いや手の甲でお猫様の愛を受け止める。
一緒に和んでいるとお猫様はよく舐めてくれる。猫同士ならお互いの顔を舐め合ってグルーミングということなのだろう。人の手や腕、脚などをよく舐めてくれる。
しかしながら人には毛が無い。皮膚をそのままサンドペーパーのような舌でザリザリやられる。
痛い。
とても痛い。手のひらは皮膚が厚いのであまり痛くないが、手の甲はかなり痛い。腕も痛い。二の腕なんて悶絶するほど痛い。
それでもなすがままでしばらく我慢する。なぜなら舐めてくれるのは、お猫様のこちらへの愛情の表現だからだ。痛いとはいえ優しく愛情を示してくれているものを無下に拒否はできない。「ありがとう」と言ってお猫様からの愛はありがたく受け止める。
しかし痛い。時に額や頬を舐められると飛び上がるほど痛い。それにしても母猫というものはこんな強烈な愛を小さな子猫達にも与えるのだろうか。薄い皮膚の生まれたばかりの小さな子猫を、このザリザリした舌で舐めるのだろうか。猫の愛とは痛いものだ。
お猫様はよく甘噛みもする。手を舐めていると時々思いついたようにガジガジと噛み始める。人の手を捕らえるように床に押さえ込み、手首や指の付け根の骨を歯で確かめるようにゴリッゴリッと噛み始める。だんだん痛くなるので「痛い痛い痛い痛い…」と声を出すと「はっ」としたように口を離し、そのままザリザリと舐めてくれる。「おっとゴメンネ」と言っておわびに舐めてくれている様子なのだけれど、それも痛い。
どうやら人の手の関節のコリコリした感触が好みらしい。スイッチが入ったようにゴリゴリ噛んで止まらなくなるのは本能なのだろうと思う。狩ではああやって小動物の息を止めるのだろう。完全室内飼いのお猫様に小さな野生を見る。なんとなく感心する。なるほどなと学ぶことも多い。
もちろん噛まれて怪我をしたことは一度も無い。猫が人を傷をつけることは簡単なはずなのに加減をしてくれている。仲間を傷つけることはしないのだろう。ちゃんと考えてくれているのだ。