能登半島地震 ─ 寄付・支援情報

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2025年5月8日木曜日

米国のテレビ『NewsNation』:熱い男クリス・クオモならやってくれるかも



3月いっぱいでBBCの『HARDtalk』がなくなった後、ここのところ米国のニュース・チャンネル『NewsNation/ニュースネイション』の番組「CUOMO/クオモ」を録画して毎晩見ている。

番組を率いるのは、元CNNのニュースアンカー Chris Cuomo/クリス・クオモ氏。彼は元ニューヨーク州知事・アンドリュー・クオモ氏の実弟。このクリス氏は2022年にお兄さんのアンドリュー氏のセクハラ疑惑でお兄さんを擁護したことからCNNでの職を失った。

その後、2022年から『NewsNation/ニュースネイション』でプライムタイムの番組「CUOMO/クオモ」を率いるようになった。



この番組の意図は、

右派と左派を歩み寄らせる


現在米国の国民は、右と左に別れて両側とも戦闘態勢で会話がほぼ不可能な状態。既存のニュースメディアも、CNN、MSNBC を始めとする左/リベラル派と、FOX が支持する右/保守派が、反対側を激しく批判する論調のみになっていることから、国民がバランスのとれた情報を知ることが難しくなっている。クオモ氏と NewsNation はそこに目を付けた。

左と右が同時に出演し議論できる場を提供する




彼の番組は2022年から始まったらしいのだが、私は全く知らなかった。今年になって旦那Aが「クオモが面白い番組をやってるよ」と言うので見たのが番組を知ったきっかけ。なるほど『NewsNation/ニュースネイション』の CNN とも FOX とも違う語り口に私も興味を持った。

なぜかは知らぬが、今年になってからこのチャンネルは世間でも注目を集め始めたらしい。1月に私が見始めたときにはまだ TV コマーシャルが少なかったのに、今5月には CM がかなり多く見られるようになった(つまりは視聴者が増えたということ)。CM の内容を見る限り、製薬会社の薬の CM が多いことから、熟年世代や高齢者に視聴者が多いのではないかと思われる。それはいいことだ。

50代以上の熟年から上の人々…特に高齢者には頑固な人が多い。彼らが政治を考え迷ったのは若い頃の遠い昔。誰でも50や60歳を過ぎていればどの政党を支持するかもほぼすでに決定しているのだろう。彼らは自ら新しい情報を調べることもせず「私はこの政党の支持者だから」と心を決めていて頑なな者も多いのだろう。

それらの意固地な高齢者は「自分が見て気持ちのいいニュースチャンネル」だけを見る。ニュースは娯楽なのである。リベラルであれば CNN や MSNBC。古き良き時代を求める保守派は FOX。…そして「我が意を得たり」とそれぞれのTVチャンネルを見て彼らは喜ぶ。なぜなら右派と左派のメディアは視聴者を喜ばせるためそれぞれの偏った情報しか流さないからだ。

チャンネルが(視聴者を喜ばせるために)意図的に偏った報道で視聴率を上げようとするのなら、それを受け取る視聴者も偏った情報で洗脳される。それがまた米国の国民の分断を煽っている。メジャーなメディアがそれぞれ偏った報道をする限り、国が一つにまとまることはない。



そこに危機感をもった人々がいた。それがクオモ氏及び『NewsNation/ニュースネイション』。…そのとおりですね。私も同意する。そのことは今までにもここに度々書いてきた。リベラルは保守派を毛嫌いするし、保守派はトランプ氏を始めとしてリベラルを拒絶し日々攻撃している。そしてその様子を国民が見てまた影響を受ける。国の分断はますます広がるばかり。



米国の国民はまず冷静にならなければ

事の本質は…リベラルも保守派もそれぞれが確かに正しいことを言っている。そしてまたリベラルも保守派も同時に間違ったことも言っている。今の米国の国民は、政党やメディアの言うことに洗脳されて「どちらの側につくか」だけで単純に「こちら側かあちら側か」で物事を判断するようになっているが、


物事の正しい方向は…

中庸に存在する


クオモ氏は彼の番組で毎日そのことをマントラのように唱えている。


彼はNewsNationを

左派と右派が会話を出来る場にする



なぜなら、政治家は右も左も…共和党も民主党もそれぞれが極左、極右の極端なお題を唱えているように見えるが、国民の大半/majority はその中間にいて戸惑っているからだ。政治上のバトルで国民が忘れられている。



両派の問題は様々…

例えば「左派」の、トランスジェンダーの性別適合手術に税金を使うアイデアは?子供への性別適合手術は当然の権利?トランス女性(元男性)の女性スポーツへの参加が当然の権利?国境を開放して不法移民をむやみに呼び込むやり方は?警察を国民の敵とみなして力を奪うやり方は?西の州では 950 ドル以下の万引きは軽犯罪?…それらが正しいと言えるだろうか?

