッパ人でさえ英語で歌わなければ、アメリカではなかなかスターになることは難しい。80年代に大ヒットしたドイツのNENA“99
Luftballons”のように、仮に売れてもOne
Hit Wonderといって一曲で消えていく。フランス人の可愛い女の子がいくらオシャレでも、それだけで英語圏で大スターになるのは難しいのだ。
アメリカの芸能界で苦戦するアジア人。じゃあ、それがなぜなのか考えてみたい。まず、アメリカの国内でのアジア人の立ち位置というものを考えようと思う。