茶々さんが秀吉の側室になる回。ワタクシこの茶々さんの話は、秀吉の時代の話の中で、女性の複雑な心理が描かれる数少ない機会だと思うわけですが、新しいドラマがこのお題をどう料理するのかは毎回興味津々。
自分の親や弟を殺し、元々は自分よりも格が下の成り上がり者の男の側室になる事がどれだけ辛いことか…浅井家のお姫様として育った誇り高い少女にとっては、それは屈辱なはずなんですよ。その心理を詳しく描写するならば、この話は耐え難い悲劇。日曜8時にリアルに描いて喜ばれる題材ではないのかもしれない。特に現代の視聴者は暗い話を好みませんからね。
だからといって話を明るく創作すればとんだ茶番。しかし悲惨さをリアルに描けば重苦しい。このお題は現在の大河ドラマで描くには難しい話なのかも。そのせいか近年のドラマではサラッと流すような茶々さんの描写が多い。茶々さんの苦痛の部分にはあまり焦点を当てないんですね。
これが20年前の大河『秀吉』では、かなり可哀想な話として描かれています。そのことは以前『秀吉』の感想文に書いた。今回気になったので『秀吉』DVDの第40回を見直したんだけど、やっぱりあの松たか子さんの茶々さんは可哀想だ。今見れば演出も台詞も古臭いし、芝居も舞台劇風で決して自然だとは言えないんだけれど、全体に漂う雰囲気が非常に重苦しい。
実年齢で19歳の松たか子さんのイノセンスと、老けメイクをした(実年齢40歳の)竹中さんのコントラストがすごくて、決して自然な男女の関係ではないということは明白。秀吉の年齢51歳は、あの時代には老人。避けられない運命によりお爺ちゃんに嫁ぐことになった若い娘の悲劇。その老人は母の仇であり、元々は下級の家臣だったのだから尚辛い。目に涙を一杯ためた松さんの茶々さんは本当に可哀想だ。悲惨な話の悲しい描写。結果、それがドラマとしても強烈な印象を残す。
あのドラマに比べれば今回の茶々さんは軽い。心理も別の角度から描写。この茶々さんは不幸に苦しむのではなく、不幸な過去に耐えた結果、感情の全てを殺してしまったキャラとして描かれています。「人が死んでもなんとも思わない」。感情を殺したキャラにすればドラマがそれほど悲惨になることはない…のは狙っているんでしょう。
それにしても感情を押し殺せば、それがまた暗い表情に出るはずなんだけど、竹内さんの茶々さんには押し殺した心の闇もあまり見えない。女優さんの年齢は36歳だそうですが、若い娘のイノセンスも感じない。信繁とのやりとりを見ても、どうもお姉さんが信繁を手玉にとって遊んでいるように見える。それがいいのかどうかは好き好きでしょう。
竹内さんの茶々さんは、後に秀頼の母としてのシーンがあるのでそれを優先しての配役なのだろうけれど、同じキャラ設定なら10代の女優さんが演じるのも見てみたかった。
たぶん私が、可哀想な茶々さんを見たいんですね。悲惨なのを見て茶々さんは可哀想だと心を動かされたい。そういうドラマを見たい。だからこのお題をサラサラッと流されるとどうも物足りなく感じてしまう。
このドラマのトーンが全体に軽いことを考えれば、あまり重苦しくない茶々さんの話は三谷さんの意図なのだろう。悲しい記憶を殺し、感情を殺し、何があっても平気な茶々さん…しかし私はその目の奥に見え隠れする深い哀しみが見たかった。
この茶々さんの軽さは現代の空気を反映したものでもあるのだろう。私より上の世代には茶々さんの置かれた状況は非常に辛いものに思えるのではないかと思うけれど、若い世代の人々にはそれほど悲惨には思えないのかもしれない。秀吉はお金持ちだからいいじゃん…と思う人もきっといる。そんな時代だからこの茶々さんも可哀想に見えないのか。
天才秀吉の小日向さんは最高。茶々さんを口説くシーンは名演。この天才秀吉にお願いされたらしょうがないかな…と思えそうだ。この秀吉は何事もその場その場で必死なのね。あの口説き方は、このドラマの秀吉のキャラに合ってますよね。子供みたいに小細工をせず真っ直ぐで必死。もちろんその後ろにある王者の傲慢さが怖いというのもあるのだけれど…。
●あらすじ
