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『いつも2人で/Two for the Road (1967)/英/カラー
/1h 51m/監督:Stanley Donen/脚本:Frederic Raphael』
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この映画はずいぶん昔、私が学生の頃に深夜のテレビでやっていたのを見た。日本語の吹き替えだったかもしれぬ。オードリー・ヘップバーンなら見ておこうと真夜中に見た。面白かったと記憶している。
マークとジョアナの夫婦が様々な時代を、喧嘩をしながら車でフランスを旅する話で、細かいことは忘れていたが「よくできた映画」の印象だったと思う。Amazon Primeの映画のリストを見ていたら出てきたので、もう1回見ておこうと鑑賞。旦那Aは初めて。
面白かったです。昔の映画なので、いまどきの映画を見るような感じではないけれど十分面白い。夫婦の出会いから中年に差し掛かった夫婦の危機までの長い年月の間を、彼らの旅の様子のみで描く。
★ネタバレ注意
二人が車で旅するのは毎回フランス国内。6つに分けた時代はおおまかに次のとおり
1, 1954年(結婚0年)学生時代ヒッチハイク旅 出会い
2, 1957年(2年目)アメリカ人家族と共に
3, 1959年(5年目?)二人旅 奥さん妊娠
4, 1961年(7年目?)夫は仕事で一人旅 奥さんは家で子供の世話
5, 1962年(8年目?)子供との3人旅
6, 1966年(12年目)夫婦の危機
(日本版Wikipediaによる)
これら6つの時代が編集により入れ代わり立ち代わり描かれるので少し混乱する。しかしそのリズムに乗れば人物達の衣装や髪型でそれぞれの年代が理解できる。お洒落な映画。
毎回夫婦が出てくるたびに、お互いの関係性が変わっていくのが面白い。最初は若い二人が無邪気にはしゃいでいるが、結婚12年目になると二人ともまるで別人のように冷たい関係に変わっている。…7年目ぐらいから12年目…その頃は確かに難しい頃かも(笑)
ところで今ふと思ったけれど、この話って最後どうなったんだっけ?覚えていないぞ。
旦那Aに聞いてみたら「大丈夫だったんじゃない」と言う。どうやら結婚7、8年~12年あたりまでかなり深刻な夫婦の危機があるにもかかわらず、結局この二人は「ま、いいか、そんなもんか」と離婚しない…という話だったみたいで。そうかそうか。
結局その結末の簡単さが1967年制作の映画…ということかもしれないネ。
1967年製作…かなり古い時代の映画なのですよこれ。こんな古い時代に、英国人夫婦がフランスでヒッチハイクをして出会い(冒険的)、時代を超えてフランスを車で旅して回り(自由)、アメリカ人やイタリア人の友人を持ち(国際的で小金持ち)、お互いに冷めてきたら浮気もして(スキャンダラス)…。
などなど、この夫婦は1967年のスタンダードから言えば、とんでもない翔んだ夫婦だったわけで。特にお互いに浮気するなんて、当時ならあまりにもスキャンダラス。一般の人々が共感できる話ではないだろう。この映画は60年代半ばの仕事で成功したセレブで進歩的モダンな夫婦の話…だったのだろうと思った。
それでも彼らは離婚しないのね。結局「まあいいか」と丸く収まるわけだ。そこのところがやはり1967年なのだろう。
だってこの夫婦、この映画の10年後ぐらい(1977年頃)…西洋で「ウーマンリブ/Women's liberation movement」が盛んだったころの話だったら、間違いなく離婚している。
(こんなに仲が悪いのに)この二人が離婚しないのは、やっぱり1967年の映画だからでしょう。それはそれで面白い。まぁ昔の夫婦は日本もこのようなものだった。
それから(アルバート・フィニー演じる)夫の性格の酷さも古い時代だからかとも思った。今なら私も英国英語のニュアンスがわかるのだけれど、とにかくこの夫・マークの性格が酷い酷い。彼も昔の男なのですよね。古い時代の強がりで荒々しい自分勝手な男のキャラそのまんま。そのあたりは当時の男あるあるリアルなのだろう。
私の知るいまどきの英国の男性は皆優しい人が多かったと思う。しかし昔の時代は英国の男もずいぶん自分勝手だったのかなと思う。ぶっちゃけこの夫・マークのどこがいいのかさっぱりわからないですもん。もうジョアナさん、そんな男、別れちゃえと思うほど酷い笑。威勢がいいばっかりで自分勝手で見栄っ張りで強がりで乱暴で威張っていて本当に嫌な男だもの。ガミガミうるさいし。
そのようなニュアンスは日本で40年ぐらい前にテレビで最初に見た時は全くわからなかった。それも新しい発見。面白いなと思う。
旦那Aもこの夫・マークのことは酷いと言っている。「あの奥さんはなぜあの男と一緒にいるんだろうね…二人はケミストリーも全然ないよねぇ」などと言う。亀が「それが1967年の時代の夫婦の普通だったのかもよ。それに当時は簡単に離婚できなかっただろうし、奥さん泣き寝入りなのかもね」と言えば「へ~」…などなど平和的なアメリカンにはちょっと不思議な映画なのかも。最後の結末も「へ~」と言っていた。
映画としては実験的。頭のいい人が頭を使って凝って描いた映画…という感じ。車の中のシーンが多いので難しいだろうが、この脚本なら舞台劇でもいけると思う。
若い頃のジャクリーン・ビセットが出てくる。綺麗。
結婚2年目の旅で一緒のアメリカ人の夫婦がギャグのようでおかしい。脚本はフレデリック・ラファエル(米国生まれのユダヤ系アメリカ人で父親が英国人であったことから7歳で英国に移住。英国育ち)なのだが、あのアメリカの「正しい夫婦」を笑いものにして馬鹿にする目線はとてもおかしい。英国ならではか?監督のスタンリー・ドーネンは米国人なのに…。