例えば「右派」の、(米国内の労働力を移民に頼っているのにも関わらず)まっとうなプロセスも通さず不法移民は全て追い出す動きが本当に正しいのか?どう見ても古い時代の考えを押し通すやり方(地球温暖化、環境問題はないと言い切る、石油燃料に頼ることをよしとする)ことが良いことだと言えるのか?大学が政府の意向に従わないからと助成金を凍結し、また実質的に言論の自由を奪っていることが良いと言えるのか?



先日4月30日、クオモ氏が「Town Hall」の番組名で、保守派とリベラル派を代表する論客をスタジオに招き、またスタジオ内に左派と右派のオーディエンスを迎え、そして番組の目玉としてトランプ大統領が電話で参加する…という番組をホストした。この番組は NewsNation 史上、最大の視聴者数だったそうだ。なるほど、元CNNのクオモ氏も、トランプ氏や(右派の政治評論家)ビル・オライリー氏を招けば、多くの保守層に訴えかけることもできることが証明されたのだろう。右と左が会話の機会を持つ。それは今の米国にとってなによりも大切なことだ。

同番組でのトランプ大統領は、いつもの選挙キャンペーン・モードで「俺はすごい。バイデンは最悪だ」としか言っていなかったように私は受け取ったが(なにも新しいことは言っていなかった)、それでもトランプ大統領が番組に参加してくれたことの意味は大きい。彼の言葉が聞きたくてチャンネルを合わせた保守派の人々も、同時に番組内でリベラル派の意見を聞くことになったからだ。まず今の米国で、右と左の視聴者が同じテレビ番組を見ていることが今どれほど貴重なことか。


クリスさんは頭がいい。「Town Hall」の番組内でトランプ大統領に対し「歴史に残る素晴らしい大統領は、国を統合し団結させる大統領(unifier)だと言われるが、この国を一つにまとめる人物として人々の記憶に残るには何をする必要がありますか」という質問をしていた。トランプ氏は「私は素晴らしい unifier になると思うよ、そうなりたいね、それはとても大切なことだ…」と軽く答えていたけれど笑笑笑。クリスさんが質問で答えを誘導しているのは明らか。彼はとにかく頭がいい。


クリス氏は毎日番組内で「右派と左派が共に政治を考える」と繰り返し唱えている。何よりも大切なのは、彼が…米国に住む人々が(私も含めて)基本的に無知でアホであること…もよくわかっているらしいこと。

…彼は番組内で視聴者に向けて、出来る限りわかりやすい言葉で「今現在、アメリカで何が起こっているのか」を訴える。右派と左派のそれぞれの間違った極論やおかしな曲論をきっぱりと否定し、国が間違った方向に進んでいないのか…おかしなことになっていないのかと、国民の「常識」「良識」に訴えかける。資料として数字を画面に示し、過去の例を振り返り、ゆっくりと言葉を区切って確認するように「OK?」と視聴者に話しかけ、視聴者がついてこれるように注意しながら内容をわかりやすい言葉で説明する。右派と左派の両サイドの論客を招いて話を聞き、両者の意見を…「正しいこと」に対しては同意し、「間違っていると思うこと」に関してははっきりと否定、疑問を呈する。決して相手を攻撃しない。まず話を聞く。そして問いかける。そうしながら視聴者に伝わる内容を巧みにコントロールしているようにも見える。これは相当頭がいい人でなければできないことで…本当にすごいねぇと日々感心している。


彼がやりたいことは、国民の右側と左側を歩み寄らせて現実を提示し、正しい判断に導くことだろう。それを日々行うことの積み重ねが、2026年の中間選挙や将来の大統領選にも大きな影響を与えることになるだろう。

…まず国民を、「右派と左派の戦闘態勢」から離脱させ「良識」に目覚めさせる。国内で国民同士が戦っていてもなにもいいものは生まれない。とにかく戦いをやめさせる。そして国民が「常識」「良識」に沿って、相手の意見も聞きながら議論をすることができるようにする。これさえ出来るようになれば米国はきっといい方向に向かい始めるだろう。

国民がアメリカをGREATにしたいのは、右派も左派も同じだからだ。



クオモ氏はいかにも大柄で体育会系で熱く少し押しつけがましいきらいもあるが、大きな男が畳みかけるように熱く訴える様子はアメリカの人々にはウケる。それならいい。米国国民の真ん中にいる(マジョリティの)平均的な普通の人々に訴えかけるクリスさんに私は期待したいと思う。


本当は私は BBC の『HARDtalk』のような番組が見たいのですよ。英国式の落ち着いた論調の(内容はチクチクと厳しい)インタビュー番組が見たい。もっと世界の様子が知りたい。しかし今のアメリカはいまだかつてないほど大変な(恐ろしい)状況になっているので、しばらく米国のTV番組「CUOMO」を見てこの国の様子を見ていこうと思う。