信繁は茶々との仲を噂されるが、秀吉が茶々を側室にすることで問題解決。真田のお兄ちゃんは本多忠勝の娘を嫁にもらうことになった。
★いちいち感想
◎信繁の見た秀吉と茶々の馴れ初め
・信繁は最初から茶々さんのお相手。禁止されている蔵を一緒に見たいと言う。なんだ簡単に入れるのなら一人で見にいきなさい。
・そこは武器庫。茶々さんの身の上話。「親しい人達は皆殿下に殺されました。だから人が死んでもなんとも思わない。自分が死ぬのも怖くない。」んん…この茶々さんはイノセントに見えないのね。全部わかっていて信繁を誘っているように見えるぞ。
・↑前の茶々さんがあまりにも似てなくて可愛くなかったので描き直しました。茶々さん2号可愛いぞ。
・秀吉「茶々に惚れてしもうた」あ~寧々さんはお母さんなのね。こんなことで甘えられても困るよなぁ。こんな男には寧々さんももう嫉妬することもないだろうに。
・寧々さんが膝をはずすと秀吉が床にゴチっと頭をぶつける。
・聚楽第の話。茶々「源二郎がこなきゃヤダ」ひやひや。
・信繁と茶々さんの仲は巷で噂になっているそうだ。片桐さんにも「釣りあわんから」と釘を刺される。
・とうとう秀吉に呼び出されて問い詰められる。容疑は「源二郎が茶々さんを蔵に連れ込んだ」。
・信繁、もちろん「そのようなことは無い」と弁明。←ここはなんで信繁は正直に言わないのだ?黙っているから余計にこじれる。そのまま話せばいいのにね。だって信繁は今までにも秀吉には結構ずけずけ言ってるんですよ。先週も真田が攻めてくる…と脅してたし。茶々さんの性格は皆わかっているだろうから正直に言っても叱られないと思う。
・それにどうして秀吉も二人を全く疑わず、信繁にまた「茶々の話し相手になって欲しい」なんて野放しにするのよ。おかしいぜ。少しは疑ってもいいだろう。
・きりちゃんは現代人。「ほ~ルらほルらっ」って巻き舌か(笑)。信繁は清正が怖いのできりちゃんがお願いして秀次に相談。
・秀次君は芸術家枠で陽気な遊び人なのかしらね。人が良さそうだ。
・石田君は堅いね。肌もツルツルして陶器のよう。博多人形みたい。
・大谷さんが「大陸攻め」なんて重大問題をまた部外者に喋る。
・聚楽第完成。茶々さんが失言、おっと…。
・秀吉が笑っていないぞ…ね、だから正直に言えばよかったのに。今さら言うから秀吉を怒らせる。
・茶々さんの気まずい顔。
・秀吉の告白タイム。信繁はいなくてよろしい。
・この秀吉はいい。究極の愛の告白か。この秀吉は本気。小日向さんの表情が真剣。切実。やっぱりこの秀吉は子供みたい。いつも真正面からお願いする人。以前も家康にお願いしてましたね。「たのむ…たのむこのとおりおねがいおねがい」と言って押し通してしまう。強引なのに相手もなんとなく「う…うん」と言ってしまうのはこの秀吉の妙な魅力でしょう。子供なのね。妙に可愛い。なんだか「いや」と言いづらい。小日向さん名演。
・秀吉「そしておまえは天下人の妻となる。決めたことじゃ。…誰よりもわしはそなたを愛しいと思うておる。嘘ではない。この聚楽第で天下人の妻として暮らしてくれ。」茶々には「日の本一幸せな女子でした。」と言って欲しい。「わしが言わせてみせる」。←これは断れない。
・秀吉、すぐに寧々さんに報告。まるで子供ですね。寧々さんももう悩むことはないですよ。この男はしょうがない。
・大蔵卿局が茶々を叱るのがいい「日の本一口の上手い男ですよ。」確かに大蔵卿局は全てを見てきた人だから秀吉はいやですよね。なるほど。
・茶々さんは乗り気なのか。軽いな。
・役を解かれた信繁に、茶々さん「離れ離れになってもあなたはいつか戻ってくる。そして私達は同じ日に死ぬ」←おおお。友情の印の押し花をもらう。これは最終回に出てくるのかな…?
・…と思ったら
きりちゃんが食べた!食べた食べた食べた…
馬鹿野郎っ!(大笑)油断も隙もありゃしない。・ナレーションはまたネタバレ。
◎駿府城
・パパとお兄ちゃんがまだ家康のところに滞在中。まっちゃんもいる。まっちゃんは全く性格が変わってないですね。木村さんは綺麗だ。
・家康、本多忠勝の娘を信幸お兄ちゃんと縁組。稲ちゃんは性格がきつそうだ。結婚はお仕事です。
・信尹叔父さんは頭が丸くなっているぞ。