どしゃぶりの雨が降る。ゴーッと空気を押しつぶすような雨。その音に猫さんが怯える。そわそわと落ち着きがない。今日は朝からずっと雨が降っている。
さっき人間が料理をしていた時は、家中をバタバタと走り回っていた。ブラッシングをしてもすぐに立ち上がって窓の外を見る。気もそぞろ。雨の音のせいで不安になるらしい。
しばらくして眠くなったのか、ソファーの上のブランケットに上った。そのまま眠るのかと思ったらやっぱり落ち着かない。ソファーを降りて私の座る椅子にやってきた。こちらをじっと見て膝の上に上ってくる。
「どうした?めずらしい」
膝の上でも落ち着かない。
「わかったわかった」
ソファーに移動してブランケットを広げる。猫さんはすぐに乗ってくる。腿の上に乗りこちらにお尻を向けて座り込む。やっと落ち着いたらしい。ずいぶん甘えん坊になったものだ。
彼女は、子猫の頃、母猫と物陰で雨やどりをしていた頃のことを覚えているのかもしれないと思う。土砂降りの雨。大きな音。ジメジメとした足元。冷たい水。何処かの物陰で、彼女は母猫と兄弟姉妹達と寒い雨の日、震えていたのかも知れぬ。その頃の事をまだ覚えているのだろうか。